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第59話 エアシャー大聖堂の悲劇

 『コルス、いつもに増して優秀じゃないか!!』

 『いつもと同じですよ?』

 『いつもより優秀じゃないか!?』

 『いつも優秀ですよ?』

 『そうだっけ?干し肉をネズミに10本ほど盗られてる癖に、優秀と言えるのか?』

 『何でそんな事知ってるんですか!?というか、それ関係無いですよね!?』

 『面白かったから、言ってみたんだよ。』

 『面白く無いですよ!?いつ見たんですか!?』

 『ちょくちょく見てるよ?魔力感知で、姿も見れるし、姿勢も動きもバレバレだよ。』

 『そんなに見なくてもいいじゃないですか、ちゃんと近くにいますから。』

 『やだよ。コルス見てないと、つまらないじゃないか。』

 『私はアルティス様のおもちゃじゃないんですが?』

 『誰もおもちゃだなんて言ってないぞ?面白いだけだ。』

 『酷く無いですか?』

 『そうかも?』

 『否定しましょうよ!』

 『じゃぁ、そんな事無いよ?』

 『何かムカつく。』

 『酷い。』


 コルスとのやり取りを終えて、法務の連中の所に来た。


 『自白したのか?』

 「概ね完了しています。ノーキンが、ちょっとおかしな事を言っていますが、それ以外は特に言い訳する者もおりません。」

 『法務の事務所はどこにあるんだ?』

 「存在していませんね。今まで全く、何もしていなかった様です。」


 暗部が拷問した結果、まともに仕事をしていたと言う者は居なかった様だ。


 「待って下さい!私はちゃんとやっていましたよ!!」

 『書類は?』

 「作っていません。」

 『それを仕事してないって言うんだよ。どうやって証明するつもりなんだ?事務所も無く、書類も無く、何もないのに仕事してましたって言われても、今までしてきた事を、正確に一つも漏らさずに言えて、証明できるのか?』

 「それは・・・。」

 『経費として、何に金がかかって、何を購入して、誰を裁いて、何の刑に処したか全部言え。ちゃんとやってたと言う根拠を示せ。』

 「強盗と窃盗犯を処刑しました。人攫いの疑いがかかった者も処刑しました。」

 『疑いとはなんだ?誰かがそう言っていたのか?お前が見たのか?』

 「人攫いだと目撃者が言ってましたので、処刑したのです。」

 『攫われそうになった者は、確認したのか?保護したのか?どこに居るのか知ってるのか?』

 「いえ、逃げて行ったそうですので、会えませんでしたし、名前も所在も知りません。」

 『お前は重犯罪者決定だな。馬鹿過ぎて話にならん。』

 「何故ですか!?」

 『人攫いが、親から子供を引き離す為に、親を人攫いだと通報したら、被害者の確認もせずに、疑われた奴を殺したんだろ?殺される根拠は?証言があっただけか?罪人の住んでる所の近隣に確認したのか?親子じゃないって確認したのか?目撃者の素性は確認したのか?証拠は?言ってみろよ。絶対に間違ってないって言えるのか?』

 「・・・その時は、間違いがないと思ったんです。」

 『こいつを貧民街の入り口に縛り付けて、3日間晒しておけ。どんだけ愚かだったのか、判るだろ。VITを1000付けて、殺されない様にして放置な。死なない程度なら、何をされても問題無い。放置する事を宣伝しろ、殺さなければ何をしてもいいと。』

 『それと、こいつらの財産を全て没収、貧民街入り口前に、治療所を設置して、全ての治療を銅貨10枚でやれ。赤字の補填は、こいつらの財産でやれ。』

 「はっ!」


 貧民街の前に、ノーキンの他12名が放置され、殺さなければ何をしてもいいと言うと、被害を受けた人々が集まり、ゴミを投げつけたり、石を投げたりと騒ぎになった。

 貧民達は、投石用の石を売り始めたり、生ごみや糞便なども売り始め、中には木の棒で10回殴れる権なども売り始めていた。


 「お父さんを返せ!お前が殺したんだ!」

 「娘を返せ!お前らのせいで奴隷にされてしまったんだぞ!」

 「お前らのせいで母さんも父さんも死んだんだぞ!」

 「お宅らのおかげで、たんまり稼がせてもらいましたが、目がムカつくので。」


 最後のは、原因を作った奴だな。

 他にも来るかもしれないから、他の奴にバレない様に捕縛するか。


 『こいつは路地裏で捕縛しろ。色々事情を知ってる様だからな。』

 「はっ!」


 調べてみると、その男は奴隷商人だった。


 『奴隷は誰に売った?』

 「知りませんな。」

 『死にたくなるまで拷問しておけ。』

 「了解」


 吐かせる為に、いつも拷問拷問と言っているが、人の死が普通に存在しているこの世界では、情に訴えても何とも思わないし、説得しても他人事の様に聞く奴が多いのだ。

 数日間食べられなくても、日常的によくある話だし、1か月間野草や木の実だけで生きてる者も多いので、何とも思わない。

 金を渡せば簡単に話す場合もあるが、その場合は、解放しなければ取引は成立せず、魔法契約を交わすと、本当に解放せざるを得なくなってしまうのだ。

 また、奴隷にして喋らせる事も可能なのだが、その場合は、命令して偽証させる事も可能になるので、証拠能力としては、価値が低くなる為、拷問して自主的に話す方向に持って行くしかない。


 拷問のルールとしては、拷問中に問い質す事はせず、話すと言うまで続ける。

 但し、やったかどうかを調べる場合は、嘘をついたかどうかを先に調べてから拷問にかけるのだ。

 今回捕まえた奴は、やったかどうかは、既に確定していて、内容を聞き出す為の拷問なので、問題は無い。

 だが、罪人かどうかが確定していない場合は、嘘をついているかどうかを確認し、それが罪を隠してついた嘘か、別の理由でついているのかを確認しなくては、拷問にかける事はできない。

 まあ、罪を犯せば称号に出るので、魔道具で調べてしまえば、罪人本人かどうかは、すぐ判る。

 人権?基本的に無いよ?罪人じゃなくても無いに等しいのに、考える必要ある?無いよね。

 人権が無くても、権利が無くなる訳では無い。

 例えば、所有権何かがそうだね。

 他にも一部に著作権が適用される事がある。

 レシピなんかがそれにあたるんだけど、味を覚えて再現した場合は、侵害にはあたらないので、アルティスは主張しないのだ。

 寧ろ、とんでもない材料を使って、真似をされるよりも、公開して多様性に期待した方が、利があると思っている。

 たまに、自分で考えたレシピでも無いのに、権利を主張する商人が居たりするが、広めた本人が権力者の場合、命の保証が無くなるので、普通はやらないね。

 着想を得て、魔改造したレシピの著作権を主張しても、受け入れられなくては意味が無いし、普通はオリジナルレシピを使って儲ける程度の話だよ。


 芸術作品なんかは、日本とほぼ変わらないよ。

 何の絵か判らなくても、買う人が居れば売れるし、誰も買わなければ駄作という事になる。

 美形がモッコスになっても、買う人が居れば、そう言うジャンルが生まれるだけ。

 アルティスが両手両足にインクを付けて、紙の上を歩いただけでも、王都では高値で売れるのだから、芸術の世界は理解できないね。

 但し、タカール商会が売っていた絵画は、既に芸術作品として売れている絵画の贋作の為、持っているだけで非難轟々に晒される代物なので、見つけたら廃棄する以外に無く、高値で買った奴は、ただの馬鹿として陰口をたたかれまくるのだ。

