待ち伏せ
(ん?この匂い...)
(お師匠様?)
「なぁーん」
カイル達と街の巡回中にフワッと懐かしい香りがした。お師匠様の匂いは石鹸の爽やかな香りと共に薬草等の匂いが混じっている事が多い。
お城に行く時や何処かへ出かける時は魔法を使って綺麗にしてるみたいだけど大概はあの香りなのだ。
その香りが一瞬だけフワッと香ってきたのでもしかして!?と思ったけれどお師匠様は見当たらない。
(気の所為だったのかなぁ。なんかあの匂いを嗅いだからか無性にお師匠様に会いたくなっちゃったなぁー。)
「...リー、エミ...エミリー」
「!?」
「エミリー、無事か?」
(お師匠様!!!)
暗い路地の間から覗くのはずっと一緒に住んでいて私をお世話してくれていたお師匠様だった。
(お師匠様お師匠様お師匠様!お迎えに来てくれたんですか!?)
「にゃーんにゃーんにゃーん」
「ん?...いや、まだだ。まだ隠れておれ。この辺は安全だからまだここにいなさい。...どうだ?ここでの生活には慣れたか?エミリー、お主誰かにバレたか?」
(ギクっ!!)
「その反応はバレたんじゃな。まぁ隠し通せるとはあまり思って無かったからなぁ。そ奴は信頼出来るのか?危ういならまた違う安全な場所に飛ばすが?」
(...はぃ、バレちゃいました。でも!1人にしかバレてませんし、その人はとっても信頼できる人です!だから多分、大丈夫だと...多分...大丈夫...ですよね?)
「にゃ、にゃーん。にゃん!...にゃ?」
「お主は相変わらず何処か抜けておるな。...そ奴はあの騎士のどれだ?」
(えーと...)
お師匠様に見てもらおうとカイルがいるであろう騎士の集団を見たがそこにはカイルはいなかった。
(あれー?何処かしら?いつも私の事を気にしながらだから1番後ろにいるはずなのに)
「シロ!!!」
いなくなった私を探してくれてたみたいで少し息を切らせて私の元へとやってきた。
(あ!いた!お師匠様、この人がそうなの!)
「みゃん」
「ふむ、こやつか。ほぉ、中々真面目な青年みたいじゃな。...名は?」
「...カイルと申します。失礼ですが貴女は?」
カイルはお師匠様を警戒しながら私を抱き上げてくれた。
「カイル、とな。...妾はこやつにお師匠様と呼ばれている。他は...そうじゃのぉ、森を統べる者だったり大魔女等と呼ぶ奴も多いな。」
「...貴女様が、シロのお師匠様であり大魔女だったのですね。」
(大魔女?森を統べる者?お師匠様って色々な名前で呼ばれているのね!)
「...カイルよ、ここはこの子にとって安全な場所じゃ。しかし、それもいつまで続くかは分からぬ。この子は特別なのじゃ、守ってやってはくれぬか?」
「...特別、とは?」
「それはまた来た時にでも...はぁ、時間切れじゃ。さて妾は行かねばならぬ。エミリー気を付けなさい。...カイルよ、この子を頼む。」
それだけ言ってお師匠様は消えてしまった。
(むぅ、あんまり喋れなかったわ。お師匠様、せっかちね!)
「にゃー」
お師匠様が突然消えたのでカイルは呆然とお師匠様がいた場所を眺めていた。
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