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聖女戦争  作者: 猫宮
序章 帝国編
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第三十三話 願いの力と後悔

騎士団での手伝いが終わり、すっかり陽が落ちた頃。 俺とルカ達はやっと解放された。

予想よりも騎士団は魔王軍の襲撃を受け大打撃を受けていた。 半壊... いやほぼ全壊レベルの打撃だった。


確かに、あんなレベルだとフローレンス達でも手に負えないのが分かる。

リエルの力を借りたいのも納得だ。

俺はリエルと違って治癒魔法が上手く使えないが、雑用はライと居た時代に色々と教えてもらったからそこらの人よりは優秀だ。 俺は、包帯や衣服を運び脱がせ... そんな作業を何百回こなした。


だが、俺も流石に色々と疲れた。 身体中全身バキバキだ。


でも、ルカはご飯を食べた後どうやら俺と話をしたいらしい。

何を話すのかは分からんが... まぁ、くだらない話じゃ無いことは確かだろう。


俺はリエルに溢れそうな魔力を分けながら、宿への帰路についた。


___________


夜飯を済ませ、風呂に入った俺はルカ達が部屋に来るのをベットに座って待っていた。


俺はその間荷物番を任していたスライムを足に乗せ撫でていた。

ヌルヌルはしなく... どちらかと言えば二の腕と似た感触の触り心地だ。


俺が身体から出す魔物は全員服従の魔法が付いている。

だから、俺が変な指示をしない限り暴れる事はない。

今は、俺に撫でられるという命令がかかっている。

スライムは気持ちが良いのか、徐々に溶け始めてきていた。


そんな事をしていると、扉の方からノック音が聞こえてきた。 

そして続け様にルカとリエルの声が聞こえてきた。


「入って良い?」


「鍵開けなさいよ!!」


...別れる前に言っただろうが.. 鍵は開けたままにしておくってよ。

まぁ... でもルカ達も疲れてるだろうし忘れるのも仕方がないか。


「普通に開いてんぞ? 俺の部屋」


そう俺が言うと、 すぐに部屋の扉がガチャと音を立てて開いた。


ルカはフワフワの魔毛で作られたパジャマを着て部屋に入ってきた。

リエルは頭に小さなナイトキャップを付けてフワフワと浮いた状態で部屋に入ってきた。


ルカは俺の隣へと座り、リエルはスライムの上に座り込んだ。 リエルは座るや否やこう言ってきた。


「案外、良い座り心地なのね」


「俺が考えて作り出してっからな。 潰さない限り水分は出てこねぇから、何があっても潰そうとすんなよ?」


「するわけないでしょ? アタシお風呂入ったばっかなんだし」


「なら安心だ。 んで... ルカ。 話ってのはなんなんだ?」


ルカは寒くもないこの部屋で身体を震わせ、手をモジモジと動かしていた。

喋る声は何故か震えていた。


「ロイ.... ロイはさ? 願いの力が何かってのは知ってるよね?」


「空に叶えたい願いを祈る... そしたら神がそれに応えてくれて力を授けてくれる..って奴だろ?

 それがどうしたんだ?」


「私が... 私が願いの力を使ったってのは知ってる?」


「もちろん知ってるぞ。だってその話はルカから聞いたからな」


「どんな願いをしたのかはまだ言ってないよね...?」


「そりゃあ... そうだろ。 だってルカが秘密って言ってたんだからよ」


ルカは大きく息を吸った後こう言った。


「ロイってさ... 運命とかって信じる?」


「運命... か」


信じると言われたら... どうだろうか。

運命という言葉の範囲が曖昧だし.. 何を運命というのかも俺にはあんまわかんねぇが...

ルカとの出会いや帝国での出会いは運命という言葉しか出てこない気がする。


どちらかと言えば... 俺は信じる方なのか?


