第53話 テラスメル高原からの撤退と新たな火種
ソフティーの背中に乗って、現場に行ってみると、かなり酷い状況なのが判った。
半径500m以内の建物が粉々に破壊されており、爆心地が官吏の屋敷の敷地内にあった為、屋敷も消し飛んでいた。
『闇奴隷達は大丈夫なのか?』
「はい。奴隷達が居た所は、爆心地の地下なのですが、爆風が全て上に逃げた為に、地下には殆ど被害が及んでおりません。」
『爆発の原因は、判ったのか?』
「魔石の暴走で、ほぼ間違い無いと思いますが、魔石の欠片が見つからないので、確信が持てないんです。」
説明してくれたのは、ドワーフでは無くエルフで、彼女自身も爆発に巻き込まれたらしく、傷が所々に残っている。
『[治療術]』
「あ!ありがとうございます。でも、私より重傷者の方が沢山居ますので、そちらを先にお願い致します。」
『ポーション沢山持ってるから、使ってやれ。瀕死の者はいるか?』
「こちらです。ついて来てください。ドワーフが一人、もろに食らってしまいまして、ほぼ肉塊といった感じなんです。」
連れて来られたのは、天幕で作った救護所で、中にはたくさんの重症者が横たわっていた。
一番奥の仕切りをくぐると、そこに肉塊になったドワーフが横たわり、HPもMPも殆ど残っていない状態になっていた。
『よし、どけ。邪魔だ。[治療術]』
肉塊が皮膚を取り戻し、毛が生えてきたところで、MPポーションでMPを復活させて、HPポーションで治療した。
だが、ポーションで戻ったHPがすぐに減り始め、みるみる内に怪我も酷くなっていく。
『[アナライズ]・・・おい、ピンセット準備、ガーゼと包帯も準備しろ。ドワーフを外に出せ。邪魔だ。』
ドワーフを外に出した理由は、消毒用アルコールを使うからだ。
元がワインのアルコールな為、ドワーフからするとただの酒で、消毒用に使うのが勿体ないとか言い出すからだ。
以前、ディメンションホールから出したアルコールを、奪いに来た馬鹿が居たので、ドワーフの目の前では出さない事にしたのだ。
どうしても出す必要がある時は、同じ容器で、ジョロキアウォーターを入れたものを先に出して、気絶させてから本物を出す様にしたら、奪われる事が無くなった。
瓶を改良して、勢いよく煽ると、目に直撃する瓶を作ってもあり、濃縮されたアルコールが目にかかり、強烈に沁みる事だろう。
今回はソフティーがいるので、部屋から出て行こうとしないドワーフの足を縛って、動けない様にしてから、バットに入れて道具を消毒した。
『よし、コイツの体に魔石の破片がいくつか入ってるから、取り除いて行け。』
ピンセットで取り除く様子を確認して、問題無い事が判ったので、魔法で取り除いた。
『[アポート]これが爆発の原因かと思ったが、違うな。これには、重症化の魔法が付与されているだけだな。瓦礫の様子からすると、爆発の原因は別の物だ。魔石は殺傷能力を向上させる為の物だな。』
「まさか!?本当なのですか?」
『爆発の瞬間だが、斧で鎖か何かを切ろうとしなかったか?』
「していました。扉に鎖がグルグル巻きになってましたので、斧で断ち切ろうとしていました。」
『その時発生した火花が原因だろうな。』
「そんな事が起こりえるのですか?」
『この街の年間の火災件数を調べてみろ。かなり多い筈だ。井戸を掘れば、ブクブクとガスが出る筈だ。』
「近くに燃える水の湧く泉があるそうです。」
アルティスの着けているゴーグルには、可燃性ガスの表示が出ていて、他の者にも出ている筈だが、可燃性ガスの意味が判らないのだと思う。
この街の地下には、天然ガスが大量にあるんだろう。
天然ガスは、都市ガスにも使われているガスで、特に匂いは無いので、都市ガスの場合は後から、タマネギの腐った臭いを付けているのだ。
漏れてるのが判らないと、酸欠になったり、爆発したりするからね。
燃える水の湧く泉とは、常にガスが湧き出していて、誰かが火を点けたのだろう。
『まぁ、あるだろうなぁ。回収装置でも作って、全部回収するか。使い道が限られてくるが、まぁいいだろう。あるじー工兵部隊の召集を要請する。それとドワーフの国を作らせよう。王政ではなく、共和制で。』
「国を運営する能力があるんですか?」
エルフが危惧しているのは、ドワーフの性格を知っているから、群れて何かを決められるのか、疑問でしかないのだ。
それは、ドワーフの支配地域なのに、国が無いのがその証左と言える。
殆どのドワーフが、自己中でアル中だから、ルールを作っても守らない、法律は無視、金はあるだけ使う、農作物も収穫物を全て食う、我儘で横柄で頑固。
好きな事はとことん突き詰めるが、嫌いな事は絶対にやらない。
だから、国の体を維持できないのだ。
『一人に任せるから駄目なんだよ。議会政治にさせれば、意外にうまくいくかもしれない。』
「・・・。」
『無理そうか。』
「心を読まないで下さい。」
まぁ、気持ちは判る。
協調性の無い奴だけが集まって、国を作れるかっていうと、無理だと思うのは普通の話だと思うからね。
今も目の前にドワーフがいるのだが、さっきからチラチラと消毒用アルコールを見ている。
『ああ!うっとおしい!出ていけ!』
ドゴッ!
天幕の入り口に向けて蹴り飛ばした。
仲間が蹴り飛ばされたので、追いかけて行った体だが、要はアルティスを舐めていたのだが、蹴り飛ばされたのを見て、ビビって逃げたのだ。
天幕の外で騒ぎになっているが、放置で問題無い。
怪我人の内、欠損した者を中心に治療していくのだが、さも今さっき怪我しましたって感じで寝ている馬鹿が混ざっているので、そいつらを弾く。
確かに欠損はしているのだが、今回の怪我人ではなく、全く関係の無い所で欠損した腕や足を治せとばかりに、怪我人のフリをしているのだ。
当然追い出すのだが・・・。
「おい!治せ!俺は腕が無くて不自由しているんだ!」
「何で追い出すんだ!ちゃんと治せ!怪我しているだろうが!」
「どうしますか?」
『脅しても駄目なら、斬っていいぞ。根元からいってやれ。』
「畏まりました。」
スラッ
エルフが剣を抜くと、そそくさと外に出て行った。
『おい、ゴードン、お前が収拾付けろ。俺達は闇奴隷全員解放したら、出ていくからな?お前らドワーフの世話はしないぞ。ドワーフは、ホントにキチガイばっかりだ。』
『ど、努力します。申し訳ございません。』
隣のエルフに声を掛けようとして、思い出した。
『そういえば、名前聞いて無かったな。』
「あ、そういえば、名乗っていませんでしたね。ジュディーと申します。よろしくお願いします。」
『治すのは、今回の怪我だけでいいぞ。古傷まで治す必要は無い。あぁ、こいつは、治療するだけ無駄だな。後回しにする。』
「どうされたのですか?」
『コイツは、もう長くないんだよ。余命1カ月だ。』
「元気そうに見えますが?」
『ちゃんと歯を掃除してこなかったんだろうな。顎が駄目になってるだろ?食事を噛むってのは、重要なんだよ。そして、歯の病気ってのは、放置すると骨の中を広がって、最悪死ぬんだよ。顎が使えないと、食えないからな。ドロドロの食事を流し込むって手もあるが、栄養が偏るんだよ。だから長生きできない。コイツはその末期って事だ。』
「顎が治れば生きられるのでは無いですか?」
『顎の骨と歯を再生すると、必要MPは3万に達するんだが、それでもやるか?』
重要器官の再生には、多くのMPが必要になる。
特に、顎だけならまだしも、コイツは歯が無いので、食えるようにするとなると、最低でも歯を10本は再生しなければならず、消費するMPが馬鹿にならない。
「3万!?」
『3万あれば、ここの怪我人全員治療できるんだが、こいつの為に消費するか?俺はやらないぞ。こいつの自業自得だ。』
ガキンッ!
