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第一話 「タイムワープじゃなくて、逆行転生してた件」

※注意事項


この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。


 薄暗い草原。

 

 辺りに広がる乳白色の薄霧。

 ずっと横に流れていく大きな川。


 どこか、見た事のある景色。


 死ぬ前にみた夢の場所だ。


 父さんと母さんに会った場所。


 そこに俺は今、いる。


 やっぱり、俺は死んでしまったようだ。

 父さんと母さんは、迎えに来てくれてるかな……。


 俺は、川の向こう側に目を向ける。

 

 そこには、誰もいない。


 見えるのは、大きな川だけ。


 周りを見渡す。


 前と同じで周囲は霧に覆われていた。

 そのため、視界が悪かったが、見える限りに人影も、何も無い。


 死ぬ前は、両親、そして俺が間接的殺してしまった人々が対岸に大勢いたが、今は全く人の気配がしない。


(待たせすぎちゃったみたいだな、もう誰もいないや)


 家族との再会や、殺してしまった人々への謝罪くらいはできる、と思っていたアラタだったが、その予想は外れる。


 思わず、ははっ、と乾いた笑いが口から漏れる。


(謝罪すらできないのか……結局、世界を救えなかったな……ごめん……ごめん………)


 目的を達成できず、自身の火が消えようとすることに、悔しさが滲み出てくる。


 ぎゅっ、


 あまりの悔しさに、拳を握りしめる。


 手のひらに爪の赤い痕が残るほどに。

 血が出るほどに。


 強く、強く、痛いほどに握りしめた。


 悔しさから、震えていると、

 前回と同じように、段々と霧が濃くなっていき、自身の手すら見えなくなっていく。


 目の前が見えなくなり、さらに感覚が薄れていく。


 くそぉ、くそぉ………。


 途切れそうな、意識でアラタは、悔しさを口にした。


 そして、意識が薄れていき――






◾️



 



 目が覚める。


「…………………」


 ぼんやりとした視界。


 見覚えのある天井。

 

 しかし、思い出せない。

 

 ココは……


 混濁する意識。


 無理矢理、働かない頭で思考を回す。


 生きてる…………のか?


 宇宙艦隊と衝突し、死を覚悟したが、どうやら生きてるようだ。


 生きてる……生きてる…………ッ。

 よかった、まだ生き残った……生き残ったんだ……ッ。


 自身の命の火が残ったことへの喜びに、思わず震える。

 


 しかし、喜びもつかの間。

 

 頭を動かすにつれて、自身が追跡者に捕まったことに気づく。


 逃げようとするも、体が動かない。

 とてつもない絶望感が襲ってくる。


 動けッ、動けッ!


 動かない体に鞭を打つが、指がピクリと動くだけで、それ以外は動かない。

 


 早く、ここから逃げないと。

 捕まったら……今までの研究も、何もかも無駄に――


 口にしたことを言い切る前に、電源が切れたように、意識がプツ、と途切れる。





◾️





 目を覚ます。


 まだ、目の前はボヤけている。


 だか、そんな事はお構いなしにすぐさま頭を働かせる。


(くそっ、頭うごかねぇ――


     ――アリシアッ、現状報告してくれ!)


 爆睡ちゃんをかましてしまった俺は、とりあえず普段なら脳内コンピュータとして機能しているアリシアに向かって脳内で、話かける。


 しかし、アリシアから返答はない。


 くそ! やられた!! 最悪だ!

 

 脳内コンピュータであるアリシアは、危険と見なされ、データや*BMIを奪われたのだろう。


 アリシアがいないと……ッ! クソォッ!!

 

 荒ぶる感情を抑え、荒ぶっていても仕方がない、とすぐさま諦める。

 そして、冷静になった頭で、思考を回す。


 落ち着け、落ち着いけぇ……。


 まずは落ち着いて、現状の確認だ。


 ・多分、俺は捕まった。

 ・アリシア(脳内コンピュータ)は、いない。

 ・魔臓(魔法を使う際に用いる臓器)も取られてるので、魔法は使えない。

 ・指先や腕が動く感覚はあるのだが、上半身が起こせない。

 ・VR(仮想現実)への接続もできない。

 ・周囲は柵に囲まれている。


    ・


    ・


    ・


 つまり――何も出来ない。 

  


 諦めつつある精神を立て直そうとする。


 いや! まだやれることは、あるはずだ!!

