第38話 ユグドラシルとアスモディウス
『アントニー今大丈夫か?』
『はい、何でしょうか?』
『3人引き抜く』
『どうぞ、余ってますので。仕事割り振るのが、結構大変なんですよ。』
『何人余ってるんだ?』
『6人余ってますね。』
『そうか、じゃぁ、グレートジョイ領、マーティン領、オーネスト領に一人ずつ送ってくれ。残りは一旦、王都の第一騎士団に配属、コックブレイン領の解放に向かう。』
コックブレイン領には、未だに魔王軍の前哨基地があり、領全体に数千の魔王軍の姿を確認している。
『あるじー、コックブレイン領の制圧に行ってくるー』
「混成部隊の一部を連れて行ってくれ。できればエルフも。」
『エルフかー、矢の補充は十分ある?』
「一人頭1000本持ってるぞ?」
『じゃぁ、100だけ連れて行くよ。それと豹人と狼人10ずつ。』
「アルティス様!我らドワーフもお願いします!」
『じゃぁ、ドワーフは200で。これ以上は無理。』
「そんなー!ウーリャとフィーネも連れて行って下さいよー!」
『お前らは、あるじに技術を教えてもらえ。それを習得したら使ってやる。』
「判りました!頑張ります!」
『ディアマーナ達はエルフ隊の隊長としてついて来い。』
「「「了解!」」」
「ん?アルティス、ソフティーはどうしたんだ?」
『今日は産卵予定日だよ。空き部屋借りて巣ごもりしたよ。』
「じゃぁ、キュプラの子を連れて行きなさい。」
『ユ隊全員でいい?』
「ユユ!ユ隊全員連れて、アルティスと兵士達の護衛を頼む!」
『はいはーい』
ルギー達には、ブレインモルトに効く、免疫を持ったカビの胞子を空から撒いてもらう。
『ルギー、これを街道沿いの街に、風上から少しだけ撒いておいてくれ。あのカビの胞子に効く薬だ。』
「茸の胞子ですか?」
『カビの胞子だよ。脳汚染を免疫に書き換えたんだよ。』
「・・・無茶苦茶ですね。」
『カビを作った奴の方が無茶苦茶だろ。あれは魔法生物だったんだよ。』
「誰かが作ったと?」
『カビを生物兵器に作り替えたんだろうな。迷惑な話だよ。』
ブレインモルトについて実験をした結果、魔法生物だという事が判明した。
魔法生物とは、人工的に魔獣を作った場合に生まれた生物の事を指すのだが、ブレインモルトが育った状態の胞子を飛ばす本体を調べてみると、そこには成長促進と拡散の魔法が登録された魔石があったのだ。
今まで、魔石が見つからなかったのは、そもそもが人族の頭から発生している事と、人間以外は火葬していた事、人間は土葬してしまう為に、魔石に気が付く事が無いのだ。
今回見つけられたのは、歓楽街の路地裏に頭蓋の割れた死体があった為、調べる事ができたのだ。
そこには、胞子を飛ばしきった茎が残っており、詳しく調べる事ができたのだ。
そして、ゴロツキの頭を魔力感知で見てみると、魔石を見つけたのだ。
つまり、宿主の魔力を蓄積して、魔石を作り、死亡と同時に巨大な茎を生やして、胞子を飛ばす様にプログラミングされた、人工生命体だったという訳だ。
そして、まだ実験中ではあるが、人族以外には寄生しない事が判り、寄生できなかった胞子がどうなるのかを実験中という訳だ。
免疫の胞子については、死罪が確定したゴロツキの頭にある魔石に、登録された魔法を書き換えて、ブレインモルトを狙い撃ちする免疫を作り出してもらったのだ。
ただ、やっている事は、マッドサイエンティストの所業の為、アルティスはもうやりたくないと思った。
どうせ、根絶するのはほぼ不可能だし、魔道具をばら撒いた方が作業的には大変でも、精神的には楽なのだから。
「ばら撒いてきます。魔道具の設置はよろしいですか?」
『そっちは、通過させる連中に任せる。』
「了解」
『アルファデスク!お前はこの兜を被って、途中の街に3人で行って、魔道具を設置してこい。ポータルは教会にあるから、各門と噴水のある広場に設置だ。』
「はっ!」
『街には暗部もいるから、手伝ってもらえ。』
「了解しました!」
『よし、コックブレイン領に飛ぶぞ!準備はいいか?』
『[ワープゲート]』
『領内に多数の魔王軍を確認!警戒されたし!』
『いくぞ!』
おう!
『[ターゲット・ブレインモルト・イラディケイション]洗脳を解く魔道具を作動させろ!!』
『魔獣を倒せ!!』
うおおおおおおお!!
コックブレインの領都の広さは、半径3km程の為、マインとコントロールを解除する魔道具を持たせた兵士を散開させ、周囲500m以内のカビを滅した。
街に駐留していたのは、オークの軍団で、数は5000程。
エルフの矢には、[シャープエッジ]の魔法を付与している為、水平射でも貫通力高めで、頭以外に当たれば、後ろの奴にも当たり、頭の場合は骨が硬い為、貫通はしないものの、確実に倒せる。
ドワーフのハルバードは、そもそも切れ味がいいので、バッサバッサと切り伏せて行き、数十分で殲滅完了となった。
倒したオークは、狼人達のマジックリュックに入れ、一部は昼食及び炊き出しの材料として、血抜きの為にぶら下げている。
殲滅を確認したので、街中の生き残りの捜索に切り替えた。
家屋の殆どは、平屋建てで地下室があり、住民は殆どが地下室に閉じこもっていた。
『被害者の人数確認と、ドワーフとエルフを3隊ずつに分けて、1隊は守備、他は、北側と南側の街の魔王軍を殲滅してこい!豹人も二手に分かれて行って来い。ユ隊!ユユと4人は守備、10人ずつで分かれて、ついて行け!狼人は二人ずつついて行け!』
了解!!
