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第十一話 「使えない脳内コンピュータ」


 真っ白な空間。


 何もない。


 また、()()か……。


 俺は、いつ襲われても良いように、戦闘態勢に入る。


 ふぅー、と息を吐く。


 早くなる鼓動を落ち着かさる。


 スッ、と短く息を吸う瞬間。


 ――奴は、現れた。


 そう、黒くて小さい()()だ。


 見ただけで、本能が警告を出す。


 黒光りするあの生物……。


 その生物の名は――


 


 ――アリシア。


 ゴキブリに似た生命体だ。


 いや――生命体ですらない。


 

 奴は、金髪幼女の格好をし、軍服と軍帽を被った、心を持たぬ殺戮マシーンなのだ。



 現に、俺は今、殺させかけている。


 ガブァ、


 腕で、ガードしたはずなのに、俺は吹き飛ばされる。


 この空間に壁などないため、

 床に転がりながら止まるしかない。


 ゲホッ、ゲホッ、


 殴られた衝撃で、肺の空気が抜け、咳が出る。


 床に血がつく。


 咳をした時に出たみたいだ。


 吐血するが、俺は気にしない。


 なぜなら――()()からだ。


 


 ドゴォ!


 ほら、キタ。

  

 床に這いつくばる俺に、放たれる大振りの蹴り。


 俺は、それを両腕を犠牲にして、受け流す。

 そして、受け流しきれなかった衝撃で再び、飛ぶ。


 グハッ、ガッ、ウベシッ、


 何度も床を跳ねながら、俺はアリシアへの怒りを募らしていた。


 コイツ……ッ、人の頭で、サッカーでもやろうとしてのか………ッ!


 そんなことを考えつつ、次の行動を予測する。

 腕からの流血を無視して。


 腕は、俺が止まる頃には、治っていた。


 この空間では、()すら治る。


 何度、死んだ事か……。


 などと、しみじみしている暇はない。


 金髪幼女が、起き上がった俺に、大振りの右ストレートを喰らわせようと、繰り出す。


 その攻撃を読んでいた俺は、そのストレートを避け、


 小さな拳で、カウンターをぶちかます。


 クロスカウンターだ。


 ブベッ、と声を上げ、アリシアが後方に倒れ込む。


 すかさず、追撃。


 金髪幼女の頭に、蹴りを入れる。


 馬乗りになり、ニヤつく。


 内心で、ボッコボコにしてやるぜぇ、と唇を舌で舐めまわしていた。


「オラァ! 死ねぇええええええええええええええええええええええええええええええええ!!」  


 バキッ、ボコ、ドゴッ――

 

 数回殴ると、人を殴りたい、という欲求がスッと消えていく。


 しかし、俺は止まらない。


 欲が無くなっても、恨みや怒りが俺を動かす。

 

「コレは、さっきの蹴りの分だぁああああああああ!!」


 恨みと怒りをのせた燃え上がる拳を、アリシア向けて振りかざす。


 そして、


 燃える拳が、アリシアの顔面に叩き込まれようとする瞬間、


 ニヤリ、とアリシアが笑っていた気がする。


 直感が、ヤバい、と警告音を出すが、


 出てしまった拳は、もう戻せない。


「オラァァアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!」


 戻せないなら、押し込んでやる。 

 何を繰り出してくるかは、正直わかんらんが、

 最悪、相打ちでも構わない。


 そう思い、拳をギュッと握り、そのまま押し込む。



 ――しかし、甘かった。


 

 よくて、相打ちだった。


 俺の拳が、アリシアの顔面に届く寸前で、アリシアの手によって、それは塞がれる。


 パシッ、


 虚しい音を立て、俺の拳は片手で止められてしまった。


 咄嗟の判断だった。


 俺は、受け止められた反対の手で、頭をガードした。


 

 アリシアの腕が、消えたように見えた。 



 パンッ、


 


 

 次の瞬間、俺の意識は、


 パンッ、という音と共に、刈り取られた。



 ついでに言うと、アラタの頭も刈り取られた。

 

 

 