 なんとしても、見つけだす!!

 

 深い思考に潜ろうする。


 ズキッ、


 頭痛が走る。


 すると、意識が薄らいでいく。


 やべぇ……気、失いそう……。


 スッと、穴に落ちたように、俺は意識を失った。

 



 また、目が覚める。


 人の気配がする。


 緊張しつつも、話しかける準備をする。


 まだ視界はぼやけているため、姿は見えない。

 また、疲労のせいか、どんよりと頭の中が曇っている。

 

 おそらく、後遺症をワザと残しているのだろう。

 

 現代技術で治せない怪我はない。

 死んでいたとしても6時間以内なら蘇生できる。

 例え、俺のように粉々の肉片になろうと


 では、なぜ後遺症があるのか?


 逃亡の阻止のためだ。


 ん……逃亡……?


 なんで、俺は逃亡なんか…………?


 まだ混乱しているのか、記憶が曖昧だ。

 上手く思い出すことができない。


 それに、思考も。


 頭に霧がかかったように、少し考えごとをすると、頭がぼーっとする。

 

 思考への制限は、魔法で出来ないはずだが……(ボーッ)


 いや……魔法で出来たっけ……?



 ………………………………………………………………………………………………………。(ボーッ)



 はっ! ぼーっとしすぎた!


 半分、寝かかっていた俺はすぐにさっきの人がいるか確認する。 



 さっきいた人は――


 かさかさ、と微かに、人が動く音が聞こえる。


  ――まだいる!! あんた、最高だよ!!


 あまりの嬉しさに、年甲斐もなく大喜びしてしまう。


 はやく何か言わなくては、この人が何処かにいってしまう前に、

 そう思った俺は、上手く動かん口を開き、声を上げる。


 「あー、うあー」(ここはどこですか? あなたは、どちら様?)

 

 ここはどこで、あなたは誰かを聞こうとすると、出たのはうめき声ともあえぎ声とも判別のつかない音だった。


(は? なんだこの声……それに、口がうまく動かない…)


 俺の声は、まるで赤ん坊のような声なのだ。


 声に気づいた人が、パタパタと近づいてきた。


 黒髪ショートの女の人が俺をのぞき込んできた。

 ぼんやり、顔が見える。


 よく見たことが……あるような、ないような気がするような顔だ。

 はっきりと見えていないので微妙だが。


 (誰だろう?)


 思い出そうとしていると、


「お腹空いたのかな〜、それともオムツでちゅか〜」

 

 女の人が幼児語で喋りかけてくる。

 言われていることは、馬鹿にされているような感じなのに不思議と嫌じゃなかった。


 どちらかというと心地よかった。(変態確定申告)


 普段だったら「俺のバブみが女性を狂わす」などと冗談をかましていたが、生憎、俺にそんな余裕はなかった。


 焦っていたからではない。

 俺の胸の中で、わけの分からない感情が湧いてきたからだ。


 なぜかじーんと胸が熱くなってくる。


 涙が自然と出てくる。

 瞳からポロポロと涙が頬をつたい、落ちていく。


 いや、グスッ、泣きたい訳じゃない、泣きたい訳じゃないんだ……なんか……自然と……はは、なんでだろ……。

 クッソ……なんだこれ……とまれ……とまれ……。


 なぜかこの人の声を聞くと今までのことが許されたような、報われたような気がする。


 ついに、頭がおかしくなっちまったのか……。

 ふと、そう思ってしまうほどに。


 涙が、少しずつ止まり、気持ちが落ち着いてきた。


 蘇生魔法で、死から蘇ったからか…?

