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傷だらけの令嬢〜逃げ出したら優しい人に助けられ、騎士様に守られてます〜  作者: 涙乃


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✴︎ ✴︎ ✴︎





数ヶ月後──。






私はいつものように、三日月亭の受付に立ち、お客様へ笑顔で声をかける。






ここへ来たばかりの頃は、オドオドしていて、なるべく誰とも目を合わせないように、下を向いて接客していた。





そんな私に、ルイーザさんは優しく、時には厳しく接客の仕方を指導してくれた。







「慣れるまでは失敗はつきものさ、焦って覚えようと無理しなくていい。





ソフィア、あんたに受付は任せる。この宿屋の顔だよ。





お客さんが入ってきて、最初に目にするのはソフィアさ。





だから、とにかくどーんと構えて、笑顔だよ、笑顔。笑顔があんたを助けてくれるから。はは、なーに、ソフィアみたいに可愛い娘に話しかけられて、嫌がる人なんか誰もいないよ。だから、きちんとお客様の目をみて、笑顔でお迎えをよろしくね」










あまり、人目につきたくなかった。けれど、ここで働くからには、そんなこと言っていられない。









それに、三日月亭に訪れるお客様達は、皆、感じが良かった。







「いらっしゃいませ、お泊まりは何日ですか?」






「3日だ。食事も頼む」






「承知しました。ごゆっくりどうぞ」








「ソフィアちゃん、今日もかわいいね~」







「いつもお上手ですね、ありがとうございます!」







主な仕事内容はお客様のご案内や部屋の掃除、洗濯、簡単な料理などだった。









どれも小さい頃から体に染み付いていることばかりなので、そつなくこなせている。









顔馴染みのお客様も増えた。








最初の頃は、義姉に見つかって連れ戻されるのではないかと怖くて、毎日落ち着かなかった。






けれど、日が経つに連れて、段々と恐怖や警戒心も薄れてきていた。






夜中にうなされて、飛び起きることはしょっちゅうあるけど……。





その度に、ここは三日月亭なんだと確認してほっとする。






食事、住む場所、それにお給金まで支給してもらえている。ダンさん、ルイーザさんには感謝してもしきれない。







それに衣服に困ることもない。






亡くなった娘さんのお洋服を、お言葉に甘えて使わせてもらっている。痩せ気味なので、どれもちょっとサイズが大きいけれど、着替えの服があることが本当に嬉しい。








それでも 時々、細々とした小物が必要になる。そう言う時は、目的のお店にのみ買い物に行っている。この宿屋から外出することは、極力控えている。









許されるなら、このままずっと、ここで働けるといいな。







「ルイーザさん、休憩入らせていただきます。ちょっと買い物に行ってきますね』








「ソフィア、知らない人に声かけられてもついていくんじゃないよ」









「はい、いってきます」










目的のものを購入した後、いつもなら寄り道をしない。けれど、今日は天気も良く、気分も晴れやかで、なんだかこのまま帰るのがもったいない気がした。








少し街を出歩いてみよう。









ルイーザさん達は、私を本当の娘のように大切に扱ってくれる。








日頃の感謝の気持ちを込めて、何かお礼ができないかな。







こうしてぶらぶらと街中を歩くことができるようになるなんて、本当に夢を見ているようだ。








そうだ、 ルイーザさん達にケーキを買って帰ろう。






甘いものが好きだと言っていたから、喜んでくれるかも。





どこのお店がよいかな、と悩みながら歩いている時だった。








「ソフィア……?」







「⁉︎」







自分を呼びかける声が聞こえて、浮かれていた気分が一転する。ゾワッと体中に鳥肌が立った。








この声は、もしかして……。







どうか、気のせいでありますように。







心の中で祈りながら、恐る恐る声のした方へと顔を向ける。








「お嬢様……」








そんな……どうして……こんなところに?








義姉が貴族街ではないこのような所を出歩くのは珍しい。よりにもよってこのタイミングで遭遇するなんて……。








身体中が拒絶反応を起こしている。一秒たりとも義姉と一緒の空間にいたくなかった。







逃げよう。







義姉が近づいてくる前に、駆け出した。








「ちょっと!待ちなさいよ!ソフィア!」








背後から義姉が追いかけてくる。






来ないで、来ないで、お願い!






義姉を振り切るべくジグザグに角を曲がりながら走る。






次は、右、次は左。






まだ追いかけてくるの? 嘘でしょう……。





振り向くと、鬼のような形相で義姉が追いかけてきていた。





まるで、獲物を逃すまいとする獣のような勢いだった。






外出用に着飾ったドレス姿であるにも関わらず、こちらに目がけて迫ってくる。







逃げなきゃ、早く、






次は……この角を曲がろう。






義姉に気づかれないように、まっすぐ走ると見せかけて、急いで角を曲がり路地へと走った──。






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