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第1話 友達は作らない

テスト前に書いていた小説を整えたので投稿します。

勉強しないといけないときに限って無性に書きたくなりました。

まだ二月下旬には至っていないですが出したかったので投稿します。

「迷宮から生まれた男」等は二月下旬以降に投稿します。


誤字脱字があれば教えてほしいです。

 僕に友達は多くない。


 それは僕の顔や纏っている空気もあると思うが、一番の要因は他にある。


 それは友達作りをまともにやったことが無いからだ。


 よく学年が変わって新しいクラスになったら、周りの人はお互いのことを積極的に知り合って友達になろうとする。そして5月頃にある校外学習のときには粗方の友達作りは終了している。


 でも僕は友達作りをしない。友達作りという行為に違和感があるんだ。


 何故友達を"作る"のか。僕は今いる友達を作った覚えは無い。いつから友達になったのかも定かではない。三日前の晩御飯が思い出せないように、いつの間にか友達だった。


 類は友を呼ぶ。これはある程度的を得ていると思う。一年間平日日中ずっと同じ部屋にいれば気が合うもの同士はある程度は引き寄せられる。クラスに数人は大抵いる、何となく喋りやすい、同じような空気を感じる奴とは喋ることを頑張らなくてもいい友達になっている。"友達になりましょう"なんて言って始まる友人関係ってあるのだろうか。少なくとも僕にはない。僕の友人関係はいつもなぁなぁな感じで始まる。友達百人作ろうというような狂気的な強迫観念は持ち合わせていないんだ。


 勿論、そんな受け身の姿勢でいれば先述の通り友達はなかなか増えない。クラスの人達を陽キャラ、陰キャラで分けるのは僕にとって嫌いな分け方なんだけどそれを用いるなら僕は陰キャラだろう。クラスにカーストがあるとしたら僕は明らかに下に位置する。運動能力が高くなく、勉強も人並みでずば抜けていないし、お洒落でもない。指定された制服が無く皆が私服で通うこの学校だが、気に入った同じ服を何着もまとめ買いしてそれを順繰りで着ている。毎朝棚の引き出しを開けて一番上のを取るだけだ。


 でも僕はクラスのカーストなんか興味ないし、誰が誰と付き合っているかという情報も本当にどうでもいいし、これが僕の自然だから陰キャラだから言って格段、劣等感は無い。


 バスと電車を使って学校に行って、授業を受けて、母が作ったお弁当を食べて、また授業を受けて、家に帰る。そんな特に変わったことは無い日常が僕は好きだった。


 そして高校2年生になった今でも僕はクラブに入っていない。中学では剣道をやっていたが高校に剣道部は無かった。そのとき皆を集めて剣道部設立という選択肢があったかもしれないが僕としては無かった。僕はそんな人脈も人望も持ち合わせていない。まして入学したてだ。あるわけがない。


 それは一年経った今でも変わらない。人脈が人生において非常に有用なことは今まで生きてきて知っているがどうも人脈を増やす事に僕は向いていない。そもそもそんなに無差別かつ大量に人に興味があるわけじゃないんだ。義務的に僕は人と仲良くなれない。人望はカリスマにでも持たせておこう。日常を生きるのに必要が無いことだ。


 剣道部が無かったならなぜ他のクラブに入らなかったのかと言えばこの高校に入って剣道部が無いと知った時、不意にバドミントンに興味が湧いて、バトミントン部に入ろうかと思ったけど見学でクラブを覗いてみれば中々の強豪、入ってもよかったのかもしれないが気後れしてしまって止めてしまった。バドミントン部入部を止めようと決めた時には他の人はみんなクラブに入部し終わってそれ切りクラブに興味の目を向けることが無くなって今に至ってしまっている。


 今は慣れてしまいそれが日常と化しているから考えてはいなかったが、別にビバ!帰宅部、帰宅部万歳と思ってはいない。図書館で気ままに本を借りて読む生活も楽しいが、クラブにも入ってみたい。入学当初は剣道部が無いことに入学する前に調べとけばいいものを入学してから知ったことで軽いショックを受けて視野が狭くなっていた。


 ただ入ってみたいと思ったもののどのクラブに入るか、それはまだ決まっていない。のんびりしすぎて考えなくなるのは駄目だが早急に決めて後悔したくない。まずは候補を絞るべきか。


 そこまで考え至ったところで、丁度最後に残っていた米粒三つを箸でついに捕捉したので弁当箱に蓋をして、机裏の右フックに吊り下げていた手提げ鞄に仕舞う。それと同時に同じ鞄に入っている昨日読み終わった本を机の上に置く。返すのを忘れないうちにこの本を二階にあるこの教室から離れている図書室に返しに行こう。