『残りは炊き出しの準備と魔道具の設置、銭湯の建設、領主邸の制圧だ。』
『精霊、銭湯の建設を手伝えるか?』
『やっと呼ばれたー、もう忘れられちゃったのかと思ってたよー!プンスカ』
『うん、忘れてたよ。どうせなら見える所に居てくれよ。』
『ちょっと待って、地脈が乱れてるわ。うん、そう、ヤバいわね。』
地の精霊が久々に出て来たと思ったら、地面を触って何かを調べ始めた。
『ヤバいわ。世界樹を早く取り戻さないと、1年以内に世界が亡ぶわ』
爆弾発言をぶちかましやがった。
『どういう事だ?』
『世界樹はね、世界の地脈の源なの。地脈は世界の血液で、地脈が外に出るとマナになるの。だから、地脈が乱れるという事は、マナが乱れて、地震や地割れ、魔獣の凶暴化などが起こるわ。植物なんかもマナを吸って生きているから、森が消えたり、範囲が拡大したりするわ。』
『地脈を逆に辿れたりはするのか?』
『できるけど、どうするの?』
『世界樹の下には、多分魔王がいるんだよ。何をしてるのか知らんが、世界樹を使って何かをしているみたいなんだよな。だから、世界樹まで辿って行って、魔王が世界樹の近くに、居たく無くなるように嫌がらせをしてやりたい。』
『それをやるには、膨大な魔力が・・・って、アルティスには関係無さそうね。手伝うわ。どんな事をやるの?』
『見てみないと判らないな。』
『じゃぁ、とりあえず、辿って行ってみましょ。』
アルティスと地の精霊が、地脈に触れて魔力を流し込むと、もの凄い速さで世界樹の下にたどり着いた。
世界樹からアルティスの中に悲鳴が流れ込んできた。
アルティスは、意識の中で[アナライズ]を発動し、状態を解析すると、世界樹の下に部屋があるのが判った。
中には魔王が、負の感情をぶちまけながら、引き篭もっているのが判る。
アルティスがその部屋の中に、ジョロキアの唐揚げを転移させた。
ついでに山椒入りの、ほんのり甘い水も転移させた。
魔王が唐揚げを口に放り込み、咀嚼を数回すると、吹き出して悶絶し始めた。
水に気が付いて飲み干すが、山椒で舌が痺れ、甘みで辛さが増し、慌てて外に飛び出して行った。
外には、世界樹の雫の水たまりがあり、そこに顔を突っ込んで飲み始めたので、ジョロキアの胞子を、水たまりの中に転移させた。
ジョロキアの胞子は、カプサイシンそのもので、水に溶けやすいから、今度は顔中が痛くなった様だ。
周りの側近達も慌てて魔王に駆け寄ってきたので、嗅覚強化とバーサクを付与した興奮剤を転移、一気に世界樹の下は阿鼻叫喚の地獄絵図のできあがりだ。
すぐ隣では、地の精霊が「えげつない」と呟いた。
地脈を辿って魔王の追跡をしてみると、川幅が20m程の川に顔を突っ込んでいたので、股間の下からストーンウォールを突き出すと、そのまま川に落ちた。
川は深い様で、どんどん流されていく。
流石に川の中は地脈が無いので、見失ってしまったが、世界樹からは、だいぶ離れただろう。
世界樹から聞こえていた悲鳴は治まり、歓喜に満ちた感情が流れ込んできた。
「アルティス様、世界樹を救って頂き、ありがとうございます。我らエルフ一同、この命尽きるまで、アルティス様への絶対の忠誠を、世界樹に誓います。」
街に居たエルフ達が、アルティスの前で跪き、頭を垂れていた。
街の人々は、そのエルフ達を見て、エルフが跪いている相手が、小さな動物である事に驚き、料理を作っている狼人に何事かを聞き、アルティスに土下座した。
エルフの行動とその理由についての話は、瞬く間に街中に広がり、集まって来た人々は、それぞれにアルティスに土下座をしたり、深々と頭を下げていく。
『あー、魔王に嫌がらせをしたついでに、世界樹を助けただけだ。そんなに畏まらなくていい。料理ができたら、住民のみなさんは、どんどん食べてくれ。肉もご飯もたくさんあるし、魔王軍はこの街から居なくなったから、いつもの生活に戻ってくれ。ここで配るご飯は無料だ。家で動けない人がいるなら、持って帰ってもいい。怪我で苦しんでいる人が居れば、教えてくれ。兵たちが回復魔法を掛けてくれる。』
アルティスの言葉を聞いた人々が、走って家に向かい、怪我をした家族や、近所の人、魔王軍に殴られて歩けなくなった人などを連れてきた。
重傷者から順に[治療術]を掛けて行き、エルフやドワーフ達も、回復魔法が使える者達が、治療していた。
軽傷者には、ポーションを飲ませ、状態を確認し、重傷者を見つけては、アルティスの下へ連れて来てくれた。
治療するアルティスを見ていた住人たちは、数々の奇跡を目の当たりにしていた。
目を怪我した者は、目が見える様になり、指を斬り落とされた者は、指が生えて来たり、首以外動かなくなってしまった者は、歩ける様になった。
大火傷で虫の息だった人が担架で運ばれてきた。
姿は見るも無残な状態で、元の顔がどんなだったのか、全く想像もできない状態だったのだが、アルティスが[治療術]をかけると、みるみるうちに皮膚が再生されていき、顔が判る様になり、髪も生えて、元の姿に戻っていた。
突然アルティスがふらつき、近くに居たエルフが丁寧に抱き上げ、いつの間にか出来上がった、真っ白いベッドに寝かされたのを見て、MPを使い過ぎたのだという事を悟った。
『アルティス!MPの使い過ぎよ!?世界樹様、どうかアルティスを御救い下さい。』
地の精霊が願い事を呟くと、地面からベッドの下に木が生えてきて、白いベッドを包み込んだ。
『ああ、温めの風呂に浸かっている気分だな。気持ちいい。』
『君は、凄いね。あまりたくさん流し過ぎると、体に良く無いから、少しずつになるけど、地脈のマナを分けてあげるね。』
『誰だ?』
『人々は、世界樹って私の事を呼ぶよ。私の名はユグドラシル。エルフ達は、私を神と呼ぶけど、神では無いよ。大樹の精霊だよ。』
『そうか。折角魔力を渡したのに、すぐに返してもらってすまないな。』
『なんのなんの、君のおかげで、地脈の乱れを修正できたからね、助けてくれてありがとう。近くに来た時は寄ってくれると嬉しいよ。』
『近いうちに行く予定だよ。エルフ達が、世界樹の下へ戻りたがっているからね。』
『そうか、戻ってきてくれるのか。ありがたい。ハイエルフはいるのかい?』
『会った事は無いな。魔大陸にいるんじゃないかな?』
『彼等にも戻ってくる様に、言ってくれないかな?ハイエルフの魔力が必要なんだ。』
『会ったら伝えておくよ。』
『そうしてくれると、嬉しいよ。』
『今度会いに行く時、お土産は何がいい?』
『うーん、できるか判らないけど、魔力鉱石がいいな。』
『持ってるよ。今渡そうか?』
『あるの!?』
『あるよ、どれくらい欲しい?』
『直径5cmもあれば十分だよ。』
『最大では?』
『10cm』
『じゃぁ、はい。』
『・・・規格外だね、君は。』
『もっと大量にある場所を知ってるからね。』
『そうなんだね。ありがとう。』
ユグドラシルに渡したのは、試作したブレインモルト免疫入りの魔力鉱石で、鉱石自体にも[ブレインモルト・イラディケイション]を付与してある。
試しに使ってはみたものの、周りには脳筋はいても、脳菌が居ないので、効果の程が判らなかったのだ。
