動けません。
「さぁ、ルミエリナ!このケット・シーを返して欲しかったらこのケット・シーに掛けている魔法を解くのよ!」
「はぁ、それを解いたら解いたでお主達の思うツボであろうに。」
「...もう良いわよ!わたくしはケット・シーの血が欲しいんですもの。猫の姿だって大丈夫なはず。ルミエリナ、そこで見ていなさい。この猫の血でわたくしが若々しくなっていくのを!」
(ちょっと!待ってよ!血!?血って...私、殺されちゃうって事!?なんでお師匠様、そんな余裕なの!?助けに来てくれたんじゃないのー!?)
身体が動かない為、ルミエリナの方を向けない。向けないながらもルミエリナの気配と息遣いは猫のお陰で人でいる時よりも敏感である。だからこそ分かるのだ。
ルミエリナが一切先程の席から動かずにいることを。
(痛いのヤダよー!!!)
「のぉ、ルディ。この国の王は妾の事を好んでおるのじゃ。」
「は!?分かってるわよ、そんな事。」
興奮で赤く染まった頬と緩んだ口をしながら籠の中にいるエミリーに近付くルディにルミエリナが声を掛けた。
ルミエリナの言葉の意図がわからずエミリーから視線を外しルミエリナへとルディは目を向ける。
「それに妾は大魔女なのだろう?ルディ、お主如きのこんな魔法、抜け出せぬと思うたか?」
(ん!?お師匠様、なんか魔法掛けられていたの?)
エミリーは気付けなかったがルミエリナが座っている椅子には魔法を封じ込める魔法が施されていた。
そして、エミリーと一緒で身体を動かせなくなる魔法も掛けられていたのだ。
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