 爆ける飛んだ頭の残骸と、頭のない体。


 アリシアは、冷たい目で()()を見ながら、手についた血を払う。


 アラタの頭と体が、細かい粒子になっていく。


 アラタの全身が、粒子になり、その粒子は一つの場所に、集まっていった。



 その蒼い粒子は、集まるごとに光を強め、一人の人間を構成していく。


 粒子が、アラタの形にまとまると、蒼い光は消え、アラタが姿を現す。



 

 悔しさを顔に滲ませたアラタが姿を現し、倒れ込みながら言う。

 

「はぁ〜〜、今日も俺の負けかぁーー」


『でも、今日は中々よかった方だよ。 まあ最初に比べればの話だけどね』


 

 アラタもアリシアも、殺されたのを気にすることなく、自然と会話を始める。

 その光景は自然なのに、会話の内容や状況は不自然極まりないものだった。



「つーか、これで何度目だ? お前に殺されるの」


『今日だけで、100回だね』



 アラタが今日、アリシアに殺された回数である。

 今日だけで、というのが異常なのに二人は気づかない。



『記念にもっかい殺してあげようか?』


「いらん、いらん、こちとら頭吹き飛ばされてんだぞ」



 記念に殺すという意味不明なことをほざくアリシアに俺は、ふざけんな、と言い返す。



『でも、恐怖は一瞬だっただろ?』


「確かに、内臓とか、動脈をやられたときに比べて、怖くはなかったな」


 内臓とか、動脈系をやられると、即死とはいかず、段々と意識がなくなり、死という存在が、死神が近づいてくるのが分かる。

 今回は、頭を吹っ飛ばされたので、殴られると同時に意識もなくなった。

 死が一瞬で近づいてきたので、恐怖も何も感じなかった。

 死神に、首を気づかぬうちに、刈り取られるのと同じだ。


『そりゃ、脳幹を一発で仕留めてるんでね。

 腕が違うんですよ、腕が』


「良い仕事した、みたいに言うな。

 そして、人の頭を緩衝材みたいにぷちぷち潰すな」


『ちなみに、緩衝材のぷち〇ちって商品名らしいよ』


「え!? あれって、商品名なの!!?」


 自然と会話する二人。

 ツッコミ担当のアラタは、殺されることに慣れてしまったため、ツッコミ担当はいない。

 要するに、ツッコミは死んだ。



『エスカレーターとか、シャーペンとかも確か商品名だったね』


「マジかぁー、てか、なんで俺が知らない情報(きおく)持ってんの?」


『それは、企業秘密だよ』


「お前、最近なんか企んでない?

 前まではさ、俺の為にやってくれてたけど、最近のお前はなんて言うか……楽しいからやってる感が強いんだわ……」


『そんな訳ないじゃないか! やだなぁ、アラタくんは…………は、ははは……』


 俺は、アリシアの露骨に目を逸らす反応を見て、何か企んでんなぁ、このクソゴキ野郎! と怒っていた。


 前までは、俺をイラつかせるためにワザと煽ったりしてきたが、最近の様子を見るに、煽るのが好きで煽っているようにしか見えない。


 それも、俺の魂が混ざってしまったのが原因なのか?


 俺の魂に侵食されているアリシアの性格は、変わっていってしまい、今や元のアリシアの面影は、ほぼ無い。


 夢では、平気で殺してくるし、現実でも、煽ってくる。


 そのせいで、俺のイメージは、綾香さんや綾香さんの旦那さんに、頭はいいけど奇行が多い「変人」として扱われている。

 全てアリシアのせいなのに、だ。


 それに気づいて、ショックを受けている俺を見て、アリシアは、ケラケラと笑ってやがった。


 この時のアリシアは、確定で下衆の極みだった。


 

