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序章

閲覧ありがとうございます。

この物語はフィクションです。実在するすべての団体・組織その他もろもろとは一切関係ありません。

また、時折残酷描写と思われることがあります。

注意して、お読みください。

 槻山高校。

 それはたくさんの緑に囲まれ、数多くの動植物が存在する町にある。

 単純に言ってみれば〝田舎〟なのだが。

 田舎、と言っても山奥の限界集落のようなところでは無い。現に学生がおり、人口もそれなりだ。

 とは言っても、インフラが完全には整備されておらず、鉄道は一部分しか通っておらず、未整備の道が点在する始末。病院も、大学病院を小さくまとめたようなものと、開業医たちが青息吐息でやっている小さな診療所が2、3あるだけ。

 大して広くないのが幸いして、特に大きな問題にはならないのだが。

 町人の平均年齢は高いらしく、日本の平均を4歳ほど上回っているとかなんとか。

 そんなことで、学生も少なく高校はこの槻山高校のみ。町外の高校へ進学する者も少なくない。

 小学校・中学校はそれぞれ2つずつ。正確に言うと、小中一貫校(学生が減少したため)が1つだけあるので、実際には小・中合わせて3校しかないことになる。

 コンビニなんて、町に1つしかない駅構内にしかないのだから。

 多くの町人は、商店街――と言っても、アーケードでは無く、商店が軒を連ねている通りだが、そこで買い物を済ませている。ちなみに駅は、商店街のはずれにある。

 この、特に際立ったところも感じられ無い、日本にならどこにでもありそうな町だが、実は大きな秘密を抱えているということをご存じだろうか。

 ご存じで無い? それなら来てはならない。

 無知は罪だとよく言われるが、まさしくその言葉通り、この町は変わっている。

 秘密を知らない者がこの町に入れば、その者の周囲には大きな災いが起こる、なんて言い伝えがあるのだ。

 過去には、町へ入ろうとした部外者を、一人一人、手段を問わず殺害していったそうだ。

 そんな話も相まって「純真無垢に教えを守る、悪鬼羅刹の住む村」なんて仰々しいくらいの呼び方もあったのは懐かしい。今ではその呼び方も無くなったが。

 恐ろしいだろう? だが……実は真っ赤な嘘。

 この町にそんな言い伝えがあった、なんてのはとっくの大昔。

 今ではその話の存在すら知らないものが大半を占めている。

 知っているとすれば――それはよっぽどのそういう類の物好きか高齢者の方々だろう。

 要するに、知っている者もその言い伝えは信じてなどいない。現に、言い伝えを知らない大半の者たちは今元気に、普通で平凡な毎日を送っているからだ。

 どうしてそんな嘘をついたのかって? まあ、真っ赤な嘘、とは言ったけれど嘘じゃない。

 ややこしい? まあそう言うな。確かに、今は無いことをある、と言ったのは真っ赤な嘘だ。

 だが――昔、大昔はそうではなかった。

 言っただろう? 「この町にそんな言い伝えがあったのは大昔」だと。

 この話は事実であり、事実無根でもある。

 大昔は、さっきの話のようなことがあったらしい(、、、)

 らしいって言うのは、本当に、誰にも分からないからだ。

 この町の高齢者でさえ、実体験をしていないし、その方々の親だってその親だって、実体験をしていないだろう。

 何せ江戸時代よりも以前の昔のことらしく、文献も存在しない――いや、存在はあったかもしれないが、現在には残されていない。

 ずっと言い伝えられてきてはいたが、どうやらこの現代で、生々しい実体験をしていない人々の間で言い伝えは止められてしまったようである。

 誠に残念な話である。

 〝無知は罪〟というなら、この話で〝忘却〟と言うのはさらに重い罪ではないだろうか?

 言い伝えがなくなったのは、実体験、つまりその現象が無くなったからだ。

 だが、一体誰がそれを保証するのだろう?

 本当に、その〝現象〟は無くなったのか?

 もしかすると、今日、その現象は再発するかもしれない。もはやそれは、〝新たな現象〟として、新たに言い伝えられるのかもしれない。

 とまあ、これは神の期待ではあるが。

 ちょっとしたきっかけで、再び起こってしまうなら、それはそれで面白いもの。

 ともかく、こういった言い伝えがある、と言うことを知ってもらいたい。

 そして、ここに一人の少年の物語が始まる。

 少年の名は『野川(のがわ) 光信(みつのぶ)』。槻山高校に通う高校2年生である。

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