そして、丁度よくユグドラシルが魔力鉱石を欲しがった為、大きさも丁度いいし、地脈に付与した魔法が混ざってくれたら、広範囲に効果を発揮してくれるかもしれないので、渡したのだ。
それに、世界樹が魔力鉱石を欲しがった事に、疑問も感じたのだ。
マナの源である世界樹が、何故魔力鉱石を欲しがったのか。
規模が大きすぎて、[アナライズ]で解析できなかった部分に、脳菌の大本が居るのかも知れないとも思ったのだ。
世界樹が感染したとして、精霊であるユグドラシルにまで、影響を及ぼすとは思えないが、万が一という事もあるだろう。
使える物は、何でも使うという、アルティスの方針は、ユグドラシルを相手にしていても変わらない様だ。
アルティスが目を覚ますと、包み込んでいた木がボロボロと崩れ、塵となって消えて行った。
目を開けた目の前には、何故かボロボロと涙を流すエルフとドワーフが居て、立ち上がると大歓声が沸き起こった。
『何かあったのか?』
「よがっだあーよがっだあー」
『何が良かったんだ?』
「アルティス様が倒れられたので、皆が心配していたのですよ。」
『そうか、最後の大火傷の治療は、ちょっときつかったな。大丈夫だったのかな?』
「その方なら目の前にいらっしゃいますよ。」
目の前にいるのは、銀髪の人?顔を上げると、絶世の美女というか、少女漫画に出てくるような美形?の女?だった。
「命を救って頂き、ありがとうございます。私は、ハイエルフのジョセフィーヌ・ユグドラシアと申します。私の命だけでなく、世界樹まで救って頂いた事に、心より感謝申し上げます。」
『あぁ、ハイエルフだったのか。世界樹が帰ってこいって言ってたぞ?』
「話されたのですか!?素晴らしい!ハイエルフ以外で、世界樹と話をしたのは、貴方が初めてで御座います。我らエルフ族は、未来永劫貴方を友人として讃えるでしょう。」
『別に讃えなくてもいいんだけど、ちょっと離れてくれない?近すぎるんだよ。』
「あ、これは、大変申し訳ございません。少し興奮しておりました。」
『飯は食ったか?』
「・・・大変申し訳ございません。我らハイエルフは、植物しか受け付けないので、ご提供されているお食事は、食べられないので御座います。」
『狼人、野菜スープでお粥作ってやれ。』
「はっ!」
「野菜スープでお粥?」
『野菜と米だけで作るんだよ。それなら食えるんだろ?』
「はい、それなら食べられると思います。」
『[アナライズ]』
唐突に、ハイエルフにアナライズを使ったアルティスは、ハイエルフにアミュレットを渡した。
『それを付けろ。MP少ないだろ?無理するな。そのアミュレットには、MPが1万入ってるから、着ければ補充できるぞ。それと、ブレインモルトにも対抗できるから、着けておいて損は無いぞ。』
「この石はもしかして・・・」
『黙って着けろ。服の中に入れてしまえば、誰にも見つからない。』
「エルフ族では、魔力鉱石を渡す事は、永遠の愛を捧げるという誓いになるのですが?」
『重要だと思った奴全員に渡してるし、俺はエルフ族ではないから、エルフのしきたりは知らん。』
「そう、ですね。では、ありがたく受け取っておきましょう。」
エルフ達が、ハイエルフを睨む様に見ているのは、何故だろうか?
『何で睨んでるんだ?』
「いえ、別にハイエルフが、余計な事を言ったとは、思って無いですよ?」
「え!?私変な事言ってしまいましたか?」
『あぁ、魔力鉱石を渡すと、告白になるとかいう話の事だな?黙って受け取っておけばいいものを余計な情報を俺に与えるなと、言いたいのだろう。』
「あ!?も、申し訳ございません!」
『別に気にして無いから、大丈夫だぞ?俺は、顔に惑わされるほど、初心じゃないからな。顔だけが良くても、愚図で鈍感な奴は、興味が無い。』
あからさまに、エルフ達の顔がホッとした表情になった。
『アルティス様、ワイバーンが魔王を川から救い出して飛んでいます。どうしますか?』
『向かってる方角は?』
『世界樹の方角です。』
『撃ち落とせ。』
『了解』
上空を哨戒していたルギー達は、魔王を咥えたワイバーンを発見して、報告した。
撃墜許可をもらったルギー達は、すぐさま魔道具の準備を行い、狙いを付けた。
ワイバーンが飛んでいるのは、自分達よりも高い高度で、下からの打ち上げになるが、上手くいけば魔王をかみ砕いてくれるかもしれないと思い、顎を狙って一斉射した。
ドドドン!
「命中確認!魔王から血しぶきが上がっています!」
「魔王口から落下確認!」
『命中しました!ワイバーンが噛んだ様で、魔王から血しぶきが上がり、森に落下していきました!』
「ピットフロースに落ちた様ですが、速攻で枯れましたね・・・」
「毒ガス並みに臭いのかな?」
「植物に嗅覚は無いと思うが・・・」
「うわぁ、全裸で這い出てきた。キショ」
『森に落ちてピットフロースに嵌まったようですが、速攻で枯れまして、服だけ溶けて助かった模様です。』
『粘液爆弾Ⅱを使え。』
『了解』
「粘液爆弾Ⅱ準備完了!」
「撃て!」
ドンッ!
「命中確認!」
「痺れてピットフロースの穴に落ちた様です!」
『粘液爆弾Ⅱが命中して、ピットフロースの穴に再度落ちた様ですが、ここからじゃ、中の様子が視えませんね』
『暫らく放置しておいていいぞ。どうせ動けないだろうからな。』
『どんな効果があるんですか?』
『精力増強と興奮作用と痺れと硬化だ。悶々として、居てもたってもいられないが、痺れて動けず、どんどん硬化していく、最高の嫌がらせだ。』
「うわー、えげつない。」
「それって、オークぺマッシュの粘液の効果かぁ。アノ粘液がかかるとヤバいとは聞いた事があるけど、そんな効果があったなんて。」
「どうやって、その効果を知ったのか・・・」
「誰かで実験したとか?」
「怖い怖い怖い怖い、実験台になった人が、今どうなってるのか、想像しただけで怖いよー!」
『試してみるか?』
「嫌ですよ!?何言ってるんですか!アルティ・・・ええええー!?アルティス様!?どうやってここに!?」
『テレポート使って飛んで来たんだよ。どこだ?魔王の居る穴は。』
「あそこです。あの木が丸く枯れている場所です!」
『あれか。負の感情だけで木を枯らすとか、どんだけなんだよ。ユユ、蓋しておいてくれ。魔王って光魔法通じるんだっけ?』
「神聖の方がいいのではないでしょうか?」
『じゃぁ、神聖弾撃ち込んでみて?』
「は、はいー!」
シュパッ
『・・・何も起きないな。おかしいな。』
ボンッ
『爆発した!?いやいやいや、爆発するような物入ってない筈だぞ?』
「弾を間違えたんじゃないのか?」
「間違えてませんよ!?」
「神聖弾入れてたよ?」
『蓋していいです?』
『あぁ、お願い』
ボンッボンッボンッボンッ
『何かが爆発して、蓋をされるのを拒んでいる様だな。さすが魔王と云った処か。ジョロキア爆弾落としてみて。』
ルギーがジョロキア爆弾を投げ入れると、叫び声が聞こえた。
「ギャアアアアアァァァアアアアァァァァ」
風が少しあるからか、聞こえてくる音量に波がある。
穴から魔王が這い出てきた。
ゾンビの様にフラフラ歩きながら、世界樹を目指している様だ。
魔王をどうにかして、この大陸から撤退させたいが、どうすればいいか・・・
