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父は建国王、母は不死鳥。俺は鍛冶師になって世界を鍛え直す  作者: 月神世一


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EP 3

「冒険者ギルドと最初の『打ち直し』」

ロードの快適な背中に揺られること数時間。

俺たちは目的の場所――ルナミス帝国の辺境都市『ファルデン』に到着した。

「にいちゃん、ワイは約束通り『ルナミスパーラー』で一勝負してくるわ。タロキン弁当とイモッカ、忘れんといてな!」

「わかってるよ。あまり時間を弄って勝ちすぎるなよ。出禁になるぞ」

「ガハハ、適度に負けるんがプロやで!」

銀貨を何枚か渡すと、オッサン・トカゲはウキウキとした足取りでネオン輝くパチンコ店へと消えていった。親父が作った娯楽施設のせいで、神話級の存在が完全にパチンカスになっている。ルチアナおばさんが知ったら頭を抱えるだろう。

気を取り直して、俺は街のメインストリートにある大きな建物――『冒険者ギルド』の扉を押した。

「おおっ……」

中は熱気と酒の匂い、そして荒くれ者たちの喧騒に包まれていた。

ルナミス帝国らしく、壁には魔導通信網を利用した『電光掲示板風のクエストボード』が設置されているが、そこに群がっているのは剣や魔法の杖を持ったファンタジーな冒険者たちだ。このチグハグな感じが、いかにも親父の作った国らしい。

俺はまっすぐ受付のカウンターへ向かった。

「すみません、新規登録をお願いしたいんですが」

「はい、ようこそ冒険者ギルドへ! 身分証か魔導通信石はお持ちですか?」

受付嬢が愛想よく応対してくれた、その時だった。

「おいおい、なんだこのヒョロいガキは。冒険者ギルドはピクニック会場じゃねぇぞ?」

背後から、酒臭い息と共に野太い声が降ってきた。

振り返ると、傷だらけの革鎧を着た大男が、取り巻きを数人連れてニヤニヤと俺を見下ろしていた。いかにも『テンプレなチンピラ冒険者』のお手本のような男だ。

「悪いが、新人は俺たち先輩に『挨拶代』の銀貨5枚を払うのがこの街のルールなんだわ。払えないなら、痛い目見て帰るこったな」

男はそう言うと、腰から乱暴に剣を抜き放ち、俺の鼻先に突きつけてきた。

ギルド内の空気がピリッと張り詰める。周囲の冒険者たちは「また新人が絡まれてるぜ」と、止めに入るどころか酒のツマミにする気満々だった。

俺は突きつけられた剣の刃を、じっと見つめた。

(……酷いな。刃こぼれだらけの上、重心もズレてる。鉄の純度も低い『なまくら』だ)

鍛冶師の目から見れば、それは武器と呼ぶのもおこがましい鉄クズだった。手入れを怠っているのが丸わかりだ。

「……おいガキ、ビビって声も出ねぇか?」

「いや。あまりにも可哀想だと思ってな」

「あぁ? 何がだ!」

「その剣だよ。お前みたいな持ち主に使われて」

俺はため息をつき、鼻先に突きつけられた男の剣の『刃』を、素手でガシッと掴んだ。

「なっ!? お前、素手で――」

男が驚愕する暇も与えない。

【創星の神鍛冶クリエイション・フォージ

ボワッ、と俺の右手に紅蓮の炎が灯った。

周囲の冒険者たちが「火属性の魔法か!?」とどよめくが、違う。これは魔法ではなく、ただの『鍛冶』だ。

炎が剣身を一瞬で包み込む。

俺はそのなまくら剣の不純物を一瞬で焼き尽くし、鉄の炭素密度を極限まで圧縮・再結合させた。刃こぼれを修復し、重心を完璧に調整。さらに空間の『重力概念』を少しだけ叩いて剣身に付与する。

時間にして、わずか一秒。

俺がパッと手を離すと、男が握っていたボロボロの鉄剣は、白銀の美しい輝きを放つ『宝剣』へと生まれ変わっていた。

「な、なんだ今の!? 俺の剣が……輝いて……?」

男がポカンと自分の剣を見つめた、次の瞬間。

――ドゴォォォォォンッ!!

「ぐあぁぁっ!?」

男の手から剣が強引に引っこ抜け、凄まじい音を立ててギルドの床板に深く突き刺さった。男はそのまま重力に引っ張られるようにもんどり打って転倒し、無様に顔面を床に強打した。

「い、痛ぇ……! なんだこれ、持ち上がらねぇぞ!?」

男が必死に両手で剣の柄を引くが、剣はビクともしない。

当然だ。不純物をなくし、密度を限界まで圧縮したその剣の重量は、およそ150キログラム。おまけに切れ味が良すぎて、自重だけで床板を貫通してしまっている。

「良い剣だろ? 斬れ味も耐久力もさっきの百倍はある特注の『超重宝剣』だ。……ま、手入れを怠る三流冒険者の筋力じゃ、一生持ち上がらないだろうけどな」

俺が見下ろしてそう言うと、男は顔を真っ赤にして床でジタバタと暴れた。

「てめぇっ! 俺の剣になんの呪いをかけやがった!」

「呪いじゃない、親切心で『打ち直し』てやったんだよ。ほら、先輩なんだろ? さっさと自分の武器を回収してどいてくれ。登録の邪魔だ」

床に這いつくばってウンウンと剣を引っ張る大男の滑稽な姿に、周囲の冒険者たちからドッと爆笑が沸き起こった。取り巻きたちも慌てて手伝うが、150キロの刃が食い込んだ剣など抜けるはずもない。

「スマートな解決ですね。……あの、登録証の発行、終わりました」

「あ、すみません。ありがとうございます」

受付嬢が、少し頬を引きつらせながらもルナミス帝国特製の『冒険者QRカード』を渡してくれた。

これで俺も晴れて冒険者だ。

「さて、初仕事は何にしようかな」

床で泣きそうになっているチンピラを跨ぎ、俺はクエストボードを見上げた。

そこにあった『ゴブリン上位種討伐』の依頼書。

これが、俺と『とんでもないウサギ』を引き合わせる最初の依頼になるとは、この時の俺はまだ知る由もなかった。

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