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公爵領にて、邂逅

「──困ったものですねぇ」


 青年はぽつり、と呟いた。新聞の紙面に報じられていたのは、悪名を轟かす海賊に襲撃された村の被害状況だった。最近ではヴェルファート島とユレイシア大陸の間に広がるヴェルア海峡にまで現れるようになったらしい。青年はざっと他の記事に目を通すと、一部購入して店を出た。

 青い空が広がる中、街中は大賑わいだった。広大な港には多国籍の貿易船が並び、商人の人種も様々だ。青空にはためく色取り取りの旗の下、腰に帯剣した警邏兵が積み荷の検閲をしたり、荷を運んでいた水夫と話し込んだりしていた。

 場所は、ヴェルファート島の西に位置するヴェスト国の一部、ガイアルフェルーネ公爵領ヴェスティア島。かつては草木ばかりが生い茂る無人島、未開の島であったこの地だが、ガイアルフェルーネ公爵の手によりヴェスト有数の貿易港となっていた。

 公爵領の中心部には公爵の屋敷である、歴史は浅いが、人の目を惹きつけてやまない壮麗な城がある。白を基調にした城はかつてヴェストを含むヴェルファート島を統一した王朝ヴォルフェルスの城を彷彿させ、観光の名所にもなっている。

 個人の城だが、気の良い公爵は週末には私的空間を除いて──私物なので全てが私的空間である筈なのだが──観光客に見学を許しているのだから、何とも寛容な主である。

 そんな寛容な公爵のお膝元の街で、今日の事件は起きていた。


「お待たせ致しました、ライト様」


 賑わいを見せる市に一際目立つ容姿を持つ人物が、店の前で辺りを見回している。

 白銀色の髪を背中に流し、長い睫に縁取られた、海のような深青色の瞳が怜悧さと思慮深さを併せ持つ。飾り気のない旅装束に包まれた身体はすらりと細く、女神もかくや、といわれる麗しい容姿は人目を引いた。……とはいえ、このレシア・サキリスは立派な青年である。


「…ライト様?」


 連れ合いの名前を呼んでも、目的の人物から返答はない。辺りを見回しても姿はない。

 途端にレシアは青褪めた。石膏のように白く透き通る肌と美貌は絶世の美女と見紛う。その頼りなく下げられた目尻に長い睫がかかり、憂いた表情は庇護欲を掻きたてる。


「──お姉さん、どうかしましたか?」


 そんな彼に声を掛けてきたのは、レシアと同じような旅装束の青年だった。怪我でもしているのか顔の右半分は白い包帯に覆われ、それを隠すように右側に流された髪は艶やかな黒髪だ。殆んど顔は覆い隠されているものの、部位だけで見れば、此方の青年もとても整った顔立ちをしている。

 そんな青年の問いに、レシアは嘆息する。理由は言わずもがな。


「私は男です」


 水を打ったかのように静まり返った、一瞬の間の後。


「「「「…ええぇっ!?」」」」


 目前からではなく周囲から一斉に驚嘆の声が上がる。レシアの言葉に驚いたのは眼前の青年ではなく、その他の声を掛けそこなった者達だった。人種や職種を問わず、あちらこちらから驚嘆の声が上がり、レシアはその美貌を顰めた。普段であればその勘違いに対して多少なりとも怒りをぶつける所だ。

 が、生憎、今のレシアにはそんな時間がなかった。


「それは兎も角、この位の黒髪の少年を見かけませんでしたか?」


 見た目だけで人を判断するな、と説教でも始めようかという考えは心の中に押し込め、目的の人物を探すことを最優先にした。


「えっと…確か、その裏通りの方に…」


 ガッシャーン!