「実は、魔王軍にいた時に、病原菌がついた針を渡されていまして、何でも薬になる草が、魔大陸にしか生えていないらしくて、それを女騎士に刺せと言われていたのですが、それを使うのはいかがでしょうか?」
『そんな物があるの?見せて[鑑定]・・・黒死病菌・・・ペストか?そんな物があるのか。皮膚が黒くなり、腐り落ちる病で、感染力は弱い。潜伏期間は1時間で、発症から1か月以内に薬を服用しなければ、死ぬ事になる。か。よし、撃ち込んでみろ。』
「はっ!」
シュパッ
「ギャアアアアアァァァ!」
世界樹の方に走り去って行った。
一旦街に戻り、続報を待っていると、魔王軍が魔大陸に撤退したという報告が来た。
『あるじー、魔王軍が魔大陸に撤退して行ったそうだよ。だから、掃討戦やるよー!』
『本当か!?すぐに準備させよう!』
女王様が、錫杖を使って、魔王軍が魔大陸に撤退した事を全土に伝えた。
『王国の民に報告する。魔王軍が宰相アルティスの功により、魔大陸へ撤退した。北部では、魔王軍の残党を排除するべく、掃討戦を実施する。』
『何で俺の名前を出しちゃうかなぁ。黙っておけばいいのに。』
『嫌なのですか?』
『黙っておけば、女王陛下の手柄じゃん?』
『戦功は喧伝するのが普通ですよ。言わないとケチだと思われますから。』
『そんなもんかねぇ、誰がやったって同じじゃんか。』
『名声は欲しく無いのですか?』
『名声ってのは、自分で欲しがるよりも、勝手に言われる方が、長持ちするんだけどなぁ、名声欲しさに何かやっても、前後が無ければ一瞬で忘れ去られるだけですよ?』
『前後とは?』
『例えば、何処どこの戦いで勝利したとか、防衛線で活躍したとか小さい事がいくつかあって、そこにドーンとデカい功績があれば、忘れられないくらい強烈に印象に残るんですよ。でも、何も無い奴が、いきなりでかい名声を得ても、大して印象に残らないんですよ。』
陛下との会話を聞いて、ハイエルフが愚痴をこぼした。
「そうなんですか?だから私が何をやっても、駄目だったのですね・・・」
『ジョセフィーヌは、やるのが普通だから。王族なんだから、エルフを取りまとめるのが仕事で、目立つ事が仕事じゃ無いだろ?自分の役割を全うした上で、何かをやらなければ、悪い印象ばかりが目立つのは、仕方が無い事だな。』
「わ、私はちゃんとやってましたよ!やって無かったのは他の者達で、その者達が悪目立ちしていたので、私までもが同じと、捉えられてしまっていただけです!」
『悪目立ちしてた連中の仕事は、誰がやってたんだ?』
「誰もやって無かったと思いますが?」
『それが原因だろ。気付いてるなら、お前がやれよ。放置するから、お前も同じにみられるんだよ。』
「理不尽では無いですか?」
『理不尽だろうがなんだろうが、それが王族の責務って奴だよ。お前がちゃんと全部こなしていれば、今頃お前は、王に推薦されていただろうね。』
「エルフ族に王は居ないのですよ。王族は居ますが、王では無く、世界樹を管理する代表者ですね。」
『指示する者は?』
「居ません。長老も亡くなられていましたし。」
『その構造自体が駄目なんだよ。総括する者が居なけりゃ、動かない奴は動かない。今度からは、決めるんだな。』
「そうします。」
王都に戻ってきた。
掃討戦の準備を始めようじゃないか!
『掃討戦の作戦会議を行う。カレンは今どこだ?』
『ドラムカーンに着いたところです。今から王都に戻ります。』
『よし、ソフティーは元気?』
『アルティスごめん、私動けない。』
『卵が孵るのはいつ?』
『明後日。』
『じゃぁ、ゆっくり休んでて。』
『ううー・・・』
『エルフの森で、きっと大活躍できるよ。だから待っててね。』
『うん、判った。』
『アリエン、参加しろ。シーア、スーアも。鳥人族隊長と各隊長も参加しろ。ルギー戻って来れるか?』
『すぐ戻ります!』
『ペンタは居ないのか。コルスも参加できるよね?』
『はい。』
『議場でやろう。』
議場に勢ぞろいして、状況の説明を開始した。
『王国内にいる魔王軍の駐留軍及び残党の排除を実施する。王国内が完了したら、国境手前で混成軍は、一旦休憩して、旧エルフ王国を取り戻す準備をする。』
「食料は大丈夫なのか?」
『コックブレイン領の駐留軍を全て、狼人族のマジックリュックに入れてあるから、暫らくは大丈夫な筈。』
「オーク2000、ピッグブル1300、オーク上位種が800入っております。他にペルグランデスース、タイラントボア、ワイバーン、ワイルドバイパー、ラプトルミムスが入っています。」
「随分倒したな。」
『数十分で終わったよ。そこまで鍛えた理由は、サイクロプスやトロール対策だよ。あ、ラプトルミムスとワイルドバイパーは、食べた事無いから、後で解体した肉を見せてもらえるかな?』
「了解しました。」
「エルフの矢は十分在庫もあるから、いつでも出れるぞ。」
『では、作戦を考えたので、聞いて欲しい。まずは、鳥人と翼人で広範囲を索敵して、集団を見つけたら、こっちからそこに転移して倒す。索敵方法は、東側から開始する。北から南に一列に並んで、幅を20km空ける。高空なら見えるな?』
「もっと広くても見えます。」
『あまり広く取り過ぎると、確認に時間が掛かり過ぎるから、20km間隔だな。東から西に向かって飛び、西の端迄いく。目安は、大河だな。それより西は視なくていい。途中で集団を見つけたら、種族を確認。人間が避難しているだけの可能性もあるから、無暗に攻撃はしない。魔王軍の集団、若しくは、魔獣の集団を見つけたら、念話で報告。なるべく見つからない様に、近くに降りろ。そこへ向けて転移させる。数によっては、多い場合もある。』
「我々鳥人と翼人は、戦闘無しですか?」
『参加してもいいが、魔道砲の弾の在庫がそれ程多くないから、乱発は避ける様に。特に、残党に人族が追いかけられていた場合に、助ける為の武器だと思ってくれ。』
『特によく見て欲しいのは、街の様子だ。廃墟になっている可能性もあるが、魔力感知で生き残りの確認をしてくれ。一人でもいた場合には、数名派遣する。』
「いい作戦だ。敵の居ない街に派遣する人員は?」
『主に狼人族とコボルト、兎人、馬人、豹人だな。炊き出し要員だ。水魔法、回復魔法、土魔法が使える者で組んでくれ。』
「主力部隊は、ドワーフとエルフとリザードマンだな?」
『それと、魔族。』
ザワッ
『アリエン、魔族の訓練状況はどうだ?』
「全員、オーク程度なら、ソロでも勝てます。」
「寝返ったりしないのでしょうか?」
「アミュレットを装備しているので、大丈夫だと思います。」
「ですが・・・」
『寝返る云々言ったら、お前ら全員もそうだぞ?元魔王軍。』
「う・・・。」
『広範囲に散開している魔王軍については、各個撃破になるから、豹人と馬人と兎人でやる。』
「アラクネ達はどうするんだ?」
『横並びにしても、数が全然足りないから、エルフの森の中を索敵してもらうしかないな。』
「逃走する奴を捕まえる役でもいいんじゃないか?」
『じゃぁ、それで』
「作戦開始は?」
『明日の朝からで。MPが全然足りてないんだよ。今のままでは、半分転送したらMPが尽きる。』
「よし、では明日の朝までに準備を終わらせるように!」
了解!!