 他にも、権利を主張すれば権利が生まれるんだけど、初夜権みたいなのは認めないよ。

 あんなのは、泥棒が、窃盗権を主張しているのと変わらないからね。

 世間一般でも、そんな権利は認めて貰えないよ。

 法務省設立に伴って、新しく作る法律には、他人を不幸にする法律は作れない様にするって事と徴兵の永久放棄を盛り込む。


 兵士は志願兵以外、頭数を揃えるだけになるから、基本は必要ないよ。

 地球みたいに、銃を持てば、簡単に殺せる様になる世界では無いし、魔道具やクロスボウでも似た様な事はできる様になるけど、効果は殆ど無いに等しいからね、元々強い奴に持たせて、敵の真っただ中で使わせた方が、効果的だよ。

 魔法兵の育成だって、そんな簡単に覚えられる訳じゃないし、MAGが低ければ使えないんだよ。

 一発屋では、コストに見合って無いし、MAGを上げるには、時間が掛かるから、育成する学校でも作れば、物になる奴も出てくるかもしれないね。

 バネナ王国の騎士が強くなったのは、全員志願兵だからだよ?徴兵では、鍛錬に耐えられる者は殆ど居ないだろうし、誰それ構わず鍛え上げたら、犯罪者も強くなっちゃうじゃん。

 税金で、犯罪者を強化するなんて、そんな馬鹿な事する方がどうかしてるよ。

 そして、騎士は全員極右翼だよ。

 左翼なんて一人もいないよ?当然だよね、国を守る戦力なんだからさ、全員国に忠誠を誓っているんだよ。

 それに、居たとしたらアーリアのシゴキが待ってるからね、歯向かおうなんて思ってたら地獄を見る事になるよ。

 パワハラ?軍隊には、パワハラ無くして機能する訳ないじゃん。

 敵と相対するって事は、命がけなんだよ?殺す気で行けば殺される事もあるのは当然だよね?、当然死ぬ覚悟が無ければ戦う事なんてできない。

 死ぬつもりは無くても、死ぬときは死ぬ、そう思わなければ敵陣になんて向かえる訳が無いでしょ?ヤケクソで突撃する奴なんか、役に立つ訳無いんだし、突撃すれば当然魔法が飛んでくるし、至近弾を食らえば怪我をするし、打ち所によっては死ぬことだってあるんだから、進みたく無くても、命令があれば進まなければならないのは、当たり前の事だよ。

 進軍しろと命令され、歯向かえば殺される、それは軍法で決められている事で、命令違反を許していたら、それはただのゴロツキ集団と変わらない事になるよ。

 ただ、死にに行けとは絶対に言わないよ?死んだら元も子も無いし、兵士達には、絶対に生きて帰ってこいと言うよ。

 死地に挑む時でも、死なせる事は考えずに、生き残る前提の作戦を実行するのが当たり前なんだよ。

 その為の装備だし、その為の鍛錬で、それを成功させる為の指揮官なんだよ。

 鍛錬とは、体を鍛えるだけではなく、心も鍛えるのが鍛錬で、戦闘技術を覚えるのが修練、魔法の練習も修練の内だね。

 忍耐力と集中力を鍛えながら、注意力と観察眼も鍛えるよ。

 だから、バネナ王国の騎士達が強いのは、心・技・体全てを徹底的に鍛えているから強いんだよ。

 心と体が鍛えられていなければ、技なんて覚えられないし、上手くもならない。

 自分に自信が無ければ、剣をまともに振る事なんてできないし、死ぬ気で突っ込んでくる敵と戦うなんて、できる訳が無い。

 特に、心と体は密接な関係にあって、心が弱いと、自分に甘くなったり、逆恨みしたり、脱走したり、サボったりして、成長しないから強く成れない。

 心を鍛えるには、辛い経験をするしかなく、辛い経験を乗り越えれば、その経験が逆境を力に変える心に進化する。

 でも、乗り越えるには、体力をもの凄く使うから、体を鍛えて体力をつけて、忍耐力をつけさせるんだよ。

 忍耐力がどう作用するのかといえば、例えば剣技を覚える時、一朝一夕で覚えられる訳では無くて、剣術を習得しても技なんて使えない。

 剣術とは、剣を扱う為の技術で、剣技とは、剣を使った技を覚える為の技術の事を指していて、剣術も剣技も体で覚えるしか方法は無く、覚える為には、何千何万と剣を振り続けなければ、覚えられない。

 そういうのは、忍耐力が無ければ途中で飽きて、覚えられずじまいになるんだよ。


 『さて、困ったな。法務省の人材が居なくなってしまったな。』

 「一般から募集しますか?」

 『いや、内務省で暫らくは兼任だな。法律の学校を作って、育成するしかないよなぁ。』


 悩んでいると、アメリア達がやってきた。


 「いたー!!やっと見つけましたよ!探しましたよ、アルティス様ー!」

 『あぁ、すまんな。ちょっと予定が狂ってしまってな。』

 「どうしたんですか?」

 『法律に詳しくて、仲裁ができる奴しらないか?』

 「マッケイとシャナですね。」

 『え?マッケイとシャナって、そう言うの得意なのか?』

 「マッケイは、よく酒場で絡まれるんですよ。そんで、酔っぱらいの間に挟まれて、仲裁をしょっちゅうやってるんですよ。シャナは法律に詳しいですね。」

 『そうなのか。よし、じゃぁ、お前ら全員この国で仕事しろ。第四騎士団、別名ベーグル方面隊を作る。アメリアが騎士団長、サンガとヴァイスが副団長、マッケイが裁判長兼第四騎士団員、シャナが法務省長官兼第四騎士団員、他は第四騎士団員だ。』

 「「「「「「「「ええー!?」」」」」」」」

 「ちょ、ちょっと待って下さい!、裁判長って何なんですか!?」

 『魔道具で決められない判決を、魔道具の代わりに下す役目だな。』

 「??」

 『そうだなぁ、例えばだ、孤児達が露店の商品を盗んだとして、魔道具では孤児が有罪になるだろ?だが、お前の心情ではどうなる?』

 「うーん、なるべくなら見逃してやりたいですが、そのまま野放しでは駄目なので、孤児院に入れてやりますね。」

 『そう言う事だよ。だが、ちょっと甘いから、首輪1年と、仲間全員入所ってとこだな。』

 「孤児院ってあるんですか?」

 『教会にあるそうだが・・・』

 「作りましょう!」

 『ここに作るか。法務省と孤児院を作って、裁判所と情報部の宿舎、学校と食堂だな。カレン、コルス、この土地の所有者と昔何が建ってたのか調べろ。アメリア達は、井戸を探せ。土地の広さも知りたい。』

 「あの、井戸あるんですが、ちょっと使えないですね。」

 『何でだ?』

 「沈んでるんです。」

 『何が?』

 「遺体が」

 『・・・。ワラビ、ちょっと来てくれ。』


 アルティスが開いたワープゲートから、ワラビが出て来た。


 「相変わらず、お忙しそうですね。」

 『べらぼうに忙しいよ。ちょっと井戸の中に遺体が沈んでるらしいから、確認と供養を頼む。』

 「・・・それだけでは足りない様です。ここはかつての教会があった場所で、最後は刑場でした。今でも地下には、沢山の遺骨が眠っておられます。その魂を救わなければ、建物を建てる事は不可能でしょう。」