 青年の返答とほぼ同時に何かが割れる音がした。青年は何かあったのかと眉を跳ね上げて振り返ったが、レシアは顔色を変えなかった。


「ありがとうございます、では失礼」


 レシアは目前の青年に聊か素っ気無い礼を述べると、音がした方へと向かった。

 本屋と雑貨屋の間に狭い路地がある。陽光が差し込まない路地は暗い。公爵領のお膝元とはいえ、何処にでも荒くれ者はいる。そういった輩が屯するにはうってつけの場所だ。

レシアは眉間を押さえた。……あの音がした時点で、大体の予想はついていたけれど。


「何をされているのです、ライト様」


 目当ての人物を、よりにもよって当たって欲しくない予想通りの所で見つけてしまい、レシアは今日何度目かの溜息を吐いた。


「あぁ、レシア。絡んで来たから相手しただけだ」


 目当ての人物に声を掛ければ、あっさりとした応答が返ってくる。薄暗い路地に一人佇むのは小柄な少年だ。その足元には大柄の、二人の男が地面に伏した状態で転がっている。この二人には明らかに不埒な目的があったといえよう。……狙った相手が悪かったが。

 レシアは、それらを踏まえてまた深い溜息を落とした。別れてものの数分の間に絡まれて路地に連れ込まれた挙句、自分で始末してしまうとは。


「ライト様、お待たせしていた私が申し上げられることではないと存じますが、何故、毎度の如く絡まれ、挙句、始末までしてしまうのですか?もう少し、ご自分のお立場をお考えください」


 彼に仕え、はや十数年。何度目か分からない説教をすればいいのか、この主人のことだと呆れればいいのか。兎に角、いつもの通過儀礼とでもいえよう小言を繰り出したレシアに、ライトと呼ばれた少年がぷいっと視線を逸らす。


「……そりゃ、兄様の命令で来ている以上は迷惑かけられないけどさ」


 闇に溶け込むような黒い髪の下で、アクアマリンのような薄水色の瞳が不服そうに歪んだのを捉え、レシアはまた溜息を吐いた。


「…ライト王子殿下、さっさと帰りましょう」


 敢えて身分で呼べば、少年は「はいはい」と投げ遣りの応答をする。

 この少年──ライト・ユキリアは現ヴェスト王と、今は亡き側妃メルディアの間に生まれた、第二王子だ。黒絹のような柔らかな黒髪と、アクアマリンを思わせる青い瞳は父親譲りだが、この活発さというか向こう見ずともいえる行動力は破天荒な母親譲りである。

 ライトは薄闇の路地から日の当たる場所に出ると、眩しそうに眼を眇めた。

 ライトは、第一王子であり異母兄であるルーク・スカルティアからガイアルフェルーネ公爵に親書を届けるように頼まれていた。この程度の仕事なら伝令役でも十分だが、この島の主はライトの後見人であり、現ヴェスト王の叔父だ。ライトが行った方が何かと都合が良いだろう、と思いもするが。


「兄様、最近俺をパシリにしてない?」


 不服そうに呟くライトは、王子といってもまだ十五歳の少年だ。白い頬を不服そうに膨らませ、子供じみた表情を浮かべた。


「こういったお役目もルーク様がライト様を信頼してこそ、でしょう」


 微笑むレシアに、そうかもしれないけどさ、とライトは納得がいかないと言いたそうに応じる。異母兄の頼み事は別に不満ではない。が、素直に従えない年頃なのである。

 そんなライトの心中を察しているらしく、レシアはくすくすと笑う。彼は若いながらもライトの側近で、華奢な見た目に反してかなりの強者である。呆れながらも毎回付き合ってくれる街の散策も、通過儀礼になった小言も、彼くらいの忍耐力がなければ十年以上もの月日を一緒に過ごせなかっただろう。……それくらい我が儘を言って振り回している自覚がある。やめないけど。


