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一話目

一話目です。プロローグからだいぶ開きました。クズです。

暑い。暑すぎる……。梅雨の季節に湿りきった地面もすっかり乾燥する季節。僕はクソ真面目に先生のありがたい御講義に耳を傾けている。


「はい次、林道君。…林道君。聞こえてますか」

「……ん。ハイ!聞いてます!何でしょうか!?」


聞こえてないじゃないか。信じ難いことに、前の席に座っているこいつは、この茹だるような暑さの中、夢の中に入り込めてたらしい。本当に信じ難い。僕には無理だろう。現に無理だった。


「仕方ないですね。じゃあ佐藤君ここ、読めますか。」

「はい。僕は寝てませんから!」

「てめっ!!」


軽くクラスメイトの笑いを取っておく。僕はどうしても少し距離を置かれてしまうから、大切な事である。

佐藤。祐希僕の名前だ。何てことはない苗字。そして名前だと思う。適当に四苦八苦しながら漢文を読み終えたころ終業のベルが鳴る。放課後だ。


「おい。さっきは良くもネタにしてくれたな。」

林道がにやにやしながら話しかけてきた。別に怒ってはいないようで、ほっとした。寝てるほうが悪いと、僕は笑いながら言葉を返す。


「てんめっ!ムカツクな!!……なぁ今日は暇か。」

「一応今日も部活かな。まぁ暇っちゃ暇なわけだけど」

「なぁ。戻ってこねぇか。お前ぐらいしかいねぇんだよ。まともなの。」


またか…。今更戻れるはずもない。そもそもあそこは余り良い思い出がない。暇だけど案外楽しいもんだよと、答えにもならない返事をして適当に分かれる。


本校舎から少し離れた特別棟。科学室や、生物室がある建物の最上階の少し奥。僕は部室の扉をノックした。こんこんっ。


「おぉーいるぞー入れー。」お邪魔します。

「いちいちノックなんかしなくて良いのに。なんだか他人行儀だな君は。」

「そうですか。個人的にはすっかり馴染んだつもりですけど。」

「クセか。」「クセですね。」


まぁ良い。部長はそう言うと手持ちの携帯に目を下した。最近流行りの電子書籍とやらだろうか。-くそっ。強いなこいつ!-

違うらしい。


「ダメだ全然勝てん!佐藤ちょっと練習相手になってくれ。オセロだ!」

「オセロって…。今日は部長一人ですか。中島さんは、…来てませんか。」

「中島なら今日は帰ったぞ。さっき下駄箱の方に向かってるのが見えた。早く準備しろ-」

「文芸部なんですから。本読みましょうよ。定石本とかあるんじゃないですか。」

「実践派なんだよ!私は!」…あ、駄目だ、この人。


文芸部。今の僕の部活。部員は3名。部長、副部長、僕。少ない人数ならではのアットホームさが売り。部活を辞めてフラフラしてた僕を拾ってくれた部活。林道に言った事は嘘ではなく、結構気に入っている。


「仕方ないな。じゃあ僕が黒ですよ!」

「おぉ!今日は下校時刻までオセロだからな!」


…駄目だ。もうオセロ部に改名する日も近いかもしれない。


「しかし。今年は結局一人も新入部員が居なかったな…。このままじゃ安心して引退できんぞ。」

「やっぱり、殆どスポーツ系に取られたみたいですねー。文系なら吹奏楽とか。」

「あとは軽音楽とかか。」盤上を見ながら部長が言う。

「……まぁ、そうですね。」


こうふわっと10人くら入ってこないものか。などという部長のくだらない話を笑いながら、盤上の白をひっくり返していく。


「強いな…。」「弱すぎです…。」


こんこんっ。こんこんっ。


「誰だ?」「中島さんじゃないですか。忘れものとか。」

「おぉそうか。良いぞ。入れ~。」


「し、失礼します!」


……………「「誰?」」






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