表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
月京妖し語り~風説百魔草紙~  作者: 筑前助広
第三回 夜の山
19/31

その五(最終回)

 目が覚めると、眩い陽の光に思わず目を細めた。

 山の中だ。視界には、生い茂る木々の葉があった。

 あの長い夜が明けていた。酷く頭が重いが、生きている事に才十郎は安堵した。

(あれは夢だったのか……)

 異変に気付いたのは、身を起こそうとしたした時だった。

 身体が荒縄で戒められている。隣りでまだ眠り呆けている又助も同じだった。

「おい、又助」

 と、起こそうとした時、

「もう少し寝かせておいてやれ」

 と、いう呑気な声が聞こえた。

「まぁそう言っても、簡単には起きんがなぁ」

 首を動かすと、男が歩み寄ってきていた。

 五芒星の擦文すりもんが施された純白の褐衣かちえに、括袴くくりばかま。そして癖毛を結った頭には、立烏帽子。歳は三十過ぎだろうか。珍妙な恰好をしている。

「誰だお前は?」

「通りすがりの陰陽師さ」

「陰陽師だと? ふざけているのか」

 すると、陰陽師は苦笑して、才十郎の側にしゃがみ込んだ。

「おいおい。陰陽師はふざけた商売じゃないぞ。こうして人助けをしておる」

「俺達をこうしたのはお前か?」

「ふふ。そうさ。お前達が悪さをしていると、妖鬼どもが噂していたのでね。ちょっと調べると、お尋ね者だそうじゃないか。お前を捕らえて役所へ連れて行くと銭を貰えるというので、こんな山の中まで出張でばったわけさ。あの山人は助けられず悪い事をしたが」

「すると、昨日の妖鬼はお前の……」

 その質問に、陰陽師は首を横に振った。

「私が手を下したのは、あの老夫婦と呻き声だけだな。なぁ?」

 すると陰陽師の背後から、二つの足で立ち、白い毛並みを持つ山犬が現れた。

「紹介しよう、犬童丸だ」

 犬童丸は、無言で才十郎を見つめている。

「だから他は知らぬよ」

 では、あの手は、あの女は何だったのか?

 いや、この人間のように佇立している化け物はなんなのだ。だが、そのような疑問はどうでもよくなってきた。どうせ、このまま自分は磔にされるのだ。

「〔諏訪の鬼〕と恐れられた俺が、鬼に祟られるとは笑わせるぜ」

「生きている人間は、鬼になれぬよ」

 陰陽師は背を向け、

「藤九郎」

 と、呟いた。

 すると、どこからか現れた水干姿の男に、才十郎は抱え上げられていた。

次回から、舞台を穢土ならぬ江戸に移します。

乞うご期待!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろう 勝手にランキング
筑前筑後の代表作!⇒念真流サーガ
時代小説短編集⇒巷説江戸演義 小噺
和風ダークファンタジーシリーズ⇒風説百魔草紙 小噺
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