『ルース、調子はどうだ?』
『あ、アルティスさん、丁度良かった。最近オークの出現率が上がってるんですよ。魔王が撤退したのと、何か関連があるんですかね?』
『オークを置き去りにして行ったんだろ?明日から掃討戦やるけど、ドラムカーン周辺は大丈夫そうだな?』
『テンダー領からの難民が絶えません。領主が居ないとかで、兵士がこっちに来てる様なんですよ。』
『兵士捕まえて鍛えてやれ。代わりに、ウィーガンを隊長にして20人程をテンダーに送って統治させろ。』
『了解!テンダーの領主代理は、ウィーガンですね?』
『そうだ。あいつは馬鹿親を反面教師にして、勉強していた様だからな。人手が足りないから丁度いい。』
『明日から行かせますね。』
『よろしく。』
アルティスは、イラディケイトの魔道具を夜の10時頃まで作り続けてから寝た。
翌朝、朝食中に念話が届いた。
『あ、アルティス様!街にオークが押し寄せてきています!』
『どこの領だ?』
『コックブレインの西隣のダンベヤーです!』
『判った。兵を向かわせる。それまで耐えていてくれ。』
『リミナ!朝飯は済んでるか?』
『はい!何かありましたか?』
『ダンベヤーにオークの群れが押し寄せてきているらしい。ドワーフとリザードマンも50ずつ連れて向かってくれ。エルフも50な。倉庫に魔道具が置いてあるから、持って行ってくれ。カビを消す奴だ。』
『了解しました!』
『あるじ!コックブレイン領の周辺の領に50ずつ、計150で派遣して。オークの残党が街を襲いに来る!』
「了解だ!朝飯を掻き込め!すぐに出るぞ!」
おう!
『ルギー出れるか?』
『はい!行けます!予定通り東の端から行きますか?』
『いや、既に襲われてる街があるから、王都の北から左右に分かれてやってくれ。ユユ、小さくなって一緒に行ってくれ。街が襲われていたら、アラクネで助けてやって欲しい。』
『判りましたー!他の人にもついていくんですね?』
『そうだ。頼む。』
『りょーかーい』
予想よりも、早い段階で襲撃が来ている。
俄かに慌ただしくなってきた城内、今日は忙しくなりそうだ。
『リズ、女王の護衛はキュプラに任せて、お前も出ろ。』
『了解!』
『ミュール、ウーリャ、フィーネ、出番だ。』
『どこいく?』
『円形山脈の北側のドロデス領に向かってくれ。領内に居ない様なら、そのまま待機、街に到達していない群れを駆逐する隊の指揮をしてくれ。』
『『『了解!』』』
ワーウルフの二人にも、ミュールと同じブーツを渡したら、すぐに乗りこなしたので、そのまま使わせているのだ。
機動力があるから、足の早い種族にも引けを取らない。
ブーツ自体も改良を加えてあって、どこでも場所を選ばずに滑れるように、キャタピラにしてあるのだ。
ホバーにも挑戦してみたのだが、MP消費が激しくて断念した。
MPが切れると、ただの重いブーツだからね。
ドワーフ達にも、欲しいと言われて渡したんだけど、彼等には、難易度が高すぎた様だった。
各領に飛ばした部隊の内、半数の部隊が飛んだ先で、交戦状態に入ったと報告があった。
残りの部隊は、交戦はしていないものの、街の外に既にいるようで、すぐに交戦状態になる様子。
各部隊長たちは、それぞれ魔道具を10個ずつ持って行ってるので、各門及び教会の鐘楼などに設置しながら街の中を移動して配置に着く。
『エルフの森の方から続々とオークが湧き出して来ています!』
『国境沿いの領に居る兵は、各街に散れ。遊撃部隊はまだ待機、既に国内に入り込んでいる奴が居る筈だ。続報を待て。』
『コルス、エルフ王国内のオークが湧いてる場所の特定はできるか?』
『現在、3カ所だけ特定しています。爆弾投げ入れていいですか?』
『いいぞ。好きな物使ってくれ。』
『了解』
コルスは、3カ所それぞれに見張ってる部下達に、バーサク弾と混乱弾を投げ入れる様に指示を出した。
どうやってオークを大量に、湧かせているのか判らないが、エルフの森に何か仕掛けがある様だ。
『オークの群れの近くにいる空軍は、粉の散布を頼む。少しでも足を遅らせてくれ。』
いくらなんでも、数が多すぎる。
『私も出るぞ!』
『うーん、一人で捌ける数じゃないよ?』
『アルティスさん、オークの群れは、魔界から来るみたいです。どうしますか?』
『強化神聖魔法玉持ってる?持ってたら1個だけ投げ入れてみて。』
『了解!』
『オークの群れが消えました!後続来ません!』
『国境沿いの空軍は、強化神聖魔法玉を起動してみて。消えるかも知れない。』
『オークの群れが消えて行きます!効果あります!』
『ダンベヤー領西の平原にオーク多数。ゴブリンも居ます!』
『位置を特定して、ミュール飛べ!』
『りょーかい!』
『アーカンソーレ領の東平原にもオークとゴブリンの群れ発見!総数2000』
『ウーリャ行け!』
『了解しました!』
『あるじも数が多い所に行って!リズとカレンも頼む!』
『トロールの群れ発見!数100、アーカンソーレ領の北です!』
『残ってる戦力は誰だ?』
『まだ飛んでないぞ?行く!』
『お願い!』
『ドラムカーン領の北、へボンズに動きのおかしなサイクロプス発見!・・・んん?ゴーレム?』
『アラクネ行ける?』
『行ってきまーす』
『ダンベヤー領殲滅完了!北に向かって移動します!』
『アーカンソーレ領殲滅完了!移動します!』
次々と殲滅完了の連絡が届き始めた。
『被害の酷い街に、炊き出し部隊向かってくれ。』
『フィーネはー?』
『あ、忘れてた。北東の方の状況は?ドラムカーン領の北東にもオークの群れがポツポツいます。数は30程度ですが、6カ所に散開している様です。』
『フィーネよろしく。』
『もう!忘れないで!』
『すまんすまん、篭手やるから。』
『頑張るー!』
『サイクロプス偽物だったー』
『何だった?』
『んー風船?』
『ハリボテかよ。・・・精霊、地脈で探りたいんだが・・・。』
『およ?何を探すの?』
『魔王軍の司令官』
『そんなのいるの?』
『確実にいるな。頭悪いけど。』
『魔界に居たら判らないよ?』
『ゲートの場所が判ればそれでいい。』
『いいわ、でもここは場所が悪いから、地脈が近い場所がいいわ。この辺だと南の山の中?がいいわね。』
『南の山の中・・・温泉か?あれは、地脈が近いからMAG値が増えるのか。よし、行こう。さっさと終わらせるぞ。』
『キュプラ、女王と城の守りは任せたぞ。ちょっと出かけて来る。』
『お任せあれー!』
円形山脈の温泉にやってきた。
ここに入ると、MAG値がゴリゴリ増えるんだよな。
試しに前足を入れてみると、MAG値がゴリゴリ上がっていく。
『・・・入らない方が良さそうね。そんな上がり方する人は、初めて見たわ。』
精霊が呆れている。
『とりあえず、地脈に接続しよう。』
接続を試みると、すんなり繋がった。
ここは、地脈がすぐ近くにあるようだ。
地脈を遡って行くと、地脈の枝に繋がったゲートを見つける事ができた。
『コルス、ゲートがあと5つある。3つは水面の下、2つは洞窟の中だ。対応できない様なら、こっちで処理するが、いいか?』
『やっちゃって下さい。こちらでも確認できましたが、爆弾を使えない様なので、対応してもらえると、助かります。』
『判った。近くに居る様なら、少し離れた所に移動させておいてくれ。』
『了解です。』
夜中に思いついて作った、新爆弾を試してみる事にした。
疲れた日の夜中のテンションで作ったので、少し威力がおかしいが、爆発するのが魔界だから、問題無いだろう。
