第四話 想い
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お父さんの工場が爆発してから五日後の十二月十七日の朝の八時頃、俺はいつもどおり自動運転車に乗って俺の通う柏原高校へと登校していた。
その途中、いきなり俺のPARSが反応した。反射的にPARS触れ、起動させると、電話用のホログラムが目の前に映し出される。これもPARSの創り出す幻覚だというのだから稲留さんの凄さが実感できる。
ホログラムには、知らない中年の男が映し出された。
『お前が大槻智の息子、大槻颯大であってるか』
いきなり上から目線だ。しかも俺のことを知っているとは。
「その前に、あなたが名乗ってください」
『俺にそんな態度を取るのか。大槻智の息子だからなのか?』
「知らない人がいきなり電話を掛けて来た上でそんな態度取られたら誰でもそういう言い方をするでしょう」
『知らないだと?まあ良い。俺を知らないことを後に後悔するさ』
何を言っているんだこの人は。気でも狂っているのか?
「で、あなたの名前は何なんです?」
『そうだな、特別に教えてやろう。俺の名前は筒香だ』
「下の名前は教えてくれないんですか?」
『教える必要はないだろう。そんなことより本題だ。知らない人が電話を掛けてきてただおしゃべりをするだけなんて君も思ってはいないだろう?』
「そりゃそうです」
『俺はお前にあることを伝えるために電話を掛けたんだ。だがそんな態度を取られたら言いたくなくなってしまったな』
忠告?何をふざけたことを言っているんだろうか。まさか俺が将来凄い開発をするからそれを未来のAIが阻止するとかいう展開でも待っているのか?
『代わりに伝える予定だった内容のヒントをやろう。一つ目は、俺はお前の電話番号を知らないということだ。そしてお前のお父さんは今入院中の病院でピンピンしている。二つ目は、俺が今送った地図だ。何が起きているか、すぐに分かるはずさ。少なくとも今の俺の話を忘れるなんていう人間以下のするようなことをしなければな』
そう言い終えると、筒香は電話を切った。
同時に、地図データが送られてきた。開いてみると、今の車の位置から五キロメートル程離れた位置にある工場にピンが刺さっていた。しかし、俺はこの工場を知らない。この地図は、二つ目のヒントだ。
一つ目は、こうだったはずだ。
筒香は俺の電話番号を知らず、お父さんはピンピンしている。
まとめると、俺の電話番号を知っている人に携帯を借りていて、それがこの地図の工場に何か関係あるのか。
俺の電話番号を知っている人なんて限られている。今時は全部SNSアプリで済ませてしまうから、わざわざ電話なんて使わない。俺の電話番号を知っている人は、確か、お父さんと愛梨だけ………って、そしたら愛梨に携帯を借りたってことになるじゃないか。
そこから結論にたどり着くまでは一瞬だった。
借りたんじゃなくて奪ったのか?じゃあこの地図の工場に愛梨がいるってことか?それって誘拐ってことになるのか?
「えぇーーー!」
一人の車内で、俺は思わず大声を上げてしまった。
もしそれが本当のことなら大変なことじゃないか。
とりあえず、俺はMetisを呼び出して今起きたことを説明した。
「それはほぼ確実に誘拐ですね!」
「やっぱりそうなるか。どうすればいい?」
「これは颯大様を狙った犯行と思われます。とりあえず、お父さんに電話して、この件について知らなかったらすぐに切り、颯大様単独で向かったらよろしいと思います」
「それって筒香の思い通りじゃないか?」
「でも、それ以外に方法があるわけではないでしょう。それに、私がついてますよ!」
「一応警察には連絡したほうが良いよな」
「もちろんです」
多分早く行かないと行けないやつなんだろう。高校をサボることになるが、愛梨のためならしょうがない。
まずは、工場の位置情報を自動運転車に送信して、向かわせた。
そして、俺はお父さんに電話を掛けた。
「もしもし、お父さん?」
『あぁ、颯大か。どうしたんだ』
「あの、筒香って人から電話かかってきた?」
『いや、かかってないけど、どうしてお前が………』
どうやら掛かってきていないようだ。
「ありがとう!じゃあね」
俺は電話を切った。
「お父さんには掛かってきていないようですね」