 いや――魔法……? 魔法なら………。


 そこで、頭に浮かんだ一つの可能性――


 ――精神魔法(精神干渉系魔法)。


 精神に作用する魔法で、洗脳や催眠、精神破壊などを目的として用いられる。 念話テレパシーや忘却魔法、記憶魔法はココにカテゴライズされている。


 胸がぽかぽかして、心地良いが、俺は緩んだ気持ちをより一層、引き締まる。


 精神魔法によって、生み出された感情の可能性が高い今、俺が警戒しなければ、ならないのが、呑まれないことだ。

 

 俺が、身構えていると、横になっている俺の顔に人影が被り、視界が暗くなる。


 女性が、近づいてきたのがわかると同時に、


 ガバッと勢いよく、その女性に抱き上げられた。


 その瞬間に、俺は目をぎゅっと閉じてしまった。


 そして「どうしたの〜」と少し慌てた様子で俺をあやす。


 抱き上げられると、人の温もりと、優しい声、安心する匂い。

 

 ブワッ、と涙が出る。

 目から頬をつたい、顎から床へと零れ落ちる。

 

 女性の顔を見ようと顔をあげるが、元々ぼやけていた視界が涙でよりぼやけるため、よく見えない。


 理解できない気持ちが、湧いてくる。


 いや、この気持ちは……この感情は……。


 安心、安堵……?


 肩の力が抜けるような、胸がふわふわするような、そんな感情。


 まるで、雲の上にいるみたいだ。   


 とても心地が良い。


 呑まれるな! 

  

 自分を保て!!


 自分を保つんだ、そうすれば……。


 呑まれなかったからって何だって言うんだ、と本心が語り始める。


 俺は、自分(本心)と戦い続ける。

 戦い続けても意味はないことは知っている。  

 

 しかし、諦める訳にはいかない。


 女性に抱き上げられながら、俺は自分と、精神魔法と戦っていた。





◾️





 

 涙が止まると、ドッと疲れが襲ってくる。


 警戒心は、いつの間にか解けてしまい、とろんとした眠気が、音もなくやって来る。


 ポン、ポン、と優しくからだを叩かれたことで、謎の安心感に包まれ、ふわふわしたまま意識が溶けていく。


(く、くそぉ…………)


 悔しい。 だが、抵抗することを叶わない。


 俺の意識は徐々に薄まり……最後は、溶けてなくなってしまった。





 

◾️

  





 目を覚ますと、真っ暗だ。


 何も見えない。


 微かにテレビの音が聞こえる。


 変な夢を見た俺は、今、この時、目覚めて初めてのピンチにあっていた。(いや、精神魔法が最大のピンチやろ)


 手足や首は動かないが、内臓は普通に動くのだ。

 そう、内臓が動くってことは



 つまり……うんこが出る。(直球)


 今、まさに出ようとする糞にステイをかけ、全力で声をあげる。


「あうー、あーー、うあーー、あ、、、」


 (・Д・) (未来を悟った男)


 じんわりと、尻の部分があったかくなってくる。

 ベチャッとした不快な感触がケツに広がる。


 あぁ………。


 何も食べていなかったせいか、液体状のそ・れ・は、尻から「こんにちは」どころか、肛門という玄関を全力疾走で突き破り飛び出して行った。


 声を聞きつけた女性が、急いで来る足音が聞こえる。

 

 もう遅い。


 俺は、悪くないんだ!! だって、生理現象なんだからしょうがないだろ!!(逆ギレ)


 部屋の電気がパッとつく。


 女性も察したのか、「あちゃー」と言いつつ、文句も言わずにオムツを取り替えてくれた。


 ありがてぇ…………


 24時間体制の看護師なのかな? 女神か?

 オムツの取り替えが、プロ。


 しかし、おかしいな。

 オムツ替えの時に、俺のゴツい足じゃなく、赤ちゃんみたいな可愛い足が見えた気がする。


 気のせいだろうか? 確かに見たと思うんが……


 まぁ、そんなことより、お腹が空き過ぎて、腹が痛い!


 思えば、今日、ずっと寝てばっかで、何も食ってなかったしな。 


 俺のう◯こが入ったオムツを捨てた後、女性が帰ってきた。


 俺は、必死に飢えをアピールする。


 すると、それに気づいた女性は俺を抱き上げる。


 いや、抱いてほしい訳じゃなくて、飯をくれ!!


