助け合い
エミリーが夢の中へ旅立っている中、ルミエリナはお酒を取り出し飲み出した。
「...また強いお酒を」
「お主も飲むか?うまいぞ」
「頂く」
カイルがお酒を飲み始めたのを見てルミエリナは口を開いた。
「のぉ、カイル。お主、この国の王子らしいの。」
「っ!?!?何処でそれを!?」
「そう警戒するな。ただ聞いただけじゃ。この国の王様と妾は昔からの知り合いでの、お主が産まれた時はお祝いの品を持ってってやったんじゃよ。まぁここまで成長しているとは思わなかったがの。」
カイルの産まれた時を思い出しているのか懐かしむような瞳をカイルに向ける。
「俺の事はどうでも良いだろう。...今はシロの事だ。」
「うむ、そうじゃったな。まぁお主のその王子というのも無関係では無いのだがな。」
「エミリーはケット・シーの生き残りで間違いない。ただ、血はとても薄く魔力も普通の人間とそう変わらない。だから、妾のように魔法等も使えん。この子を妾に預けた女も混血じゃった。...まぁこの子がその女性の子とも分からぬがな。」
『それに』とルミエリナは続ける。
「今はそのケット・シーの生き残りを探してこの国もそして他の国も必死なのだ。王宮内も不穏な空気が漂っておるしな。近々一番きな臭い...マイヤー公爵あたりがお主を訪ねに来るかもな。」
「それならもう来た。俺は王位争いから身を引いたというのに陛下から何か情報は無いかと聞いてきた。貴女がこの辺りに来たという情報を掴んでいた。」
「何っ!?そんな馬鹿な...魔女を味方にでも付けおったか。」
「他にも魔女が!?」
信じられないとカイルはルミエリナを見る。
「うむ、昔程はおらんがな。数える程度じゃ...しかし、妾の知る限りでは人間に手を貸すような...いや、1人おったな。妾が嫌いな奴が...」
ルミエリナが言うにはこの国には人に隠れて過ごしている魔女が数人いるらしく偶に国王から招集を掛けられた時だけ姿を現すらしい。
招集については聞いていたがまさか魔女だったとは。まぁ王位継承権を放棄してからは成る可く関わらないようにしていたからな。
「その中でシロを欲している魔女がいると?」
「そうじゃ。彼奴は妖精の羽や粉を使って実験するのが好きな奴なのだ。禁術を使うような奴じゃから妾は勿論、その他の魔女からも距離を置かれておった。ケット・シーの生き残りがいると知って欲しくなったのじゃろう。この国にいる妖精は妖精界へと帰ってしまったのじゃから。元はと言えば彼奴が悪い人間に混血がいる事を教えてしまったのが原因だったな...。」
「そんな魔女や人間にシロが見つかれば...」
『ただではすまない。』嫌な想像をしてしまい。どうしたらシロを助けられるか考えを巡らせる。
「まぁこの国の王様は馬鹿では無いし妾とも仲が良いからケット・シーの生き残りなど存在しないと公表して貰おう。それだけでは収まらないだろうがのぅ。マイヤー公爵達は王様に何とかしてもらうとして魔女は妾が何とかするつもりじゃ。だからここでエミリーを守って欲しい。この子が信用したお主にしか頼めんのだ。」
膝に乗っているシロを愛おしそうに見つめ優しく撫でているルミエリナは母親のようだと思った。
「あぁ、頼まれなくても」
俺は安心させるように少しだけ笑ってみせた。
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