「そのようだな」
「最後に何か言おうとしていましたが、よろしかったのですか」
そういえば何か言おうとしていたな。とても重要なことなのかしれないな。でも、もう聞き直すことはできない。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「行ってきまーす!」
私は颯大と住むマンションの玄関を、勢い良く飛び出した。
別に遅刻しそう急いでるんじゃない。なんとなく。だから、決して遅刻しそうだから急いでるんじゃない。絶対違う。そうに決まっている。
「おいおい、そんなに急ぐと………」
お兄ちゃんの声が遠くに聞こえる。
私は、エレベータの下のスイッチを押した。
「あーもう!遅い!」
このマンションは新築の部類に入るから、エレベーターは遅い方じゃない。でも今の私には何百倍も遅く感じる。
「来た!」
エレベーターが開いた瞬間にコンクリートを蹴ってエレベーターに飛び乗り、一階のスイッチを連打した。
【ドアが閉まります。ご注意ください】
聞き慣れた機械音が聞こえた。エレベーターに乗れた合図だ。
「ふぅ」
このエレベーターの時間は、遅刻しそうな………じゃない登校する時の三十秒くらいの休憩の時間。でもそれだけでも十分。
でも、エレベーターが来るのを待ってる時間に比べたら、あまりに短いように感じる。
【一階です】
一階につき、ドアが開くと同時に私はエレベーターから大砲の弾のように飛び出した。
「おはよう、愛梨ちゃん、そんなに急いでどう………」
「おはようございます、さようなら」
同じマンションの住人に声を掛けられたが、かまっている余裕はない。
時計を見ると、七時五十分だった。柏原中学は校門を通るのが八時十五分以降だと遅刻になるから、ギリギリといったところ。
そもそもこんなことにのは、お兄ちゃんのせいだ。声をかけるだけじゃ私が起きないのを知っていて、声をかけるだけの起こし方をしている。もっと叩くなり蹴るなりベッドから落とすなりしてくれても良いはずなのに。
「はぁ、はぁ」
今はちょうど道のりの半分くらい。いつもはこんなとこで息切れなんてしないのに。やっぱり昨日の一人カラオケのせいかな。さすがにヤケになって全力を出しすぎちゃった。
時計を見ると、長針は一と書いてある位置を指していた。
「これならまだ大丈夫………」
瞬間、いきなり視界が暗転した。
「きゃー!」
何が起きてるの!そうだ、大人!大人を呼べばなんとかなる!
「誰かー!誰か来て!」
音は無慈悲にも私の元へ帰ってきた。
あ、そうだ、学校に助けを呼ぼう。
そう思い立ち、PARSを起動させ、学校に電話をかけようとした。
【お掛けになった電話番号は、電波の届かないところにあるか、現在使われておりません】
「嘘でしょ。電話が使えないの?」
電話が使えなくても、インターネットを介せばできるかもしれない。
そう考え、普段友達と使っているSNSアプリを開くが、そもそもインターネットが切断されていた。
「何が起きてるの?」
こういう時颯大だったらどうするかな。今の状況を詳しく確認しようとするかな。
落ち着け私。まず、ここはどこだ。視界が暗くなったのは、一瞬の出来事だし、それから何も起きていないから、場所は変わっていないはず。
足に神経を集中させる。すると、現代の技術でも消せない、細かな自動車の振動を感じることができた。
つまり、ここは車の中だ。
どんな車だろう。光が一切入ってこないけど、窮屈な感じはしない。もしかしたらトラックかもしれない。
恐る恐る立ち上がって、少し歩いてみた。光がないせいでふらついてしまうけど、歩ける空間がある。トラックが決まりみたいだ。
あまり情報があるわけではないけど、整理しよう。
今私がいるのは、トラックの中で、電話、インターネットはどちらも繋がらない。
これをどうにかする方法を私は持っていない。おとなしくしているのが一番いいかもしれない。
そうなると、私にはもうやることがない。
なんだか急に悲しくなってきた。いや、今までも悲しかったけど、それを騙していただけだ。
「お兄ちゃん、助けて」
自然と、掠れた声が喉の奥から出てきた。
女の子目線で書くのが難しいって実感しました。
でも面白かったですよ!
次に書くときはもっとうまくなりたいです それでは See you again