変な人にはついて行かない
「何度来られようと変わりません。放棄した私に陛下から連絡など有り得ませんのでお帰り下さい。」
料理長から美味しい魚料理でお腹を満たし昼寝は何処にしようかと考えながら歩いているといつも隊長が出入りしている扉の中からカイルの声が聞こえてきた。
(あら、カイルの声だ!でも、なんか怒ってるような声ね。)
いつも淡々としていて感情の起伏はそれ程無いカイルがここまで怒っているのは珍しい。
(この前、カイルの部屋の椅子を爪とぎ代わりにしていても怒らなかったのに。)
そう、数日前にエミリーは街の猫達に爪とぎのやり方を教わった為、カイルに見せようと部屋にある椅子を使って披露した。
が、エミリーの思いは伝わらずカイルに淡々と説教をされて終わったのだ。
その時でさえ感情的に怒らずに只々どうして駄目なのかを諭すように喋るだけで今聞こえてきたような怒気を含んだ声では無かった。
(どうしたのかしら?それに放棄って?)
「そう怒らないでくれ。まぁ、あれから魔女も来ていないようだしもう来ないよ。」
「そうしてくれると有り難い。」
カイルと一緒に扉から出てきたのはカイルより横に少しばかり大きな男性だった。
(この人は誰かしら?)
「おや?この猫は?」
「...この子は私が保護した猫で、隊長に許可を貰いここで面倒を見ているのです。ほらシロ、ディートの所へでも行ってなさい。」
横に大きい男性の視線から護るようにカイルはエミリーの前へと立った。
「ほう、こんな綺麗な白猫が。...何処かで飼われていたのかな?」
(なんだか良く分からないけどディートの所へ行けば良いのね。この人...なんか怖いわ)
カイルの言葉通りに男性の視線から逃れるように来た道を戻りディートの所へと向かった。
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