深窓令嬢と弟
「マリー姉様、何をしているのですか?」
マリエッタの弟は、薫子を抱きしめ上目づかいで見つめる。
(ふふ可愛い!)
「はぁ、マリー姉様気持ち良い・・・」
薫子は、マリエッタの弟が呟いた意味もわからずその顔を見つめ「クッキーを焼いたんですよ、一緒に食べませんか?」と笑顔で誘った。
「嬉しいです、マリー姉様。ボク甘い物好きなんです!」
マリエッタの弟は、薫子に抱きついたまま答える。
(男の子は、たくさん食べるのよね。可愛い可愛い)
ホワっとした気持ちになった薫子は、
「それは良かったわ!このクッキーは先ほど焼いたのですよ。温かいクッキーを食べたことありますか?」
とマリエッタの弟へ聞いた。
「へ?温かいクッキーですか。わぁ食べたいです!」
「うふふ、わたくしが焼いたのでぜひ感想を教えてくださいね。」
「えっ?マリー姉様が焼いたのですか?真剣に食べなくちゃ・・・」
(そんなに甘いものが好きなのね、今度も何か作りましょう)
「美味しければまた作ります、たくさん食べてください。」
マリエッタの弟はフワフワのクッキーを頬張ると「美味しい・・・」と言い、ふにゃりと笑った。
「美味しいなんて、嬉しいわ!こんな良いお天気の下で食べると、なんでも美味しいと思うもの。」
「そんなことないです!姉様が上手なんですよ。ボク、マリー姉様のクッキーを気に入ってしまいました!」
「わかりました、ではたくさん作りましょうね。」
マリエッタの弟と、うふふ、あははと雑談していると和やかな時間はあっという間に過ぎた。
すると、遠くから「シャイリー様!お勉強の時間です。」と声がかかった。
(この方は、シャイリー様というのね。あとでリリーへ皆さんの名前を確認しなくては)
「残念ですが、姉様またディナーの時間に。」
そう言うとシャイリーは、メイドに連れられ屋敷へ戻っていった。
シャイリーと入れ替わりにリリーがやってきて慌てた様子で薫子に聞いた。
「お嬢様、お部屋にいないから驚きました。シャイリー様といたのですね・・・少しお話ししたいのですが、お部屋までお願いできますか?」
「わかったわ。行きましょう。」
薫子は、美味しいクッキーや小さな男の子との交流など、経験したことがないことができて気分が良かった。
まだこの世界に来て2日目だが、楽しみが増えていく。
部屋へ着くと、リリーがお茶を用意しますと準備を始める。薫子は、テーブルに着席するとリリーが準備するのを見守った。
「ハインツさんと旦那様へカオルコ様のことを報告いたしました。勝手な真似をして申し訳ございません。」
リリーは膝を折り薫子へ謝罪した。
「あら、わかっていたわ。リリーは何も気にしなくて良いのよ?」
リリーは、さすがカオルコ様だと感心する。
「結論から申し上げます。旦那様はカオルコ様のやりたいようにされることを望んでおります。」
薫子は驚くと、そうなのと返事をしリリーへ聞いた。
「リリー・・・マリエッタ様は、何がお望みなのかしらね。」
リリーは、カオルコの優しさを感じマリエッタを思い出していた。