『全員離れました。』
『[トランスファー]』
直後、国境付近にいた部隊と、コルスの部下達は、ゲートのある場所から噴き出る光の柱を目撃した。
使用した爆弾は、神聖魔法玉を40個と、超強化版神聖魔法玉をくっ付けて、ボール状に固めて、中心の超強化版が爆発すると、40個の魔法玉が飛び散り、広範囲に効果をまき散らす。
また、散らばった40個の魔法玉も爆心地から一定距離離れると、神聖魔法を付与したバレイショの種がばら撒かれ、地面に落ちて生えてくれば、あっという間にバレイショ地獄と化すのだ。
今、アルティスの目の前には、真っ黒い何かが土下座をしている。
『申し訳ございません。もう魔界に神聖魔法をばら撒くのを、やめてもらえないでしょうか?』
『ああ?誰だてめーは。』
すぐ隣では、限界まで目を見開いた地の精霊がいる。
『わ、私は、魔界の王で、アスモディウスと申します。この度は、貴方様の怒りを買う様な事を、我が配下の者がしてしまい、大変ご迷惑をおかけいたしました。心からお詫び申し上げます。もう二度とこの様な事はさせませんので、どうか、どうか矛を収めては頂けないでしょうか。』
『魔界の王ねぇ、アスモディウスは確か、序列32番目じゃなかったか?』
『今現在は、魔界の地上を仕切っているのは、私目でございます。はるか昔の神魔大戦の折に、私以外の王は殆どが活動を中止しており、復活まであと数万年はかかると思われます。』
『で、今回の件で、何でこっちが譲歩しなきゃならねぇんだ?俺に頼みごとをする前に、悪魔をこの地上から、魔界に全員引き戻してから、頼みに来るのが筋じゃねぇのか?』
『そ、それは、重々承知しておりますが、先程の攻撃を再度撃たれますと、魔界自体が崩壊しかねない事態となりまして、魔界が無くなると、この世界も含めて崩壊する危険性があります。ですので、先にお願いに参りました。』
『そうか、理由は判った。』
『では!やめて頂けるのですね!?』
『やだね。悪魔全員を消滅させないと、気が済まないな。』
『こちらの世界にいる悪魔は、全員魔界に戻らせますので、何卒!何卒お願い申し上げます。』
『あと6個作ったのに、使えないのかよ。』
『あわわわわわ・・・、あと6個も・・・すぐに対応致しますので!』
『この世界全域だぞ?全てのゲートも閉めろ。開いてたら投げ入れるからな。』
『恐れながら、全員引き上げてしまいますと、こちらの世界の感情の行き場が無くなって、新しい悪魔が生まれてしまいますので、最低限は残さなければなりません。』
『じゃぁ、必要最低限の居残りは認めてやる。が、下らない策を講じやがったら、徹底的に殲滅するからな。ゲートをこじ開けてでも放り込んでやる。現在進行中の策略も含めて、全作戦を中止させろ。』
『あ、ありがとうございます!!すぐに対応致します!!では!』
『アルティス凄いわね。アスモディウスに土下座させるなんて、前代未聞よ?』
『へぇー』
『へーって・・・もういいわ。』
『戻るか。』
王城に戻ると、各地から続々と報告が上がってきた。
報告によると、今回の被害では、国民4800余名が死亡。怪我人は多数いたが、ポーションを使う事で、重傷者以外の殆どが回復、重症者は約60名で、部位欠損や脳挫傷、複雑骨折や内臓破裂などがいるそうだ。
田畑もオークが歩き回って荒らした為、収穫量に大きなダメージが予想されている。
3割減はかたいそうだ。
逆に、オークの肉は、数万体分ある為、肉には困らない様だが、現時点の主食である麦の保管庫が焼けてしまった街も多く、炭水化物が不足する可能性が高い。
今回の作戦は、アスモディウスの土下座により、午前中に終了した。
『では、小麦不足解消の為の料理を教える。準備はいいか?』
午後、各地に散らばっていた狼人族とカレン、リズを加えて、芋餅の作り方を伝授した。
片栗粉を使うレシピも存在しているが、片栗粉を作るには、労力が必要なので、小麦粉を主に使うのだ。
それ以外にも、ジャーマンポテトやガレット、マッシュポテト、甘芋を使ってスイートポテト等を伝授、それらのレシピを携えて、元居た街に戻らせた。
バレイショの栽培に関しては、兵士に種を持たせて、5m間隔に並び、育って実が収穫できるようになったら、即座に斬り倒す事で、安全に収穫できるようにした。
バレイショの茎は、乾燥させると薪としても使える様になり、実を食べた後の皮も、乾燥させれば薪として燃やせるのだ。
根っこは、土魔法で掘り返せば、同じ所に種を植える事が可能になるし、根っこも乾燥させれば、薪の代わりになるのだ。
各領の兵士達は、ドワーフとエルフを使って鍛えさせ、訓練のルーティーンに、バレイショの収穫を組み込ませる。
また、各街には、甘芋の専用の畑を作り、広がり過ぎない様に周りをレンガで囲み、栽培を兵士に任せる事にする。
要は、サボれない様にするのだ。
サボれば、小麦畑が甘芋だらけになり、小麦の収穫ができなくなる。
魔獣が甘芋の味を覚えれば、甘芋の収穫量が減り、手軽に甘味を食べられなくなるという事だ。
領主たちには、犯罪奴隷を畑仕事に従事させ、野菜や豆の栽培をさせる様に指示。
規定量の収穫を3回成功させなければ、解放しない様にさせた。
つまり、最低刑期が1年半で、真面目に働かなければ、刑期が伸び続けるのだ。
これが、窃盗やスリ、ひったくりの罪人に対する刑で、重罪人には畑の面積が4倍になり、指定した期日が加わる。
死罪確定の罪を犯した罪人は、最低30回は収穫しなくてはならない事にした。
これで、規定値に達しなくても、収穫はあるので、農業従事者を確保できるのである。
王都で毎日捕まるゴロツキも、被害のひどい地域に派遣し、農業と復興作業に従事させる事で、人手の不足を補えるのだ。
監視役は、馬人族と兎人族がやる。
彼等は、元々農耕民族の為、農業に詳しく、足も速いので、逃走されにくいという特徴がある。
日々の鍛錬により、兎人族でもオーク程度ならサクサク狩れるので、人間に舐められても自分達で解決できる。
容姿は兎人族の方は、マッチョの頭にウサ耳で、馬人族の方は、マッチョで面長で、ピコピコ動く小さな耳が特徴だ。
女王様から、凱旋パレードの事で連絡があったので、年末の27日に予定して、それまでに復興を推し進める事に決めた。
『私は明日が、ソフティーの子供が生まれる予定日なので、一旦戻りますが、世界樹の危機もありますので、凱旋が間に合うか保証しかねます。』
『世界樹の対応は進めなければならないのですか?』
『世界滅亡の危機だそうです。』
『最優先でお願いします!』
主要メンバーを集めて、王都に帰ってきた。
『ソフティーただいまー』
『アルティスおかえりー』
『どんな感じ?明日産まれるの?』
『うん、明日産まれる。』
『名前考えたんだけど、キュプラとそれ程変わらないけどいい?』
『うん、アルティスが付けるなら、何でもいい。』
『じゃぁ、また産まれる前くらいに声かけてね。』
『判った。』
ソフティーの子供がとうとう産まれるのか。
何か親でも無いのに、ソワソワしちゃうな。
『アルティスさまー』
『んー誰だっけ?』
『酷い・・・』
『冗談だよ。王都に着いたのか?』
『着いたんですが、門で足止めされてます。汚過ぎて、話を信じてくれないんです。』
『クリーンかけろよ。』
『掛けてこれなんですよ。』
『迎えに行く』
アメリア達が王都に到着した様だが、あまりにも汚過ぎて、門を通過できないらしい。
というか、何で汚いと通れないんだ?
