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第27話 混成軍結成と王都の掃除

 「ちょ、アルティス!?やめなさい!」

 『いたたたたたたたた、痛い痛い、やめるって。』


 もう!ちょっと寝ぼけてただけだよ!!


 「ぬぅ、アルティス殿が勇者では無いのか?、では、アーリア殿が勇者・・・という事に・・・」

 「そもそも、伝説では、アラクネ二人を従えているのが勇者なのだろ?、私は一人しか従えていないし、アルティスも一人だけだ。だから、勇者では無い。」

 『あるじは、アラクネを力技で従えた、世界初の偉業を成し遂げたんだぜ?』

 「なんと!?・・・アーリア殿は、世界最強という事ですな。身に着けている装備も、素晴らしいものばかり、うむむ」

 「私が思いますには、アルティス様は神の使徒で、アーリア様が勇者なのでは無いかと思っています。」


 ワラビがとんでもない事を言いだした。


 『俺は、神なんて会った事も無いし、見た事も無いから、信仰なんてものはしていないよ。』

 「神に会えば信仰するという事ですかな?」

 『会っただけでは、しないだろうね。命令する様なら、ぶっ飛ばす。』

 「・・・。」


 ワラビが絶句した。


 「何とも豪快なお方じゃな!わっはっはっはっはっはっはっは」

 『ところで、エルフの人よ、人間に捕まった仲間はいるか?』

 「3人程います。不意打ちで捕らえられて、地下牢に入れられているそうです。」

 『[サーチ エルフ]』

 『オロシ、エルフを盗んで来い。場所は、テスティクルズ伯爵家の地下牢だ。』

 『了解しました。』

 『3人いるから、複数で行けよ?』

 『もちろんです。』

 『騎士団、テスティクルズ伯爵を捕縛しろ。誘拐と拉致監禁の罪だ。私兵が煩いなら、私兵も捕縛しろ。』


 暫らくして、3人のエルフが連れて来られた。

 3人共女性で、アルティスの前に跪き、またまた、誓いを立てられた。


 「お初にお目にかかります。まずは、助けて頂き、ありがとうございます。私の名は、リミナ・ディアマーナ、右が、セリナ・ディアマーナ、左が、イーリス・ディアマーナです。私達3人は姉妹ではありませんが、同じ部族出身でございます。牢に繋がれて、卑猥な言葉を投げかけられて、絶望に満ちておりました。」

 「我ら3人が慰み者となれば、我が部族の存続に関わる事となる、一大事。自決も覚悟していた故にて、救って頂いたこの命、世界樹に誓って、貴方様に捧げます事をお許しください。」


 ぬぅ・・・何でそうなるんだよ!