「──あぁ、お連れさんは見つかったようですね?」


 大通りに出て間もなく、黒髪の青年が声を掛けてきた。怪我でもしているのだろうが、右目を包帯で隠していなければ中々整った顔立ちの美青年だ。


「あぁ、先程の」


 青年のことを知っているレシアが応じて、ライトは「誰?」と尋ねた。


「先程、ライト様がお隠れになったためにこの方に尋ねたのです」

「……それは申し訳ない」


 レシアの言い方に文句を言おうとしたが、それは後回しだ。軽く会釈をして詫びると、青年は微笑んだ。深青色の瞳は三日月を画き、湖面が揺れるように光の泡が広がる。蒼玉のような瞳はヴェストでは有り触れた色合いだが、黒髪とは珍しい。ヴェスト人の多くはレシアのような銀髪か金髪で、ライトや彼のように黒髪を持つ者は少数だ。


「貴方はヴェスト人なのか?それとも他国の観光客か?」


 ヴェスティア島はユレイシア大陸とヴェルファート島の間にある。商船が立ち寄って活気立つ街並みも、その地点が理由だ。ヴェスト本土では見かけない衣装や装飾を纏った人々を見るのが楽しみで、毎度散策に出かけるのがライトの恒例行事でもある。

 西に位置する大陸とは古くから貿易が盛んで、馴染のある服装と髪色だが、比較的新しい取引相手で東からやってくる商船や観光客は黒髪の人種が多く、ライトは物珍しく感じる。


「ヴェスト人でもありますが、観光客でもありますね。これから船でヴェストに向かいます」


 そう言った彼は港に停泊している船を指差した。次に本島に向かう船だ。どうやら帰りの船は同じらしい。


「そういえば、お名前を伺っていませんでしたね。私はアルトと申します」

「俺はライトだ。こっちはレシア」


 名前だけを乗り、身分は伏せた。王子だとか王城に務めているとか、ややこしい話になるのは目に見えているし、公式の使者であるとは言っても観光客に話す必要性もない。


「ライト殿…古語で『光』ですか。良いお名前ですね」


 唐突に振られたのは、ライトと名前の由来だ。この地域では古語や歴史上の人物の名前を付ける風習があるが、まさか、褒められるとは思わなかった。


「貴方こそ、三代目のヴォルフェルス王の名前だ。立派な名だな」


 青年の名である『アルト』は、ヴェスト以前の王朝──ヴォルフェルス王朝時代でよく用いられた王の名で、特に三代目の王アルト一世は名君といわれている。

 が、この人物は歴史的に有名ではあるが、それはあくまでも貴族や学者人などの間の話なのだ。


 まぁ、教養がなければ生きていけない時代ではないし、読み書きは兎も角、歴史──特に建国前の時代なんて庶民に必須な学問でもないしね……趣味で学ぶこともできるけど。


 知らないかもしれないな、とそう思いつつも自分の名前について褒められて、何も言わないのは格好が付かない気がした。


「えぇ、この名前は私の誇りです」


 彼はにっこりと微笑んだ。古語を知っているだけでなく、その時代の歴史にも知識があるらしいことに驚きつつ、感心した。ヴォルフェルス時代に造詣が深い人間は数少ない。


(余程裕福な家の出なのか…或いは、元貴族、か?)


 アルト青年の正体は不明だが、レシアの顔を知らないならば、ヴェストで地位が高い人物ではないだろう。レシアは側近だが、ライトが王城限定で出不精なので、王城内で伝手があるのは彼だったりする。

 ライトはアルトとともに、ヴェストに向かう船がある港へと足を向けた。

 貿易港には三本マストの大型の貿易船が停泊していた。国旗を掲げているのはユレイシア大陸やエルリア大陸にある国々だ。これからヴェスト本土に向かうのだろうが、その船員らしき男たちがガイアルフェルーネ公爵領騎士団という腕章を付けた人間に囲まれているのが見て取れた。


(あぁ、今日もご苦労なことだ)


 公爵領には特別な規則がある。近年、ヴェストでは国外に持ち出しが認められない物質が増えたこともあり、公爵領を通過する船──実質的にヴェスト本土に輸出入される積荷を乗せた船──は公爵領の騎士に検閲されることになっている。そのために多くの水夫が公爵領で一晩を明かさなければならないので公爵領では宿泊施設も繁盛しているらしい。


 ……公爵よ、それは実利が目的か?我が祖父ながら、そのやり方は感心するよ。法の改正は建前じゃないよね?信じてるよ?


