これからのこと
ルナもジャックから聞いた話でしかないそうなのだが、どうやら『世界樹』というのは、この世界が誕生する以前から存在している、いわば神のような存在なのだそうだ。
「神様っていうのかな。私もジャックさんから聞いた話でしか分からないんだけど、この世界にはそういう…人々の信仰の対象となる存在が他にもあって…竜とか、巨人とか…」
「竜って、ドラゴン?!それに巨人って…RPGかよ…」
「そうだよね。あ、あーる…ぴー…?」
なんともまあ頭の痛くなる話だ。
そもそも自分達は、不自然なまでにこの世界のことを知らなすぎる。
この世界で生まれ育ってきたはずなのに…。
(あれ?この世界で…?)
「とりあえず、ジャックさんが戻ってきたら、また色々聞いてみませんか?」
「そうだね。まあ、ジャックは難しい話をするのはあまり好きじゃないみたいだけど」
そんなことを話しながら、 自分達は食料を調達してくると言い残していったジャックの帰りを待つことにした。
・・・・・・・・・
日が暮れ始め、あたりが薄暗くなってきた頃、ジャックが帰ってきた。
両脇に彼が仕留めたのであろう獲物を抱えて。
「ま!スキルについてはまだわかってないことも多いからなあ!詳しいことは俺もよくわからん!ンガハハハ!」
間違いなく火が通りきっていない生焼け肉を頬張りながら、ジャックは豪快に笑う。
(よく分からんって…そんなもんなのか…?)
「そんなことより、おまえさん達はこれからどうすんだ?」
「どうって言われても…」
目が覚めたら檻の中に、しかもそこは沈みかけの船の中で、外には巨大な海の怪物。
海に放り投げ出され死を覚悟するも、気付けば今度は大自然が美しい無人島に打ち上げられていたのだ。
ふと、隣にいるルナを見る。
「?どうしたんですか?」
不幸中の幸いとも言えるのは、こうしてルナが同じ生存者としてそばにいることだ。
もしこれが自分一人だったら…。
まあ、そもそもルナがいなければ自分は助かっていなかったわけなのだが。
「本当、どうしようか…」
途方に暮れる自分を不憫に思ったのか、ジャックは頬張っていた肉を置くと、ゆっくりと話しはじめた。
「まあなんだ。よく分からねえが…どうだ?しばらく俺と一緒に行動するか?」
「「え?」」
思わず自分とルナの声が重なる。
「あれだ、俺はルナにでっかい借りがあるからな。命を助けてもらったっつう」
「そ、そんな、私は別に…」
「別に嫌ってんなら無理するこたあねえぞ?とってきた肉も置いてってやる。こんだけありゃあ2~3日は…」
「あ、いや、別に嫌っていうわけじゃ…ただ…」
そう、素直に申し訳ないという気持ちでいっぱいだったのだ。
自分達はこの島で生き抜く術など持ち合わせていない。
ジャックにとってみれば自分達は、ただのお荷物にすぎないのだ。
「その、なんていうか…」
ルナと目が合う。
おそらく、ルナも俺と同じ考えなのだろう。
「申し訳ないというか…だって俺達…ジャックに返せるものなんて何も…」
「けっ!」
勘弁しろよと言わんばかりの表情のジャック。
「なーに考えてんだおみゃあ。子供がそんなこと気にしてどうする」
「いや、だって…」
「あーわかったわかった!じゃあ俺が決めるぞ?この島にいる間はお前達は俺と一緒に行動する!いいな?」
「あ、あの…」
「いいなっ?!」
「…わかったよ。ジャックがいいなら…」
「ガハハ!それでいいんだ!子供は大人の言うことを聞くもんだ!」
願ってもないことだ。
ルナの話によれば、水も食料も、全てジャックが調達してきてくれたのだそうだ。
この世界のことについて何も知らない自分達にとって、ジャックのような仲間がいてくれることはとても心強い。
「んにゃあ!よし、決まりだな!よろしくなお前ら!ンガハハ!」
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次話もお楽しみに!




