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傷だらけの令嬢〜逃げ出したら優しい人に助けられ、騎士様に守られてます〜  作者: 涙乃


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「せんぱーい、グレッグせんぱーい」


「キース、何度も言っているが無駄に語尾を伸ばすのをやめろ。もう少しきちんとした話し方ができるだろう?

騎士として恥ずかしくない言動をだな…」


治安隊本舎内の廊下にて、グレッグは後輩のキースに呼び止められていた。


キースはいつも間の抜けた物言いをするが、その話し方とはうらはらに剣の腕はかなりのものだ。


有事の際には、自分の背後を任せてもいいと思うほどには信用している。多少、お調子者ではあるが。


「えー、ちょっと難しいっす。

それに、俺にそんなこと言ってもいいんですかー?」



「どういう意味だ?」



「この間のこと言いふらしますよー。

先輩が女性と抱き合ってたって。

いいのかなー?

俺らに仕事押しつけて、自分は女性とい

ちゃついちゃってー。

あの後二人きりで何してたんすか?」


へらへらと笑いながらキースはグレッグへと話しかける。


グレッグは立ち止まると、キースを射殺すように睨みつける



「お前……見たのか?」



「なんすか?先輩、ちょっと怖いんですけ

ど」



「彼女の顔を見たのか?

視界に入れるなと言ったはずだが? 

しばくぞ」



「ちょ、ちょ、こわっ!静かに怒るのまじ

でやめてもらえませんか。こわいんすけ

ど…

パワハラされたと隊長に言いつけますよ」



「勝手にしろ」


グレッグは執務室へと向かい再び歩を進める。



「あ、ちょっ先輩待ってください」



「何だ、まだ何か用か」


「また、手紙が届いていたんすけど…

どうします?」


「貸せ」


グレッグはキースの手から手紙を奪い取ると、目の前でビリビリと破きはじめる


「あー!先輩、だめっすよ!

どうして破くんですかー」



「キース、片付けておけ」


「はぁー?ちょっとせんぱーい」


キースは、文句を言いながら床に散らばった手紙の残骸を必死にかき集めた。


「隊長に、言いつけますからね!」



✳︎✳︎✳︎

その日グレッグは、隊長室に呼び出されていた。


治安隊は平民と貴族と混在しているが、上の役職に就くのは貴族が主であった。


実力主義の騎士とはいえ、平民の下で働くことに抵抗がある者も少なくない。


無意味な軋轢をうまないための措置でもあった。


隊長はグレッグの扱い困惑していた。


何年か前に治安隊に移動してきた青年。


以前は王城の騎士だったと聞いている。


華々しい王城勤めの騎士から、治安隊に異動ということは、何かしら不祥事があっての左遷だと勘繰る。



だが、今も王城のかなり上の役職の者に太いパイプを持っているようだ。


先日のノーマン伯の件といい、治安隊の一騎士が申し立てただけにしては、王命が下るのが早すぎる。私でさえ王城の騎士へアポを取るのが難しいのに…そういえば事後報告だったなと、今さら思い至る。


家柄といい、仕事ぶりといい、本来なら役職が与えられるべきだ。


異動の際、本人の希望に沿うようにとあったので、名目上は平の騎士だ。


本人が目立ちたくないからという理由で平を希望している。


あの容姿なので目立たないのは難しいだろうが。


何を考えているかよく分からない青年なので、隊長は気が重かった




「グレッグ、元ノーマン邸にこの手紙を含めて、複数の手紙が届いていたはずだが……お前、きちんと宛名の人物に届けているのか?」


執務机の上に置かれている郵便物を指差しながら、隊長はグレッグに問いかける。


「……」


「どうして無言なんだ?

お前、まさか届けていないんじゃないだろうな?

もしそうなら別の者に届けさせるが━━」


グレッグは机の上に置かれている手紙を素早く取り去った


「あ、おいこら、お前は勝手に…

返せ。何してる?」


「お断りします。他の者がソフィアへ届けることも許可できません」



「は?なんでお前の許可がいるんだ?

宛名は確かにソフィア嬢となっているが、知り合いなのか?」


「……婚約者です」


「は?誰の?」


「私です」


「は?は?お前の……?

お、お前の婚約者?

聞いていないが」


「言っていませんから」


「お前、そういう大事なことは上司の私に一言伝えるべきだろう…

婚約者がいたのか。あぁ、まぁお前の実家は侯爵家だったな、婚約者ぐらいいて当然か」



「家は関係ありません。私が彼女に想いを受け入れてもらったのです。」


「なっ!堅物のお前が?お、お前が…」



「隊長、先程から何をそんなに驚いているのですか?

語彙力が崩壊していますよ。

私だって男ですから、大切に想う人くらいいますよ」


「お、お前本当にグレッグか?

近寄る女性達を虫ケラのように扱っていたではないか。おかげで女性の扱いが雑だと苦情が殺到していたが…

 

グレッグ、お前、まさか本当に手紙を捨てていないだろうな?」


「隊長に密告したのは、キースですか」


「おい、キースを責めるな。いいか、勝手に手紙を処分したことが世間にしれたら、この治安隊の信用に関わる。分かっているのか?」


「知られなければいいことです」


「お前なぁ…そういう問題ではないだろう。真面目なお前がどうした?手紙の送り主に心当たりでもあるのか?差出人の記載はないが……まさか開封して読んだりはしてないよな?」



「あぁ、思いつきませんでした。その手がありましたね。」


グレッグは先程奪い取った手紙を開封しようと手をかける。

隊長は椅子から立ち上がると、グレッグから手紙を奪い返そうと詰め寄る


けれどグレッグは颯爽と身を交わし手紙を死守する。


「おい、何してる!開けるな!貸せ」



「二度とソフィアに近づかないようにしなければ。」


「お前、何言ってる?」


「こういったシンプルな封筒は女性は好んで使いません。化粧品や香水などの匂いもしません。送り主は男性と思われます。

おおかたソフィアに一目惚れしたストーカー男に違いありません!」



「グレッグ、いったん頭を冷やせ。ストーカーかそうでないかも含めて、その手紙をソフィア嬢に届けてこい!今すぐだ!

直接彼女に確認してもらって、お前の言う通りストーカーからの手紙だったら、送り主も含めて好きに処分してこい!」


隊長は手紙を取り上げるのを諦めると、グレッグを扉から強引に押し出した。



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