『来てやったぞ。おい、門番。何で通さないんだ?』
「あ!アルティス様!こいつらがあまりにも汚過ぎて、王都に入れるのには、ちょっと憚られるというかですね。」
『誰の指示だ?』
「私の判断です。」
『誰の許可で始めた?』
「・・・誰の許可ももらってません。」
『何故外にこんなにたくさんの人がいるんだ?こいつらに犯罪歴でもあるのか?』
「いえ、ありません。」
『何故入れないんだ?汚い奴は入れるななんて誰が指示した?貴様にそんな権限を誰が与えた?』
「・・・権限はありません。」
『おい!スミル!西門にすぐに来い!』
『はい!!』
スミルがすっ飛んで来た。
「はぁはぁはぁ、どどどどどうなされましたか!?」
『門の外を見てみろ。この状況はお前が指示したのか?』
「いえ、そんな指示は出しておりません。おい!君は確か、ゲーリー・テンダーだな。誰の指示でやったんだ?」
「私の判断でやりました。」
「お前にそんな権限は、与えてない筈だぞ?」
「しかし、あまりにも汚いので。入れない方がいいと思いまして。」
「そういう人達の為に、そこに銭湯があるんだが?」
「銭湯が汚れてしまいます。」
『テンダーね。お前の父親は、ドーイー・テンダーか?』
「そうですが、何か?」
『王城の廊下で立ちションした馬鹿だな。他人をどうこうする前に、自分の親をどうにかするべきだったな。お前は、クビだ。』
「そんな横暴ですよ!何でそんな事になるんですか!?」
『お前は契約書を読んでないのか?スミル、契約書と誓約書持ってるか?』
「はい、こちらに。」
『ここに、命令違反は懲罰に処すと書いてあるな?そして、お前のサインだ。入隊の時に、お前らには、契約書の内容をよく読んで、納得したらサインしろと言ったよな?それで、お前はここにサインをしたんだよ。納得したんだよな?してねぇとは言わせねぇぞ?拒否するなら契約違反も付ける。犯罪だよ。詐欺罪成立だ。』
「これは、親父の字で、私は書いてません。」
『衛兵!こいつを捕らえろ!』
「「はっ!」」
「な、何でですか!?」
『煩いから[サイレント]』
『スミル、こいつの首にコレ着けておけ。魔法を撃てない様にする魔道具だ。コイツはクビだ。似た様な奴が他にもいるのなら、ピックアップしておけ。』
「はっ!」
馬鹿門番を排除して、門の魔道具を確認してみると、魔道具が動いていないのが確認できた。
『コルス、西門の魔道具が動いていないんだが、誰か止めたのか?』
『え?そんな筈は無いですよ?』
警備隊の屯所に連れて行かれるゲーリーを見て、アイツが怪しいと思った。
『スミル、各門の魔道具の動作確認と動いてない場合は、起動させろ。ここは、信頼のおける部下に任せて、指揮に戻れ。』
「はっ!」
屯所に入り、ゲーリーの取り調べを手伝う事にする。
「ゲーリー、お前は本当に馬鹿だな。何で命令違反なんてしたんだ?」
「そんな命令なんて、聞く必要無いと思ったんですよ。あんな汚い連中、街に入れる方がどうかしてますよ?そう思いませんか?」
「思わないな。犯罪者でも無ければ、ゴロツキでも無いんだぞ?ただの難民じゃないか。助けるのが普通だぞ?お前の家では、汚れてる奴はいないのか?」
「あそこまで汚い連中はいませんよ。何なんですか?あの汚れは。クリーンでも落ちないなんて、おかしいに決まってますよ。」
「でも、お前の親父は立ちションしたんだろ?おかしいのは、お前の親父もじゃないのか?」
「あんなの親父とは認めませんよ。昔から大嫌いでしたよ。何をするにも汚らしいので。」
『お前は、門に設置してあった魔道具も止めたのか?』
「あんな魔道具が、何の意味を持ってるのか知りませんが、私が居るんだから、必要ありませんよ。だから取り外そうとしたんですが、取れなかったので止めました。」
何だこいつは?自分がいれば、全て解決するとでも思ってんのか?頭が可笑しいとしか思えないな。
『こいつは、犯罪奴隷にして、北部の領に行かせよう。頭がおかしい。』
「そうですね。それがいいと思いますよ。皆もそう思ってますよ。捕まってくれて清々しました。」
ん?こいつらも可笑しいな。
自分達がやってる事の意味を判って言ってるのか?