 『願いは?』

 「・・・ロッツゲンシュロート家の断罪だそうです。」


 ロッツゲンシュロート家って元首と評議会議長か。


 『今は、ドブ攫いやらせてるんだっけ?』

 「まだ司令本部で拘束中ですね。」

 『ここに連れて来い。呪い殺されるかもしれんが、ワラビが対処するって事でいいんだろ?』

 「豊穣神の神像が必要です。」

 『豊穣神・・・、イシスか。どんな感じで作るんだ?豹人の女性?』

 「そんな感じです。」


 神像をワラビに投げ渡し、ロッツゲンシュロートが来るのを待っていた。

 遠くから、ここに来るのを嫌がる叫び声が聞こえ始めた。


 『判ってんのか。まぁ、人身御供として他人を差し出す様な奴らだ、身を以て恐怖を感じて貰おうかね。』


 二人が近づいてくると、地面から次々とレイスが湧いて出て来た。


 「アルティス様、二人を結界で守って頂けませんか?」

 『嫌だね。自分でやった事の尻拭いぐらい自分でやらないで、どうすんだよ。仮にもこの国のトップツーだぞ?責任くらい取らせねぇと、下に示しが付かねぇだろうが。』

 「壊れちゃいますが、いいんですか?」

 『首輪で最低限の精神魔法は防げるから、大丈夫だよ。多分。』


 レイスが触ると、触った部分が削れているから、まぁ大丈夫だろう。


 だが、触られても何ともならないのを理解した二人が、レイスを煽り始めた。


 「ふんっ!所詮はただの死にぞこないではないか!何とも無いのなら、怖がる必要なんか無い!」

 「ざまぁないな。怨念がどうとか言っておった癖に、何もできんではないか。小賢しい」

 『アメリア、ぶちのめせ。半殺しでいいぞ。レイスが憑依できる人形でも作ってみるか。』

 「ひいっ!?や、やめてくれ!それだけは!殺されてしまうではないか!?」

 『本来なら死罪なんだよな。まぁ、一晩放置しておくから、悪夢に(うな)されろ。ここにいるレイスは、未練ではなくて、怨念で存在しているから、お前らが心底反省するか、死ぬしか、成仏させる方法は無いんだよ。アバダント帝国みたいに、国が滅亡しているなら兎も角、お前ら実行者がいるんだから、責任を取ってもらわないと困るんだよな。』

 「ふんっ!断るに決まっておろうが!誰が貴様らなんぞに協力するかっ!」

 ドゴッ!


 ゼンメル・ロッツゲンシュロートが、鳩尾にアメリアの蹴りを受けて吹っ飛んだ。

 クワルク・ロッツゲンシュロートは、ゼンメルが吹っ飛んだのを見て、汗まみれになり、下を向いて大人しくなった。


 ゴスッ!


 クワルクが、ヴァイスの蹴りを顔面に受けて吹っ飛んだ。


 「黙ってやり過ごそうなんて、許せる訳ねぇだろが。舐めんな、クズが。」

 『奴らはこのまま放置でいい。供物を調理して気が済むまでやってもらえばいいさ。』

 「浄化は・・・?」

 『明日の朝、奴らが反省してたら考えればいいだろ。今やっても無駄無駄。』

 「畏まりました。」

 『カレンもコルスも、適当な所で戻ってこい。供物と晩飯を作ってくれ。』

 『これ相当酷いですよ?』

 『判ってる。この話は演劇にして世界で公開してやろう。そして、そいつらを懲らしめたバネナ王国の威光を知らしめるとしよう。』


 アルティスが周りを見渡すと、ギャラリーの中に吟遊詩人とジプシー風の集団を見つけた。


 『おい、そこの吟遊詩人とジプシーよ、こっちに来てくれ。』

 「ジプシーとは?我々は大道芸人の一座で、ジプシーなる者ではありません。」

 『それは、悪かったな。演劇などはやらんのか?』

 「演劇とは何でしょうか?」


 演劇を知らないのか。

 では、教えればいいな。


 『君らが、世界に名を馳せる事ができる、いい話だよ。』

 「世界に、名を馳せる?そんな事が本当に可能なのですか?」

 『この世は、アイデアと努力次第で、なんにでもなれるんだぜ?目の前にチャンスが転がってるのに、手を出さずにどうするんだ?』


 カレンとコルスが戻って来て、夕食の準備が始まった。

 美味しそうな匂いに釣られて、沢山の人々が集まって来たが、レイスやゴーストが背後に飛び回っているのを見て、尻込みして近づいて来ない。


 『カレン、ギャラリーにも配るぞ。沢山作ってくれ。孤児達も集まって来たみたいだしな。』

 「あたしらも手伝うよ!」


 アメリア達も料理を手伝い始めた。

 近くに居た、第二騎士団員達が、群衆の整理と警備を始めたので、土魔法で椅子とテーブルをたくさん並べて、空き地には祭壇を作って、できあがった料理を並べた。


 『集まった者達よ、今夜は我ら、バネナ王国が下衆のロッツゲンシュロート家に懺悔をさせながら、この地で死んだ者達への供養の為、皆に食事を配る。ここで食べながら、悲劇の犠牲者達の冥福を祈り、それから食事を楽しんで行ってくれ。我が国で一番美味い飯だ。大人も子供も楽しんで行ってくれ。』

 「こっちで器とトレーを配るよー、トレーを受け取ったら、大鍋の前に並びな!順番に配るから慌てんなよ!騒ぐ馬鹿は追い払うからな!」

 わあっ!!


 近所の住民や、酒屋の主人が酒樽とジョッキを持ってやってきた。


 「ほら、子供らも貰いに行きな。腹いっぱい食べていきな!」

 「あ、ありがとう!」

 「食べ終わったら、トレーを持ってこっちに返却しな!」

 「うんめぇー!!なんだこれ!スープも肉も野菜を挟んだパンもすげー美味い!」

 「このお肉、アーミーラプトルじゃないの!?超高級品よ!?」

 「この肉、すっげー美味いぞ!何の肉なんだ!?」

 「な、なぁ、この料理のレシピを教えてもらう事は・・・?」

 『レシピは教えてやるぞ。レシピはこっちに置いておくから、1枚ずつ持って帰りな。これが作れるようになったら、アレンジして自分流の味を作れ!料理の種類は無限大だ。ちょっとの差でも大きく変わる。色々試して作りやがれ!』

 『シーア、海運商会の行先を魔大陸だけじゃなくて、各港に拡げる事は可能か?』

 『うーん、一気に行くのは厳しいです。』

 『ルース、オーガストの方はどうなってる?』

 『あ、すいません、オーガスト制圧していいですか?』

 『一人でできるのか?』

 『攻撃されたんで軍を制圧しちゃいました。残るは首都のみです。』

 『そうか、いいぞ。穏便に済むならいいんだけどな。無理なら好きな様にやれ。』

 『あざっす。やっておきますね。』


 ルースには書簡を届けてもらう手筈だったのだが、一人で制圧寸前まで追い込んだらしい。

 一体どうやったのやら。


 『ソフティー、ルースの護衛にアラクネ着けていたっけ?』

 『二人着いて行ってるよー。3人で軍隊潰したって言ってる。』

 『そっか。ルース、お前は暫らく、オーガストに全権大使として赴任しろ。リミナも一緒にな。』

 『ありがとうございます!』

 『あ、どうせなら、オーベラル連合全体の全権大使の方がいいか。上手い事纏め上げて、法整備と学校、孤児院の設立、海側で塩を作れ。内需を拡大して、国力を上げるよう誘導してやれ。』

