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6話 ある少女の災難

──────────



─────


私は、周囲の視線を知っている。


「よぉ、1Bのアメミヤちゃん。めんどいからさっさと言うけど、俺とお茶しね?『学校一』って言ってたから来てみれば、ガチで可愛くてビビったわ。」


「・・・はぁ。そういうの、『間に合ってるんで』。」


自分の外見には、あまり執着していない。男受けばかり良い声質も、性を刺激する赤っぽい髪だって、魅力ってことなら両親から貰った幸せの一部だと思うし、そう感じる自分が嫌になることもない。

しかしながら、そのせいで自分に集まってくる視線にろくな思い出がないのは、その通りだ。最近もそう、くだらない申し出を断って断って、睨み目と冷ややかな断り文句には慣れ切ってしまった。


「はぁ・・・。って、最近ため息ばっかりだな、私。」


私は、正直言って恋愛に疎い。

『可愛い女の子』というのがいると、軟派は群がり硬派は眺め、大半の男性は態度を変える。私はその『可愛い女の子』に抜擢されたわけだが、見えるのは異性の生物学的興味と同性の嫉妬、恋なんか誰にしていいものかも分からない。痴漢、陰口、嫌がらせ。人のちょっと陰気な部分ばかりを引き出して、罪な女もいいところである。が、いくらそう言えど、自分の引き出しに悪意をしまっているのは彼らであるはずだ。つまり、『罪な女など冗談じゃない』という事である。


「あーやめやめ、クラシックでも聴こ。」


嫌な目に遭うのは自分のせいか、それとも周りのせいか。そんなしがらみに囚われたくないから、父から誕生日に買ってもらったパーカーをてきとうに着て、母サンタが通販越しに贈ってきたイヤホンを耳から下げる。こうすると、変なちょっかいは少しだけ減るのだ。今は二人とも死んじゃったけど、私の登下校はまだ両親に支えられている。


「今日の夜ご飯、なににしよ。」


そんな独り言を溢しながら、パッヘルベルのカノンなんか流していた、そんな日だった。



「───あたしらさ、ずっとアンタが嫌いだったんだよね。」



昼休みの体育館裏。手紙で呼ばれてきてみれば、待っていたのは最近嫌がらせにはまっている連中だった。彼女らが敵意を向けている相手は、敢えて言うと私だ。


「はぁ。私嫌われたくないから、どこが嫌いなのか教えて欲しいんだけど。」


私の所属する1Bクラスの人気者、『顔が良くて性格もいい道明寺君』に告白し、振られた者同士で徒党を組んだのが彼女らである。そしてその道明寺は、『好きな人がいる』と相手を振りながら、やたらめたらと私の元へやってくるのである。ともなれば、不運な女子生徒らの悲しみは、私への嫉妬心で塗り替えられてしまって当然なのだ。


だから私は、陰口くらいなら甘んじて受け入れるつもりだった。悪い気持ちが湧くのは、ある程度しょうがないことだと思ったから。


けど、道明寺は私のためだと言って、そいつらを糾弾した。結果そいつらは逆上して、私に結構な嫌がらせをするようになった。机に落書きされてたり、ロッカーの持ち手がベタベタしてたりとか、およそ高校生の自制心はなかった。


「アンタさ、なんで呼び出されたか分かってんの?」


私が悪いかのような言い草には訳が分からないが、訳なら分かる。道明寺に責められてから、私が憎くてたまらくなったからだ。私だって誰かを羨ましいと思うから、この女子生徒たちを悪者にしようとは思わない。私のためを思ってくれてたみたいだから、道明寺のせいだとも言いたくない。



だから、しょうがない。私が受け止めれば、大丈夫。



「陰口言われたって何ともないけど、気にくわないところがあるなら言ってよ。道明寺と一緒にいて欲しくないってんなら、そうするし。」


そう、思ったはいいけど。


「そういうとこが、・・・嫌いだっつってんのよ!!───」

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