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邪神  作者: 霧島樹


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021「計測」

「……もしもし」


『やあ、初めましてタイチ。話は聞かせてもらったよ。私はセオドリック・エンフィールド。キミの目の前にいるレジーナの上司で、今回の件における責任者だ。気軽にセオって呼んでくれ』


「なるほどね。盗聴してたのか」


 電話越しに英語で話し掛けてきた男――セオドリックに対し、タイチも英語で受け答えする。


『もちろんさ。私たちはキミにとても興味があるからね。キミのことをもっとよく知りたいんだ』


「よく言うぜ。どっちにしろ今日オレをとっ捕まえようとしてたんだろ?」


『まあね。ただキミはなかなか話せる男のようだ。話し合いのテーブルに着いてもらえるならば、それに越したことはない。私たちも争いは好まないからね』


「そうかよ。んじゃさっさと話を進めようぜ。あんたらの本拠地に行った方が都合良いならそうするけど?」


『それは助かるな。ではさっそく案内させよう』


 セオドリックがそう言うと、玄関のドアを開けて全身黒づくめの男たちが居間へと入ってきた。

 全員が両手でサブマシンガンを構えており、格好も完全武装といった感じである。


「おいおい、こっちに銃を向けさせんなよ。ビックリしてこっちもソウルスティールしちまうぞ」


『おっと、それはすまない。みんなキミを怖がっているんだ。今すぐ銃を下げさせよう。……全員銃を下げろ』


 電話越しにセオが無線か何かで指示を飛ばしたのか、黒づくめの男たちが全員銃を下げる。


『さあ、先頭の男について行ってくれ』


「おう。……おーい、お前らあんまオレに近づくなよ。危ないから」


『ハハハ、あまり脅かさないでやってくれ』


「脅しとかじゃなくって親切心なんだけどな」


 そんな会話をしながらタイチは黒づくめの男たちと外に出て、すぐそこの道路に停めてあった黒塗りの車へ乗り込んだ。


「うへぇ……相乗りかよ。むさ苦しいし危ないから、ひとりで乗らしてくんない? 心配しなくても逃げねぇよ」


『わかった。……おい、彼を後部座席にひとりで乗せろ』


 セオドリックが指示を飛ばすと、すでに後部座席に乗っていた黒づくめの男が車から降りた。


「お、いいね。快適快適……って、ん?」


『何か気になることでもあったかな?』


「今ドアからガチャって音が……あ、この車、中から開かないようにカギ掛けただろ。オレは逃げないって言ってんのに」


『ああ、その車はそういう作りになってるんだ。気を悪くしないでくれ』


「はいはい。わかったよ。さてと、んじゃ移動時間中にさっさと話を進めるとしますか」


『このまま電話で? 随分とせっかちだね』


「あんまり時間を掛けると眠くなっちゃう相棒がいるからな」


『相棒?』


「よし、んじゃそのへんも含めて話をしとくか」


 車で移動している最中、タイチはセオドリックにこちら側の事情を説明していった。







 ◯







 車の中で目隠しをされ、しばらく移動したあと。


『もう目隠しは取って構わないよ、タイチ』


「やっとかよ……っと」


 タイチが目隠しを取ると、そこは濃い灰色の壁に囲まれた取調室のような場所だった。

 セオドリックの声は天井隅に設置してあるスピーカーから聞こえており、本人は見当たらない。


「なんだよ、結局アンタ直接は話さないのかよ」


『残念ながらね。私もできれば直接会って話をしたいんだが』


「はいはい。そういうのはいいよ。んで? オレはこれからソウルスティールの実演でもすればいいのか?」


『話が早いね。まさにその通りだ。キミに特別な力があることは既にわかっていることではあるのだが、ちゃんとした計測をしている中でのデータがほしくてね』


 セオドリックがそう言うと一面の鏡になっていた壁が透き通り、隣の部屋が見えるようになった。

 隣の部屋には複数の白衣を着た人間がいて、中央にはイスに縛り付けられ目隠しをされた男が座っていた。

 目隠しされた男の近くには計測機械らしきものが並んでおり、これからやろうとしていることの内容がなんとなく予想できる。


『紹介しよう。彼らは右からヤーコフ・アンドロシュ博士、マリア・エイベル博士……』


「あー、いーよいーよ。どーせ覚えらんねーし覚える気もない。とにかくあんま長々とやられるとフェイスだけじゃなくてオレも眠くなってきちまうから、さっさとやること終わらせて今日は帰らせてくれよ。ちなみにさっき渡したレポートにも書いてあるけど、もしオレを監禁しようとしたらフェイスがオレと同化して何もかも終わらせるらしいから、そこんとこよろしく」


『……もちろん、キミが私たちに協力的であるうちは、私たちもキミを監禁したりはしないさ、タイチ』


「協力的であるうちは、ね。りょーかい。肝に命じておくよ。……で? オレはあの目隠しされてるオッサンをソウルスティールすれば良いのか?」


『そうだ。できるか?』


「もちろん」


 タイチはそう言うと一瞬だけ目を見開いて、イスに縛り付けられている男に意識を集中した。

 すると男の魂が肉体から飛び出し、タイチの胸の中へと入り込んでいく。


「終わったぜ」


『なに? もう終わったのか? ヤーコフ博士、被験者は……なるほど、本当にもうソウルスティールを終えているようだね。これはすごい』


 セオドリックが驚いたように言うと、スピーカーの向こうから次々と驚愕の声が聞こえてきた。


『まさか本当にこんなことが……』


『やはり意思だけで命を奪えるのか……』


『信じられん……』


『おお……神よ……』


『みなさん静粛に。静粛にお願いします』


 セオドリックの声で場が鎮められる。

 どうやらセオドリックは複数の人間と一緒にこちらを観察しているようだ。


「データは取れたか?」


『うん、ちゃんと被験者がソウルスティールされた瞬間の状態を計測できたみたいだね。協力ありがとうタイチ。ところでこのレポートには書いていないが、ソウルスティールにはキミにとってデメリットや、副作用のようなものはないのかな?』


「デメリット? 特にないけど?」


『なるほどね。ならば今度は計測機械を変えて……』


「もっかいやれって?」


『頼めるかな?』


「いいけど……早めに帰してくれよ?」


『最大限の努力はしよう』


「頼むぜ……っていうか、フェイス?」


『ん? どうしたタイチ?』


「いや、ぜんぜん喋らないから眠ってんのかなって思って」


『ここに着いてからは起きていたぞ。だがまだまだ俺の出番はないようだから、これからうたた寝するつもりだ』


「うわぁ出たよ、うたた寝」


『ではまたな、タイチ』


「問答無用かよ……またな」


 呆れながら言うタイチの声を聞きながら、俺は意識を軽く闇の中へ没入させていった。

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