 『ケットシーに協力してもらう事は可能ですか?』

 『呼んでもいいが、安全は確保してやれよ?脅して取り込もうとするからな。外部との接触は、極力減らして、護衛は豹人族、こっちが片付いたらそっちに行くから、それまでに事務所にする建物を決めておけ。』

 『了解!』


 ギャラリー達が殆ど帰り、一座と吟遊詩人、孤児達が残っている以外は、例の二人が暗闇の中で悲鳴を上げているだけになった。


 『煩いから静かにさせるか。[サイレント・ウォール]よし、ここは片付けて議事堂に行くか。子供らも一緒に来い。孤児の仲間がいるなら、全員連れて来い。ベッドでねれるようにしてやるぞ。』

 「本当に!?みんなを呼びに行ってくる!」

 『アメリア、一緒に行って連れて来い。』

 「了解!」


 司令本部は狭いのと、部屋数が少ないので議事堂の方に戻ってきた。

 この建物は、コの字型に住居用の建物があり、中央に議事堂が作られている。

 正面入り口から、そのまま奥に進むと議会のホールに入れるようになっているのだ。

 両翼の建物は、棟と棟の間に議会ホールがある為に、完全に分離しているので、片方を内務省で使い、もう片方を孤児院や学校に使おうと思っている。

 元日本人としては、使う用途の無い空き部屋の存在が、気持ち悪いと感じるのだ。

 それが十数あるとなれば、もう、怒りしか湧いてこない。


 『孤児院は4階に作る予定だから、4階にベッドを置いておこう。』

 「1階じゃないんですか?」

 『1階から3階までを学校に使うんだよ。この建物には、屋上があるからな。広さ的にも運動場には申し分ない。』


 魔法が使えるこの世界では、ホームランを打って、ボールが遠くまで飛んで行ってしまうなんて事も無いのだ。

 もちろん子供が下に落ちてしまうなんて事も無い。

 結界をうまく使えば、土を敷いて、木を植える事も可能だ。


 「食事はどうするんですか?」

 『給仕するか、学生の後でいいんじゃないか?』

 「孤児達を連れて来やしたぜ。数人が病気みたいなんですが、診てやってくれませんか?」

 『どれ、診てやろう。・・・全員栄養失調だな。カレン、さっきの余りで雑炊作ってやってくれ。この子だけ別の病気もあるな。[アナライズ]うん、寄生虫だな。生肉食ったか、火の通りの甘い肉を食ったんだろう。[アンチバイオティクス][バーミフォージ][ターゲット・ユースレスモルト・イラディケイション][治療術]』

 「これで安心ですね。[クリーン]」


 軍では、あまりクリーンを使わないのだが、カレンのクリーンは一味違うので、人気が高い。

 カレンのクリーンは、ほぼバブルウォッシュと同等の効果を発揮して、垢を落としきるのと、潤いを逃がさない為、髪は艶が出るし、肌もピカピカになるのだ。

 アルティスに掛けると、毛並みが良くなる。

 最近のアルティスは、常に薄い結界を(まと)っていて、蚤やダニを寄せ付けない様にしているのだが、毛には汚れが付いてしまうので、カレンのクリーンは重宝している。


 『じゃぁ、食べ終ったら寝ておきな。ふかふかのベッドだぞ?』


 総勢21人の孤児達は、ベッドの上に座るとワイワイキャーキャーと騒がしくなった。

 それもその筈、生地はアラクネ絹で、中綿もアラクネ絹なのだ。

 普通に買ったら、白金貨が飛び交う程の価値があり、その中でもこれは、アラクネクイーンのソフティーが作った、最高級布団なのだ。

 1セットで国が傾く程の価値がある。

 これは、今作ったのではなく、ソフティーが捕縛用に使った糸をマジックポーチにせっせと回収して、暇な時に子供達の為に布団を作り続けていて、孤児院に戻った時に、毛皮のベッドで寝ている子供達に渡そうと思っていたそうだ。

 でも、ここに孤児院を作るとなれば、それを提供するのは、吝か(やぶさか)では無いらしく、快く提供してくれたのだ。


 『詳しい話は、明日の朝話すから、今日はお休み。』


 ベッドに潜り込んだ子供達の殆どは、寝たふりだったが、明かりを消すと一人を除いて、全員が眠りに落ちた。

 起きてる一人は、必死に耐えている様だが、数分で耐えきれずに寝た様だ。


 『さて、ここからは、大人の話だ。一座と吟遊詩人には、エアシャーの悲劇を劇にして、世界中で興行して欲しいんだよ。』

 「劇とは、演劇と違うものですか?」

 『同じ物だよ。何をするのかというと、小説を観せるんだよ。』

 「小説を観せる??」

 『それぞれが、主人公や悪役になりきって、演じるんだよ。吟遊詩人はナレーションと効果音だな。楽器はこれを使え。』

 「楽器?どうやって使うのですか?」

 『棒が左手、穴の開いてる方が右手、腿の上に置いて抱え込む様に持つ。左手で弦を押さえて、右手で弦を弾くと音が出る。』

 ジャラーン

 「おお!?凄い!色んな音を一度に出せるんですね!弓弦を束ねた感じだけど、こっちの方が音がいいですね。」

 『音階も幅広いから、曲も作れるぞ。世界初の音楽家だな。そのまま素手で弾くと、爪が割れるから、このチップを使って弾くんだ。全部をまとめて弾くんじゃなくて、3弦ずつ弾くようにすると、音が纏まり易いぞ。』

 「おお!確かにこれがあれば、弾きやすいし、指も痛くないですね!これは、早く覚えて使いこなしたいですね!」


 吟遊詩人に渡したのは、アコースティックギターで、ピックは、ギガントラプトルの骨を加工したものだ。

 アルティスは、人間だった時に趣味でギターを弾いていたので、コードもチューニングも判る。


 「その、演じるというのはどうやるんですか?」

 『ロッツゲンシュロート家の馬鹿を真似る奴と、殺されそうな人をやる人、皆の前でやってみせてくれ。』

 「じゃぁ、俺がロッツゲンシュロート家をやる。」

 「あたいが怖がる方やるよ。」

 「この教会は、ベーグルには必要無い!お前ら全員皆殺しにしてくれるわ!」

 「キャーやめて下さい!助けてー!誰か助けてー!」

 『演技は安っぽいが、何となく情景が思い起こされるだろ?』

 「これを見せるんですか?」

 『この話を拡げるんだよ。物語を作って、さっきの宴会をエンディングにして終らせる。当然演技でも、本物っぽく見せれば、まるで、目の前で惨劇が繰り広げられている様な錯覚に陥る。観客は、手に汗握って、ハラハラしながら見守る。ロッツゲンシュロート役は罵声を浴びるだろうが、話はどんどん進んで行き、バネナ王国軍の宣戦布告、ベーグル軍の大敗、そして、ロッツゲンシュロートが捕まって、悲劇の現場に連れて行かれ、犠牲者達の怨念に焼かれて慈悲を請う。それを尻目に、民衆が犠牲者の死を悼み、犠牲者達と宴会を楽しんで、魂が天に昇るのを涙を流しながら見守って、主人公が冥福と平和を祈って終り。』


 あらすじをアルティスが説明しているだけで、一座も吟遊詩人も涙ぐんで聞いている。

 演じられるのか?