 それに、前までは、殺すまではやらなかったのに、最近は完全にヤリに来ている。


 毎度のごとく、床に這いつくばっている俺の頭を、何度も踵で踏みつけ、殺してきたときに、その俺の疑念が確信に変わった。


 さらに、ここ最近は酷い。

 俺に隠れて、何か企んでいるのだ。


 コイツは、主人をなんだと思っているんだ……。


『そうそう、アラタくん。

 前も話したけど……君の身体が成長するまで、メインの計画は進行させないで、良かったかな?』


「ああ、それでいい。

 ただ、メインにも繋がる()()計画だけは早めに完遂する方向でいく」


『了解。 でも君の脳がもうちょっと大きくならなきゃ魔導演算器(マジックデバイス)制作の記憶は引っ張り出せないからね』


「お前が、脳を大きくしてくれるんじゃないの?」


『してるさ、けど正直言って、ギリギリだ。

 計画を間に合わない可能性がある。

 だから、君が思考して少しでも演算領域を増やすことに注力してくれ』


「りょーかい。 

 脳をとりあえず、刺激すれば良いんだろ? ってことは、愛美ちゃんを眺めてるだけでも良いってことだよなっ?」


『そうだね、君が愛美ちゃんを眺めている時の神経細胞(ニューロン)の発達は異常だからね』


「それなら、間に合いそうか?」


『さっきも言ったけど、ギリギリだよ。

 だから、なるべく愛美ちゃんと一緒ないと間に合わないね。 あと、色んな所に行ってくれると助かるね』


「わかった。

 じゃっ、今後の方針もついたことだし、やりますか!」


 そう言って、アラタはアリシアとの戦いに戻るのであった。









 



 

 夢の中での死闘ルーティーンを終えたアラタ。


 そんなアラタは、愛美ちゃんの誕生日プレゼントのために、買いリサーチをしにショッピングモールに来ていた。


 

 今日は、名目上、母さんと綾香さんのお買い物のお手伝いとなっている。


 しかし、母さんも綾香さん、そして俺も、心の中では「愛美ちゃんの興味のある物を見つけてやる!」とお買い物は二の次三の次だった。


 愛美ちゃんを除き、俺たちの心は一つだった。


 一方、愛美ちゃんはというと、


 いつものように本を読んでいた。


 歩きながら、本を読むのはよろしくないので、回収。

 いや、没収。


 本ばっかり見られてたら、誕生日プレゼントのリサーチが出来ないからな。


 本を没収された愛美ちゃんは、少し拗ねている。


 

 むぅー、としている愛美ちゃん。


 

 愛美ちゃんは賢いので、感情をあまり外には出さないが、本のこととなると、その限りではない。



 ぐっ、心が痛む……。


 今すぐ、本を渡して、俺をブックスタンドに使ってほしい。


『ロリコン×ドMとか終焉(カタストロフィ)級だな』

 

 俺が心の中で願望をささやくと、アリシアから罵倒が飛んでくる。


 宙に浮くアリシアの腰に抱きつき、バックドロップをキメる。

 

 俺は、地面に埋まりピクピクしているアリシア(ゴキブリ)を放置し、母さんたちと共に食品コーナーに向かう。



 









 食品コーナーでの買い物は、最小限に抑え、早めに切り上げる。

 プレゼントを見て回るのに、大きな荷物は邪魔になるからな。


 愛美ちゃんに気づかれないようにプレゼントのリサーチをしたいので、先に買い物をして、お手伝いのご褒美として俺たちの好きな所に行くって感じだ。

 

 

 では、今日のミッションを遂行しよう。


 テレレン〜〜♪ テレレン〜〜♪ テレレン〜〜♪ デデッ、デッ、デッ、デデッ、デッ、デッ、デデッ、デッ、デッ、デデ……。


 ミッションイ〇ポッシブルの曲が聴こえるようだ。


『ん? 僕が流してるだけだけど?』


「お前さ、人が真剣に悩んでるのに何やってんの?」


 どうやら、アリシアが脳内で勝手にビデオ再生していただけだった。


「暇だからって、脳内映画見ようとすんな。

 ネタバレするぞ」


『…………………』


 交渉(脅迫)を成功させ、俺はまず、おもちゃ屋に向かう。


 おもちゃに、あまり興味がない愛美ちゃんだが、もしかしたらお気に入りのおもちゃが見たかもしれない、という淡い気持ちを持って来た。



 色々なおもちゃがある。


 

