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ある映画での失敗

作者: 弥栄 譽

映画を見ようとして、あれこれあったお話です。

 ある映画の話である。


 私がこよなく愛するアニメの映画の話である。


 何時ぞや見に行ったのかは記憶が定かでないが、これだけのことを覚えている。


 つまり映画を見に行こうと思いった前日、その作品のDVDを借りてきて、全話を見ておさらいしてから映画を鑑賞するのだと意気込み、実際にそれをやった。思えばここから私の不幸は始まっていたのかもしれない。


 そもそも、一筋縄に私はDVDを見られたわけではなくて、色々となし終えた後のことだった。全話を見終えた頃には空が明るかった。


 つまり私は映画を見に行くその日まで起きていたわけで、それこそ不眠で映画館へと足を運んだのである。今思えば、よくこんなことをしたと自分のことながら感心する。


 寝ぼけ眼であったが、取り敢えず朝食をすませて、劇場の放映時間を確認し、外出の準備をする頃には、そろそろ出ないと間に合わない時間になっていた。


 私はこの時も、致命的ミスを犯していたのだが、それに気づかずに出立した。



 いざ映画館にやってきた時、それは映画館の開店直後のことである。私はさっさと券を購入せんと並んだのだが、ふとおかしいと思った。


 見れば壁にかかっているディスプレイに目当ての映画がのっていない。この時点で気がつくべきだったが、半睡眠状態の私は自分が見落としただけだろうと変な納得をし、バカ正直に並んで券を買うべく待っていたのである。


 いざ自分が券を買う番になり私は


「○○の券をください」


 と言った。愛想の良い店員は丁寧に


「当劇場では公開しておりません」


 と教えてくれた。おお、そうですか。私はそれを言うのが精一杯だった。


 さて、売り場から離れて即座に確認したところ、私はなんと映画館を間違えている事実に気がついた。これはまずい。


 なにがまずいって、私はそもそも上映にギリギリ間に合うだろう時間に家を出てきていて、これからその映画館に行ったところで果たして見られるのだろうか、ということである。


 こうなっては眠気もなにも吹っ飛んだ。とにかくここにいてもしようがないと私は正しい目的地の映画館へと向かった。



 正しい目的地であるその映画館についた時、私は絶望的な気分であった。と言うのもその映画館に着いた丁度、映画の放映時間になっていたのである。


 私は重い足取りで売り場に向かった。ここでも愛想のいい店員さんがいて、私は店員さんに


「もうこの○○って映画、始まってしまっているますよね……」


 と言った。


「そうですね。でも最初に十分ほど宣伝がありますから、今からでも大丈夫ですよ」


 店員さんのその言葉に私は救われた。そして二つ返事で券を購入し、席についたのである。待ち望んだこの瞬間に、私はどれほどの期待を胸にいたことだろう。そして映画の始まる前、この瞬間! 鼓動の高鳴りを感じる。(自分で招いたことだが)困難を乗り越えてきた私にとってもはや絶望はなく、最良の時が始まる! そうなるはずだった、のだが……。


 そこには残酷な現実が待っていた。


 私はその現実と向き合うこと、その痛苦もさることながら何よりも深い悲しみのあまりに襲ってきた現実逃避という睡魔との戦いに明け暮れ、結果惨憺たる映画鑑賞になってしまったのである。


 教訓は色々とある。が、なによりやはり映画を見に行くときは、しっかりと睡眠をとっておくべきだと私は痛感した。

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― 新着の感想 ―
[一言] 読了しました。バカなことしてるなーと笑いつつ、映画館での睡魔には笑えないものがあるなあというヘンな共感を感じたりもする面白い一作でした。
2014/12/17 18:56 退会済み
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