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三話目

クリスマスに不貞寝して、今さっき起きました。どうやら無事年は越せたみたいで一安心です。明けましておめでとうございます。今年は良い年でありますように。

耳を疑った。今目の前のこの子は何と言ったのか。確かに去年の文化祭で、僕はステージに上がった。しかし結果は散々な物だったはずだ。僕のやりたくて仕方がなかった音楽は、需要から大きく外れた物であって、皆のしらけた目線をこれでもかというくらい僕は浴びたのだ。それをこの子は褒めたというのか。僕が怪訝に思っていると、彼女も怪訝な表情を見せた。


「良かったじゃないか。褒められてるぞ。」


部長が僕に言う。そこで僕はある考えにたどり着く。これは世辞か。新しく入ろうとしている部活には知っている輩がいた。そしてそいつの特技を見たことがある。そうなれば取り敢えずその特技を褒めるのも当然か。その方が話も膨らむ。納得だ。というわけで。


「ありがとう。そういってもらえると嬉しいな。」笑って流しておこう。


「しかしどうしたものか。三人じゃオセロもできないな。回し将棋でもしようか。」

オセロはさっき片づけただろう。何を言ってるんだこの人は。

「ここは文芸部ですよ。ボードゲームはやりません!」

「でも入ったばかりで、本ばかり読むというのも退屈じゃないか。折角の新入部員が逃げていくぞ。」


確かに言われてみれば、いやしかし本が好きじゃなければ文芸部には来ないだろう。現に佐伯さんも、そんなことはありませんというような表情をしている。困り顔だ。でも自分だったらどうだろう。入部届を出した直後から、下校時刻まで椅子に座って読書。少し味気ない様な気も。僕の時はどうだったっけか。あ、オセロだ…。


「そうだ。」

部長が何か得心したようなかをで手を打つ。

「ご飯食べよう。佐藤の金で。」

「は?」


何か思いた様な顔してると思ったら。最悪なことを思いついていた。いや、現時刻は16時を少し回ったころ。晩御飯には少し早い気もするが、軽食を取るくらい全く問題ないだろう。親睦も深められて良いかもしれない。しかし最後に何と言ったのか。あろうことに僕の奢りにしようとしている。しかも自分の分も払わせる気だ。


「何だ。不服そうだな。」

また面白そうな顔をして僕に言う。どうしたものか。僕が逃げる方法を模索していると、佐伯さんが申し訳なさそうに口を開いた。


「あ、いえ、流石にそれは、申し訳ないですし。そ、それに!私本好きですし!楽しいです読書!いつまでだって読めちゃいますよ!」

良い子だ。

「そうか?遠慮しなくても良いんだぞ。」

遠慮しろ。

「いえ、この時間に食べちゃうと晩御飯が入らなくなってしまいますし。」

「少食だな。」

「部長も見習ったら良いのに。」


痛い。頭を叩かれた。まぁ、何とか上手く事が運びそうで何よりだ。こういう時部長は遠慮をしない。それはそれは良く食べる。財布の中は一気に寂しくなる。うん。経験済みである。まぁもっとも今回の場合、時間帯的には軽食だろうから、そこまで警戒しなくとも良いのかもしれないけど。


「せっかく豪勢に歓迎会と行きたかったのだがな。こう、焼き肉とかで。」

危なかった本当に危なかった。なんて奴だこんちきしょう。

しかし歓迎会か。それくらいはするべきかもしれない。いやした方が良いだろう。僕の奢りではなく皆のお金で。


「今日は中島さんもいませんし、週末にでも開催しましょうか。歓迎会。」

佐伯さんはまだ、申し訳なさそうな顔だ。

「そうだな。何遠慮することはない。私たちが好きでやることだからな。一度やってみたかったんだ。」

「僕の時はなかったですもんね。」

確かにと部長が豪快に笑う。この野郎と思いながらも、僕もつられて笑う。

歓迎会の様な催しは嫌いじゃない。むしろ好きであるし、すごく楽しみだ。

それにこの流れなら…。

「どうせ支払いは男どもだしな!」

「はい。中島さんにお願いしましょう。」


すみません中島さん。

僕は悪い子です。



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