 『演じる時のセリフや、動きで場の雰囲気が変わるのと、簡単な背景を作るんだよ。教会の入り口や教会の中、戦闘中の荒野とか、場面がいくつかあるだろ?演技が上手いとか、多少下手でも特に台詞の無い役をやらせてもいいし、吟遊詩人は舞台の隅っこで、場面場面の背景を説明するんだよ。面白そうじゃないか?』

 「凄く観てみたいです!」

 「でも、衣装や背景なんかが、凄い荷物になるんじゃないんですか?」

 『マジックバッグに入れちまえばいいじゃねぇか。』

 「持ってませんよ。そんな高価なもの、持ってる訳無いじゃ無いですか。」

 『ほれ、それをやる。中は議会ホール程の広さがあるから、馬車でも入るぞ。』

 「ちょ!やるって、そんなホイホイ出せるんですか!?」

 『それは、俺が作った物だからな。袋は、ワイバーンの革でできているから、ちょっとやそっとでは破れねぇし、肩にかけておけば、ひったくられる事も無い。貴重品や食料も入れられるから、移動は幌馬車1台あれば十分だろ?馬車本体もこっちで用意してやるから、盗賊に襲われても、立て篭もれば、絶対に死なないぞ。』

 「幌馬車なのに?」

 『幌はアラクネクイーンのアラクネ絹製だからな。』

 ブー!

 「それ売った方が儲かるんじゃないの!?」

 『何もしない奴らにはやらねぇよ。演劇をやるなら支給してやるってだけだ。俺は働かねぇ奴は大嫌いなんだよ。だから、売り払ったりすれば、ロッツゲンシュロートと同じ身分に落とすだけだ。代わりは幾らでも居るからな。』

 「我々が選ばれた理由は・・・?」

 『目の前に居たからだ。その幸運を最大限に利用して、名声と安全と地位を得るか、支給品を売り払って奴隷に落ちるか、元の大道芸人に戻るか、どうする?』

 「安全というのは?」

 『護衛をつける。バネナ王国軍の騎士だ。盗賊如きでは何もできんだろうし、サイクロプス程度なら単独で倒せる程の腕前だぞ?』

 「どれくらい儲かると思いますか?」

 『貴族用の貴賓席を作って、金貨10枚取れば、白金貨には届くし、平民用の観覧席は、銀貨10枚でチケットを売れば、100人で金貨10枚、200人なら金貨20枚、観覧席には、格差をつけるんだよ。一番安い席は、簡単な椅子だけとか地べたに座らせるとかな。その後ろ側は、段差を着けて、前に座る奴の頭が邪魔にならない様にして、一番安い席の倍額、いや、5倍とかだな。貴族用のは、2階席にして、限定10組とか制限をつけて売り出せば、高値になる。来るのは、当主、夫人、子女3人、執事、メイドくらいか。やる場所は、広場に天幕張って、やればいいだろう。入り口周辺に屋台を並べて、酒は禁止だ。売ると、酔っぱらいが暴れて、台無しになるし、悪役が命を狙われる。』

 「毎日白金貨を稼げると?大金持ちじゃないですか!?」

 『お前一人の稼ぎじゃないからな?細かく経費計算をしなけりゃならないが、国に1割支払い、場所代、宣伝費、人件費、紙代、食費、化粧も必要だし、護衛の給金も必要だ。人件費を除いても、半分は消えるとみていいだろう。』

 「宣伝費とは?」

 『現地で、住民に宣伝をお願いするんだよ。お礼に銀貨10枚くらい渡せば、一生懸命やってくれるだろうよ。』

 「売り込みに行くのでは無いのですか?」

 『チケットを事前に売るんだよ。貴族は執事かメイドが買いに来るから、売り込みなんて必要ない。』

 「貴族の席が取り合いになるのでは無いですか?」

 『毎日、午前と午後の2回公演をして、チケットに記載しておけばいい。貴賓席は番号を振っておいて、何日の午後の公演で、何番の席か判る様にして置けば、被らないだろ?』

 「脅されたら?」

 『バネナ王国を敵に回すと脅せばいい。一緒に行動する護衛もいるしな。』

 「買収されたりは・・・?」

 『そしたら、俺に連絡しろ。そいつは、地獄の猛特訓行きだ。血反吐を吐かせてやる。』

 「勝てるのですか?」

 「我々騎士が、アルティス様に勝てる訳無いですよ?天地がひっくり返っても無理です。それに、アラクネクィーンが来ますからね、楯突くだけ無駄ですよ。」

 「え?アラクネクィーンが仲間なのですか?」

 『この部屋の中にもアラクネはいるぞ?ソフト、姿を見せろ。』


 音も無くスゥーっと姿を現したアラクネに、息を飲む音が部屋に響いた。


 「こ、これがアラクネクィーン・・・」

 『ソフトは違うぞ?クィーンの子供だ。』

 「あ、暴れたりは・・・?」

 『怖い気持ちは判るが、アラクネが暴れたのは、人間がアラクネを奴隷の様に扱ったからだ。アラクネは馬鹿では無いし、寧ろ人間よりも頭は良い。お人好しなのをいい事に、調子に乗ったから反乱を起こされたんだよ。酷い事をしなければ、頼もしい隣人なんだよ。』

 「アラクネが狂暴というのは嘘だったんですか?」

 『大ウソだな。反乱された権力者が、自分達を正当化する為についた嘘だな。とりあえず、概要は判ったと思う。演劇をやるには、裏方やちょい役なんかも必要になるから、今の人数では少なすぎるな。他にメンバーはいないのか?』

 「宿の方に4名いますが、裏方をやってもらっているだけですね。」

 『全部で8人か。全然足りないな。20人は必要だな。まぁ、明日から始動すればいいだろ。今日はもう寝よう。』


 翌朝、例の広場に行ってみると、目の下にクマができて、壊れかけた二人が、たったの一晩でガリガリにやせ細った姿で、土下座してきた。


 「た、助けてくれ・・・私は悪く無い、私は何もしていないんだ。私はただ、横で見ていただけなんだ。」

 「儂のやった事は間違ってない、儂のやった事は間違ってない、儂のやった事は間違ってない、儂のやった事は間違ってない、儂のやった事は間違ってない、儂のやった事は間違ってない、儂のやった事は間違ってない、儂のやった事は間違ってない、儂のやった事は間違ってない。」

 『ワラビ、行けると思うか?』

 「無理です。まだ怒りが収まっていない処か、更に酷くなっています。」

 『もう、こいつらの精神防御は外すしか無いな。こんな奴らを守る必要なんて無いだろう?』

 「・・・。」

 『逃げられない様に結界に閉じ込めて、精神防御解除っと。亡者の記憶は溜まったか。うん、まぁ、安定の教会だな。』


 アルティスが見たのは、魔力鉱石を使って作った、水晶玉の様な魔道具で、触れた亡者の記憶を映す物なのだが、見えてきた内容はどっちもどっちと言える様なもので、教会の司祭は悪魔、地下室に人々を閉じ込めて、様々な実験を繰り返した挙句、食料としていた様だった。

