スマホが消える日…0円の 慣れた国で、67歳のおじいちゃんと僕が気がついたこと
✦スマホが消える日
――0円に慣れた国で、
67歳のおじいちゃんと僕が
気づいたこと――
---
【冒頭三行】
スマホが壊れたわけじゃない。
店に、もう並んでいなかった。
それが、この国で始まった
いちばん静かな異変だった。
---
★目次
1.0円スマホに慣れすぎた国
2.近所の67歳のおじいちゃん
3.押入れと机の話
4.動画が止まる、本当の理由
5.AIデータセンターが増えると、
なぜスマホが消えるのか
6.数字で見る、静かな異変
7.家電量販店という小さな戦場
8.勉強した客と、知らない店員
9.決め台詞は、たった一言
10.4GBという現実
11.壊れた「その後」に待っている世界
12.67歳のおじいちゃんは、今日も書いている
13.壊れてから考えると、いちばん高くつく
14.静かなうちにしか、決断はできない
15.あとがき
― 消えるのはスマホだけじゃない
---
★本文
1.0円スマホに慣れすぎた国
「0円ですよ」
「実質タダです」
「今ならキャッシュバックもあります」
日本人は、
そんな言葉を何年も聞き続けてきた。
本来、スマホは
数万点の部品と
最先端の半導体でできた
精密機械だ。
それが、
考えなくても手に入る。
便利だった。
でも同時に、
考える習慣を奪った。
---
2.近所の67歳のおじいちゃん
僕の近所に、
67歳のおじいちゃんがいる。
血縁ではない。
でも、顔を合わせれば立ち話をするし、
スマホのことで
時々、声をかけられる。
2年前、家電量販店で
「0円です」と言われて
手に入れたスマホ。
中国メーカー製。
メモリーは 4GB。
ストレージは 64GB。
「乗り換えたら
2万5000円キャッシュバックします」
そんな言葉に背中を押され、
おじいちゃんは
そのスマホを持って帰った。
本人は笑って言う。
「まだ動いとるけぇ、大丈夫じゃ」
「最近、固まることがあるんよね」
ストレージは、
気づけば 60GB ほど埋まっていた。
本人は、
あまり気にしていない。
だいたいの人は、そうだ。
---
3.押入れと机の話
その時、
僕はこう説明した。
「ストレージは、押入れです。
写真や動画をしまう場所」
「メモリーは、机です。
今まさに作業してる場所」
押入れが空いていても、
机が狭ければ
仕事はできない。
机の上に、
弁当箱も、ノートも、スマホも置いたら、
すぐにいっぱいになる。
おじいちゃんは、
少し考えて、うなずいた。
「メモリーは4GB」
「ストレージは60GB」
「……なんか苦しそうやのう、
わしのスマホ」
---
4.動画が止まる、本当の理由
YouTubeが止まる。
画面が固まる。
アプリが落ちる。
多くの人は思う。
「電波が悪いんだろう」
でも違う。
机が狭くなっただけだ。
4GBの机では、
今のスマホは
仕事量が多すぎる。
---
5.AIデータセンターが増えると、
なぜスマホが消えるのか
ここからが本題だ。
AIを動かす
データセンターは、
とてつもない量の
メモリーを使う。
一つの施設で、
スマホ数万台分。
しかも、
そちらの方が 儲かる。
メモリーメーカーから見れば、
・個人向け:少量・安い
・AI向け:大量・高い・安定
どちらを優先するかは、
考えるまでもない。
---
6.数字で見る、静かな異変
数字を見てみよう。
・半導体メモリー(DRAM)価格
→ この1年で 約2〜3倍
・スマホの平均メモリー
→ 昔:2〜4GB
→ 今:8〜12GB
→ AI対応:16GB以上が前提
つまり――
作られてはいるが、
個人のスマホまで回ってこない。
そんな時代に、
入り始めている。
---
7.家電量販店という小さな戦場
そうして、僕は
おじいちゃんと一緒に
家電量販店に入った。
若い店員が声をかけてくる。
「今ならお得ですよ」
「乗り換えですか?」
「分割なら負担も少ないです」
いつもの光景だ。
---
8.勉強した客と、知らない店員
僕は、聞いてみた。
「来年、
メモリー不足が
世界的に深刻化しますよね?
そうすると、
スマホの値段、
間違いなく上がりますよね?」
店員は、
少し困った顔をした。
「そうなんですか?」
「特に聞いてないですね」
「インフレですからね」
彼は悪くない。
売るために
立っているだけだ。
---
9.決め台詞は、たった一言
僕は、こう言った。
「在庫処分してますよね。
本体から3万円引きなら、
おじいちゃん、
即決しますよ。」
ポイントはいらない。
分割もしない。
一括払い。
空気が、変わった。
---
10.4GBという現実
本当は、
もっと余裕のある
メモリーを探していた。
でも、現実はこうだ。
16GBはない。
多くても12GBまで。
そして、
4GBは、もう限界に近い。
「今は動いている」
それが、
いちばん危ない状態だ。
---
11.壊れた「その後」に待っている世界
スマホは、
壊れる時は突然だ。
その時、店に行く。
そして、知る。
「このクラスは15万円です」
「安いモデルは在庫がありません」
慌てても、
選択肢はない。
---
12.67歳のおじいちゃんは、今日も書いている
67歳のおじいちゃんは、
今日も元気よく
スマホで文章を書いている。
小説投稿サイトに、
自分の経験を
少しずつ残している。
「楽しい」
「生きがいじゃ」
そう言って、笑う。
難しいことは、
僕にも
正直よく分からない。
でも、おじいちゃんは
僕の話を信じて
スマホを買い替えてくれた。
「ありがとう」
「人生、何が起きるか分からんからな」
「今でもよう分からんけど、
そういう話、
わしの人生で
何度でもあったよ」
---
13.壊れてから考えると、いちばん高くつく
これは脅しじゃない。
順番の話だ。
・壊れてから考える → 高い・選べない
・動くうちに考える → 安い・選べる
それだけの違い。
おじいちゃんは、
そこだけは
一発で理解した。
さすがサバイバー。
生き残ることに関しては、
天下一品だ。
---
14.静かなうちにしか、決断はできない
混乱してからでは、
人は
正しい判断ができない。
だから、
決断は今しかない。
それを、おじいちゃんは
よく分かってる。
AIや機械には、
めちゃくちゃ弱いけどね。
「さすがぁ!」
---
★あとがき
― 消えるのはスマホだけじゃない
スマホは、
ある日突然、消える。
壊れたからじゃない。
買えなくなったからだ。
0円に慣れた国では、
値上がりは
音もなく進む。
もし今、
あなたのスマホが
・遅くなってきて
・でも「まだ使える」と
思っているなら
それは、
最後の猶予期間かもしれない。
壊れてからでは遅い。
高くなってからでは選べない。
だから――
買えるうちに、考えろ。
消えるのはスマホだけじゃない。
考える力まで、
一緒に消す必要はない。




