曇り空
「...誰だ?」
(ヒィー見つかっちゃった。)
「通りすがりの者です。」
「裸でか」
「あ、...そうだった。」
自分の今の姿を確認すると年頃の乙女にあるまじき恰好をしていた事に気付く。
「あ、いや、あの...これは...その...と、とりあえず見ないでください!!!!」
「...す、すまない。」
カイルは耳まで赤くして後ろを向いてくれた。
「と、ところで、どうして此処にいたんだ?此処は騎士団の敷地だ。一般人が此処に来れるはずが無いのだが。」
(え?そうなの?知らなかったよ...。)
「ご、ごめんなさい。そんな事知らなくて勝手に...。」
「いや、まぁ迷ったなら仕方ない。服はどうした?家まで送るがその恰好では不味いだろう。」
それもそうなのだが、帰る場所もよく分からないし猫だったから服なんてこの辺に無いからなんて応えようかなと考えていると満月の光が雲に隠されていく。
「あ」
曇り空になって行き私を照らしていた満月の光が無くなってしまった。その途端、白猫の姿に戻ってしまった。
(あぁ、曇り空になったから満月の光は出ないよね。また次の満月まで猫の姿か~)
「おい、どうした?」
そう言って振り返ったカイルは人ではなくいつも一緒にいる白猫が目の前にいて驚いた顔をしていた。
「シロ、無事だったか。...先程の女は何処に」
(無事だし、その女が私なのだけどね。)
「にゃーん」
「...あの女がシロとか...な訳無いな。」
頭をポリポリとかいた後は私を抱き上げていつもの寮へとカイルは歩き出した。
(合ってるけどね。ま、直接見られてないから大丈夫よね。...たぶん)