 それを知ったロッツゲンシュロートは、教会ごと焼き払ったのだ。

 この地に留まる魂は、酷い事をした教会に怒り、丸ごと焼き払ったロッツゲンシュロートに怒っているのだ。

 だが、今は悪魔はこの大陸から居なくなっている為、矛先がロッツゲンシュロートに向いているだけだ。

 ベーグル国が周辺の都市国家を攻め落とした原因も、この教会の凶行が原因だ。

 そして、教会を焼き払っても、悪魔は死ななかった。

 しかも、ベーグル軍は焼き払っても悪魔は死なない事を知っていたのだ。

 つまり、焼き殺された人々は、無駄死だったという訳だ。

 沢山の人々が死んだ理由は、もう一つある。

 それは、その日が集会の日だった事だ。

 態々、人が大勢集まる日を狙って火を放ったのだ。

 愛する我が子が焼け死ぬところを見た。

 優しい母親が、炎に巻かれる瞬間を見た。

 家族が!兄弟が!恋人が!

 かくして、この地は怨念渦巻く呪われた地になったのだ。


 怨念に囚われた魂は、光魔法や神聖魔法で排除する事はできるのだが、成仏する事は無く、この地から解放されて、各地で報われない魂を吸収し、自我を無くし、人を無差別に襲い始め、その魂も吸収して、やがては、リッチやノーライフキングに成長するのだ。

 そうなれば、物理攻撃は効かず、魔法耐性も高い、最早(もはや)、災害としか言えない様な存在になってしまう事になる。

 だから、先に怨念の怒りを鎮めてやらなければならないのだ。


 『ワラビ、この地に居た悪魔の名前は判るか?』

 「はい、ニヌルタという悪魔男爵です。」

 『ニヌルタ?マジで?という事は、ワラビが殺した奴じゃないか?』


 霊たちの意識がこちらに向いた。


 『ほら、砦で捕まえて、セイクリッドライトで倒したじゃん。キュプラと合流した日だよ。』

 「そういえば、そんな事もあった様な気がします。」

 『思い出さない?12の月の27日だよ。王都からモコスタビアに向かう途中で、エルフ達を砦に保護した時だよ。』

 「あぁ、あの時の悪魔がそうなのですか。確かに消滅させました。」


 ワラビの上をレイスが通過して、ワラビの前に移動すると、感謝の意識が感じられ、ロッツゲンシュロートの方に飛んで行く。

 暫らく見ていると、光の粒に変化して、天に昇って行く魂が見え始めた。

 彼等は、悪魔に食われた人々だと思う。

 ワラビの様子を少し離れた所から見ていた劇団員達は、その様子を黙ってみていた。


 『今の光の粒は見えたのか?』

 「はい、見えました。あの現象は一体なんなのですか?」

 『あれは、この教会で悪魔に殺された人々の魂が、天に昇って行く瞬間だよ。』

 「あの方は、誰なんですか?」

 『聖女のワラビ・ライスケーキだよ。知らないのか?」

 「えええー!?あの方が聖女様なのですか!?初めて見ました!」

 『劇の内容をちょっと変更しないと駄目だなぁ。あらすじだけど、ベーグルが戦争を始めたきっかけからやらないと、辻褄が合わなくなりそうだな。』


 「というと?」

 『ベーグルが戦争を始めたきっかけは、教会が悪魔によって支配されていたから、ベーグルが教会を潰す為に始めたんだよ。周辺の都市国家を併呑したのは、その為だったんだが、本拠地はベーグル国内のこの教会だったと判って、信者が多く集まった時を狙って、信者諸共焼き払ったという事らしい。だが、焼き払っただけでは、悪魔は殺せない。それを知っていて焼き払ったアイツらは、やはり恨まれる存在という事だ。』


 「何故、聖女様の目の前で、天に召された方々がいるのですか?」

 『この教会で悪さをしていた悪魔を、ワラビが消滅させた事が判ったからだよ。俺が宰相になる前の話なんだが、昨年の12の月の27日にバウンドパイク領で、悪魔男爵のニヌルタを消滅させたんだよ。ニヌルタは、バウンドパイク侯爵の執事になって、周辺の街で配下の悪魔を使って、悪さをしていたんだ。その悪魔を捕まえた俺達は、ワラビに協力してもらって、セイクリッドライトで倒していた様なんだ。』

