表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖女戦争  作者: 猫宮
序章 帝国編
24/24

第21話 教え

ある森の中で俺とライは暮らしていた ... 魔物も居なく人間すら居ない静かな森に。


俺とライは一緒に暮らしていた。 ライはいつも俺を第一優先で動いてくれていた。

ご飯の時も... お風呂の時も.. 狩りの時も。 ライは嫌な顔一つせず俺に接してくれた。


父親も母親も分からない、俺を育ててくれた。 時には間違った事で叱ってくれたり、狩りが上手くいったら頭を撫でて褒めてくれたり優しい人だった。

俺もライに褒められたいが為に、色んな事をして自分の特技や能力を増やしていった。


だがライは全部俺より上手く、逆にライに教えられて増えた知識の方が多い。


でも、ライは優しい笑顔で俺に接してくれた。


『学ぶ.. というのは大切な事です。

 人間というのは学んでいって、大切な何かを知ります。

 だから、 ロイは学ぶ事の大切さと重要さを忘れないでください。

 学べる... というのはとても強い力ですから』


ライは上手くいってない俺にそう言葉をかけてくれた。


俺はライの言葉一つ一つに心を救われた様な... 何か大切な事を教えられたかの様な..

そんな気持ちで溢れていた。


『知を知り、愛を知り、平和を知るのです。 私達にはそれが出来る知と力があるのですから』


ライはこの言葉を俺に教えてくれた。

小さい頃.. 俺はいまいちこの言葉の意味が分からなかった。

知もないし、力もない。 子供とはそういうものだ。

だが、 だんだんと歳を重ねるとライが言っていた言葉の意味と重みが分かった。


俺はライが心の中で密かに願う夢を、叶えてやりたいと思っていた。


だが、 ライと俺の生活は突然にして壊れた。


いつも通りに狩りをしてご飯を食べていたその時、俺達は襲撃を受けた。

全方向から、聖魔法が飛んできてライはそれを自身の魔法で防いで守ってくれた。


ライは俺に着ていた服を被せてきた。 ライは俺の頭を撫でてこう言ってきた。


『逃げるのです、ロイ。 あなたはここで止まってはいけない。

 前に、前に進んで行きなさい私が時間を稼ぎます』


ライはそう言って、手から炎を出し炎の壁を囲う様に作った。


俺は戦うライを置いて逃げる事しか出来なかった。 炎の壁から出るその時、俺はライの方を見た。

ライは笑顔で俺の方を見て最後にこう言った。


『また、会いましょう。 刻が満ち、世界を知ったその時に』


ライ... ライ.... 俺は.. 俺はまだ...

ライ... ライ!!


「ライ!!」


俺は一人の男に見られながらそう叫んで目を覚ました。


_____________


星空騎士団にて....


「ライ...? 寝起き早々にどうしたんだい?」


横を見るとそこにはフローレンスが居た。 ココは... ココはどこなんだ?


「ココは星空騎士団のある一室さ。 君は口からダラダラと血を流した状態で運ばれてきたんだ。

 一体何があったんだい?」


「魔法を使おうとして... 魔力を込めたんだ。

 そうしたら心臓に激痛が走って、口から血が止まらなくなったんだ」


「色々君の体を調べたけど... 異変があったのは一箇所だけだった」


「異変...?」


「君の心臓の鼓動音が何故か重なって聞こえるんだ。 普通の人間じゃありえない。

 何かに取り憑かれてたり... 身体に異常が起きない限りそんな事はありえないんだ」



「取り憑かれた事もないし... 魔力超過以外俺の体に異常はねぇよ...」


「ココじゃ君の体について詳しく調べる事は出来ない。 

 今はまだ対処できる範囲内の怪我だけど、調べる事をお勧めするよ」


「あぁ... そうする。 俺もまたあんな激痛を体験したくはねぇからな」


心臓に手を当てて誓ったその時、部屋の扉が開きドレスを着た少女が入ってきた。

綺麗な白髪をして... 容姿が整ってる。 ありえないぐらいカワイイ顔をしている。

まつ毛も長いし... 雪の様に白い肌だ。


そんな少女が俺の方に歩み寄ってきた。


「この帝国内にはある特殊な魔法結界が展開されています。

 その魔法結界内で認可されてない人間が、誰かに危害を加えようと魔法を使った場合

 その人間に何らかの裁きが下されてしまいます。

 ですが、貴方様は認可されてるにも関わらず何故か裁きを下されてしまったのです...

 王女として... 無実の人を傷つけてしまった事をここでお詫びいたします」


そう言って王女様は頭を下げてきた。 このカワイイ子がリーニャ帝国の王女、リーニャ•アルヴィらしい。


「いやいや、頭を上げてくれ。 王女様は何も悪くない。

 俺の身体が何らかの異常を引き起こしただけだ。 だから謝らなくて良い」


俺がそう言うとリーニャは顔を上げて俺の手を掴んできた。


「私は聞きました... 貴方様が『氷龍』を治してくださったロイ•コロニクスという冒険者だという事を。 実を言うと... 今帝国内では事件が連続して起こっているのです」


王女が何か言おうとしたその瞬間、フローレンスが会話に割り込んできた。


「それ彼に言うのかい? 彼はどの件にも関与してないただの冒険者だよ」


「『氷龍』を治せる程の力があるロイ様に、私は助けてもらいたいのです。

 帝国の兵士は皆魔王軍との戦闘で戦えない身体にされてしまったのですから。

 ロイ様が協力してくれれば、大いなる力になると... 私は思ったのです。 

 ダメでしょうか? フローレンス様」



「別に僕はリーニャが決めた事なら良いと思う。 ただ、この件は彼次第だ。 彼に聞かないと」


リーニャは再び俺の方を見て、うるうると泣きそうな目で見つめてきた。


「お願いしますロイ様... どうか... どうか力を貸していただけないでしょうか?」


そう言って頭を下げてきた。 ん〜と... 一体何が何だか分からないぞ?

