スキル
「あの男の人を倒したのは、ユウくんのその…植生魔法でしたよね?」
「んあ?!植生魔法で?お前が倒したのか?」
ジャックは信じられないといった表情で目を丸くしている。
「いや、倒した…って言っていいのかな。あれに関しては、本当にまぐれみたいなものだったし…」
「ほーん。そうかあ。お前がなあ」
一瞬、ジャックの眼光が鋭く光ったような気がした。
「植生魔法っつうのは…まあ俺もこの目で見たことはまだないんだが…草生やしたり、花咲かせたり、要は戦闘に向いてるスキルじゃあねえはずなんだが…」
ジャックはまじまじと自分達2人を見つめる。
「えーっと…」
「んにゃあ、いっぺん使って見せてくれよ」
「え?」
「いいだろ?別に減るもんじゃあねえし」
「あ、いや、その…」
「なんだ、どうした」
「えっと…スキルって、どうやって使ったら…?」
・・・・・・・・・
「ぉおおっ!これが俺のスキル…植生魔法!…って、まじか…」
ジャックに食料を分けてもらい、腹ごしらえを済ませた自分達は、スキル発動の練習をしていた。
ルナに教えてもらいながら、スキルの発動に成功したはいいものの、これは…。
(これが自分のスキル…)
植生魔法。
それはその名の通り、植物を操る魔法…といえばなんとなく聞こえはいいが、触れた先に多少の植物が繁茂する程度で、使用場面も効果もかなり限定的な、一言でいえば、シンプルにしょぼいスキルだった。
「も、もしかしたら発動の仕方が良くないのかも…!ごめんなさい!私の教え方が下手だから…」
「え?!あ、いやそんな!ルナのせいじゃないよ!俺のスキルがしょぼいのは…」
自分でそう言いながら悲しくなってくる。
スキルの発動には独特な感覚が必要だった。
うまく言葉で表すのは難しいが、体の中に巡るマナと呼ばれるエネルギーの素を全身に巡らせ、体内で温めたマナを放出することで、スキルが発動する。
「で、でも、すごいよ。私なんか、まだ思い通りに出せたり出せなかったり…」
ルナの場合、スキルを発動するのに相当な集中力を必要とするらしい。
「私もまだ感覚がうまく掴めてなくて…」
自分の場合、スキルの中身はともかく、発動に関して言えば、そこまで苦労することなく発動できている。
スキル発動の際にじんわりと心臓が温かくなる感覚。
(この感覚はあの時の…)
そんなことを考えながら、自分は船内で死にかけた半裸の男との戦闘を思い返していた。
「でも!スキルは保有者と一緒に成長するって…ジャックさんも言ってたし!だから…」
ルナの優しさが痛い。
自分のスキル、植生魔法の場合、成長したところで可愛らしいお花が咲いてくれる程度だろう。
…まあ、女子ウケは良さそうではあるが…。
(どうせなら、ジャックみたいにもっと実用的な…)
あれだけ植生魔法を見たいと話していたジャックは、一目それを見るなり、興味を失くしたのか食料を調達してくると森の中へ消えていってしまった。
(それかルナみたいな…)
そんなことを思いながら、ルナの水精魔法を眺める。
ジャック曰く、水精魔法はその汎用性の高さから、どこに行ってもかなり重宝されるスキルらしい。
なんとも世知辛い話だ。
「そうだ、そういえばもう一つ気になってた話があって…」
そういうと、俺はジャックの話に出てきた『世界樹』についてルナに尋ねた。
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