ドワーフがアルティスを狙って、短剣を振り下ろしたが、何も無い空中で刃が止まり、ドワーフの首が落ちた。
「・・・本当にどうしようもない種族ですね。こんな奴ばかりだから、闇奴隷商に漬け込まれるんですよ。貴方方が束になってかかっても、アルティス様に傷一つ付ける事なんてできませんよ。何もして来なかった貴方達と、毎日厳しい訓練に明け暮れた我々のどちらが強いか、判りますよね?恩を仇で返す様な、みっともない真似はやめて下さいね。」
ジュディーの辛辣な小言を聞いてもなお、武器を手放さない者が居るが無視で問題は無いな。
粗方の治療を終え、外に出てみると、包帯に血も滲み出ていない欠損者が多数集まっており、跪いている。
『お前らがどんな理由で欠損したのかは知らんが、それは我々が治療する必要は無い。お前らが依頼をする先は、ドワーフの行政だ。どうしても治して欲しければ、白金貨10枚支払え。』
この白金貨10枚というのは、バネナ王国内の教会で、欠損を治療する時にかかる費用だ。
高い様に思える金額だが、普通の人間では、何本ものマジックポーションを飲み、ポーション中毒になる危険性を冒しながら、行う危険な治療なのだ。
ポーション代を差し引けば、利益なんて殆ど無く、神官がポーション中毒になれば、寧ろ大赤字になる程の作業だ。悪魔が蔓延る前までは、ちゃんと聖職者だった教会。
どこで道を間違ったんだろうね。
ドワーフは、基本的な教育が間違っているんだろうね。
アレを直すには、幼少期の教育から見直さなければ、治らないだろう。
我が強く、我儘で、傲慢で、省みない・・・終ってんな。
前の世界で、国民性がそんなだった国があった気がするが、纏めるにはやはり、強権政治じゃないと無理なのかもしれないな。
テラスメル高原は、大昔は山脈だったらしいが、部族間の長い内戦の後に、山が崩壊して高原になったらしく、大量の死者の腐敗臭で、長い間臭かったそうだ。
それで、テラ・スメル、滅茶苦茶臭かったんだろうな。
崩壊前の人口は、数億居たらしく、山脈を穴だらけにして、地下で暮らしていたそうだ。
戦争で地盤が緩み、大崩落で数億が数千まで減り、この地をドワーフの巨大な墓として、墓守をしながら生活してきた事になっている。
だが、その歴史は多分、崩落までが事実で、その後の墓守は嘘だ。
身勝手で、自分ファーストなドワーフが、墓守なんてする訳は無く、瓦礫が鉱物の宝庫だったから、この場に残ったんだと思う。
だって、墓守を1000年も続ける奴らが、同族の遺体を見ても、見向きもしないなんてあり得ないだろ?死体から身に着けている鉱物をはぎ取って、知らんぷりする奴が、墓守なんてできる訳ないじゃん。
死者を弔うなんて事もしないこいつらは、そう遠くない未来には、絶滅危惧種になっている事だろう。
ドワーフの工兵隊が到着したので、ガス田を作っていく。
ガスの元は、数億のドワーフ達だ。
だが、だからと言って、放置する訳にもいかないのだ。
長い時を経て、腐臭が無くなり、ガスが残った為に、穴を掘る度にガスが噴き出してくるので、どこかに継続的に出す為の穴を開ける必要がある。
加えて、そのガスを使う為の仕組も作れば、多分便利になるのだ。
『ここにガス田を作れ。ガス田で採ったガスを利用して、ドワーフの国を安定させろ。それがお前らの使命だ。上手く利用できれば、美味い酒が安く作れるようになるかもな。』
全くやる気のない顔をしていた連中が、最後のセリフを聞いて、目に炎が宿った。
簡単に説明をして、利用方法として、ワインを蒸留する方法を教えておいた。
本来の目的は、闇奴隷にされたダークエルフの救出である為、全域から闇奴隷の救出を進めていく。
そもそも、今回ドワーフ達を使った大々的な作戦の意図は、バネナ王国内からのドワーフの排除が目的の一つでもある。
バネナ王国民は、早くもドワーフを追い出したくなっており、最早ドワーフを歓迎する様な、村や集落すらも無く、すっかり嫌われ者の代名詞となっている。
アーリアも訓練に手こずっていて、ある程度訓練に慣れて来ると、勝手に街に繰出し、国の金で酒を浴びる様に飲もうとするのだ。
現時点で、詐欺で捕縛されて、強制労働中のドワーフが2000人程もいて、脅しても1週間も経てば、すっかり忘れて同じことをやるので、ほぼ諦められていると言っても、過言では無い。
もうバネナ王国の所属からは外しているので、武器も防具も安物の量産品と交換済みだ。
ゴードンの様な真面目な奴も居ない訳では無いのだが、ゴードンは、古代種のエルダードワーフとドワーフのハーフで、教育はエルダードワーフ式で受けたらしいので、真面なだけらしい。
エルダードワーフは、ドワーフ族の元王族で、基本的な性格は同じだが、責任感が強く、仕事熱心な者が多いのだそうだ。
ドワーフは燃費が悪く、自分の体重の倍の量の食料を毎日消費し、エルダードワーフはその分働くが、ドワーフはサボりたがり、真面目に働く事を拒み、サボる事に全力を出す。
一言で言えば、クズなのだ。
街に居る仕事熱心なドワーフは、全員エルダードワーフ由来で、テラスメル高原出身のドワーフは、居ないのだとか。
ただ、戦闘力については、エルダードワーフよりもドワーフの方が高く、傭兵にするならドワーフ一択となる様だ。
だが、戦争が終わった今、ドワーフを生かせる場所は無く、素行の悪さから、戦争で得た名声は地に落ち、バネナ王国中から疎まれる存在になっている。
エルフの森奪還作戦にドワーフを使わなかった理由としては、ドワーフはハルバードをブンブン振り回して、木を薙ぎ倒しながら進軍する為、森が消える原因になってしまう為、連れて行く事はできなかった。
そして、ドワーフの天敵は、アーミーラプトルなので、連れて行くとアーミーラプトルが大繁殖する原因に繋がりかねず、王都で訓練漬けとなったのだ。
アーミーラプトルは地中に巣を作り、通路のサイズはドワーフのサイズと一致し、素早く動き回る為、ドワーフでは対処が難しく、餌として考えれば、丁度いいサイズだ。
テラスメル高原の森にもアーミーラプトルは生息しており、長年攻防を続けている様で、アーミーラプトルに対抗する為に、種の保存の為に、ドワーフの繁殖力が高くなったのだと思われる。