 部族の一大事から抜け出せたんだから、素直に帰れと言いたい。


 『命なんて捧げなくていいよ。俺の為に命を投げ捨てるなんて事は、絶対に許さない。だから、俺達の友人でいてくれれば、それでいい。』

 「はい、それでは、この命尽きるまで、友人であり続ける事を誓います。」

 『それでいい。』


 どうせ言っても聞かないだろうから、友人って事にしておいてもらうよ。


 「アルティス様、オーク何体か出してください。」


 カレンから要求されたので、ジェネラルとウォーリアとピッグブルを数体出した。


 「のう、もしかして、まだオークをたくさん持ってないかのぅ?」

 『何体欲しいんだ?』

 「10体程欲しいのだが・・・」

 『10体やるから、他のも全部解体しろよ。解体せずにそのまま入ってるのが500程あるんだよ。』

 「ご・・・ひゃく?・・・おい!皆の者!オークの解体を手伝え!」


 『あと、ワイバーン5体な。』

 「はぁ!?ワイバーンもあるのか!わしらのナイフでは歯が立たんのう。」

 『ドワーフなのに?』

 「魔王軍に取り上げられて、代りに渡されたのが鈍らのナイフなんだよ!全くふざけた連中だぜ!」

 『鞘が無いけどナイフならたくさんあるぞ?使うか?』

 「見せて下され。」

 『ほら』


 ディメンションホールから大量のナイフを出した。


 「これは!?・・・材質が判らんが、業物だ!」

 『チタンとタングステンとドラゴンの爪だよ。』

 「「「ブーッ!!」」」

 「ど、ドラゴンも倒したのか!?」

 『巣から拾って来たんだよ。倒せば薬の材料が大量に手に入るのになぁ。まだ、会った事すらない。』

 「薬の材料としか、見て無いのが凄いな・・・。とりあえず、解体を始めるぞい!」


 サクサク切れるナイフを使い、あっという間に解体は終了。

 ドワーフたちが、ソーセージを作り始め、他の者達はナイフの鞘を作り始めた。

 ワイバーンの肉を仕舞っていると、不思議に思ったのか、エルフ達が聞いてきた。


 「ワイバーンの肉をどうするのですか?」

 『食べるんだよ。結構美味いんだぞ?』


 エルフが引いてる。


 『カレン、食わせてやれ。』

 「はーい、調理しますね。」


 カレンが調理したワイバーンの肉を、恐る恐る食べたエルフ達が、驚愕した。


 「これがワイバーンの肉だって!?こんなの初めて食べた・・・カレン様!私を弟子にしてください!」

 「この料理は、全てアルティス様が考案したんですよ。」


 ディメンションホールの中身を見て思い出した。


 『スケープゴートも死ぬほどあったのを忘れてた。解体してくれ。1万程。』

 ブー!!


 みんなが一斉に噴いた。


 「い、一万って、どれだけ凄い事をやったんですか!?」

 『魔王軍が増やした奴をばら撒いて来たから、殲滅してやっただけだよな?』

 「そうですね、あれは疲れましたね。平野を埋め尽くすスケープゴートの群れでしたから。」

 「あぁ、そういえば、魔王が軍の食料にするとか言って、増やしてましたね。ダッドアイが勝手に戦力として使ったとかで、激怒してましたけど、今は確か、増えすぎて魔大陸で問題になってるとか、言ってましたけど。」

 「そうそう、バレイショも大繁殖して、スケープゴートの餌にするとか言ってたけど、スケープゴートは、バレイショを食べないって、知らなかったらしくて、大繁殖と大増殖で、流通が途絶えたとか言ってたね。」


 まぁ、スケープゴートからしたら、バレイショは母体だからな。

 

 『スケープゴートの親が、ゴートキャトルなんだろ?』

 「え!?そうなんですか!?」

 『生まれる瞬間を見てたんだよ。バレイショが種を飛ばし始めたと思ったら、ゴートキャトルが来て、糞を飛ばし始めてさ、糞の近くで育ったバレイショから、スケープゴートが産まれたんだよ。』


 「という事は、スケープゴートが産まれると、バレイショが増えなくて、スケープゴートが増えすぎると、ゴートキャトルが大量発生して、スケープゴートが更に増えると?」

 『んー、バレイショが増えるとゴートキャトルが来て、スケープゴートが増えて、バレイショが減る。スケープゴートを放置するとゴートキャトルが増えて、バレイショがさらに減って、スケープゴートを増やす。それで国が亡ぶんだろうな。』

 「はー、ちょっと家族に念話して、魔大陸から逃げる様に言っておきますね。」

 『だが、バレイショで滅んだ国もあるらしいから、三竦みなんだろうな。満遍なく狩って減らさないと、駄目って事だな。だが、肉が無限に手に入るのなら、魔大陸に行ってみたいな。兵士の育成訓練に丁度良さそうだ。』


 エルフが引いてる。

 何度目だ?


 「鬼ですね。」

 「アルティス様は厳しいですが、優しいんですよ。信頼できますし、正義感も強い。頭もいいし、料理の知識も凄いし、武器も防具も魔道具も作れて、できない事を探す方が難しいくらいですよ。」

 「軍師向きですな。」


 ふと、振動感知で、上からの振動波に気が付いて、アルティスが空を見上げた。

 そこには、結界に体当たりをするダッドアイがいた。


 『ちょっと虫けらを捕まえて来る。』


 立ち上がり、溜を作ってから、一気に飛び上がり、城の壁を走って勢いよく空に飛びあがり、結界の内側から、テレポートでダッドアイの背後に到達した瞬間に、魔法を唱えた。


 『[ホーリーキューブ]』


 箱の中にダッドアイを入れて、その箱ごと内側にテレポートをして、真下に向けて箱をパンチした。

 箱は、中庭の中央に落ちた。

 恐る恐る見に来たエルフが叫んだ。


 ズドーン!!