 「ほうほう、という事は、この街からの排除には成功していたという事ですか?」

 『どうだろうな。教会という隠れ(みの)が無くなって移動したのか、別の理由があって移動したのかは、判らないな。』

 「もう少し調べる必要があるって事ですね。」

 『そうだな。ただ、悪魔の動向をどうやって調べるか・・・、霊たちの記憶を見れば判るかもしれないが。』

 「アルティス様、ニヌルタがバウンドパイクに移動した理由、判ります。」

 『本当か!?』

 「はい、私の教育係だった、コゴミ・オムレット大司祭様が、命がけで追い払ったそうですが、その際に重症を負いまして、お亡くなりになりました。」

 『まともな聖職者もいたんだな。』

 「出奔する1年前までは、まともな方ばかりでした。」

 『そのオムレット大司祭は、この教会が焼け落ちた時に居たという事か?』

 「その様です。一緒に焼かれた様です。」

 『・・・。悪魔を追い払ってくれた聖職者諸共(もろとも)焼いたのかよ。クソが。』


 アルティスから殺気が漏れた瞬間、大きな鎌を持ったグリムリーパーが現れ、結界の中の二人の魂を狩り取って消えた。

 そして、次の瞬間には、次々と光の粒が現れ、光の柱が天に伸びた。


 『ワラビ!』

 「はい![セイクリッドヒール]」


 天まで続く光の柱を優しく包み込む、白い光が天に伸びた。

 エアシャーの人々が、仕事の手を止め、光の柱を見て涙を流し、手を合わせて祈りを捧げた。

 光の柱は、空に虹色の輪を作り、光の柱と共に消えていった。

 その光景は、エアシャーの人々の記憶に深く刻まれ、1の月の11日は、エアシャーの追悼の日になった。


 『誰か、彫刻家知らないか?』


 アルティスは、この日の出来事を石碑に刻み、この地に石像と共に建立しようと心に決めた。


 「アルティス様がお作りになって下さい。」

 『じゃぁ、こんな感じだな。[アルケミー・モールディング]』

 「キャー!!アルティス様!それは駄目です!私の像なんてやめて下さい!それに大きすぎますよ!」


 アルティスが作った像は、ワラビがセイクリッドヒールを放った時の姿を模して、3mの高さにして作った。

 ワラビは、自分の姿の石像を見て、顔を真っ赤にしながらアルティスに抗議したが、アルティスは無視して、敷地の一画に建立(こんりゅう)した。

 台座には、エアシャー大聖堂の犠牲者の魂に捧ぐと刻み込んだ。

 劇団員達は、あまりの光景に見惚れ、その瞬間の様子をメモに残した。

 街の人々が次々と花束を持って、像の前に集まり、花を手向けては、祈りを捧げて去って行く。

 そんな光景が、いつまでも続いた。


 この旧大聖堂跡地の広さは、300m四方もあり、役所としては広すぎる為、道路沿いに庭園を作り、その奥に法務省と裁判所を作る事にした。

 地面を掘り起こすと、地下室が見つかり、中に遺骨が大量に残っていた為、庭園の下に神聖魔法を付与した箱を埋め、その中に埋葬した。

 庭園は、神聖魔法紋を模した形に作り、中央に慰霊碑、慰霊碑の下に神聖魔法を付与した魔道具を埋めた。

 花壇には、まだ何も植えられていないが、その内に何か花の種でも撒こうと思う。


 大罪人の2名の遺体は、魂がグリムリーパー(死神)に狩り取られた為、ワラビが神聖魔法で処理して、庭園に封印した。

 ワラビのMAGは、8078まで上がっているが、封印の強度がいまいちだった為、アルティスが外側から更に封印を行い、簡単には封印が解けない様にした。

 グリムリーパーは、リッチと同等の魔獣と見られているが、実は神の使徒であり、グリムリーパーに魂を狩られると、その魂は魔界に送られるそうだ。

 魔界に送られた魂は、輪廻の輪には戻れず、魔界の中を漂い続ける。

 悪魔に成れる程の格は無い為、悪魔になれるまでずっと、漂い続けるのだ。


 『今日はもう帰るか。何か、精神的に疲れたな。』

 「はい、もうクタクタです。」


 アルティスとワラビが疲れた理由は、劇団員達がワーワーキャーキャー煩かったのだ。

 興奮冷めやらぬといった感じで、劇の内容と台詞を考え始め、ラストの締めを虹の輪にするか、石碑の建立にするかで、討論をしていたのだ。

 アルティスとしては、虹の輪で感動して終わった方がいいと思うが、石像と石碑の話も入っていても良いと思う。


 『やっぱり、石像については、後日談にした方が良いな。』

 「後日談?どんな感じですか?」

 『虹の輪で劇は終わりで、興行を一周したら、後日談を付け加えるんだよ。今は庭園ができて、中央に慰霊碑、公演の端にはワラビの石像と記念碑が建ってると。』

 「じゃぁ、それで。」

 『軽いなおい。』


 戻ると、ルベウスと子供達が、追いかけっこをして遊んでいた。

 今日、カレンは、子供達の事を診る為に居残りだった。

 栄養失調の子は、ご飯を食べればすぐに治る訳では無く、元気になるまでは時間がかかる。

 栄養バランスも必要だが、孤児の栄養失調は、基礎代謝に必要な栄養が足りて無い事が原因の為、胃腸が弱っている場合が多く、胃腸が弱っている場合、肉類や歯ごたえのある野菜などを消化する事が困難だったり、十分な咀嚼(そしゃく)ができず、胃も小さくなっている為、嘔吐や誤嚥(ごえん)等に注意する必要があるのだ。

 この世界では、卵やミルク等、栄養価の高い食料は、手に入りにくい為、芋やパン粥が多くなり、炭水化物と脂質は摂れても、ビタミン類がなかなか取れなかったりする。


 この街の特産品としては、海産物が多く、シラスの様な魚が特によく獲れるのだが、こいつらが生命力が高く、殆ど海水の入っていないバケツに入れっぱなしでも、三日は生きているそうだ。