「まぁ... 信じるんじゃねぇか?」


俺がそう言うと、ルカはいつもの元気な姿と違い悲しげな雰囲気を纏っていた。


「私ね... 実は小さい頃とある本を読んだの。

 その本にはね? 1人の小さな少女が勇者様に救われて恋をしちゃうってストーリーの本なんだけど... 」


「その本がどうかしたのか?」


「私ね...? 運命の出会いってのにその時憧れたの。

 だってしょうがないじゃん。 私だって女の子だったもん」


「まぁ... 知らんがそうなんだろうな」


「ロイからしたらバカに見えるかもしんないし... 気色悪いかもしれないけど。

 私のせいで... こうなっちゃってるのなら言うべきなのかなって思って..」


ふとルカの方を見ると、ルカは泣きそうになっていた。 俺は持っていたタオルをルカに渡した


「ルカが何を言いたいのか...

まだあんまわかんねぇけど.. 辛いなら言わなくて良いんだぞ?

 誰にだって言いたくない事や秘密にしておきたい事だってあるからよ」


「違う... 違うの。 ロイがね..? ロイが急に血を吐いたあの時...

 私は私がしちゃった事の罪の重さを理解しちゃったの。

あの日からずっと... いや、 氷龍の時からずっと私はロイに謝りたかったの!」


ルカは泣きながら俺にそう言ってきた。 さっき整えた息は荒くなり... 息も吸えていなかった。

俺はルカに渡したタオルを手に持ち、ルカの涙を拭いた。


俺はルカみたいに学もないし、リエルみたいに才能にも溢れてない。

何の取り柄のない俺でも今の状況は理解出来る。

俺のせいで... 目の前の女の子が泣いている。

ルカが俺のどんな理由で泣いてるのかもわかんねぇが、どう考えても俺が関わってるのは確かだ。


俺はルカの涙を優しく拭きながら喋りかけた。


「ルカは俺に何かを謝ろうとしてるが... ルカ。 俺は何とも思わねぇよ。

 たとえルカのせいだったとしても怒りもしねぇし、 殴ったりもしない。


ルカが言う通り今まで起きた事は運命だし、体験してきた事全てが今になっては俺の力になってるし思い出にもなってる。


安心しろルカ。 俺は前より今ルカ達と居る時の方が何十倍も幸せだ。

まぁ... 散々な目にあったり.. 色々揉め事にも巻き込まれたりするけどよ?


でもそれも全て死ぬ時に思い返せる... って思ったら面白いだろ?

俺はカワイイ女の子と出会って... 旅をして.. 小さな妖精と出会って... 氷龍を治して....

ほら、 始まったばっかりでもこんなに濃い話がいっぱいだろ?

死ぬ時に何もないちっぽけな人生を思い返すよりも、そんな人生を思い返す方が面白いだろ?」


俺はそう言って涙を拭いた。 だがルカは俺の手を振り払って泣きじゃくった顔で俺の目を見つめてきた。


「私... 私が願いの力でロイと出会いたいって言っちゃったから..!! 

 ロイが散々な目に遭っちゃったの!!

 私が... 私が願いの力を使わなかったら.. ロイが心臓を怪我することもなかったし、足を失う事も なかった!!」


ルカは泣きながらそう大声で言った。


「願いの力で俺と... 会いたい?」


俺は驚きからか口からそう言葉が漏れてしまっていた。

その言葉を聞いたリエルは足をパタパタと動かしながら、話し始めた。


「ルカはね...? 小さい頃願いの力を使ったの。 

 さっき本の話の時に出てきた運命の出会いって話覚えてるでしょ?」


「あぁ」


「ルカはね... 小さい頃」


俺はリエルから告げられた。 俺はルカの願いの言葉を聞き言葉が出なかった。 

俺が... ? まさか.. そんなわけ


「リエル... 嘘じゃねぇよな?」


「ルカが泣いてる場で嘘つくわけないでしょ。 一言一句本当よ。

アタシだって、アンタと出会った時願いの力を疑ったわ? 