 「ダッドアイだ!?」


 ホーリーボックスの中には、血だらけのイビルアイが入っていた。

 みんなが騒ぎ始める少し前に、アルティスが箱の上に降りてきた。

 箱の中で詠唱を始めたので、封じる為の魔法を唱えた。


 『[アンチマジックボックス]』

 「きさまぁ!?毎度毎度、邪魔しくさりやがって!殺しに来てやったんだぞ!有難く思え!!」

 『魔法を封じられてんのに、俺を殺すだって?どうやって?もう飛ぶ事すらできないじゃねぇか。もうお前の馬鹿な作戦に付き合うのも面倒だから、あの世へ送ってやるよ。』

 「な、なんだとぉ!?、やれるもんならやってみろ!」

 『じゃぁな。引っ掻き』

 スパスパスパスパ


 細切れになる様に引っ掻き、文字通り細切れになったダッドアイは、あっけなく死んだ。

 マジックボックスで包まれている為、かろうじて散らばってはいないが、魔石は真っ先に切り裂いたので、生き返る事も再生する事も無い。


 『ソフティーこれを糸でくるんで潰して。』

 『はーい』


 悪魔の時の様に、糸で(まゆ)にして、圧縮した。

 元が小さいので、パチンコ玉程の大きさになった。

 それを[ディメンションホール]の中に放り込んだ。


 事の成り行きを見ていた者たちは、唖然としていたが、洗脳の恐怖から解放されたため、大喜びだった。


 「ダッドアイを倒したぞ!?」

 「もう洗脳を恐れる必要がなくなったんだ!!やったー!!」

 うおおおおおおおー!!!

 「ダッドアイを、こうも簡単に倒されるとは、恐れ入りました。奴は、我らドワーフの敵であり、我が種族の神を冒涜した忌むべき相手。我が種族の仇敵を倒されたアルティス様に、最大の敬意を。我ら一族、貴方様の要請があれば、いつでもはせ参じる事をへファイス神に誓います。」


 喜びに沸いていたドワーフ達が、一斉に跪き、挨拶をしてきた。

 さっき、命を懸けるなって言ったからか、要請に応じると内容を変えて誓いを立ててきた。

 まぁ、配下になるとかじゃなければ、いいんだよ。

 因みに、へファイス神というのは、ドワーフ達の神の名前で、技巧と鍛冶の神だそうだ。


 『そうか、俺達にとっても、散々振り回された相手だったからな。探しに行く手間が省けて良かったよ。へファイス神の絵とか持ってたら、像を作ってあげるけど?』


 見せられたのは、椅子に座って鍛冶をしている場面みたいな体勢の絵で、右手には金槌、左手には盃を持って、金床の前に座っている。

 鍛冶をしながら酒を飲むとか、お行儀が悪すぎるので、左手にやっとこを持たせて、金床を置いて鍛冶をしている風景にしてやった。

 魔力鉱石を使って神像を作ると、像の前で土下座して、動かなくなってしまった。

 リザードマンのリーダーがやってきて、聞いてきた。


 「我らリザードマンは、元より少数単位で集落を作り暮らしてきた。この国にもいくつか集落があると聞く、もし見つける事があったら、助けてあげて欲しい。」

 『一回、助けたぞ。タックアーンの近くにあった集落で、ダッドアイの仕掛けた魔道具のせいで、友好関係にあった、蟷螂人族(マンティス)に食べられそうだったから、魔道具を撤去してやったんだよ。リザードマンの子供の親が、悪魔に捕まってもいたしな。ついでだったが、見つけて良かったよ。』

 「その子供の名は?」

 『ピューレちゃんだったな。』

 「そうか、ありがとう。」


 集まった人数は、全部で2万人にもなっていたが、オークとスケープゴートの肉を消費しきるには、まだまだかかりそうだった。

 殆どの人族は、外で雑魚寝になるが、全く気にした様子も無く寝てた。

 エルフとドワーフの割合が多くて、全体の4分の1がエルフで、もう4分の1がドワーフ、次いでリザードマンが3000、その次がコボルトで2000後は狼人族、鳥人族、兎人族、豹人族が1000以下。ケットシーもいるが、他のケットシーは、魔王軍の輜重部隊に居るらしい。

