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聖女戦争  作者: 猫宮
序章 帝国編
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第19話 正義の華と悪の華

時は遡り事件当日夜の事...


帝国が夜の暗さと静けさ包まれた夜遅くに僕はリーニャ城に挨拶することにした。


僕の名は ルル•シュヴァルツ 怪盗だ。


世界に散らばる財宝を見つけるのが僕の夢だ。 今回盗みに入るのはリーニャ城だ。

ここに眠りし財宝、勇者の遺物を貰いにきた。 さてさて、 では早速挨拶に向かうとしよう。


「行ってくるよ、アーリャ。 もしもの時は頼んだよ」


「もちろんなのですお兄様」


僕は妹に別れを告げて、宿『ルージュ』の屋上から、自身の身体を花びらにして降りた。


降りた僕は魔法で花を作り、城を守る兵士の元に持って行く事にした。

城を守る兵士は眠いのかあくびをしていた。


僕はそんな兵士に喋りかける事にした。


「兵士様、夜分遅くまでお疲れ様です。

 僕リーニャ帝国で花屋をやってるライ•ギールと言うのですがお疲れの兵士さんにこの花の匂いが安 らぎをもたらしてくれると思い持ってきてしまいました... どうか受け取ってはくれないでしょう  か?」


僕が少し悲しげにそう言うと、 兵士は僕の手から白い花を受け取り手に持った。


「ありがとう少年。 初めて市民さんからこういうプレゼントを貰ったよ。

 でも、こんな夜遅くに起きて街を歩き回ってたら親御さんが心配するんじゃないかい?

 大丈夫なのかい?」


「そっちこそ、こんな夜遅くまで働き過ぎですよ。 ですから、貴方にはここで眠ってもらいます」


「....? 君一体何を言って」


睡蓮花(すいれんか)


僕がそう魔法を唱えると、兵士が持っていた花から紫色の煙が出てきた。

だが、その煙は発動者の僕にしか見えない。


「あれ... なんだ.... 急に... 眠気が..」


兵士はそう言って眠ってしまった。


まぁお疲れの兵士には良いプレゼントだ。


僕は城門に右手を合わせた。 そして全身を花にし、城門をすり抜けた。

コレぞ僕だけが使える特殊な移動魔法だ。


僕は兵士が誰一人居ない城内に入る事が出来た。 まぁ、居ないのは読めていた。

兵士は今別の場所に居る。 だからここにあまり人を割けないのだ。


ふふ、ふはははは!! リーニャの驚く顔が楽しみだ!!


僕は期待を胸に詰めてリーニャ城の中に入った。


_______

 

城内にて...


城内に入った僕だったが、その静けさに驚いた。 一人ぐらいは兵士が居ると思って居たのに居やしない。 僕は怪盗劇(ショー)を楽しめると思っていた。

だが、一人も観客が居ないとなれば話は別だ。

僕は、見栄えが悪い城の中に魔法で作った花を咲かしながら宝物庫の方へと向かっていた。


向かっている中で、一個だけ明かりが点いてる部屋があった。

覗き見するのは紳士的ではないと思いつつも、確認する事にした。


部屋の中を覗くとそこには王女様が王子様に似たぬいぐるみを持ちベットの上で泣いていた。 

一人で寝るのが王女様は怖いようだ。


思い出してみれば僕の妹も一人で寝るのが怖いと言っていた時期があった。

どの国の兄妹もこういうのは共通なのかもしれない。

僕は部屋の前に一本の咲いていない蕾を供えて、 宝物庫の方に向かっていった。 

驚かせてやろうと思ったが... 泣いてる子を更に泣かす程僕は非情じゃない。


泣きたくなるのも分からなくはない。 なんせお兄様はこの城内に居ない。


僕はそんな可哀想な王女様の為に今日も動いている。

本来怪盗はこんな事をする為に盗みに入りはしない。 怪盗は本来絶対悪であるべきだ。

だが父様はそうじゃなかった。 父は人の為に盗みを働き助けようとした。

僕はその意志を継がなきゃならない。 父の為にも...


だから僕は今日またここに盗みに入った。 だってもう必要なピースは揃ったからね。

後はこの怪盗劇を終幕に持っていくだけだ。


僕は宝物庫の鍵を魔法で赤い花に変え、宝物庫を開けた。

中は棚がいっぱい置いてありそこに宝が並べられている。 

埃が所々にあり清掃はされてないみたいだ。 ただ今はそんな事関係ない。


僕は中に入って必要な財宝を魔法袋へと入れていった。


だが、その時僕の首筋に冷たい感触が渡ってきた。 

僕の首からは血が少しづつ垂れてきていた。 やっぱ貴方は来ると思ってたよ...