 歩きながら考える。さて、どんなクラブに入る?まずは運動部か文化部どちらにするかを決めよう。運動部……運動がそこまで得意じゃない(嫌いとは言っていない)僕の中で唯一得意と言っていい長距離走を活かすには陸上部が最適だ。だが陸上部では練習前の筋トレが激しい。僕は筋トレを自主的にできる人を一部尊敬している。それはできないからだ。やれば誰でもできるのかもしれないが僕にはできない。あんな辛いこと体育の強制されている筋トレではやろうと思うがあんなにつらいことを楽しんでできるのは純粋にすごいと思っている。ただ長距離を走ることは好きなんだけどなぁ。すぐ候補から除外するのは尚早、今のところキープしておこう。


 他に運動系は……山岳部があるな。僕は山に登ることは好きだ。唯、山に登るのが好きだとは言っても趣味で休日に登るほどじゃない。小学校の時の林間学校で山に登っているときに楽しいと思った程度だ。虫が嫌いとか汗かくのが嫌いとかそんなんじゃないんだが今まで本気でやったことは無い。これも候補に入れよう。


 次に文化系と思ったところで図書室に着いた。すぐ本を返して図書室を出る。今日は家から昨日から読み始めた本を持ってきている。それが読み終わるまでは借りないでおこう。他に読みたい本もあるんだが一度他の本を読んでしまうと今読んでいる本への興味が薄まってしまう。浮気性と言えば浮気性か。本限定だが僕は浮気性なことを自覚しているので読んでいる間に他の本を借りないというルールを作っている。


 文化系のクラブ、プログラミングや文芸部、美術部にいっぱいあるが入るとしたらどれに入りたいだろうか。うーん。文芸部に入っている田山に相談してみようか。別段仲がいい訳じゃないからほんのちょっぴり勇気はいるが。


 教室の扉を開け、食事が終わってスマートフォンをいじっている田山に話しかけようか一瞬迷う。友達ならそんなこと考えずに話しかければいいのかもしれないんだが、どうにもスマホをいじっている人に人に話しかけ辛い。また今度でいいか。そう思ったが、これで無神経と言われるならそれでもいいかと臆病ながらもトントンと肩を軽く叩いてから声をかける。


「ちょっといい?」


「うん、どうしたん?」


「田山って美術部入ってるよな」


「うん。美術部次期副部長」


「次期、更に副か……まぁそれで僕クラブ入っていないんやけど文化系クラブってどんなんか教えてくれる?」


「あぁ、そういえば小澤って帰宅部やったもんな」


「そうそう、クラブの内情とか分からないから」


「そっか、このままずっと帰宅部やと勝手に思ってたけどクラブに入ろうとしてるんや。うーん。自分美術部やから他のクラブとかそこまで詳しくないけど大丈夫?」


「うん。全然」


「美術部に関しては緩い奴から賞狙ってる奴もいるなぁ。でもみんなそれぞれ何か作るの好きやし仲も良いから心地いいで。ただ絵書いてるだけじゃなく粘土使ってる奴とかいろいろいて楽しいし」


「そうなんや」


「他のクラブって言ったら、吹奏楽部は今から入るのは無理かも知れへんなぁ。秋にある大会に向けての練習したりしてるし、楽器の経験ないと大変やと思う。それに日曜以外毎日練習してるし結構ハードやで」


「結構やる気ないと無理そうやね」


「そうやなー。あとは文芸部とか写真部があるなぁ。あっそうや。悩んで決めらへんかったら兼部って選択肢はありやで。さすがに運動部二つの兼部は難しいけど、文化部二つとか、運動部と文化部の兼部ならしてる人もおるし選択肢の一つやで」


「そっかあ。兼部もあるなぁ……ありがとう。参考になった」


「いいよいいよ。美術部の宣伝もできたし。気になったら見学来ていいで」


「ありがとう」


 そう言って自分の席に戻る。いろいろ選択肢はあるから、今日は悩んでみよう。悩んで決めた結果なら自分でも納得できるし。うん、そうしよう。


 そう思いつつ次の国語の授業の用意をちょっと確認して、水筒の茶を口に含む。


 案外話してみると話せるんだけどなぁ。本当に合う、合うと思った人とは気軽に喋られるんだけどそうじゃなかった人とは話しかけるのにほんのちょっぴり勇気がいる。でもいざ話してしまえば合わないという訳でも無くて不思議な感覚を覚えてしまう。それにしても兼部ってことは考えてなかったし教えてくれてありがたかったな。うん。

 

 

 そうして国語の授業もいつもと変わらず過ぎて放課後になった。このまま帰るのもありだけど今日は職員室の前にある受け取り自由のクラブ紹介資料を一部取ってから帰る。入学してすぐこの資料をみんな渡された記憶がある。クラブ内容や活動時間、兼部の可否とかが書いてあって結構分かりやすい。今覚えばこれをもっと有効活用して他のクラブにも目を通しておけばよかったなと思うが今活用できているんだからその経験もまるっきり無駄にはしていないと思う。


 田山は吹奏楽部がハードと言っていたけど実際どうなんだろう。ぺらっとページを捲って見てみると月曜日から土曜日まで毎日あるのは勿論、朝練も平日はずっとあった。これは楽器経験があっても大変だな。それとも音楽やってた人はこれが普通なんだろうか。分からないが楽器が好きでやる気が無いと難しいなと思ってしまった。兼部は時間的にできないように当然不可だった。


