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馬車の窓に映った自分の姿を見る

そこには傷んだ髪を結い上げた痩せ細った娘が映っていた

自分の目を見ると母の面影があり思わず泣きそうになる

貧しくても母の優しさに包まれていた日々

かけがえのない思い出


ふわっと清潔な香りが漂う

この邸に来てからは水で濡らしたタオルで拭くくらいだったので、入浴したのはじつひ6年ぶりだった。

綺麗に体を洗われたことはとても嬉しい


せっかくあのお邸の外に出られたのに、 

馬車の外には見張りがいる。

逃げられそうにない…。


いったい義姉は私をどうしたいんだろう


もしかしたら逃げ出すチャンスがあるかもしれない。でも捕まった時の恐怖が体に染みついていてどうしても震えてしまう。

それでも、このままここにいるのはいや


思い悩んでいたら、アンさんが迎えに来た



義姉の元へと連れて行かれた。

義姉は胸元を強調した派手なドレスだった。魅惑的な笑みを浮かべ、なぜか私を隣に歩かせる。

周囲の男性は義姉に見惚れているようだった



「痛っ」


突然、義姉はよろけて、近くの男性に寄りかかる。



まただ。さっきから何度も同じようなことをしている。


男性に寄りかかりながら、決まって同じ話しを周囲に聞こえるように話している



「ごめんなさい。ちょっと足を引っ掛けられまして。

実は…私は嫌がらせをされてますの。

以前雇っていたメイドの娘なのですが、母親が亡くなり身寄りがない所を父が引き取りましたの。

父の優しさにつけ込んで…うぅ…

自分を養女にするよう強要したり、こうして今の私のことを…いつも、うぅ……」



涙なんて出ていないのに、泣くふりをする義姉。

それを聞いた周囲の男性達は皆、義姉を慰め優しい言葉をかける。

そして私に嫌悪の眼差しを向ける


その様子を見て義姉は声を出さずに

(いい気味) だと私に向かって口元を動かす



たまらずその場を離れようとしても、側に控えている方がいて、義姉の側に連れ戻される。同じことをして飽きないのか



暴れたら逃げ出せないだろうか

そんなことをしたら、気が狂っていると義姉の思うつぼになるだろうか

ひたすらおとなしくずっと黙って耐えていた。


こんな自分が情けない。

思わず涙がこぼれそうになる…


義姉が近づいてきて耳元で囁く


「泣くことは許さないから。

あなたが泣いたらだいなしじゃない!

せっかくあなたが悪女だと知らしめる時なのに。ちょっと外に行くわよ!着いてきなさい」


私はずるすると引きづられるように庭園へと連れて行かれた







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