 体長2cmが大人の状態で、雑食らしく、水槽に入れて手を入れると、垢や古い角質等をバリバリ食べてくれるそうだ。

 ドクターフィッシュと言えそうな雰囲気だが、怪我があると傷口から体内に入り込むという特性があり、大量に入り込むと死亡する例もあるらしい。

 この魚は、塩漬けにされて売っているのだが、塩辛かってくらいに塩辛い。

 ご飯のお供に良さげだが、この魚が、塩漬けにしても生き延びるらしいので、買って来てから1週間経たないと食べられないらしい。


 『水で洗って、茹でればいいんじゃね?』


 アドバイスしたら、美味しく食べられる様になったらしい。

 釜揚げシラスみたいなものだよね。

 魚市場にも行ってみたが、売っているのは魚ばかりで、貝類が殆ど無かった。

 イカタコが無いのは判るのだが、貝や甲殻類が無いのは、ちょっと寂しいね。


 『シーア、セイレーン達の具合はどうだ?』

 『大分持ち直しました。ただ、島の周りに魚が全然寄って来ない様で、困っています。』

 『貝とか甲殻類って食べないの?』

 『貝は当たるので、食べないです。甲殻類はどんな物なのかが判りません。』

 『蟹やエビだよ。ジャイアントクラブとか。』

 『え!?ジャイアントクラブを食べるんですか!?』

 『美味しいんだよ?』

 『そうではなくてですね、倒せないのです。硬すぎて。』

 『目と目の間を水で覆うんだよ。真水に弱いから、勝手に弱るよ。倒れたら、目と目の間にナイフを突き刺せば死ぬよ。』


 ジャイアントクラブは、割とどこにでもいる蟹で、甲羅が硬くて狂暴な為、誰も倒そうとしないので、増えているそうだ。

 アルティスが倒し方を知っていたのは、日本でも海岸近くの陸に蟹が生息していて、海から100mも離れている所に住む蟹がいるんだよね。

 その蟹は、水中に沈めるとすぐに弱るので、頭の部分を水中にしてやる事で弱ると思ったからだ。

 急所の位置が同じだったのも大きい。

 陸に住む蟹は、小さいので泥臭かったが、こっちの蟹はでかいし、海岸沿いに生息している事から、泥臭くないと思ったのだ。

 色もタイワンガザミみたいに青いし、初めてみた時に美味そうだと思った。

 大きさは体高2、3m、幅は4m近くあるけど、脚は一番美味しい部位だから、長いのは大歓迎だよ。

 そういえば、エルフ王国奪還作戦の途中で、蟹も狩ったな。


 島にもジャイアントクラブが生息していて、最近活動範囲を広げてきているのだとか。

 救援に行ったシーアとスーアも、ジャイアントクラブと対峙はしたものの、倒す事ができずに、追い払うのが精いっぱいだったそうだ。


 『教えてもらった通りにやったら、倒せました!!これで、島の平和を保つ事ができます!』

 『ちゃんと回収しろよ?アンデッド化したら、手が付けられなくなるからな?』

 『は、はい!』


 硬い甲羅を持つアンデッドなんて、戦うの面倒くさそうだからね。

 ちなみに、アンデッドになる条件は、生物であれば全て同条件でなるよ。

 まず一つ目が、サイズが20cm以上で、生物でなければ、アンデッド化しない。

 まぁ、微生物がアンデッド化しちゃったら、アンデッド以外居なくなっちゃうからね。

 で、二つ目が、魔力・・・MAGを持っている事。

 そして、三つ目が、脳がある事だ。

 脳の定義は、アルティスが見た目で判断しただけだが、単細胞や条件反射で動く奴は、アンデッド化したのを見た事が無い。


 そして、アンデッドには種類がある。

 普通の天然アンデッドは、闇属性の虫に寄生される事で生まれる。

 所謂、物理攻撃が効くタイプのアンデッドだが、魔法や火、日光でも撃退が可能である。

 焼死体や加熱した後の生物はアンデッド化しないよ。

 アンデッド化したら、肉料理が食べられなくなっちゃうしね。

 次が、怨霊が成長してアンデッド化する場合だが、先の大聖堂のレイスやゴーストや、ラクガンスキルの首都に居たアンデッドが、その類だね。

 幽体のアンデッドには、物理攻撃は一切効かず、魔法か魔剣、日光が有効だ。

 魔法や魔剣が効くのは、幽体系のアンデッドは、魔力の固まりで構成されているので、魔法や魔剣を受けると、魔力の構成が変化して、状態を維持できなくなるのだと推測する。

 ラクガンスキルにいたアンデッドは、殺されたり死霊術師に魂を取られたりして、魂との繋がりを絶たれた遺体に、別の彷徨う魂が宿ったものだ。

 別の彷徨う魂とは、事故や餓死、森で死んだりすると、生に固執する意志が、輪廻に戻る事を拒み、ゴーストとして彷徨っている状態の事を指す。

 死ねば、自分の体には戻れず、遺体の前に佇んでいるのだが、教会が真面だった頃は、聖職者が礼拝堂で祈る度に、近隣のゴーストが輪廻に戻って行っていた。

 

 そして、最後が魔石を持つアンデッドだ。

 一応、普通のアンデッドも倒せば魔石が出るんだが、その魔石は寄生虫が持っていた魔石で、アンデッドそのものの魔石では無い。

 アンデッドそのものが魔石を持つというのは、人工的?人為的?にアンデッド化したり、リッチやノーライフキングの様に、成長して強力になった場合には、必ず持っている物だ。

 こいつらは、魔石を狙えば簡単に倒せるのだが、普通は隠しているから、見つけるのは至難の業で、リッチやノーライフキングくらいの高位になると、体内をあちこち移動するので、更に倒し難くなるという訳だ。

 そして、日光が効かない場合もある。

 つまり、魔石を持っているタイプにも、細かく分類できる種類が存在しているという事だ。

 例えば、死霊術師が作った場合は、ゴブリンの魔石を使って作ると、最低クラスのアンデッドができあがり、強力な魔獣の魔石を使えば、魔獣に近い強力なアンデッドができあがる。

 他には、アンデッドが魔石を食べた場合などで、発生する事がある。


 魔石とは、魔力回路の一つで、魔力を体中に巡らせるための器官と言えるし、脳の代わりでもある。

 特有のスキルを記憶しているのが魔石であり、経験値や魔力を持っている為、普通の魔獣は、魔石を狙って他の魔獣を襲うと言っても過言では無い。


 最後に、日光についてだが、これは光属性そのもので、光魔法は魔力で日光を再現したものである為、闇属性やアンデッドには有効なのだ。


 因みに、アンデッドは全て闇属性になるという訳では無く、他の属性も居て、光属性のアンデッドも居る。

 その場合、光魔法を使うたびに自分もダメージを受けるという、意味が判らない状況になる。

 だからか、光属性のアンデッドが殆ど居ないのは、自滅するのが理由だろう。


 それと、アンデッドは、ずっと存在し続けられる訳では無く、怨霊系のアンデッド以外は、魂と体が一致していない為、基本的には数ヶ月で消滅するのだが、死霊術で生まれた場合は、状態が固定化される為に、長期間存在し続けられる様だ。

 天然のアンデッドの様に腐った肉は、普通に腐るし、骨の場合は風化が進むので、その内に自然消滅するという訳だ。

 ただし、一部のゾンビやスケルトンでも、長く生き続けられる個体もいて、最低級のゾンビやスケルトンが進化して、上位になると腐敗や風化に負けなくなる様だ。

 ただ、極々稀に産まれるだけなので、滅多に見る事は無い。

 土の栄養を満遍なく行き渡らせる狙いがあるのかもしれないね。

 この世界の自然の摂理だと思えば、受け入れられる・・・?

 だが、ラクガンスキルの場合は、幻影魔法で彷徨う魂の姿を映し出していた為、通常はあり得ない期間

存在し続ける事ができてしまった様だ。

 しかも、残っていた遺骨に、この地を守るという強い意志が残っていた為に、彷徨う魂が囚われ、幻影となって彷徨っていた様だ。


 シーアが蟹を持ち帰ったので、少し貰いに行ったよ。


 『何体狩ったの?』

 「20体狩りました。」

 『そんなにいるの?』

 「何種類かいて、味が違うのかと思ったので、獲ってきました。」

 『青いのがジャイアントクラブで、緑のがジャイアント・ハーミットクラブ?ヤドカリかな?こっちのトゲトゲしたのが、マイグラトリー・クラブ・・・渡り蟹かな?』

 「どうやって食べるんですか?」

 『カレン手伝って。まずは仰向けにして、足を斬り落とす。足は肉が詰まってるから、関節で斬って、茹でるよ。胴体はこのまま茹でる。本当は、全部丸ごと茹でるのがいいんだけど、大変だからいいね。』

 「できなくも無いと思いますが。」

 『お湯を沸かすのが大変だよ?』

 「この島なら沸かせますよ?」


 この島には、火山由来の熱い地面の場所が点在しているらしく、そこに鍋を埋めれば、常に熱湯が作れるのだとか。

 早速、近くに巨大な鍋を埋め込んで、海水を流し込んだ。

 鍋全体が暖められている為か、あっという間に熱湯ができたので、アラクネ絹を使ったクレーンを作って、蟹を投入した。

 入れるとすぐに赤く変色するのだが、中に火が通るまで時間が掛かるので、5分待ってから引き揚げた。


 『カレン、足の殻に斬り込みを入れて、剥いてくれ。』


 殻を取ると、ぷりっぷりの白身がでてきたので、ひと口頬張る。


 『うんま!美味い!丁度いい塩加減で、凄く美味いよ。』


 元がデカいので、筋繊維の一本がカレンの指の太さくらいあって、食べ応えがある。

 胴体の方は、(ふんどし)の中にも身と味噌が入っていて、腹側の殻を薄く切ってもらい、肩肉と味噌が全部見える様にしてもらった。

 蟹味噌は濃厚で、肩肉でディップして食べると、超美味い。

 これは、他のセイレーン達も気に入った様だ。

 殻も、穴が開いてる訳でも無く、器型なので、小屋の屋根にぴったりで、プールや風呂にも使えそうだと大喜びだ。

 更に、足の殻を茹でると、出汁が取れて味噌汁が美味いのだ。


 『蟹貰っていいか?』

 「茹でた物にします?」

 『生と茹でた物を欲しい。』

 「どうぞ、お持ちください。」

 『この近辺にもっと細長い奴いないか?』

 「それは、クラーケンが大好物のエンペラーシュリンプですね。強くて狩れないんですよ。」

 『どこにいるんだ?』

 「海の底に近い場所にいますね。大きさは3m程しかないんですが、とにかく逃げ足が速くて、追いつけないんですよ。」

 『ちょっと、後で見に行ってみるか。シュリンプも美味いんだよな。』


 カレンの目がキラキラしているが、バイクでは行けないんだよな。


 『簡単に狩る方法としては、網で囲って獲るとかかなぁ?』

 「是非教えて下さい!」


 所謂追い込み漁を教えたんだが、速攻で捕りに行って大漁だったらしい。

 エビも貰ってから帰ったよ。

 晩飯はエビフライかな。

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