 俺も、愛美ちゃんが気に入りそうなおもちゃを探す。


 愛美ちゃんは、全く興味がないのか、没収された本を渡してもらい、立ちながら読んでいた。


 俺は、愛美ちゃんに「一緒に、おもちゃ見てみよ?」と言う。


 愛美ちゃんは、本を閉じ、コクリと頷く。


 母さんと綾香さんがふぅー、と胸を撫で下ろす。


 なぜか、愛美ちゃんは俺の提案は大抵OKを出してくれる。

 幼馴染の力ってヤツかもしれない。


 

「面白そうなのあったかな、愛美ちゃん」

「無さそう、アラタは?」


「無いかぁーー………俺も無いかなぁーー」

「ん、じゃあ出よ」


 俺と愛美ちゃんは、短く会話する。

 これが、俺たちの普段の会話だ。

 手短に、そして端的に、それをモットーにしている。



 会話を終えた俺は、母さんたちの方に向かう。


 それに気づいた母さんと綾香さんは、期待した目で俺を見てくる。


 俺は、母さんと綾香さんに、ダメだった、とアイコンタクトで伝える。


 そっかぁー、といった感じで露骨にガッカリする二人。


 まあ、あと候補は三つはあるし、本命もまだだから大丈夫だよ………。


 そう母さんと綾香さんにアイコンタクトを取る。


 そうね、と母さんは気持ちを立て直し、綾香さんは、すみません、と申し訳なさそうだ。


 そんな、綾香さんが謝ることありませんよ、と俺がアイコンタクト。


 そうよ、綾香さんが謝るようなことじゃないわよ、と母さんがアイコンタクト。


 ありがとうございます、と綾香さんがアイコンタクト。

  



 アラタたちのアイコンタクトに、愛美ちゃんは若干の疎外感を感じていた。


 それに、アラタは気づかない。


 愛美ちゃんは、どうやってアラタの気を引こうか考える。


 そして、アラタの手を繋いで気を引くことを思いついた。


 


 愛美ちゃんが、手を握ってきた。


 顔に、仲間ハズレはいや、と書いてあった。


 愛美ちゃんにバレないようにアイコンタクトで、喋っていたのが良くなかったみたいだ。


 俺は、それを母さんと綾香さんに伝えるべく、再びアイコンタクトをする。




 またアラタがアイコンタクトをしているのを感じた愛美ちゃん。

 そして、アラタの気が引ききれていないことに気づく。

 

 怒りというより、悲しさの方が大きく、しょんぼりとしてしまう。


 


 俺が、またアイコンタクトしたせいで、愛美ちゃんがしょんぼりしている。


 ど、どうしよう………。


 いつもは、あまり感情を表に出さない愛美ちゃんが、こんなに感情を表に出すってことは、だいぶ悲しんでいるって事だ。


 ま、まじゅい………なんとかして、愛美ちゃんを元気ずけないと……。

 

「ま、愛美ちゃん? い、一緒に書店にでも行こうか?」


 俺は、今日の本命中の本命を、デッキから繰り出してしまう。


「「!?」」 


 母さんも綾香さんも、俺の提案に驚きを隠さず、無言で驚いていた。



「いい、行かない………」


 愛美ちゃん特化型最強兵器は、全く効果がなかった。


 や、ヤバい(大汗) 愛美ちゃんが、泣きそうだよぉ、俺も泣くぅう………。


 母さんと綾香さんに、救いを求める。


 ニヤニヤしながら、祈るように自分の指と指を絡める母さんがいた。


 綾香さんは、それを想像したせいか、鼻血を垂らしている。


 あ、救いを求める相手を間違えた。


 そう思ったが、それでもやるしかない。


 それで愛美ちゃんが泣かなくて済むなら、俺は変態(かあさん)の餌食になろうとも、かまわない。



 母さんの指示通りに、

 するべく俺は、愛美ちゃんと握っている手を見る。


 華奢で透き通るような白い手。


 2歳にも満たない小さな手だ。


 その手が、俺の手を優しく握っていた。

 

 いつもなら、ぎゅっと強く握ってくるのだが、今日はしょんぼりしているせいで、握ってくる力が弱かった。


 握力が急に落ちたとは考えられないので、そうなのだろう。


 俺は、その手を少し離し、


 指を絡めていく。


 恋人繋ぎ。


 子供同士がやると、とても可愛らしい。


 俺は、ドキドキしながら愛美ちゃんの反応をうかがう。


 ちらっ、


 愛美ちゃんとは寝るときに手を繋ぐからなぁ……。


 保険をかけるアラタ(ソンポマン)