 色々と、使いどころを間違えてると感じるが、魔王だからな仕方がない。


 ワーウルフと狼人族の違いは、狼人族は顔がワンコ風の人で、ワーウルフは顔が人間なのだ。

 鳥人族と翼人族の違いも同じように、鳥人族の顔は色んな鳥で、翼人族の顔は人間だ。

 コボルトは、犬が立って歩いている風で、ケットシーは、猫が立って歩いている風にしか見えない。

 獣人にも色んな種類がいて、結構面白い。


 翌朝、朝食後に女王陛下と、謁見の間に行ってみると、死屍累々。


 『何だこれ?』

 「・・・なんでしょうか?、昨日の子爵家の嫡男と同じ事をしたという事でしょうか。」

 『もう、この国の貴族を大臣にするのは、やめた方がいいんじゃないですか?』

 「私も、そう思います。」

 『ケットシー達に、会計をやってもらうのはいかがでしょうか。』

 「それでいいです。」


 女王陛下も呆れて、投げやりになる程の惨状だ。

 まず、やらなければならない事としては、貴族の招集だ。

 そして、女王になった事の宣言と、これからの統治について指示を出す。

 反抗的な貴族は、徹底的に排除する。

 恭順する者は、積極的に登用するが、指示に従わない若しくは、悪用する奴らも排除する。

 所謂、粛清って奴だな。

 帝政みたいに分散統治だったらいいんだけど、中央集権の王政だから、貴族の数が多すぎて面倒くさいんだよ。

 末端の貴族まで数えると600近く居るからな。


 『貴族の招集をして、女王陛下の宣言と、役人の登用について、それから法改正についての指示をしなきゃ駄目です。紛糾するとは思いますが、馬鹿貴族は全て、粛清するつもりでやらないと、国が腐るだけです。』

 「減った分の貴族は、どうするのですか?」

 『そんなに足りなくなります?。王都だけでも120人も居るんでしょ?貴族が。』


 そういえば、ギルマスが、豚が死んだ時に死屍累々だったとか言ってた気が・・・。


 「そうですが、重職に着けられる者が居なくなります。」

 『そんな物は、能力主義にすれば解決できます。爵位なんて、重職に付ける奴を上げてあげればいいだけです。そもそも貴族がこんな有様なのに、爵位に拘る(こだわる)必要がありますか?馬鹿ばっかりじゃ無いですか。地位イコール頭の良さなんて事は無いんですよ。血統も関係ありません。』


 アルティスは、今の貴族制を変える為の最適化できる案を語り始めた。

 昨晩、寝る前に考えたのだが、この世界で共和制はできないと感じている。

 何故なら、簡単に洗脳ができてしまうからだ。

 そして、領地ごとに税率を決める、貴族制も駄目だ。

 世襲制の貴族も要らないし、貴族特権も廃止で問題無いだろう。

 官吏や町長の地位に関する法律も要らない。

 間違った認識にしかならないのであれば、貴族など無用の長物以外の何ものでもないのだ。

 貴族とは、領地を治める為の者であり、その地域の王を取りまとめる王の部下で、全体を取りまとめる者が国王、地域の王が領主である貴族となった。

 貴族は偉いなどと、誰が言ったのかは知らないが、貴族が偉いのは、領地を治めて、税金を国に治めている場合のみだ。


 『公爵も廃止ですよ。貴方がいい例ですよね?。王族が誰なのか判っていれば、不要な爵位です。公爵なんて爵位は、王族のためだけにある爵位ですが、何もしない人に、あげるお金などありません。どうしても必要ならば、一代限りの爵位にして下さい。馬鹿と、働かない者は、全員準男爵か騎士爵にして、最低賃金だけです。親の爵位を引き継げるのは、能力試験に受かった者だけで、何の努力もしていない無能に爵位を引き継がせても、無駄以外の何ものでもありません。王以外は全部一代限りです。どうしても引き継ぐ要員として残さなければならないというのでしたら、権力を悪用、乱用できない法律を作って、毎年貧乏領地に派遣して、改善させるなどさせて下さい。その程度の事ができない奴に、王を継ぐ様な真似はさせられませんよ。』