 でも... アンタと旅をしていく中で疑いが消えて.. どんどんと信じてきちゃったの。


ルカはね...? 自分が願ったせいで、ロイが怪我をして散々な目に遭っちゃうのに自責念を感じてるの。 だって願いの力で... こうなっちゃってるしね」


話を聞いたらルカが泣くのも理解が出来る。

自分のせいで人が怪我をしたり... 散々な目に遭ってしまう。

その事について謝りたくても... 願いの力で願ってしまった以上変える事は出来ない。


だが... だがルカの願った言葉の対象は俺じゃない可能性もまだありえる範囲だ.. 多分。


「リエル... 願いの力の対象が俺じゃない可能性ってのはあるのか?」


「限りなくゼロに近いでしょうね。 

 どう考えてもアンタと出会ってから、アタシ達の物語が始まってるんだから」


あの言葉通りだったら... ルカ.. ルカは今一体どういう気持ちでココに居るんだ?


「なぁ、ルカ... 今俺に対する気持ちはどうなんだ?」


ルカは赤く目を張らせ、息を荒くした状態のまま俺の耳元で囁いてきた。


齢16歳にして... 初めての出来事だった。

どう反応すれば良いのかも分かんねぇし... なんて返せば良いのかもわかんねぇが。

俺の頭は初めての体験でショートを起こしていた。


「出逢って... ばっかなのにか?」


「うん...」


ルカはタオルに顔を埋めていた。 横から見えるルカの顔は赤色に染まっていた。


「俺は... 俺は今ルカから言われた事をこの頭でちゃんと理解出来てねぇし.. どう返せば良いか分かんないけどよ。

 まず... まずな? 俺は運命を仕組まれてたとしても怒りはしねぇし.. 怪我した事に関しても今生 きてんだから大丈夫だ。


ルカがさっき言ってくれたあの言葉も... 本当は何か応えてやるべきなんだろうけど.. 俺不慣れだから何もわかんねぇ.. ごめん、ごめんな」


ルカはタオルで籠った声を返してきた。


「大丈夫...! 私が.. 私が想ってるだけだから!! ロイは無理に言葉を返そうとしなくても良いよ!」


「いや... うん。 まぁ... あぁ.. なぁリエルこんな時どうすれば良い?」


「アタシ便利屋じゃないのよ? 知らないわよ、アタシ精霊なんだから。

 

でもまぁ一つ言えるとするなら... ロイはまだ言葉を返さなくて良いんじゃないの?

旅はまだ続くんだし... その刻が来たら返せば良いとアタシは思うわ」


「... だな。 大精霊リエル様の言う通りだ。 今、咄嗟に言葉を返すのもルカに失礼だもんな。

 良し... ルカ!! ここで言っておく。

 いつか俺はさっき言ってくれた言葉に返答する。 だから... その刻まで待ってくれ!

 この先、 まだ色々と変わるかもしんないからな?」


俺がそう言うと、ルカはタオルで隠していた顔をこっちに向けて、俺の頬っぺたを手で持ち顔を強制的にルカの方へと向けてきた。


「うん...! 大丈夫! いつまでも待つから!!

 でも... 私は絶対に変わんないから.. 覚えといてよね?」


ルカの目は赤く腫れ、泣きじゃくっていたのが目に見て分かる。

だが、そんな顔でもルカはカワイイ顔をしていた。


「あぁ... 分かった。 覚えとく」


「じゃあ... 私言いたい事も言えたし.. 伝えたい事も伝えれたから部屋に帰るね?

 ほら、リエル帰るよ?」


ルカはタオルを手に巻き立ち上がった。


「はいはい〜... じゃあねロイ。

 今日はもう話せる雰囲気でもなくなったし、明日の朝にでも教えなさいよね? カルトの事」


「あ... あぁ。 分かった。 じゃあおやすみルカ、リエル」


「うんおやすみ」


「おやすみなさい」


2人はそう言って部屋を出て行った。


自分の部屋で1人になった俺は、長い間何もする事が出来なかった。


ルカの願いを知ってしまったから。


更新遅れてすみませんでした!!

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