『いや、お前らもちょっとおかしいぞ?』
「え?」
『警備隊だからって、犯罪を見逃していい訳じゃないし、明らかにおかしい場合は、進言してもいい。と云うより、進言しろ。捕まえろ。こいつが仲間だという以前に、お前らは警備隊だ。ちゃんと規則があって、法を守る番人なんだよ。そのお前らが、同じ警備隊が侵した罪を放置していたら、警備隊の信頼なんて地に落ちるぞ?業務遂行に必要な場合は、免除される罪もあるが、コイツの行動は、明らかに王都に害を齎す行為だ。絶対に野放しにしてはいけない。』
『コルス、防疫の魔道具を、警備隊の屯所の天井、牢屋の廊下に追加して、判らない様に隠ぺいしろ。街中の稼働状態も確認しておいてくれ。止められている魔道具があると思う。』
『了解』
「我々もおかしいんですか?」
『あぁ、おかしいな。[アナライズ]』
全く、次から次へと、問題が増えて行くな。
今度は寄生虫かよ。
「何をしているんですか?」
『[アンチバイオティクス][バーミフォージ]』
『カビの次は寄生虫と来たか。コルスー』
『寄生された経路として考えられるのは、食事でしょうね。』
『何を食ったんだ?』
『生焼けのオークですね。テンダー家では、生焼けの肉が好まれている様でして、表面だけに焼き目を付けた殆ど生の・・・以前食べさせられませんでしたっけ?私。』
ローストビーフの事を言ってるのか?生焼けとローストビーフを一緒にされては困るな。
『オークの肉ではやってないぞ?やったのは、ゴートキャトルとシープキャトルだな。』
『大丈夫なんですか?』
『ちゃんと調べているし、生焼けに見えるが、生焼けでは無いぞ。』
『どういう事ですか?』
『肉ってのは、加熱すると白っぽく変色するだろ?変色したのは、加熱されてタンパク質が変質したからなんだけど、変質する前で止めると白くならないんだよ。』
『それを生焼けというのでは無いんですか?』
『生焼けってのは、火が通ってない状態で、以前食べたローストビーフってのは、虫とか菌が生きられない温度でゆっくり加熱した物なんだよ。つまり、ローストビーフの場合は、中心の温度が70度くらい。一瞬だけ70度にしても、生き延びる奴はいるから、70度を保ちながら、40分から1時間くらい加熱してるんだよ。』
『いくらしぶとくても、40分は生きて居られないという事ですか?』
『そういう事。』
『テンダー領の場合は?』
『表面を焼いただけなんだろ?肉ってのは意外に、熱が伝わりにくいんだよ。そして、オークの肉には、寄生虫の卵がわんさか入ってるから、生で食べると、腹の中でふ化して、体中を這いずり回るって訳だ。テンダー領の連中は、低所得層以外は駄目かもな。』
『いえ、生焼けを食べていたのは、テンダー家の者だけですね。オークの肉は、良く焼かないとヤバいというのは、以前から言われてる事ですから。』
何故そんな調理法を試そうと思ったのか知らないが、ヤバいかもしれないな。
『そうか、じゃぁ、テンダー家に行ってるのは・・・ウィーガンだな。ウィーガン話せるか?』
『はい。大丈夫です。何かありましたか?』
『屋敷の料理に、オーク肉の生焼け肉は出て来たか?』
『はい、ありましたが、誰も手を付けませんでした。それが何か?』
『料理長を捕縛しろ。料理人達も様子がおかしい場合は、捕縛しろ。寄生虫にやられている可能性がある。』
『了解しました。やっぱり、生焼けはやめさせた方がよろしいですよね?』
『オーク肉と鶏肉は駄目だな。生焼けに見える肉料理もあるが、オーク肉では駄目だ。今から、魔道具を送るから、それを屋敷の屋根に取り付けろ。カビと寄生虫と、病原菌の駆除ができる魔道具だ。』
『使うとどうなりますか?』
『程度によるな。こっちにテンダー家の4男がいるんだが、もう生きられないだろうな。どの程度の感染をしていたかによるから、目玉が動くようであれば、ポーションを飲ませてみろ。その後は、様子見だな。』
『了解しました。届きました。もう起動しても?』
『いいぞ。寧ろ起動させて屋敷の連中の近くを歩け。その後は、全ての外との出入口の天井に設置しろ。重傷者は、あちこちから血が出る様だ。』
『起動したのですが、メイドが3人倒れました。この魔道具を使えば、生焼けでも食べられる様になるんですか?』
『無理だ。卵には効かないんだよ。オークの肉の中には、寄生虫の卵が混ざっているんだよ。それを食べると、体内でふ化して這いずり回る様になるんだ。卵の状態では、卵の殻に保護されていて、効かない様だ。』
『狼人族の料理にも、身がピンク色の肉が混ざっているんですが、それは大丈夫なんですか?』
『判別方法は、滲み出て来る肉汁が透明かピンクかだ。透明なら大丈夫。ピンク色なら駄目。』
『良かった。狼人族の方は生で食べていましたが、大丈夫でしょうか?』
『彼等獣人には、種族特性というものがあってな、生肉を食べても問題無いんだよ。俺も平気だしな。但し、元の動物が草食の場合は駄目だ。』
『例えば?』
『馬、牛、兎、鹿、羊、山羊、この辺は駄目だな。ケットシーは判らんが、多分大丈夫だ。うちの部隊で肉食なのは、狼と豹、鳥人くらいだな。』
『了解しました。厨房に来たのですが、全員が倒れました。あ、狼人族の方だけは何ともない様ですね。人間は駄目の様です。』
『料理人の家族、家の近所、その周辺を調査して、生焼けを食べた事があるかどうか確認してくれ。』
『了解しました。この魔道具は他にも設置する予定ですか?』
『あぁ、街の門に設置する。状況に因っては、街中にも設置する。』
『それもそうですね。判りました。対応します。』
『頼むぞ。』
設置する場所としては、街の出入口と宿屋、孤児院、冒険者ギルド、市場の中心部だな。
薪を節約する為に生焼けで食す連中が居ても可笑しくないのと、孤児院は孤児の時に、空腹に耐えかねて、生肉を食した可能性がある子供が居るからだ。
ゲーリーが死んだ。
こいつが、何故魔道具を止めたのか判らないが、長時間効果を浴びていると、それなりに効果があると、見てもいいだろう。
スミルに、ゲーリーが死んだ事を伝え、城に戻った。
『あたしたちはどこに行けばいいですか?』
アメリアから念話が来たが、すっかり忘れてた。
『城に来てくれ。風呂には入ったのか?』
『えぇ、入りました。いいですね。風呂って奴は、疲れが吹っ飛びましたが、少し寝てしまいました。』
『王城にも風呂はあるからな。シェケナも喜んでいたか?』
『懐かしい呼び名ですね。その名前で呼んだら、怒られますよ?』
『だろうな。アメリア、ちょっと話し方変えたのか?』
『変わってますか?子供達を元の街へ送る度に、歓待を受けるので、丁寧に話す様にはしていましたが、身に着いたのかも知れないですね。』
『そうか、遅れて合流するはずだった、クリストフはどうしたんだ?』
『え?・・・えっと、そ、そんな話ありましたっけ?』
偽傭兵団の後ろに、カレンとリズを連れて、テレポートした。
『お前ら誰だ?[アナライズ]やっぱりか。捕縛しろ。』
「な、何でバレたんだ!?」
『いくら使い慣れたとはいえ、アメリアが俺にそんな言葉遣いする訳ねぇだろ。捕縛された状態でも、怪しい敬語しか使わなかったのによ。』
「くそっ!観察が足りて無かったのか!」
『魔王軍も往生際が悪いな。』
「ふん!お前が悪臭魔王を壊したおかげで、新しい魔王様が誕生したんだよ。今度の魔王様は前のより強いからな。覚悟しておけ。」
『へぇー、それなのに二番煎じの策とはね、頭はそれ程でも無い様だな。頼みの綱の悪魔が使えなくて、足掻いている様にしか見えないな。』
「ふん!新生魔王軍の力を見せてやるぜ![エクスプロージョン]」
『発動までに時間がかかるのか?』
「な、何故だ!?何故発動しない!!」
「魔法でアルティス様に対抗しようなんて、無駄無駄。一々魔族の策を待つ必要なんてないですから、早く滅ぼしてやりましょうよ。」
カレンが魔族の策が失敗であると告げると、魔族達は項垂れる様にして、口の中で何かを噛んだ。
『[ニュートラリゼーション]』
「はぁ!?」
「だから無駄だって言ってるでしょ?神様だって対抗できないのに、貴方達が対抗できる訳ないでしょ?」
「な、何なんだよこいつは・・・」
「アルティス様よ。世界最強よ。単独でメテオレインを連発できるんだからね。」
「まさか・・・、そんな訳が無い・・・だろ。」




