第6話 『氷龍』について
宿に帰るとそこには買った服を直しているルカが居た。
ルカは帰ってきた俺を見るとすぐに一つの紙袋をベットの隙間に隠した。
俺は謎に思いつつも暖炉の前にある椅子に座った。 そして『氷龍』の件を話す事にした。
「服直してる時に話をすんのもなんかあれだが、話して良いか?」
俺がそう言うとルカは服を直しながら頷いた。
そしてリエルは俺の元に飛んできた。 そして肩の上に乗ってきた。
「おぉ... どうしたどうした」
「別に? 乗りたいと思ったから乗っただけよ」
「まぁ... 好きにしてくれ。 じゃあ今からその話について話すぞ。
ここアクサンタラには二匹の魔龍が居る。 その事はリエルも知ってるだろ?」
「もちろん知ってるわよ!! 大精霊だからね!」
「魔龍は『死龍』と『氷龍』の二匹だ。
『死龍』は俺の... いや俺達の第一目的地のリーニャ帝国の近くにある洞窟に居る。
だが、もう一匹の『氷龍』はこのサクナ村から少し離れたある洞窟に居る。
もうすぐもすればリエルは俺の言いたい事が分かるんじゃねぇか?」
「魔龍の話がどうし....」
リエルが何かを話そうとしたその瞬間、強い魔の波動を感じた。
窓を見ると外はまた猛吹雪になっていた。
リエルはどうやら理解できたようだ。 真剣な眼差しをしている。
「なるほど.... 魔龍がなんらかの原因でおかしくなったのね?」
「そうだ。 流石リエル、頭が良いな」
「精霊だもの、分からない方がおかしいわ。 それでどうするのロイ? 『氷龍』を倒すの?」
「倒しはしない。 んな事したら兄である『死龍』に殺されちまうからな。
『氷龍』がおかしくなったのにはおそらく外的な要因がある。
俺達はその要因を見つけて排除し、魔龍を治すんだ。
リエル様みたいな魔法に精通した方が居ればなんとかなるだろ」
「使えるは使えるけど.... 魔龍に効くかは分かんないわよ?」
「まぁ... そん時はそん時だ。 逃げるなり、戦うなりしたらいいんだよ。
んでどうだ? 手伝ってくれるか?」
俺はリエルとルカにそう聞いた。 だが、聞くまでもなかった。
「魔龍を救ってこその大精霊 リエル様よ! 任せなさい!!
このリエル様が居たらどんな事でも解決できるわ!」
「仲間なんだから手伝うに決まってるでしょ? 当たり前の事言わせないでよ」
二人は危険な事だと理解しながらも、俺の願いを承知してくれた。
「こんなすんなり決まると思ってなかったぜ.... ま、でもありがとよ。
じゃ日にちをどうするかだな」
「そんなの明日で良いじゃないの!! 私が居ればどうって事ないわ!」
「いや要因が何か分かってない以上、変に突っ込むのは危険だ。
だから、もう一回スライムに探索させる。 今度は寒さに耐性を持ってるアイススライムにな」
「そっか.... ロイって魔物出せるんだった。 私魔法なんて使えないから羨ましいや」
「出せてもあんま良い事ないけどな。 んでリエル、出すには出すんだがちょっと願いを聞いてくれるか?」
「どうしたのかしら?」
リエルは俺の前で飛ぶのを辞めて首を傾げた。
「憑依魔法を使うからよ、俺の体の事託して良いか?」
「憑依魔法ならアタシも使えるわよ? アタシがやった方が良いんじゃないの?」
「リエルに何かあったら困るからな。 俺が代わりにやるんだよ。
で、 どうだ? やってくれるか?」
リエルは腕を組んで自信満々な表情をしていた。
「もちろん任せなさい!!」
「じゃあ頼んだぞ」
俺は椅子から立ち上がって、窓を開けた。
外は猛吹雪で前がマトモに見える様な状況ではなかった。
だが、こういう時こそ何か得られるものがある気がする。
俺は右手からアイススライムを作り出し、待機させた。
「じゃあ頼んだぞリエル」
母体である俺は窓を閉めてベットに寝転んだ。 この姿勢だったら何が起きても安全だ。
俺はリエルに母体を頼んで憑依魔法を使った。