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庭園は人気がなく、静かだった…。
「もう充分かしら。
全く…あなたのその顔を見る度に虫唾がはしるわ。
そろそろ夜会を楽しみたいから、あなたは用なしよ。アン、連れて帰って。」
やっと苦痛の時が終わる…
「待って。」
義姉が私に近づいてくる…
こわい…
ーバンッー
頬に衝撃がはしる…
『うっ…』
私は痛みを必死にこらえた…。
「あーもう!ほんとにむかつくわ!」
もう一度頬を叩かれる痛みに備えて、歯を食いしばる…
『うっ…』
苦痛で顔が歪む…
痛い…
私はずっとこうして耐えてきた…
ただ過ぎ去るのを待つだけ…何もせずに…
このままこの先もずっと…………
……?
どうして…?
このまま耐えるしかないの?
自分の境遇に嘆いてばかりで、何も行動を起こさなかった…本当にそれが正しいこと…?
最後に逃げようとした時は…ジャックを巻き込んでしまった…誰かを巻き込むのはしたくない…
でも…今なら…?
今なら…誰も巻き込むことはないのでないだろうか…ここには義姉の味方しかいない…
招待状も持たない私は、義姉がいなければここへ入ることは難しいけど…
ここから出ることはできるのではないだろうか…
試してみる……?
子供の頃住んでた場所は分からないけど…そもそも引き払われてしまって、もうないかもしないけど…それでも…ここに、このままいるよりは…ましなのではないだろうか…
一度芽生えた疑問は…後から後から湧いてきて…怯える私の心を奮い立たせる…
逃げよう… 死ぬ気で…
そう心に決めて…私は
ードンッー
義姉に思いっきり体当たりする…。
ードサッー
「キャ…」
義姉は軽い悲鳴を上げながら転倒した…
一緒に倒れてしまったけど、すぐに立ち上がり、走った…とにかく出口へ…
「お嬢様…大丈夫ですか」
後ろでは義姉を介抱する声が聞こえる…
「ちょっと、何してるの!
あれを捕まえなさい!」
今のうちに…
とにかく…出口へ…
私は必死に走った…