ちなみに、アーミーラプトルの天敵はドワーフなので、アーミーラプトルとの攻防を続けることで、均衡がとれる事になる様だ。
さて、今回の作戦の目的の進捗具合を確認したのだが、遅々として進んでいない事が判った。
理由は、怖い上司から離れた事で、各街に派遣されたドワーフが、街の酒場で酒盛りを始めてしまい、闇奴隷の捜索が進んでいないのだ。
『作戦を遂行せずに、酒場で酒盛りしているドワーフは、逃亡兵とみなす。速やかに作戦を遂行せよ。さもなくば、死ぬまで酒が飲めなくなるが、それでいいのか?』
作戦行動中のドワーフに向けて、念話を送ったのだが、返ってきた返答は・・・
『ふんっ、どうやって俺達を捕まえるつもりだ?捕まえる為の人数もいないのに。俺達は俺達のやりたい様にやらせてもらうぜ!』
というものだった。
という訳で、アラクネ部隊の出動である。
あちらこちらの街中に、アラクネが出現し、大混乱を引き起こしたが、原因が魔王軍から戻ってきた連中だと判ると、次々と酒場から追い出され、腹いせに闇奴隷を囲っていた連中を血祭りにあげ始めた。
任務を完了させた後は、軍に残るかここに残るか聞いてみた。
ほぼ全員が軍を抜けると回答したので、アミュレットを回収して放逐してやると、嬉々として酒のつまみの為にアーミーラプトルを探しに森に入って行った様だ。
アミュレットを外してみると、ドワーフの戦闘力はがた落ちになり、森に入ったっきり戻って来ない者が多い。
理由は、アミュレットのMPを使う事に慣れ過ぎていて、素のMPが少ない為に身体強化が長続きしないからだ。
自己鍛錬をしていれば、MAGもどんどん増えて問題無く使えてた筈なのだが、鍛錬なんてしている筈も無く、訓練が終われば、唯々酒を飲む、そんな生活を続けていたから、筋力も体力もがた落ちしていたのだ。
『無様だな。あれだけ暴言吐きまくっていた癖に、1日も経たずにアミュレットを寄越せとか言いに来たとはね。お前らは全員バネナ王国の軍を辞めたんだから、アミュレットを貸す義理は無い。失せろ。』
「チビが偉そうな口を利くんじゃねぇ!言う事を聞かせる為に叩きのめせ!」
『[ショックウェーブ]』
ドパッ!
範囲を狭めてドワーフだけに影響が出る様に絞って、いつもの威力でショックウェーブを撃ったのだが、範囲を狭めたせいか、威力が上がってしまった様だ。
ドワーフ達が30m程飛ばされて、民家の壁にめり込んだ。
『残るは一番遠い街の分だけだっけ?回収したら、戻るよ。食事とトイレを済ませておいて。』
最初の闇奴隷商から奪った奴隷達は、ドワーフならその場で解放し、他の種族なら闇奴隷契約を解除して、首輪に切り替えてから王城に転送している。
主に獣人が中心なのだが、テラスメル高原に獣人の集落は無いので、他の地域から攫って来たのだろう。
この場で出身地を聞くのは、骨が折れる作業になるし、人手が足りないので、一旦王城で引き取り、ケットシーを含めて王城に待機している者達で、罪状と出身地の確認を行っている。
ダークエルフは殆ど居なかったのだが、街中に隠されていた奴隷達の中には、ダークエルフが多数おり、他に中央大陸では殆ど見かけない、獅子族や虎族、長鼻族の子供が多数見つかった。
最後の街で見つかった人数が1200人程だったので、総勢48000人もの闇奴隷が、街中で見つかった事になり、輸送中に救出した分を合わせると、8万人にも及んだのだ。
闇奴隷商の殆どは、禿犬族という獣人で、頭が禿ている訳では無く、俗称でそう呼ばれているだけで、本当の種族名は闇人族というらしい。
人間では無く犬型の獣人なのだが、獣人の中では嫌われ者で、全ての者が何らかの犯罪に加担していると言われているそうだ。
よく観察してみると、どうやらハイエナ系の動物らしく、耳が丸っこくて尻尾が短く、全体的に小柄な体格だが、それなりの筋力がある様だ。
表情は殆ど動かず、捕まっているのに薄ら笑いをしている者が多い。
種族特性は、暗視と隠ぺい、契約不履行とかいう珍しいスキルを持っていて、腐肉でも問題無く食べるし、サバイバル向きで、捕まえても、奴隷にするのが難しい種族の様だ。
犯罪履歴は、軒並み死罪確定レベルで、首輪を着けようとすると、無駄無駄とか言っていた。
一人に首輪を着けて、芸を披露させてみると、嫌そうにしながらも一発芸を披露した。
その様子を見た他の者達は、目を白黒させて怯え始め、次々と首輪によって隷属されていった。
種族特性のスキルは、通常のスキルよりも一段階上の強度を持っているので、普通は解除したり、無効化するのはできないのだが、隷属の首輪には、それらを無効化する為の術式が組み込んであり、アルティスのバカげた数値のMAGにより、隷属に不利なスキルを打ち消す程の威力を備えている。
『お前らの飼い主は誰だ?』
『じゅ・・・じゅう・・・がっ・・・くっ・・・獣王の・・・伯父・・・だ・・・』
『何故言ったのだ!命が惜しくないのか!?』
『抵抗できねぇんだよ!やってみろよ!俺だって言いたくねぇにきまってんだろうが!!』
ギャーギャー煩いな。
『黙れ』
『・・・』
詳しく話を聞きたいが、一刻も早くテラスメル高原から撤退もしたいので、話を聞くのは王都に戻ってからにする。
『[リフレクト・シールド]』
バシーッ!!
上空から魔法が飛んで来たのを感知した為、攻撃魔法を反射するシールドを全員を囲む様に張ると、雷系の広範囲魔法を弾いた様だ。
『コルス、どこから飛んで来たか判るか?』
『方角的に獣王帝国の方ですね。』
『こいつらの飼い主か。半分の威力だが、痛いだろうなぁ。』
『普通、範囲魔法は反射できないのが通例なんですけどね。』
『それは、反射できないんじゃなくて、シールドの範囲が足りてないだけだよ。今の攻撃範囲よりも倍以上の広さにシールドを張ったから、漏れなく反射できたよ。』
『流石稀代の変態ですね。』
『だからぁ、変態ってのは、ウルファの洗う前のシャツをクンカクンカするフィーネとか、あるじの使ったタオルを巣に溜め込んでいる、キュプラみたいなのを指すんだよ!』
ズダダダダダダ!