 既に騎士による検閲が終わっている船に乗ったライトからすれば「ご愁傷様」と言うしかない。きっと、あの規模の船は今日中にこの港を出ることはできないだろう。


「──あ!」


 同情しつつも商船から視線を転換した瞬間、ライトは声をあげた。それと同時に膝から崩れ落ちた。

 欄干に手をついたまま膝を折ったライトの落胆した様子に、アルトは大袈裟なほどに驚いたようだ。いや、この場合はライトの落胆の仕方が大げさなのだろう。


「ライト様、ガイアルフェルーネ公爵領の名物が食べられなかったからといって不機嫌にならないでください」


 レシアはライトの心中をどうやら察していたようで溜息を零す。……有能な側近よ、心の仲間で読まんで宜しい。


「名物って…あぁ、あのケーキですか?」

「左様です。そういえば、買い物の途中でした」

「来る度に買ってたのに…」


 決して食い意地が張っている訳ではない(ライト談)が、公爵領で流通する菓子は特別なのである。様々な国の貿易船の中継地点となっている公爵領では各国の文化が持ち込まれ、ヴェスト本土にはない物が流通している。実際、異母兄の使いの半分はそういった物資の調査だ。それらをすべて終え、定番の菓子を買って帰ろうとした時、ライトは破落戸に絡まれたのだった。


(不良に絡まれるまでは覚えてたのに…!)


 ライトは甲板の欄干部を拳で叩いた。先刻絡んできた破落戸どもを今からもう一度叩き潰しにいきたい。というか、今から戻って買いに行きたい。しかし、船に乗ってしまったからにはもう後戻りできないので、次の機会を待つしかない。ライトはがっくりと項垂れた。


「…えっと、これはそれとは違いますけど、召し上がります?」

「あ!ティラミス!」


 ライトの落胆に苦笑したアルトが取り出した箱の中身を見て、ライトは声を跳ね上げた。ライトに自覚はないが、結構な甘党であり、食い意地が張っているとレシアは断言する。


「ライト様、お行儀が悪いですよ」


 無邪気にはしゃぐ主人に、レシアは注意しながらも笑っていた。何だかんだと言っても、彼はライトには甘いのであった。


「ヴェストでは流通していないのですよね、あのケーキは」

「まぁ、まず日持ちしないから土産としては向かないな。一般家庭でもできなくはないだろうが、材料は輸入頼りで高価格だし」


 詳しい材料は知らないが、少なくとも知っている材料の中でもヴェストでは揃わない。輸入品は輸出国の影響で価格が高騰することもあるし、ヴェストで定着するには少々難しい。


(だから、今回のように公爵領に立ち寄った時だけに訪れる、至福の時間だった筈なのに…!)


 破落戸に喧嘩を売られるのは、慣れた。しかし、彼等にも時と場合を選んで欲しいとさえ思う。特に、帰路の途中は一番駄目だ。かなり私的な理由で。

 口の中に広がるほろ苦さに怒りを沈下されつつあるライトだったが、アルトの言葉に一瞬、その味を忘れた。


「あ、ヴォルファルアの海軍船ですね」

「ふえ?」


 菓子を頬張りながら、呟いたアルトの視線の先を見る。そこには、一隻の強大な軍艦があった。船のマストに掲げられているのはヴォルファルアの国旗だ。三本マストの大型艦船で、周囲には他にも巡回中らしい軍艦が航海している。ライトが乗る船からは、一番近くを通った船の甲板上の様子が見て取れた。軍服を纏った男たちが慌ただしく動いている。

