社畜バイク野郎
「(あぁ…疲れた……。早く帰って風呂はいって寝たい…。)」
21時が過ぎ辺りは真っ暗となり田舎特有の鈴虫の鳴く声と改造車のマフラー音が会社の工場のシャッターから聞こえていた。
ほとんどの社員が帰り数名の作業員残り作業をしていた。サンダーで金属を削る音、溶接機の火花が飛ぶ音、ホウキ掃く音が聞こえていた。
疲れている作業員の中の一人の男が掃除をしてた。
「(疲れた…。ちょっと油断すると倒れそうだ……。)」
サンダーで研磨作業をしている付近に牧草が散乱しホウキで掃除していると一人の先輩社員背後から近づいてきた
「翼希もうかえっていいよ」
「えっ?でも先輩、帰ったら課長からなんか言われませんか?」
手を止め声をする方に振り向くと先輩が汚れた姿で立っていた。
顔は黒くなり、髪には草があっちこっちに付きツナギも土が付き茶色く乾いた色になっていた。
「あぁ?んなもん関係ないよ、課長に挨拶してから帰れば何とも言われんから」
「わっ分かりました、先輩、お先に失礼します!」
「おう、気おつけて帰りなよ」
翼希はチリトリに入った牧草を捨てホウキを直すと課長の所に行き挨拶をし振り返ると先輩が見守っていた。
先輩がに近づくと再びサンダーのスイッチを入れて作業を再開し始めた。
「(先輩も家庭があるのに、こんな夜遅くまで仕事しててキツくないの?いくら家族のためだらって言って毎日夜遅くまで残業して休日出勤してたらお子さんが可哀想だろ…。)」
黒いネイキッドバイクに跨りエンジンを掛けると、深く低い単気筒の特有のマフラー音が工場に鳴り響き、ゆっくりと事務所まで走って行った。
「やっぱ、だ〜れも居ないっか」
事務所の扉を開けると、人気のない静かな事事務所が目に入った。
足早に自分のデスクに置いてあるバックを取り、ノースリーブのジャケットを着ると一世代前の携帯で退社届けを押し残業を付けずに打刻を送った。
「(どうせ今日も残業代なんて出ないんだろ…?タダ働き万々歳だろ…。)」
再び外に出ながらフルフェイスを被りグローブを付けながらバイクに跨るとエンジンを掛け会社を出た。
対向車も相続車の車も走って来ず暗く先の見えない道路に唯一の灯りが街灯とバイクのヘッドライトの光だけだった。
右を見ると畑、左を見るも畑、そんな道が整備され樹木に挟まれた片側一車線の道路を走っていた。
疲れ果てた体にムチを打ちながら走っているといつも通っている急斜面が続く坂道を走らせていると気晴らしに風景を見ていた。
「(夜空なんてこんなにマジマジと見るの何年ぶりだろう…。それに、星なんて見て無いし何も見え無いなぁ…。)」
空を見上げると一面に広がる雲のないただ暗いだけの空が広がっていた。
右手側を見ると遠い町並みの街灯や家の灯りが星のように光っていた。
「(最後に星見たのは…地震以来かな…。あの時は電気がつかずただ星の光とカンだけで走ってたかな。)」
坂道を登りきるとトンネルを潜り進んで行くとまた、一段と暗くなり街灯もない畑に囲まれ整備された農道を通っていくと段々と先程とはまた違う街並みの光が遠くからでも分かるほど光っていた。
「(街の光もまた凄いな、マンションの光がここからでも見えるから相当大きいんだろうな…。)」
「ック…。」
街並みの風景を見ながら走っていると疲れが限界に達しバイクの軌道がフラフラとなり耐えながら走らせていると2台の自動販売機が目に見え休憩するために立ち寄った。
「きっしょ…虫の大群かよ…。」
自販機の商品を照らす蛍光灯の光に寄ってきた虫がとび待っている中、何を買おうか見ていると見た事のない飲み物を見つけた。
「何だこれ?ランダムな世界?」
ペットボトルなのかビン、カンなのか分からず手作り感のある円柱に作られた青い紙に白い紙にはてなマーク状に切り取られた下に商品名が記載されていた。