事件...? 色々分からない事が多すぎる。 一旦話を聞いてからだな..


「その連続して起きてる事件ってのをまずは聞きたい。 一体帝国内で何が起きてるんだ?」


「最初の事件からお伝えします... まず、第一の事件がお兄様の失踪です...

一年前... お兄様は突如として姿を消しました」


「リヒトが失踪した!? 待て.. それは本当なのか?」


「僕もそれを聞いた時、驚いたさ。 リーニャの言う事は本当さ」


「お兄様は3年前から体調を崩し、基本寝たきりの生活を送っていました。

 そんなお兄様が... 突如として姿を消したのです」


「もしかしてフローレンスが帝国に招集された理由って、まさか」


「そう、僕はリヒトを治す為にここに来た。

 だが度重なるアクシデントや怪我人を救ったりしていたせいで到着するのが遅れてしまったんだ」


「フローレンスは医師として責務を全うしているだけです。負い目を感じないでください。


話を戻しますね... 次に第二の事件です。 

帝国が魔王直属護衛軍 第5位である【呪塊】の軍隊が領土内に攻めてきたのです」


「魔王直属護衛軍...? 第5位? 一体そいつらは何なんだ?」


俺がそう言うとフローレンスは驚いた。 どうやら俺が知らないだけらしい。


「魔王直属護衛軍ってのは、元々魔王を護衛する為に作られた軍の事さ。


その護衛軍で力を認められた者は階位と二つ名が与えられる。


どう? 分かったかい?」


「魔王軍が今でも居るのは知ってたが...  その情報は今初めて知った...

リエルが似たような事を言ってた気がするな...」


「君がさっき叫んだライって人は元々第2位に居たんだけど... 多分人違いだよね?」


「そんな事言った記憶ねぇけどな。 んな事より話.. 話聞かせてくれよ」


「えぇ.. あぁ... はい。 護衛隊には星空騎士団が対応して、退かせる事には成功しました。

 ですが... こちら側の被害が甚大で今帝国内の防御が無いに等しいのです。


そんな状況の中... 第三の事件が起きました。 つい先日の事です。 

私が住む城に【大怪盗】 ルル•シュヴァルツが入ってきたのです」


大怪盗... ルル•シュヴァルツ.. その名前は聞いた事がある。

神出鬼没で何でも奪う大怪盗。 そんな話を聞いた事がある。


.... ん? 待て.. 盗人の手先...? 俺そう言われたよな? おい、まさか。 嘘だよな!?


「もしかして俺が疑われた理由ってそれか!?」


「おっ、正解。 よく分かったね」


「兵士に言われまくったからな。 盗人の手先め!! ってよ」


「まぁ、実際問題君の荷物にリーニャのティアラが乗ってたからね。

 兵士達が疑うのも無理はないさ。

 でも、大怪盗と戦ったカルト曰くルルは転移魔法が得意らしい。

 君は多分、ルルが仕掛けた罠に引っ掛かってしまたんじゃないのかな?」


「あの花全然幸運を呼ぶ花じゃなかったじゃねぇかよ... 不幸を呼ぶ花じゃねぇかよ..」


俺は朝の俺を憎み、頭を抱えて後悔した。


「ええと... 話を続けてもよろしいでしょうか?」


リーニャはそうか細い声で言ってきた。


「あぁ... すまんすまん。 続けてくれ」


「は、はい... では続けます。

 私がお兄様から貰ったティアラが奪われたのも事実なのですが、カルト曰く勇者の遺物も盗まれて しまったらしいのです」


「ここに眠るって言われてる『勇者の盾』か?」


「はい... 場所を知るカルトがそう言っていました」


「そりゃあ大事件だな...。

 まぁ、こんな俺でも力になるなら協力するぞ? ここまで話を聞いたし、俺もその遺物を探す為に 旅をしてるわけだしな」


「ほ、本当ですか!? 良いのですか!?」


「悩みとあらば助けるのが俺の信念だ。 俺の師匠もそうしてた。

 ルカ達にも話せば理解してもらえるはずだ。 俺が話をしに行きたいところだが...

 今は行けるほど元気じゃない。  すまねぇが全面的な協力はココでは」


俺が次の言葉を言おうとしたその時、リーニャが扉の方へと走りドアを開けた。


「私が代わりに聞いて参ります!! 私に出来るのはこれくらいですから!!」


「えっ... ちょ.. 話はまだ」


「では行って参ります!!」


リーニャはそう言って部屋を出て行った。 俺は隣に座るフローレンスと顔を合わせた。


「王女様を走らせるって良い御身分だね」


「んなつもりで言ったわけじゃねぇのによ...」


「ふふっ... もちろん知ってるさ。 ほら、まだ君の体は治りきってないんだから安静に、安静に」


「言われなくてもそうするよ」


俺はフローレンスに身体を診てもらいながら、リーニャが戻ってくるまで話をして待つ事にした。

 


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