 しかし、そんなアラタの保険も杞憂に終わる。



 愛美ちゃんが、こちらをじっと見ていた。

 

 落ち込んでは、いないようだ。

 よ、よかったぁー、でも愛美ちゃんの感情がわからん。

 こんなの赤ちゃんの時ぶり、だ。

 

 少しは、愛美ちゃんの表情を読めようになった、と思っていたアラタだったが、今は全く読めない。



「……」

「……」


 沈黙。


 俺は愛美ちゃんの丸い瞳を見つめ続ける。


 ショッピングモールのライトのせいか、それとも栞の元々の瞳の色か。

 うっすらと茶色の円はキラキラと輝いているように見えた。

 その中心には小さな黒点がある。

 それがまっすぐとこちらを見つめており、動く気配がない。

 まるで彫刻のように、美しいものをそのまま固めてしまったかのようだった。



 指と指の間で、愛美ちゃんの指がにぎにぎ、と動くのがわかる。



 ――ハッ、


 これは、愛美ちゃんが何かを伝えてたいときのっ!


 赤ちゃんの時から、愛美ちゃんはミルクやトイレのタイミングで俺の手をにぎにぎして、その意思を伝えてきた。


 つまり、


 今も、何かを伝えようとしている!



 俺は、愛美ちゃんの意思を、汲み取るんだぁあああ!!



 カッ、


 目を見開き、視覚的情報を一つ残らず、読み解く。


 

 ……………。



 あ、髪サラサラ。


 

 ……………。



 あ、目クリクリ。



 ……………。



 あ、肌スベスベ――じゃねぇーだろぉ!!



 くそっ、俺にはわかんねぇ、今言えるのは、愛美ちゃんの手の感想ぐらいだ。


 

 俺は、母さんたちに救いを求める。

 


 母さんは、にゅふふふふふふふふふふふ、と興奮を抑えきれずに口から、きしょい声が漏れている。


 鼻血を止めるためにティッシュの鼻栓をしていた綾香さんだったが、鼻栓は鼻血の勢いに負け、鼻からポンッとワインの栓を抜いたときのような音と共に、飛び出る。


 そして、ブフッーーーーーーーッ!!


 綾香さんの鼻から血が噴き出る。



「……………(バカを視る眼)」



 コイツらは、もうダメだ。

   

 変態を頼ろうとした、俺が馬鹿だった。


 もう無視しよう。


 何か、愛美ちゃんの言っていることを教え――


『いや、アイコンタクトだろ。

 この感じは、ご飯食べたいだろうね』


 へ……? ま、まさか……あなたは……あ、アリシア先生……?


 アリシアの背後から後光が差して――彼女は、力強く頷いた。


 俺は、まさかの救いの手に思わず、縋りつこうとしてしまう。

 

 今だけは、アリシアが輝いて見える。

 アリシア先生と呼ばせて頂こう。


「アリシア先生、それは信じても大丈夫なんでしょうか?」


『もちろんだとも、僕を信じろ。

 愛美ちゃんは、そう思っている。

 君の中にある膨大な情報(サンプル)から僕なりに抽出と、解析をした結果だ。

 さあ、早くしろ、愛美ちゃんが待ってる』


 アリシアが、サムズアップしながら俺にウィンクしてくる。

 そして、姿を消した。


 あ、アリシア先生ぇ〜〜〜。


 お、おれ、行きます! アリシア先生を信じて!



 俺は、恋人繋ぎしている愛美ちゃんの方を向き、

 自信満々に言う。


「愛美ちゃん! ご飯だね!!」


「んん、違う」


 脳内で、アリシアが、グッと親指を立て、ウィンクしている姿が薄っすらと思い起こされる。

 

 俺は、思わず咆哮を上げる。


 つ、使えねぇええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!


 

 俺は心の中で、全力で叫ぶ。



 脳内で、木霊する俺の咆哮に対して、アリシアがグッ、と親指を立てウィンクしている姿が消えずに見える。


 

 

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