 学校前の信号を一人で待ちながらその冊子を軽く見る。青信号になったらロスなく歩き出したいし、集中しすぎると危ないのであくまで軽く。そしてわざわざ隣に人がいないのはいつものことだ。一緒に帰ったとしてもすぐ駅で別れてしまうし、誰かに一緒に帰ろうと何て言ったことが無い。そもそも半分以上はクラブに入っていて下校時間が合わないしな。一緒に帰りたいのであれば僕自身誰かに言うだろうけど現実として僕は言っていないので結果的に独りでも良いんだろうと僕のことなのに他人事のように考えている。


 青だった車道の信号が赤になった。冊子を閉じて準備を済ます。よし、青になった。それからは冊子を開くことを忘れこうしていつもの道を十二分ほど歩き駅に着く。たまたまちょうど来た電車に迷いなく乗り、乗った電車の中で冊子や本を読めばいいものを取り出しやすいスマホを取り出してゲームをしてしまう。飽きてやらない時期もあるんだが、生憎今は飽きていたゲームにまたはまってしまっている。言われれば何の意味もないのかもしれないが、説明はできない意味を感じて電車の座席に座りながら九分ゲームをする。ターミナル駅で降りて改札をくぐり、第四停留所でバスをおじいちゃんおばあちゃん九割の列に並んで待つ。


 バスの中では多少酔う危険があるのでずっと読むことは避けながらも冊子を開く。そういや演劇部ってのもあるな。ラグビー部はムキムキたちに任せておこう。


 何も変わらない景色と言えどもなぜか見たくなるもので一時冊子を閉じて景色を見ていると歩道を歩いているカップルの姿がある。純粋にうらやましい。なんか彼女がそこまで美人で無かったとしても"付き合っている"という事実だけで格差を押し付けられるようだ。ハァ。可能性は消さないように希望が無いことが分かりきっている男子校に行くことは選択肢から外して共学の高校に来たんだけどな。今年の出来事で言えばバレンタインで初めて義理チョコ一つもらったもののチョコをもらう経験が家族からしかないからか返すという習慣もなく、見事に返し忘れてしまったというミスを犯している。その女子とはただでさえ会話らしい会話はしていなかったがもう完全に喋っていない。おそらく無視されることは無いと思うが話しかけない限り喋ることは無いだろう。返し忘れたことに気づいたのはホワイトデーから三日後、今ならまだ間に合うのではと思ったこともあったがそんなことを考えているうちに四日五日と経ち、一週間経った時には諦めが心の中で多数決を占めていた。もう今ではもう無理だと言う悟りの域に入ってしまっている。義理チョコなんだから返しを求めている訳では無いんじゃとも思うが、クラスも変わってしまって、その心の内も会話をしていないのだから全くの闇の中である。


 じゃあまずは会話すればと思うかも知れないが、女子と会話をすることは僕自身からではなかなか難しい。こんなこと考えている時点であのカップルの域には程遠い気がするんだがそれは今は置いておこう。まぁこれもクラブに入れば出会いがあるかもしれないと、接点が無いと言うことに無自覚に責任を転嫁しつつバスが止まったと同時に冊子を開く。


 バスの開いた扉からは一人誰かが入ってきたようだ。どこに座るのかなと思ったら自分の隣に座ってきた。バスで通学する前、つまり高校生になる前は隣の席に座ってほしくないなとしか思っていなかったのだが、通学でバスを毎日使うようになると考えが変わった。自分の隣は空いているのに避けるように他の席はすべて埋まることが幾度もあってからだ。おそらく偶然のときもあっただろう。だけどもしかして避けられてると思うと狭くても他の人の隣空いてるのになとは思わないようになった。煙草臭いのだけは永遠に嫌だが。


 バスで人が隣に座った時、隣の人はどんな人だろうとちらっと顔を見ることはできるだろうか。僕の場合見られたと思われたくなくて無関心を装って冊子を見ている。ただ、煙草の臭いはしなければ問題は無い。今回は大丈夫のようだ。それどころかどことなくいい匂いがする。嗅いでいる訳じゃないがやはり近いのでそんなときもある。気持ち悪くは無いので香水ドバドバではなさそうだ。良かった。


 ずっと誰なんだろうと思ってはいない。隣に誰かが座って十秒ほどすればそんな興味も忘れてしまう。するとそんな時、隣に座っている人の気配が変わった。こちらに姿勢を向けておそらくだが僕の顔を見ている。なぜだ。なぜなんだ。純粋になぜ僕を見る?という謎とそんなに大胆に隣の人の顔を見ることができるのかという驚きが僕の変わらない表情の水面下で今の感情の大半を覆っている。


「ちょっとこっち向いて」


 誰だ、本当に言われるがまま向いていいのかと一秒フリーズした後、ゆっくりと顔を向ける。


「あ……」


「お久しぶりでございます」


「もしかして……青菜さん?」


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