ちょっと離れた所から、キュプラとフィーネが走ってきた。
『アルティス!?』
「アルティス様!?何処で見たんですか!?」
キュプラの来た方角から、凄い殺気が向けられている。
片方はアーリアの殺気で、もう片方はウーリャの殺気の様だ。
『あれ?俺なんか変な事言っちゃった?』
「『言ったー!!』」
キュプラとフィーネを揶揄った直後に、最後の便が到着した。
ドワーフの子供?が3人居たので、解放しようとしたのだが、戻りたくないと懇願してきたので、ひとまず連れて帰る事にした。
ワープゲートで速やかに、ドワーフ以外を王都に送った直後、ロック鳥に乗った獅子族の男がやって来た。
「貴様が我が国に範囲攻撃をした者か!?」
『反射しただけだよ。先に攻撃してきたのはそっちだぞ。』
「嘘をつけ!範囲攻撃が反射できる訳が無いだろうが!」
『反射できないのは、範囲攻撃の範囲が、反射シールドの範囲を上回っているからで、範囲攻撃を食らうと、そこに攻撃が一旦集まってから広がるんだよ。だけど、シールドが範囲攻撃を全て防げば、反射は可能だ。』
『判り易い例でいうと、大量の水を小さいシールドで防ぎきれないだろ?大量の水を防ぐには、大量の水より大きいシールドを出せば、防げるんだよ。それと同じだよ。』
「・・・それは、まことか?」
『試してみたいなら実演してやってもいいぞ?その場合、反射した魔法は全部お前に降り注ぐ事になるけどな。』
「範囲魔法を上回るシールドを張れる程の魔力を、お前に感じないのだが?」
『解放すると周囲が大惨事になるから、抑えているんだよ。そのロック鳥が死んでも構わないというのなら、一部を開放してやってもいいが、場合によっては、お前も死ぬ事になるが、どうする?』
「死なない程度には調整できぬのか?」
『できないね。軽く解放しただけで、この辺一帯連中が失神するんだぞ。じゃぁ、こういうので証明になるよな?[ストーンニードル]』
一瞬にして獣人の周りに数千本の石の針が出現し、獣人を取り囲んだ。
獣人の男は、大量の冷や汗を流し、アルティスの実力が、自分を大きく上回る事を実感した。
「わ、判った。判ったから、消して下さい。お願いします。」
バサァ
「そ、そなたの実力があれば、可能である事は理解した。あらぬ疑いをかけてしまい、申し訳なかった。謝罪する。」
『で、あんたは誰だ?俺は、バネナ王国宰相アルティスだ。』
「我は、獣王帝国王太子ラインハルト・ブレイブクローと申す。貴殿の反射した魔法が、我が国の首都を直撃して、多数の死傷者が出た為、捕らえろとの命令が下されたのだが、我には荷が重い様だ。」
『魔法を反射した場合の反射率って知ってるか?』
「確か、半減する筈、だがあの威力は・・・術者のMAGの1割が加算されて増えた?いやいや、魔道具の雷魔法は半径100mの筈、半減して50mだとして、半径500mになるとすると、MAG値が1万以上無ければ、実現しない・・・まさか、MAGが1万を超えると?」
『ああ。』
「王に相談して参るしかないな。」
『そんなに被害があったのなら、申し訳ない事をした。こちらとしても、獣王国の王族を死なせる訳にはいかなかったものでな。俺の持ってる万能薬とポーションを渡しておこう。』
「忝い。・・・ちょっと待ってくれ、今、王族を死なせる訳にはいかないと申したか?」
『獅子族は王族なんだろ?』
「そうだ。まさか獅子族がいるのか!?どこだ!?どこにいるのだ!?我の子が攫われて行方不明となっておるのだ!居るのなら会わせてくれ!頼む!」
『すまないな。こんな場所に長時間居させるのも可哀そうだったので、我が国の王都に送ったんだ。会いたければ、正式に我が国へ訪問しに来てくれ。悪いようにはしないが、そちらの食事が不味ければ、帰りたがらなくなる可能性はあるな。』
「判った。正式に貴国への訪問を計画しよう。取り乱してすまない。我が息子が行方不明になってから、3カ月が経つものでな。最早生きて帰って来る事を諦めかけていた所だったのだ。」
『そうか。攫った奴は獣王の伯父だと思うぞ。闇奴隷商の飼い主がそいつらしいからな。裏を取って対処するのが得策だろう。』
「そうだったのか。その男なら、先程の魔法で死んだよ。炭化していた。」
『首は折ったのか?君らには超回復という恐ろしいスキルがあるだろ?』
以前、獣王帝国を旅した者の旅行記を読んだ時に、王族のスキルの事が書いてあって、そこに超回復という、瀕死になっても生命を維持又は、短時間で回復するスキルを持っている事が書いてあった。
そのスキルは、部位欠損をも回復する程の威力を持っており、MPを大量消費するが、死に難いので、持っていれば炭化していたとしても、生き延びる可能性が残っていると言える。
「HPもMPも空になっていたのだ。超回復はMPを消費するのでな、あれではスキルも使えないであろう。」
『そうか。だが、炭化している内に、首をへし折っておいた方がいいぞ。生き返るのはできないが、仮死状態になる方法はたくさんあるからな。その状態に見せかけて仮死状態を維持していたら、復活する可能性を残すからな。』
「判った。忠告をありがとう。では、戻って王に相談してくるとしよう。後日また会おう。では。」
見えなくなるまで見送った後、テレポートで王都に戻った。
「遅かったですね。何かあったのですか?」
『獣王帝国の王太子が来たよ。』
「ええ!?」
『女王陛下に報告してくる。』
会議室で女王陛下に事の顛末を報告した。
「では、獅子族のお子が奴隷の中に混ざっていると?それは由々しき事態ですね。すぐに部屋を用意して、丁重に扱わなければなりませんね。」
『はい。王太子殿下のご子息様ですから、帰りたくないと思わせるくらいにしなければ、我が国のメンツに傷がつきます。』
「アルティス、すんなり帰ってもらった方がいいんじゃないのか?」
『何を言ってんの?獣王帝国と国交を結ぶ千載一遇のチャンスなんだよ?向こうに帰りたくないと言わせられれば、交渉の際に優位に立てるじゃん!交渉を有利に進める為にも、向こうを困らせるくらい、こちらの好感度を上げておくのが必須だよ!』
「アルティスがやるのか?」
『カレンかリズに任せるよ。若しくはヒマリアかウルチメイト。』
「あぁ、ウルチメイトは来週まで返せないな。」
『何をやらせてるの?』
「エルフの森でギガントラプトルを5匹狩るまでサバイバルだ。」
『そっか。じゃぁ駄目だね。あの森の中だけでの生息数は8頭だけだから、来週で終わるか疑問だね。最悪、見つけられない可能性も高いよ。』
「そんなに少ないのか?」
『寧ろ、あのサイズのが何十頭も居たら、エルフが住めなくなるよ。ただでさえアーミーラプトルが凄いのに。』
「そうか。少し免除してやるか。」
『そういえば、キュプラ居ないんだね。どうしたの?』
「気絶してる。」
『え!?』
『アルティスが秘密をばらしちゃうから。』
『あぁ、アレね、1カ月前のタオルもあって、臭いがきつくてさ、やめて欲しかったんだよね。獣人とか俺にはきついんだよ。』
「それは、私の臭いがきついと言いたいのか?」
『違うよ。使った服やタオルには、雑菌の餌となる物がたくさんついているから、洗わずに放置すると、段々臭くなってくるんだよ。カビも生えて来るし、そうなると洗っても生地がボロボロになっちゃうからね、使えなくなっちゃうでしょ?』