 お腹と背中が本当にくっつきそうだ。


 その女性が、自身の乳房を出し始める。


 いや、胸を出してほしいんじゃなくて!!!

 もう、赤ちゃんプレイはええねん!  


 怒りっていたせいか、関西弁が出てしまう。


 そのまま抗議の声を上げ続けていると、


 女性が出した胸を俺に近づけてくる。


 そして、


 ぐい、ぐい、と胸を押しつけてくる。


 重い腕を動かし、抵抗しようと手で胸を押し返す。


 ぐい、ぐい、と来る胸に、ぐい、ぐい、と押し返す。


 すると、おかしなことが起きる。


 いや、現在進行形で起きている。


 手が――ぷっくりとした赤ちゃんの手になっているのだ。


 なんか、な、なんか、赤ちゃんになってねぇえええええええええええええ!!


 驚愕によって、絶叫する俺。

 しかし、俺の体力は確実に減っていた。


 あ、YABAい、お腹空きすぎて、ふらふらしてきた。


 想像を絶するほどの空腹と、混乱のせいで頭がぐわんぐわんする。

 

 あ、やべぇ…お腹、空きすぎて死ぬぅ^^


 今までに感じたことのない飢餓(うえ)


 糖が少なくなり、頭が回らなくなってくる。


 思考に(おもり)が課されていくのが分かる。


 

 意識が朦朧としている中。


 俺は、なんとか生きるために、飢えを満たそうと、必死に、辺りを見回す。


 な、なにか、食べるものを……


 俺の目に、白い液体が出ている乳が飛び込んできた。


 ボヤけた視界の中、それだけはハッキリと見えた。


 良い大人が、そんなの飲むわけとかなんとか、なんて言葉は出てこなかった。


 意識が朦朧としていたせいもあるだろう。


 だが、理由はそれだけではない。


 俺の本能が、


 身体が、この乳を求めていた。(決して、いやらしい意味ではない) 


 俺は、母乳が垂れようとしているのを見て、本能のままに母乳に吸い付いていた。


 もちろん、理性が急ブレーキをかけえいたが、本能が理性をぶっ飛ばし、アクセル全開エンジン全開フルスロットルで母乳に吸い付いていた。


 俺は、母乳特攻変態・暴走列車と化していた。


 しかし、女性は嫌がることなく、微笑みながら、胸をより押しつけてくる。

 

 (理性)押し付けんのは、おかしない?


 (本能)……………………………。(チュー、チュー)

  

 側から見たら、酷い絵面だっただろう。

 いや、身体は赤ちゃんなのだから、まだマシなのかもしれない。


 

 ゲプッ。(理性が回復した音)


 しばらくして、糖が頭に回ってきたところで、理性が戻ってきた。

  

 生き返るぅ〜。ε-(´∀`; )


 死ぬかと、思ったわ。

 あ、一回死んでたわ。


 死の瀬戸際からの生還を果たした俺は、先ほど混乱を引き起こした原因を見る。


 ぷにぷにしたボディー。


 女性に抱き上げられるほどの小さなボディー。


 つまり、俺はベイビー。


 いや、何故?


 ??????


 再び、俺の脳内に大量のハテナマークが浮かぶ。


 糖を摂取したお陰で、思考がスムーズに行われる。


 しかし、混乱に襲われている俺には、あまり関係ない。


 ふぅー、落ち着け、すぅすぅはぁー、すぅすぅはぁー。


 ふぅー、よーし、だいぶ落ち着いてきた。


 混乱を収めるべく、自身に言い聞かせ、深呼吸をして、早くなった息を落ち着かせる。



 今は、なんで赤ちゃんに魔改造されたか、考えよう。 


 では、第一回「魔改造の原因を探せ!」を開催します!!(混乱中)


 自身では、混乱が治ったと思っているが、未だ混乱しているアラタは、クイズ大会を始めてしまった。




 まず、体を赤ちゃんに変えることは可能か?


 YES. 魔法を使えば可能だ。


 次に、赤ちゃんにする意味はあるのか?