僕は魔法袋を花に変え腰に付けた。


そして何も言わずに手を挙げた。


「随分と物分かりが良いじゃないか。 大泥棒 ルル•シュヴァルツ。 

 俺に捕まりたくて城に入ったのかい?」


「これはこれは星空騎士団の団長カルト•ルヴェルゴさんではありませんか。

 今日は何故こんな穢らわしい場所に?」



僕の首に剣を突き立てるのは星空騎士団の団長 カルト•ルヴェルゴだ。 

彼が第一王子リヒトと共謀して革命を起こした。 世界でも類を見ない大革命だ。

だがその革命のおかげで今のこの国がある。


まぁ、でもココで見つかるのも僕の予想通りさ。


「リーニャの城を穢らわしいとは、君は随分と目が腐っているようだ。

 宝を見過ぎで目が腐ってしまったんじゃないのかい?」


「僕の目は宝物で腐ったりはしないですよ。 逆に宝物で癒されるぐらいです。

 逆にそう言うあなたこそ、その剣を握って腐ったんじゃないのかい?」


「ハハっ! 君は冗談が上手みたいだ。 大泥棒は盗む以外にも冗談も得意なのかい?」


「大泥棒じゃなく、僕は怪盗です。 そんな事も分からない人は冗談なんてつけやしないですよ」


「俺は嘘が嫌いだからね、冗談なんて言わないさ」


「罪深い男ですね... あなたは」


「そっくりそのまま返してやるよ。 で、どうする大泥棒? ココで殺されるか、牢獄に入るか」


そこら辺の怪盗じゃ、ココで殺されたり牢獄に入れられたりするんだろうけど僕は違う。

ちゃんと逃げ道は用意してある。


僕は笑みが溢れ笑ってしまった。


「フフ、ふはははは!! 僕はあなたに殺される程馬鹿じゃない!

 あなたみたいにズル賢い手は使わない。 僕はここで去らせてもらおう!!」


僕は上げた左手に白い花を作り宝物庫の外へと投げ壁に刺した。


花々の輪舞曲(フラワーズロンド)


僕がそう唱えると、僕の身体は花に変わりパラパラと床に落ちていった。

騎士団の団長さんはその花を切り刻んでいったが、残念ながらそれに実体は存在しない。

僕はもうあなたの後ろだ。


「フフ、何も居ない虚空を斬るとは愚かそのものですね。 愚者ですよ、愚者」


僕がそう言うと、団長さんは振り向き持っていた剣を肩の高さへと上げ僕に向けてきた。


「俺を愚弄するとはいい度胸だ。 お前をこの剣で斬り殺してやろう!」


団長さんはそう言って剣を持ったまま僕の方へと向かってきた。

無駄なのに向かってくるとは、本当に愚かだ。 


「ではまた、刻が満ちた夜に会いましょう」


剣と僕が接触し斬られそうになったその時僕は指をパチンと鳴らした。


すると、僕の身体はまたバラバラな花になり床に散らばっていった。

宝物庫に仕掛けていた花も連動し特殊な煙幕と爆発音を出した。


本体の僕はアーリャが居た宿『ルージュ』の元へと飛んでいった。


怪盗劇にアシスタントは必要だ。 脱出劇を完成させる為にはね。

僕は団長さんと違って頭がよく回る。 彼は今頃僕を殺せなくて悔しいんじゃないのかな?


フフ、ふはははは!! 僕はつくづく運が良い!! コレでやっと...! 

最も必要なピースが揃った!! 後は彼と協力するだけだ!


僕は嬉しさのあまり笑みが溢れてしまった。


「フフ、ふはははは!! って痛っ!! ちょっと急に首触らないでよ!

 今、 悦に浸ってたのにさぁ!」


妹のアーリャが斬られた首をちゃんちゃんと触ってきた。

だがその手から緑色の優しい光が溢れどんどんと血が止まり傷が治っていった。


「いつもギリギリまで遊んで傷を増やさないでください。

  私がいつも治してるんですよ? お兄様が治癒魔法使えないから」


「だって、兵士があの門の所に居た人と団長さんしか居なかったんだもん。 遊びたくなっちゃうよ」


「本来の目的を忘れちゃダメですよお兄様。 早く宝を見せるのです」


「もちろん分かってるつもりさ。 はいコレ。 必要だった物」


僕はそう言って腰に付けた花を元の魔法袋に戻してアーリャに渡した。

アーリャはその渡された魔法袋の中を見た。 そして言葉が漏れた。


「やっぱり、お兄様と私の考えは合ってましたわ」


「だろう? 僕の目は真実を逃さない。

 では、アーリャ僕らは次の手順へと移ろう。 覚えてるだろうね?」


「もちろんですお兄様。 私が忘れるはずありません。

 ですが、 次の手順失敗する可能性もありますが失敗したらどうするのですか?」


「僕の考えに失敗も間違いも存在しないさ。

 人の心をも掌握できるのが怪盗の良いところさ。 安心して僕らは待とう」


「お兄様がそう言うのなら... 私は信じます。 では、お兄様。 手を繋いで」


「また刻が満ちた頃に...」


僕は一本の花をある部屋の窓に置き、アーリャと共に宿の屋上から消えた。

 

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