「そうか。私が臭い訳では無いんだな?」
『臭かったら一緒に寝ないよ。』
「判った。」
アルティスがキュプラの秘密をバラしてしまった為に、アイアンクローを受けて気絶してしまったそうだ。
というか、アラクネクイーンを素手で気絶させるって、どんだけなんだよ。
一方、一緒に秘密をばらされたフィーネは、ウーリャと模擬戦を繰り返していたが、ウーリャよりもフィーネの方が強い為、特に被害は受けていない様であった。
「そろそろ本題に戻ってもよろしいかしら?」
『あ、すみません。大丈夫です。』
「今回救出してきた闇奴隷達ですが、首輪を着けているのは何故かしら?」
『長年闇奴隷として、虐待を受けてましたから、解放された反動で暴れたり、自殺したりする者もいるでしょうから。それと、犯罪行為をやらされていた者も多数いますので、一概に解放するでは、王都民に被害が出る可能性もありますので、暫らくは首輪を着けております。』
どのくらいの期間奴隷になっていたのかは、調べなければ判らないが、酷い虐待を受けていた形跡もあるし、犯罪履歴がある者も多い為、簡単に解放する訳にも行かない。
解放した途端、盗賊ギルドに喧嘩を売りそうな輩も居る為、最終的には解放するつもりであっても、今の時点ですぐにとは行かないのだ。
「あんなに沢山の奴隷がいるとは思いもよりませんでしたので、今後、どうするか考えなくてはなりませんね。」
『あの中の何人が攫われた者なのかによって、人数が大きく変わって来ると思います。殆どが獣人ですので、獣王帝国から攫われた子供については、判ると思いますが、それ以外の獣人となると、親を見つける事自体が難しい可能性もありますね。』
「大人の奴隷はどうするんだ?」
『大人と言っても、大人に見えるだけで、子供かもしれないし、調べてみないと判らないよ。獣人の子供は成長が早い子も多いから、体が大きいだけで一概に大人とは言えないからね。』
「それもそうだな。」
獣人の成長速度は、生まれてから約半年から1年で、ほぼ大人の体に成長するのだが、そんな短期間で精神的にも大人になる訳では無い為、獣人以外には大人なのか子供なのかの区別がつかない。
一見大人の様に見えても、話してみると子供っぽい言動の場合があり、大人の喋り方を真似していても、所々に子供っぽさが入り混じり、子供なんだと初めて判る事も度々あるのだ。
獣人は、成長速度が速い代わりに短命で、人間よりも短い場合もあるが、種族にもよるので、一概には短命とも言い切れないのだが、殆どが70年前後の様だ。
元になっている動物の平均寿命が、そのまま反映されていると思っても、過言では無い様だ。
因みに、ピカ族の平均寿命は約8年と短く、生まれてから3カ月で、大人になるそうだ。
『ダークエルフは、殆ど大人だから、鍛えて魔大陸の世界樹に連れて行くか、ここで働くか選ばせればいいと思うよ。』
「結局ダークエルフは1万ちょっとしか見つからなかったんだな?」
『そうだね。寧ろ、北側のオーベラル連合とマルグリッド、南のエスティミシスにいるんじゃないかと思ってるよ。ドワーフはそもそもエルフが嫌いだし、背丈からして不利だからね。身長差が50cm以上あると、見下ろされるから奴隷としても嫌だと思うよ。』
「だが、そこそこ居たからな。」
『多分だけど、子供の頃に連れて来られて、大きくなったんじゃないかな?』
「そういうパターンもあるのか。」
『長命だからね。あの地に住み始めてから50年程経っているそうだから、ダークエルフが大人になる時間は十分にある事になるね。』
逆にエルフ族やダークエルフの様に、長命の種族の場合は、成長速度が極端に遅く、成人年齢が30歳からだったりする。
身体つきは、15歳くらいではまだ、小学生程の体格のままで、20歳を超えた頃からやっと中学生くらいの体格になるので、闇奴隷のダークエルフが大人なのは、30年以上前に奴隷にされた可能性が高い事になる。
「ドワーフの子はどうしたのですか?」
『解放したのですが、帰りたくないと言っておりました。家で虐待されていたか、売られたのでしょう。まぁ、まだ子供ですから、躾をしっかりすれば、酷くはならないと思いますよ。』
「そうであればいいのですが。」
『こればっかりは、やってみない事には判りませんが、エルダードワーフは、教育がしっかりしているので、同じ様に育てれば、真面になる可能性はありますよ。』
ドワーフについては、子供のドワーフが3人だけいるのだが、姿は2頭身で、デフォルメしたドワーフみたいな感じで、既に髭が生えている。
ドワーフの寿命は、エルダードワーフが300年前後生きるのに対し、普通のドワーフは150年前後で、寿命まで生きているドワーフは極々稀にしかいないらしい。
普通のドワーフは、不摂生が過ぎるので、100年生きてるのは稀と言う程に、早死にするらしい。
髭が生えていないのは、乳幼児の頃だけで、歩き回る頃には既に髭が生え始め、10歳になる頃には立派な髭が生えていて、酒も飲み始めるのだとか。
大人と子供の区別は、髭の硬さを見れば判るそうで、子供のドワーフの髭はサラサラで風に靡くので、みんな短く切り揃えていた。
長いままだと、風で靡いた髭が、顔に纏わりついて煩わしいらしい。
『そんな事よりも、名前をどうするか考えるのがきついですよ。実家がある子はいいのですが、孤児の場合は、そのままにするのは、あまりにも可哀想ですからね。』
「大変だな、考えるの。どうやって考えるんだ?」
『みんなに考えてもらって、被ってる名前を弾くくらいしかできないよね。』
「そうだな。キュプラにもやらせるか?」
『キュプラは駄目だよ。ヒマリアとリシテアの最初の名前知ってるでしょ?』
「それもそうか。悪かった。」
闇奴隷だった者達の所へやって来た。
流石に8万人もいると、入れる建物が無いので、鍛錬場の広場を待機場所として使用する他ないのだ。
特に何をやらせるでもなく、座らせている訳だが、それはそれで問題があるので、早急に調査を実施して、分類を進めなければならない。
エコノミークラス症候群になったら、大変だからね。
『では、作業を開始する!決して適当に済ませたりするなよ!判らない事があったら、隊長に聞け!』
作業を手伝っているのは、エルフと豹人、兎人達だ。
エルフは物腰が柔らかいので、聞き取りが上手い為、採用した。
豹人は、一見怖い見た目なのだが、長い尻尾を使って、顔から興味を逸らし、ダンディボイスで、上手く聞き出す事ができるのだ。
兎人は、小柄で子供の様な大人、つまり、見た目が若い人が多い為、子供受けがいいのだ。
これら、協力者たちと一緒に仕分けをしていく。
まずは、攫われたのか、売られたのか、拾われたのか。
攫われた場合、両親が健在で、子供を探している場合が多い為、親の元に帰す予定だ。
売られた場合、口減らしや借金返済の為に売られたので、親に帰しても再度売られる可能性が高く、奴隷から解放して孤児院でお勉強かな。
拾われた場合、両親が既に死んでいる場合が多い。
森で魔物に襲われたり、何らかの理由で親が居なくなってしまうと、路上生活が始まり、奴隷商人に見つかれば、そのまま奴隷にされて、盗賊やゴロツキに見つかれば、奴隷商人に売られてしまうのだ。