 それも、ギリYESだ。


 赤ちゃんの身体では、考えることも、逃げることも出来ない。しかも、メンタルも徐々に削ることもできる。

 

 思考は、睡眠と脳の未発達で妨害し、逃亡も身体能力の不足で阻止でき、赤ちゃんプレイと糞漏らしでメンタルを削るか……。


 俺の精神(メンタル)はそれぐらいじゃあ、削れねぇよ。


 2日目で慣れたわ。(強靭メンタル)


 逆にう◯こ漏らすの気持ちいくらいだわ(変態メンタル)。


 混乱しているせいか、自身の新たな性癖を暴露してしまうアラタ。

 しかし、それにアラタは気づかない。




 最後に、赤ちゃんである必要はあるか?


 No. ノー、赤ちゃんである必要はない。


 わざわざ、赤ちゃんにせずとも手足の切断や魔臓の摘出で逃亡は、ほぼ不可能だ。

 俺の精神的衛生を守ろうとしての行動とも考えられるが、それだけの為に赤ちゃんにするのは謎だ。


 

 結論――


 なぜ赤ちゃんにされたのかは、わからない。


 わからないが、恐らくは身体蘇生の際にミスが起き、赤ちゃんまで戻ってしまったが、よく考えたら赤ちゃんの方が便利だから、そのままにしたって感じか? 

 

 どう考えても乳母とか、わざわざ用意してるんだがら不便だろ。


 マジで、理解できねぇな!! 

 誰だよ、赤ちゃんにしよっとか頭の悪いこと考えた奴!


 馬鹿なの!? バカだろ!!(確信) 

 

 ……いや、俺にとっては、まだ良い方なのか……?


 四肢切断などではなく、五体満足な体。

 成長を待つ必要はあるが、逃走かのな体だ。


 だが、力も思考力も、ほぼない。

 体は貧弱で、いとも簡単に抱き上げられてしまう。


 抵抗することは、できない。


 それに、このとてつもない眠気……。

 抗うことさえ、許されない……。


 フラグ回収のためか。


 唐突に、睡魔が襲ってくる。

 俺の抵抗も虚しく、女性に抱き上げられたまま、眠りについてしまう。


 お腹が、いっぱいになると赤ちゃんは、眠くなってしまうことをアラタは知らない。






◾️


 




 赤ちゃんになって3日目。


 起きてるうちに、さっさと計画を立てよう。


 まずは、目標の明確化だ。


 目標は「生きてココを出る」


 これだけを目標にして、計画を練る。


 次に、方向性だ。


 大まかな計画の方向性の選択肢は3つだ。

 

 ① 喋れるようになるまで待ち、喋れるようになったら交渉する。

 ② ハイハイ、もしくは歩けるようになってから、逃亡。

 ③ 完全に体ができあがるのを待つ。


 ③は、そこまで軍の奴らが待ってくれる可能性はゼロなのでなし。②は、捕まった時が怖いが、やってみる価値はありそうだ。ただ、まだ情報が少ないため、情報収集が必須。①は、交渉の余地は、まだあるだろうし1番可能性がある。


 以上のことから、①の交渉に、決定だ。


 最悪、①が失敗した時ように、②も同時進行でやろう。


 じゃあ、はじめに情報収集からのスタート。


 と、言っても、首すら座っていない俺(赤ん坊)は何もできないんだけど。


 と言うことで、首が座るまでは、思考タイムとして有効活用しよう。


 思考タイム、スタート!


お腹「ぎゅるるるるるるる」


 終了ぉおおあおおおおお!!


 スタートと同時に終了する思考タイム。

 しかし、これは仕方ないことなのだ。


 基本的に、赤ちゃんは母乳を2時間おきか3時間おきに飲まないといけない。

 赤ちゃん初日に、なぜ俺があんなに寝ていたかと言うと、単純に母乳不足だ。

 エネルギーが枯渇しそうになると、生物はエネルギー消費を抑えるために、睡眠を取る。

 赤ちゃんでも同じだ。

 

 

 そんなことを考えつつ、母乳を飲む。


 チュー、チュー、チューーーーーー、ジュルルルるるるるるるるるるふるるるふるるるるるるるるるるるるふるるるるる………………………………………………………………………………………………………。


 へ? 理性は、どこにいったのか、だってぇ?