 そんな中、一人だけが此方を見上げていた。黒い軍服の中でひときわ目立つ白い軍服。ダークブラウンの髪を棚引かせる若い軍人だった。十七、八歳だろうか。

 どくん、と胸がざわめく。ダークブラウンの瞳に力強く射抜かれるかと錯覚するような眼光の鋭さ。それを敵意だと理解して、重い息を吐く。


「やはり、警戒されていますね」

「あぁ、一応まだ戦争中だからな」


 苦く笑うアルトに、ライトはひっそりと息を吐く。

 ヴェストとヴォルファルアは同じ島にある隣国同士で、戦争中だ。とはいっても実質的に交戦をしている訳ではない。約半世紀前に戦争が勃発して以来、三十年ほど前までは国境が変わるほどの大きな戦いだったが、それ以降は殆ど睨み合いだ。しかし、正式に和平を結んでいる訳でもなく、実質的な休戦状態という訳だ。


「どうなるのでしょうね…あの島は」


 何処か遠い目をして、アルトは呟く。二国は戦火を交えなくなって久しいが、何時、軍事活動が起こるか。それだけに不安を抱えている者も多くいるだろう。


「……いずれ、平和になるさ」

「だと、いいですね」


 苦笑するアルトに、ライトは他に言えることがなくて、菓子を口に放り込む。忘れていた甘い香りが口いっぱいに広がった。


「……アルカディアス神のご加護がありますように」


 海を見つめる彼は、そう言って祈るように手を併せた。

 かつて、ヴェルファートを統一した王朝の始祖、アルカディアス・ヴォルフェルス。

 彼を崇め奉る人間はヴェストに少なくない。ヴェスト王家こそヴォルフェルス王朝の血を継ぐ正統なる後継者だと王家に陶酔する者もいれば、ただ島にある国同士が争っている現実から逃避するように平穏さを求めたがために信仰する者もいる。


(アルカディアス神、か…)


 ライト自身は熱心に神を信仰していない。神がどうとかいう宗教的な考えを否定もしないが、肯定もしない。しかし、その存在が、彼の信じるものならば、それを形だけでも信仰しよう。偽善かもしれないが、多様さを受け入れるのも重要なことだし、それが礼儀だろう。形ばかりの祈りを目礼に込めると、不意に明るい声が聞こえて来た。


「あぁ、ガイアルフェルーネ公爵閣下はヴェスト王陛下の叔父君に当たるんですよね?」


 アルトはにっこりと隻眼を細める。どうやら、神云々の話はすでに意識から外れたらしい。


「あぁ、公爵は先王ロイムス陛下の末の王子だ」

「…あぁ、ロイムス王の…」


 呟くように繰り返されたそれに、ライトは何処か不穏なものを感じた。


「アルト…?」

「末の王子は外れくじでも引かれたのですか?公爵閣下が与えられた領地はかなり僻地ですよね。しかも、もとは未開の地だったのでは?」

「あぁ、よく知ってるな」


 ライトはアルトの博識さに舌を巻いた。

 ガイアルフェルーネ公は、開拓者、冒険家ともいわれる自由奔放な人物だ。王子時代から国中を渡り歩き、様々な視点から意見を述べたと言う。また、本島から遠く離れた土地を父王から与えられた彼は、未開の地を瞬く間に豊かな貿易港へと変えた。それが一種の武勇伝となり彼を慕い、集う者も多い。


 ……まぁ、豪傑だと思うよ、尊敬できる人物だとも思うよ、長く一緒にいなければね。母曰く『顔だけで行動力のない輩より余程頼りになる人物』だそうだが……その豪快な性格は元王子とは思えない。

 え?人のこと言えない?……まぁ、自覚はありますが。似たもの同士ということで。


「そろそろ天気が悪くなりそうですよ、中に入りましょう」


 レシアの指摘通り、急に風が出てきて足場がぐらついた。気が付いた頃には空に灰色の雲が広がり、潮の流れが速くなっていた。

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