傍から見ればアンラッキーなのだが、本人にしてみれば、ラッキーだったと言える場合が多い。
森の中で子供一人置き去りにされて、生き残れる確率は、限りなくゼロに近く、森の中に食べる物は意外に少なく、毒がある物も少なくない。
そして、最低条件として、火を点けられるかどうかが重要で、焼いた物を食べる事ができれば、森の中で一人で生きていく事の第一段階を突破したと言える。
だが、その第一段階の壁が子供にとっては高く、多くは生き残る事ができずに死んでしまう。
だから、見つかって捕まるという事が、ラッキーとも言えてしまう。
もちろん奴隷としての生活の良し悪しによって、変わるというのはあるにしても、中々食べ物にありつけない生活よりも、不味くても毎日食べられる方が、何倍もマシなのだ。
これは、スラムに住む子供達も同じで、森の中よりも幾分食料が手に入る確率が、高いとはいえ、人間の大人やゴロツキ、盗まれた被害者など、危険な相手も多く、猛獣の傍でひっそりと生きている様な物と言える。
孤児院でも、しばしば、森の中で生活した者とスラムで生活した者の間で、喧嘩になる事もあるそうだ。
『コボルトで手の空いてる者は、鍛錬場に応援に来てくれ。』
遅々として進まない作業を見て、コボルト達にも手伝ってもらう事にした。
コボルト達は、ほぼ犬なので、子供達と仲良くなる天才でもあり、遊ばれると困るのだが、ぐずらせないという点では便利かもしれない。
訓練中だったコボルト達がやってくると、遊びたくてウズウズする子が増え、ブンブン振られる尻尾を触りたくて、目が離せなくなる様だ。
『あまり騒がしくならない様に、相手をしてあげてくれ。』
難しい注文だとは思うが、楽しい気分になってもらった方が、聞き取りはしやすいからな。
それに、細かいケアをするには、コボルト達は非常に便利なのだ。
ワーウルフもそうだが、彼等は匂いで相手の体調が判るらしく、ちょっと気分が悪くなっただけでも、敏感に感じるそうだ。
少し騒がしくなったが、さっきより順調に進む様になった。
更に、日も傾いてきたので、アラクネ部隊に簡易宿舎を作ってもらい、テーブルとイスを並べて服を用意し、ご飯のいい匂いが漂い始めると、分類作業が更に早まった。
アルティスは、獅子族の子を早々に見つけ、王城に連れて行き、女王陛下と引合せた。
「貴方が獅子族のご子息殿ですか。お名前は?」
「人間なのに、獣人の言葉が判るの!?」
『判る様にしてあるんだよ。君はブレイブクロー家の者で間違いないかい?』
「あ、はい。元ブレイブクロー家の者です。捨てられてしまった様ですが。」
『誰がそんな事を言ったんだ?』
「大伯父様です。お前は捨てられたから、名前を捨てなければならないと。」
『そんな嘘を言われたのか。王太子に会ったが、会いたがっていたよ。子供が攫われて探していたってね。』
「本当ですか!?僕は捨てられたんじゃないんですか!?」
『捨てる理由が無いだろ?大伯父が何故そんな事をしたのかは知らないが、君は奴隷にされていい身分ではないからな。自分の名前を覚えているかい?』
「はい。僕の名前は、ウィリアム・ブレイブクローと申します。以後お見知りおきを。」
綺麗な所作で、名乗りを上げたのを見て、本物だと確信した。
まぁ、鑑定でも第二継承者が見えているので、間違いは無いのだが。
「間違いはなさそうですね。貴方は、他の奴隷達と同じ場所に居させる事はできません。王城内に部屋を設けましたので、そちらで暫らくの間お過ごしください。」
女王陛下の言葉に少し顔が曇った。
『友達を思う気持ちは判らなくもないのだが、君を奴隷達と同じ場所に居させると、我が国の外交問題に発展してしまうので、仕方が無いんだよ。ただ、遊びに行くのは構わないから、王城内では自由に行動してくれ。誰か特定の者がいるなら、教えてくれれば、君の従者になれる様、教育する事もできる。希望があるなら教えてくれ。君の専属の世話係として、この者を付けるから、一緒に行動する様に。何かあっても困るからね。そっちのメイドも専属にするから、困った事があれば聞くと良い。リズ、頼んだぞ。』
「はっ!お任せ下さい。」
専属の世話係として、リズを指名した。
ピカ族の世話をしていたのだが、彼等は既に城内の雑用係として採用し、細かい所の埃や、ゴミの撤去、ネズミや害虫の駆除をやってもらっている。
小さいので、細かい所によく気が付き、破損個所を見つけたり、掃除が行き届いてない場所の発見に貢献しているのだ。
セイレーンの島から、残りの者も連れて来ていて、一部は、コルスの下で修行に励んでいる者もいる。
「リズ様、ウイリアムと申します。宜しくお願い致します。」
「アルティス様の騎士、リズと申します。様は要りませんよ。呼び捨てにして構いません。暫らくの間、護衛に就かせて頂きますので、お出かけする際はお声がけをお願い致します。」
『リズは、我が国で4番目に強い騎士だから、心配の必要は無いよ。たとえ、ワイバーンが襲って来ても、任せておけば問題無いから。』
「ワイバーン!?勝てるのですか!?一人で!?」
「サイクロプスやトロールでも勝てますよ?何が来ても、必ずお守りしますから、ご安心ください。」
「僕の国でも、ワイバーンを一人で相手にできる人は居ないのに、凄い!僕に剣を教えて下さい!」
リズがアルティスを見た。
『いいぞ。訓練するのなら、してもいいのだが、うちはかなり厳しいから、逆恨みは止めてくれよな。』
「どれくらい厳しいのですか?」
『明日、新兵の訓練を見学すると良い。我が軍は、最低レベルでも一級冒険者と同等か、それ以上の実力者しか居ないからな。訓練中は身体強化も回復も使わせないから、スタミナも筋力も徹底的に鍛え上げているんだよ。それを見てもやりたいと言うのなら、やってみるのもいいと思うぞ。』
「す、凄い。」
『もう一つ、あったな。ユア、姿を見せろ。』
すぅーと現れたアラクネに、驚愕の表情を浮かべるウイリアム。
『このユアも君の護衛をやっている。普段は隠ぺいで見えないんだが、必ずそばにいるから、不意に何かが飛んできても、君に当たる事は無い。まぁ、当たった所で頭以外は傷一つ付かないがな。』
「え?」
『君の着ているその服は、アラクネ絹製なんだよ。だから、斬撃も刺突も全て防ぐし、切れたり破れたりする事も無い。胸の所のアミュレットには、打撃耐性と精神魔法耐性、火属性耐性、呼吸補助、防護ヘルメット、言語理解と攻撃魔法反射シールド、アクティブシールドとビーコンが付与されている。今後は攫われても必ず助けに行くから、大丈夫だ。』
「・・・それは、国宝ですか?」
『我が国では、国に属する者であれば、全員付けている物だ。毒ガスでも水中に落ちても普通に呼吸できるし、アラクネ絹が燃え上がる事も無い。左のポケットには、小さなマジックポーチが付いていて、中には、最高級干し肉が100個と飲み水が出るコップが入っている。』
ウイリアムは、獣王帝国の王族なので、国賓としての扱いになり、死なせる訳には行かない為、何が何でも死なない様に守る必要がある。
その為に、リズとユアが護衛として付き、装備も最上級の物を着けてもらっている。