 ((本能))ここにいるじゃないか。


 本能と合体(フュージョン)しました。


 こっちだって、飲みたくて飲んでるわけじゃないのよ。

 別の食べ物があるなら、そっちがいいし、なんだったら、そっちをくれ。いや、下さい。


 もちろん、そんなものは無いわけですよ。 


 それに、いち早く体を成長させるには飲むしかないのよ。

 

 へ? 飲むのに躊躇がなかった?


 黙れ(^ω^)


 まあ実際は、視界がぼやけている所為もある。

 

 そのお陰か、全くやましい気持ちにはならない。

 赤ちゃんに性欲なんぞ、あるはずがなかろうて!

 

 チュー、チュー。

 

 ゲプッ(睡魔が襲ってくる合図)


 すぴー、すぴー(襲われた後)


 こんな感じのを一日何回も繰り返す。

 偶に、起床と母乳がズレる時があるけど、その時と母乳を飲むときだけ、考えることができる。


 なので、ほぼ考えている時間がない。

 

 その上、忙しい。 飯、睡眠、飯、糞、睡眠、飯、睡眠、と大忙しだ。 しかし、俺以上に、乳母?看護師?の人は大変そうだ。 3時間おきくらいに起こされ、母乳やオムツをその都度やらなくてはならない。 ロボットに任せないのは何故なのだろうか。 趣味?


 乳母の人も、そのせいで大変そうだ。


 気の毒なので、とっとと*カプセルにでも入れてほしいものだ。

 

 ※カプセル 体外受精から幼少時の成長をサポートするために用いられるものであり、ガラス筒内を緑色の液体で満たし、液体内に胎児、もしくは2歳以下の子供が入ることができる。


 体が成長しない分には、情報収集も何もできない。

 視界もぼやけているし、乳母も幼児語でしか喋りかけてかない。大体は「よしよし」か「オムツでちゅか〜」「ご飯でちゅか〜」の3パターンで構成されている。



 そのため、今日の得られた情報は、母乳は案外美味い、だ。(真顔)


 昨日は死にかけていたので、味わっていなかったが、改めて味わってみると、存外美味いものだ。  




 こうやって俺の1日は終わっていく………(完!)

 



◾️




 そう思えたが、今日はこれだけじゃあ終わらないようだ。


 ぐーぐー、と寝ていると、頬をぐいぐいと押してくるアホがいた。


 無視していると、ほっぺを揉み揉みしてきた。


 何かと思って、重いまぶたを開く。


 ぼやーっとした視界に、知らぬ男の姿が映る。


 ビクッと、体が固まってしまった。


 (誰?)


 固まっていると、男はにんまりとした顔で俺の名前を呼ぶ。


「アラタ〜、パパでちゅよ〜」


 その声掛けは、俺をさらに固まってしまう。



「ばぶっ?(マジ?)」


「うん、うん、パパでちゅよ〜」(通じてない)



 

 何かピースが、カッチリとハマっていく。



 頭の中で点から点へ線が伸び、繋がっていくのが理解できた。 


 

 涙が出た理由。

 

 母乳に嫌悪感を抱かなかった意味。


 謎の安心感。


 レトロなテレビ音。


 見覚えのある天井。


 前世で、開発したタイムワープ魔法。


 そして……………。


 ……自分の体をみる。


 赤ちゃんの体。


 白くぷにぷにしたふくよかな体。


「……………」


 かつて、タイムワープしようとした男がいた。

 その男は、あと少しのところでタイムワープを成し遂げようとしていた……しかし、男の体は――






ーー自身の体は、赤ちゃんに戻っていた。


「ばぶ〜〜〜〜〜(逆行転生してるーー!!!!)」


 

 俺こと、九条新(くじょうあらた)の新たな物語の始まりを告げる鐘が鳴り始めた。




 


〜タイムワープじゃなくて、逆行転生で赤ちゃんになってた件〜


 

 コレは、魔法好きのアラタ(主人公)が魔法を現代に広めていく物語。


 新たな物語。


 魔法が広まった世界は、どうなるだろうか?



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