追い掛けて下さい。
「...シロ?」
「カイル、久しぶり!」
カイルが部屋に入ると窓辺に佇み満月に照らされているエミリーがいた。
「シロが何でここに?」
「んー?なんかね、ユナがね満月だから行ってこいって」
「...アイツ」
「?私、ユナに最近カイルに会えてなくて寂しいって相談したの。そしたら、今日満月だからって。行ってカイルに会ったら分かるって」
「で、なんか分かったか?」
額に手を置いてカイルはエミリーに聞く。
「んー、カイルに久しぶりに会えて嬉しいってのは分かった。カイルは、私に会えて嬉しい?」
エミリーがカイルに近付く。
「...っ!!」
エミリーが近付いてきたのでカイルは咄嗟に後ずらさりしてしまい、またエミリーとカイルの間に距離が出来る。
それがまるで、2人の今の距離のようでエミリーは寂しく思った。
「カイルは、寂しくなかったんだね。...帰る。」
「は?か、帰るってユナリアナの所は?」
「...ううん、お師匠様の所。」
エミリーはシロの姿になり、ドアを器用に開けてカイルの部屋を出ていってしまった。
「あ〜あ、カイル兄様がこんなにヘタレだと思わなかったですわ!」
「...お、お前!!」
エミリーが出て行ったドアから出てきたのはカイルの妹のユナリアナだった。
「追い掛けないのですか?普通、ここは追いかける場面ではなくて!?カイル兄様はもう自覚しているのでしょう?」
「...追い掛けてどうすれば良いんだよ。」
「はぁ、ヘタレだわ。これから先、カイル兄様はシロちゃんと一緒にいたくありませんの?情けないですわ!!他の男にシロちゃんを取られてもとろしいの!?」
「...他の、男...!?」
「ええ、シロちゃんは美人さんなのですよ。他の男がほっとくわけが無いじゃない!!!私はほっとかないわ!男だったらすぐにでも求婚していたのに...カイル兄様がいかないなら、シロちゃんは私が貰いますからね!」
バンッ!と大きな音を立ててドアが閉まり夜の静寂だけが残った...
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