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邪神  作者: 霧島樹


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20/110

020「接触」

 読者の皆様のおかげで『邪神』が日間ランキング4位にランクインしました。

 本当にありがとうございます。

 皆様の応援のおかげでここまでこれました。

 4位ってところがまた邪神っぽくて運命を感じます。(ムリヤリ

 これからもがんばりますので、引き続き『邪神』をよろしくお願いいたします!

『タイチ。キミは明日、何食わぬ顔でまた大学の講義を受けてくれ。そうすれば高確率でもう一度、あのレジーナ・ミューアと名乗った女が再び接触をはかってくるだろう。そうしたら彼女に『二人っきりで話をしたい』と言うんだ。それに対して彼女は喫茶店などを待ち合わせ場所に提案するだろうが、それは断れ。キミの自室か、彼女の家で二人きりになりたいと言うんだ』


「へぇ、そりゃまた香ばしいな。理由は?」


『彼女としてはキミが危険人物であることをわかっているがゆえに喫茶店などを指定するだろうが、喫茶店などでは突っ込んだ話ができないからな。それにないとは思うが、もし万が一この誘いに乗らない場合はただキミに興味を持っていた一般人だったという判断もできる』


「おい。それレジーナが一般人だった場合、オレがただのイタいヤツになるじゃねぇか」


『どちらにせよ仲良くなるわけにはいかないのだから、別にいいだろう?』


「よくねぇよ……」


『残念ながら選択肢は他にない。もし彼女の背後がアメリカ政府だとしたら、もはや俺たちに逃げ場はない。日本の時とは違うんだ。優位に立てるうちに交渉をしなければ大変なことになる』


「交渉って?」


『細かい部分はのちのち話すが、基本的にはキミの存在を政府に認めさせることだ。キミが死ねば世界は滅亡する、という部分も正直に話してな』


「認めさせるって……そんなことできんのかよ? オレが死んだら世界が滅亡ってのも、かなり荒唐無稽な話だぜ?」


『できるできないの問題じゃない。やるしかないんだ。タイチ。レジーナへの手土産として、家に帰ったら俺たちに関する情報を正確に記載したレポートを作るぞ。タイピングを頼む』


「え……俺たちに関する情報って、『邪神』としてのってことか?」


『そうだ。俺の存在、エナジードレイン、ソウルスティール、射程距離、渇望期間、世界の滅亡、異世界間の転移……キミが知っているすべての情報をレポートにまとめてくれ』


「うへぇ……マジかよ……」


『頼むぞ。俺は家に着くまでいったん寝る』


「あぁ、こういう時でもお前って寝るのな……」


『もちろんだ。ではまたなタイチ』


「おう、またな」


 タイチと言葉を交わしてから、俺は闇へと意識を沈め仮眠タイムに突入した。







 ◯







 次の日タイチが大学で講義を受けたあと、『レジーナが声を掛けてくる』『タイチが二人きりで会いたいと誘う』『待ち合わせ場所を家にする』という段階すべてが計画通り進行した。


 レジーナは喫茶店以外の待ち合わせには予想通り難色を示したが、それでもタイチが家以外で会うつもりはない、とハッキリ意思を伝えたら最終的にはレジーナ本人の自宅で二人きりになることを了承した。


 そして約束の日である、一週間後の昼過ぎ頃。

 タイチはレジーナの家の前にたどり着いていた。

 庭の面積が広く、家自体もそこそこ大きい一軒家である。


「さて、ここまでは順調だけど……フェイス、どうだ?」


『キミもわかっているだろうが、周囲三十メートル以内にタイチへ意識を向けている魂はいないな』


「だよな。……これって、レジーナがただの一般人って可能性はまだある感じ?」


『いや、ただ単にキミを警戒させないよう三十メートル以上の距離を保って監視しているだけだと思うぞ。いつもソウルスティールする時は射程距離ギリギリから狙っているから、感知できる距離がバレているのだろう』


「でもそれってフェイスの予想だよな?」


『ああ。だが、最悪の事態になることは考えておいた方がいい』


「わかってるよ。……んじゃ、いくぜ」


 タイチはドアの前に立ち、玄関のチャイムを鳴らした。

 すると十秒もしないうちに中からレジーナの声がしてドアが開いた。


「ハァイ、タイチ。いらっしゃい。今日は来てくれて嬉しいわ」


「おう。やっぱレジーナは日本語上手いな。社交辞令も完璧じゃん」


「フフ、ありがと」


 レジーナは微笑みながらタイチに家の中へ入るよう促した。

 タイチの皮肉が通じてるのか通じていないのかは不明だが、どちらにせよ彼女は良い性格をしているようだ。


「あれ……レジーナも手袋してんの?」


「ええ、そうなの。ちょっと手が荒れちゃって。お揃いね、アタシたち」


 居間のテーブルに二人分の紅茶を持ってきたレジーナは白い手袋を両手にはめていた。


『この前キミが話した『触れたら死ぬぞ』という言葉を警戒しているのだろうな』


「なるほどね」


「……タイチ、どうしたの? 座ったら?」


「いや、ここでいい。そのソファに座ったら窓からモロ見えだからな。オレ、狙撃されたくないし」


「狙撃? ……フフ、タイチって面白い人ね」


 向かい側のソファに座ったレジーナが紅茶を片手に微笑する。

 一見してなんの動揺もないように見えるが、よくよく観察すると紅茶を持つ手が微妙に震えている。


「それで、タイチ。今日は二人きりで話がしたいってことだったと思うけど」


「ああ、それな。実は……」


『タイチ。どうやら悠長に話している暇はなさそうだ』


「……マジか」


『マジだ。最悪のパターンだ。十、十五、二十五……驚いたな。三十人以上の人間がこの家を取り囲み始めている。タイチ』


「わかってる」


「どうしたのタイチ? ひとりごと?」


「時間がないから手短に話すぞレジーナ。オレには人の魂を吸い取る力がある」


「え……」


「あと人に触れると自動的にそいつの精気を吸い取って殺しちまう。んでオレが死ぬと世界中の人間が死ぬ。だから間違ってもオレを撃つなよ。全人類が道連れになるからな」


「な、なにを言ってるのタイチ?」


「あぁ、そういやこれも重要だった。オレは人の魂を好きで吸い取ってるわけじゃないんだ。吸い取らなきゃオレが死ぬ、オレが死ぬと世界が滅亡するから吸い取ってるわけで……別にオレ自身が快楽殺人鬼ってわけじゃない」


「…………」


「だからそっちがオレに危害を加えなきゃ、オレもそっちに危害を加えることはない。その点を踏まえて交渉したい。オレの、今後の待遇についてな」


「タイチ……アナタは、本当に……」


「ほら、早く責任者に連絡してくれよ。さすがにこれだけの人数がいつ襲い掛かってくるかどうかわからない状況ってのは、生きた心地がしないからな」


「……わかったわ。でも、連絡する必要はないと思う」


「連絡する必要はない?」


「ええ」


 レジーナが頷くと次の瞬間、ズボンのポケットに入っているタイチのスマホが鳴った。

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