「最高級干し肉?どれくらいの値段なんですか?」
『1個銀貨50枚だ。』
「もの凄く高級ですね。我が国でもそんな高い干し肉は、見た事がありません。」
「美味しいんですよ。一個食べると止まらなくなるくらいに。街でも売っているんですが、転売されて金貨1枚になっていたりしますし、売り出すと数分で売り切れるほどなんですよ?」
「もうそれ、干し肉の概念を壊していませんか?」
『不味い物を我慢して食べるより、美味しい物を食べた方が、元気が出るし、やる気も出るだろ?非常時には、金にも変えられるんだから、持ってても損はないよな。』
「使っている漬け汁の材料が凄い物ばかりなので、驚きますよ?」
「何か聞くのが怖い気もしますが、例えばどんな物が使われているんですか?」
『ファイニスト・ハニービーのハチミツとか、アーミーラプトルの肉とか。』
「ファイニスト・ハニービー!?小壺一つ白金貨1枚もするハチミツですよ!?」
『そんなに高いのか、アレ。ミードでも作ったら、バカ売れなんじゃないか?』
「まだお金を稼ぐのですか?」
『自重します。』
「とんでもない国ですね。滅亡間近とか言われていた筈ですが。」
『少し前までは、そうだったな。』
「全てアルティス様のおかげで、立て直せましたね。」
『大変だったよ。』
「僕が奴隷になる前に、大伯父が攻め込もうと言ってましたが、戦争にならなくてよかったです。」
『その大伯父も、この国の弱体化に関与していたのかもしれないな。今や因果応報で瀕死になっているがな。』
「え!?」
『闇奴隷商人達の親玉が、その大伯父だった様で、テラスメル高原にいる時に、強烈な光が降り注いだ瞬間があったろ?あれはその大伯父が雷の範囲魔法を撃ってきたんだよ。反射したら、君の国の首都に落ちたらしくて、申し訳ない事をしたよ。その報復の為に王太子殿下がやってきたんだよ。』
ウイリアムの相手をリズに任せ、奴隷達の所に戻ってきた。
8万人が概ね3分割されていて、別口の小さな集団があった。
『そこの小さな集団は何だ?』
「あ、アルティス様。そこの集団は、判らない人たちです。気が付いた時には、既に奴隷になっていたそうです。奴隷同士で子供を産ませるパターンもありますので、そういう事かもしれませんね。」
そんな説明を受けたが、それに該当するのは50人中15人程で、残りは家名がある者達だ。
『そのパターンの子達を分けるから、孤児院に連れて行く準備を頼む。』
15人を選び出し、孤児院行を決定した。
残りの35人については、真面な名前があるが、通称が酷い。
元貴族の子女が、何らかの原因で奴隷落ちにされたのだろうが、例えば、貴族家が没落した場合、家名が消えるのが普通で、鑑定しても見える事は無い。
残っているのなら、その貴族は存続している、若しくは、没落の危機ではないという事だ。
『ちょっといいかい?君は何処の国の出身だい?』
話しかけられた女の子は、誰に話しかけられたのか判らず、キョロキョロと周りを見回している。
『エルフ、こっちに来てくれ。話が進まないから俺のフリをしてくれ。』
『畏まりました。』
エルフが寄って来ると、少女が口を開いた。
「国は判らないわ。習って無かったの。」
『では、グリルスティングバッハというのを知っているかい?』
驚いた顔をした。
この子の家名だ。バネナ王国ではない別の国の貴族なのだと思うが、何処の国の貴族なのかまでは、判らないのだ。
「そ、そんな名前知らないわ!」
『名前なんだね。君には、メアリーという名前を付けよう。』
「やめてよ!そんな名前は嫌よ!私は捨てられたの!お父様もお母様も私を捨てたのよ!」
『本人達に聞いてくるから、何処の国の貴族なのか、教えてくれるかい?』
「聞いたって無駄よ!奴隷商がそう言っていたもの!私は金貨10枚で売られたのよ!」
『殆どの国では、貴族の子女を売ると、貴族位をはく奪されて、取り潰しになるんだよ。どんな理由があろうとも、子供を奴隷商に売る様な貴族は、国の為にならないからね。』
「そんな!?嘘よ!だって、助けに来ないじゃない!」
『助けようにも居場所が判らなければ、助けられないよ。君は馬車の床下に隠されて街を出たんじゃないのかい?』
「騎士団長が私の顔を見て、知らないって言ったのよ!?」
『姿を変えられて居たのか。巧妙な手を使ったか、騎士団長がグルだったか。国と街の名前を教えてくれるかい?真偽を確かめなくてはならないのでね。調べがつくまで、孤児院で寝泊りすると良い。同年代の子と一緒に勉強と仕事を頑張るんだ。』
「本当に、聞きに行ってくれるの?」
『ああ、聞きに行くよ。もし、悪者がいる様なら、我々が君の両親を助けてあげるよ?』
「オーガスト国トリエノール、この街の領主が私の両親なの。」
『判った。調べるね。ちょっと遠いから、時間かかるかもしれないけど、大人しく待っているんだよ?』
「宜しくお願い致します。」
きちんと躾ができている、優秀な子じゃないか。
こんな子が売りに出されるなんてあり得ないな。
何か裏があるのかもしれない。
『コルス、連合の情勢判るか?』
『はい。オーベラル連合は、現在少し荒れている様です。特にオーガストが顕著で、王が無能らしく、内戦になりそうです。反体制派以外に、第三勢力が居て、それがかなり怪しい動きをしている様で、各連合国内で活発に動いているそうです。』
『4国全てにいるのか?』
『いえ、ルングベリには居ないというか、ルングベリの諜報員が構成員の殆どを占めている様です。』
『ルングベリが連合を飲み込もうと画策しているという事か。内戦起こした国をまとめるのって、滅茶苦茶大変なんだけどなぁ。特に妖狐の国があるんだろ?そこが狙いってのが一番しっくりくるか。よし、妖狐の国に接触を図れ。暗部を大量動員しても構わん。必要ならソフティーの子を使ってもいい。戦争を阻止する事を目標とする。悪魔や魔族が紛れている様なら、速やかに排除しろ。』
『了解』
『しかし、ルングベリは狐人族の国だろ?人間のフリをしているのか?』
『いえ、人間と竜人族を使っている様です。』
『竜人族?狐人よりも弱いのか?』
『さぁ?情報が無いので、なんとも・・・』
何とも、きな臭いな。
本当に、次から次へと問題が噴出してきて、休む暇が無いな。
国内の事を優先的に進めたいのだが、オーベラル連合の事を放置するのは、ヤバい気がして仕方が無い。
『折角、魔族との戦争が終わったってのに、きな臭い事になっていやがる。ルングベリは、テラスメル高原に隣接しているのか。圧力をかけるのも手だな。』
『カレン、マルグリッド王国に行くぞ。準備しろ。』
「貴族試験どうしますか?領主は変えないからいいですけど、法衣貴族が全然足りないので、採用しなければならないと思いますが?」
そうだった。
法衣貴族は、領主以外の貴族で、謂わば国会議員の様な者達の事を指す。
元々王都には120人もの法衣貴族が居たのだが、前王が死んだ時に玉座を奪いに来て死んだ者や、女王陛下が就任した際にも多数死んでるし、悪魔にすり替わっていた貴族も居たので、今は50人程しかいない状態だ。
国内が、未だ安定していないので、大まかな事しか決めないから、50人で何とか回し始めてはいるのだが、法衣貴族達もあまり頭がよろしく無いので、凱旋パレードの後で、新たな文官を募集すると言ったのだ。
兵士が強いので、他国に攻め込まれるのは耐えられるのだが、内政に関しては兵士では対応ができないので、平民や下位貴族達から法衣貴族となり得る人材の募集をする事になっている。
事務的な作業は、ケットシーで何とか回せるのだが、何かを決めるとなると、ケットシーでは対応できず、女王陛下も適当に決める訳にも行かず、法衣貴族と議論をしても、殆ど進展しない状況は、放置する訳には行かない。
法衣貴族の仕事は、街道の整備や商人達の取りまとめ、冒険者ギルドからの魔石や肉の買い取り、その他諸々の公共事業の監督役や実行役があり、担当者を決めなければ、給金の支払いも儘ならず、膨大な些末事が何一つ進まないのである。
前王が何もしていなかった分、今はそのしわ寄せが一気に来ていて、ケットシー達が振り分けて、役人に仕事を振り分けようにも、その役人がアッパラパーな法衣貴族しか居ないのだから、進まないのも当然だ。
その法衣貴族の何が駄目なのかと言うと、馬車で乗り付けて、書類を渡して「これを進めろ」と言うだけで、何も説明もしなけりゃ、金も渡さないから、書類を受け取った者も、何をすればいいのか全くわからず、何にも進まない。
注意しても、そもそも法衣貴族が理解できていないので、説明する事ができないのだ。
『キャリスにテスト問題を作らせろ。手加減無しの本気で欲しいレベルのをだ。作らせたら、ケットシーにもチェックしてもらって、間違いがない様にしろ。テスト内容は、礼儀作法、計算、経済、国語、活舌、国籍、犯歴だ。計算は暗算でなくてもいいが、魔道具は駄目、途中式を間違えている奴も駄目だ。3桁の割り算も入れておけ。経済はマサヒト・ホルフウェーブに出した内容で。国語は、文章を書かせる。内容は・・・貴族憲章だな。活舌は議場の最上段から議長席まで声が届くかどうかと、内容を聞き取れるかどうか。早口言葉でも言わせてやれ。国籍と犯歴は、魔道具で調べられるな。一番最初に国籍と犯歴だ。他国人、冒険者、吟遊詩人は不合格。王都内に住居がある者、借家でもいいが、宿屋は駄目。犯歴は、服役していない奴が居たら、捕縛していい。重犯罪者は不合格。身なりがだらしない奴も不合格。力押しで来る奴もいるだろうから、叩きのめしていい。』
「礼儀作法の判定は誰がやりますか?」
『ペティでいい。』
「ダンスは・・・」
『ダンスは不要だ。平民に社交ダンスの嗜みは無いからな。後から覚えれば問題無い。試験会場の警備は、近衛にやらせればいい。会場内は魔法の使用ができない様にしろ。筆記試験の会場内は、サイレントをかけろ。ピカ族に足元を見はらせろ。カンニングペーパーがあったら取り上げて、不合格だ。試験の日時は、まだ発表して無いよな?12日あたりでいいんじゃないか?それと、王都に住んでいる貴族達にも受けさせろ。現時点で全く役に立ってないからな。実技試験はテスト合格者のみでいい。』
「判りました。それまでに試験内容を詰めておくように指示を出しておきます。」
『じゃぁ、出発は明日の朝だな。』
「了解」
いい人材が集まってくれれば、無能な法衣貴族なんざ、とっととクビにして入れ替えれるのに、今回の試験では難しそうだな。
さっきの貴族令嬢の会話を聞いていた他の子達も、エルフに出自を話始めた様で、順調な様だ。
さて、攫われてきた子供達の方だが、人数がかなり多い。
全体の7割近くが攫われた子の様で、凄い集団ができあがっているのだ。
売られた子も多い方で、残り3割の内の2割半と云った処か。
こちらにも、家名を持った子がちらほら見えるので、その子達を別で分けていくと、半分近くが家名ありの子だった。
『多すぎだろ。妖狐までいるぞ?売られた様に見せかけて、攫ったんだろうな。エルフ、全員の出自を調べろ。あぁ、ここにもいるのか・・・とんでもないな。』
何と、ここにも第一王子が混ざっていた。
ベーシスの第一王子を引っ張り出したが、何度も後ろを振り返るので見てみると、なんと、第二王子と第一王女までもが居た。
『いやいやいや、王族の子女全員売りに出すとか、あり得ないから。コルス、ベーシスの王ってどんな奴だ?』
『ベーシスの王は、最近簒奪されました。以前の王は温和で平和主義だった様ですが、現在は戦争の準備を着々と進めている様子です。』
『前王の生死は?』
『地下牢に閉じ込められていて、まだ生きています。王妃も同様です。』
『どうするか。ラクガンスキルにめり込むか。詳細が判らないと、どうにも手の出しようが無いな。エルフ、名前は?』
「フィッツと申します。」
『よし、そこの赤毛の子を連れて来てくれ。』
「はっ!」
『驚いているな。』
赤毛の子の鑑定結果は、妖狐族。
ラクガンスキルという国は、妖狐が納める国として知られており、あまり国交が無いのか、殆ど情報が無い国だ。
宗教関連の国なのだろうとは思うのだが、妖狐は強大な力を持っているとされ、妖狐を雑に扱ったり、子供を拐なんて以ての外だと聞いている。
だが、現実にはここにいるのだ。
考えられる理由としては・・・
『ちょっとこっちで話そう。鑑定偽装効かないから、本当の事を話してくれ。君の国はまだあるのか?』
「・・・無いかも知れない。」
『どうしてこんな所にいるんだ?』
「逃げ延びて、知り合いに助けられた後、売られたの。」
『逃げ延びた?村か街からか?』
「突然、魔獣の群れに襲われたの。」
『スタンピード?』
「ブラックベアの群れに襲われたの。」
『スタンピードでは無さそうだな。だとすると、人為的にか。生態が判らないから確信は無いが、小熊を持ち込まれたか、バーサク状態にされたかだな。ワラビ、ちょっと来てくれ。』
「何でしょ!?何で妖狐がここにいるのですか!?戦争になってしまいますよ!?」
ワラビは、闇奴隷の子達を宥めすかす為に呼んでいた。
カウンセラーとして優秀だからな。
『落ち着け、この子は元闇奴隷だ。ラクガンスキルで何かが起こっているとみていい。あの国の神と交信できるか?』
「はい。助けるのですね?」
『助けざるを得ないだろう。あの国を壊すのはヤバい気がするんだよ。』
「あの国には、古代竜が封印されていた筈です。復活すると世界の破滅に繋がると言われています。」
『取り巻きか狂信者みたいな者はいるのか?』
「たしか、レッドドラゴンを中心とした、復活を目論む集団が居たと思います。」
『レッドドラゴン?もしかして、内海の西の山に住んでいた奴か?』
「はい。かなりの暴れん坊で、いくつもの街を・・・もしかして、まさかとは思いますが、お会いされたか、何かされましたか?」
『うん、退治した。』
「まだ何かをお持ちでしたら、お貸しいただけますか?」
『倒したの一昨日だから、まだ何もしてないぞ。解体もしないとなんだよなぁ。』
ほいっとワラビに鱗の一枚を渡した。
「確かに間違いありません。レッドドラゴンの鱗です。そして、古代竜復活を目論んでいたリーダー格のドラゴンです。」
『そっかー、じゃぁ、今はビビって計画中断中ってなってるかも知れないな。』
「流石アルティス様です。レッドドラゴンをこうも簡単に打倒してしまわれるとは。」
『それ、倒したのカレンだよ。』