 『あと、平民からの登用もします。最初は騎士爵から始めて、国に対して、貢献した者の爵位を上げていきます。無能のまま、翌年も過ごす様なら、ばっさりクビにして、平民に格下げします。反逆した者又は、反逆を計画した者は、1年間の投獄、それで反省しない場合は、重犯罪者として死ぬまで兵役。重犯罪者になった貴族の資産は没収。投獄中の資産は、王城預かりとして、2親等以内の家族の生活の為の最低俸給のみ支給。私設兵及び騎士への俸給は認めません。』


 『貴族は、全員専用魔道具の着用を義務付けます。他人への貸出不可、本人以外の着用不可、魔道具には、映像及び音声を、記録する機能を付けますので、犯罪に及んだ経緯は、確認できる様にします。偽証、つまり嘘の証言を行った場合、刑罰は2倍として、元々の刑罰が死罪の場合は、投獄せずに即刻死刑に処します。』


 『犯罪行為の刑罰一覧は、作製しておきます。裁判は、貴族が絡む事件の場合は、女王陛下がやり、平民の場合は、王城の前庭又は、裁判所を作ってそこで行います。裁判官は、試験に合格した人をランダムで選定、魔道具で犯罪履歴を確認し、着けても問題の無い人を指定します。万が一、問題があった場合は、権利のはく奪、及び投獄1年。』


 『大まかには、こんな感じで。』

 「凄いですね。数年間は、上位貴族無しになりますが、大丈夫でしょうか?」

 『大丈夫とは?』

 「決定権を持つ者が居なくなります。」

 『最終決済は、貴方の仕事ですよ?』

 「もの凄い量になりそうなのですが。」

 『なるでしょうね。その為の官僚でもあるので、女王の決済が必要かどうかを、官僚が決めればいいんですよ。ただ、買収される可能性もあるので、変な決済案件が届いたら、直接叱りつけて下さい。それが貴方の責務です。』

 『女王陛下には、魔法ペンをお渡ししておきますので、その魔法ペン以外で決済のサインをしない様にお願いします。』


 「この魔法ペンで書いたサインかどうかを確認するのは、誰がやるのですか?」

 『官僚です。最終決裁が下りた書類を確認します。』

 『その為の予算を計上し、国庫からお金を引き出します。支払いは請求書を受け取ってから、業者へ直接支払われますので、貴族が寄越せと言っても渡す事は無い様にします。』


 『予算オーバーの場合は、現地に騎士と貴族、会計士を派遣して、調査を行います。書類が無い、又は破棄された場合は、計画は中止。費用の支払いも行いません。』

 『女王が決済した案件は、全て公共事業ですから、実態が無い場合は、提案者及び現場責任者を投獄します。』

 「悪魔がかかわった場合は?」

 『即刻死罪です。その場で切り捨てます。悪魔と契約、召喚、取引、利用全てに於いて、禁止事項です。』

 「それはちょっと危ないのでは?、例えば、現場責任者が貴族以外で、確認する方法が無かったり、知らない間に悪魔が入り込んだりする可能性もありますわ。」

 『関係者全員が、毎日神に祈る、関係者証を見えるところに貼り付ける、さりげなく渡すものに神聖魔法を付与しておく等、方法はいくらでもあります。公的な正式書類を全て神聖魔法を付与する様にしてもいいのですが、将来的に教会が政権に介入する事が予想されますので、法律か憲法で、政治に宗教を絡ませない様にします。』


 「そうですか。万が一、守らずにやっていた場合は?」

 『それは、本人の怠慢でしょう?切り捨てられる可能性を考えずに、適当にやるから死ぬんです。自己責任ですよ。』

 『国防に関わる問題でもありますので、入国審査の際にも確認しますし、外壁にも悪魔用の警戒アラームを設置します。広いので、何個必要なのか判りませんが、念には念を入れて設置しますよ。』


 『殆ど入って来れる余地は無いと思いますが、下水道を使われる可能性もありますし、小さな虫になって入って来る事もありますので、絶対ではありません。』

 『下水道の様な、常時暗い場所では、神聖魔法は利きにくいので、分岐点や出入口のある場所、壁の薄い場所などには、照明を点けて、光魔法で常時照らします。』


 『闇魔法・暗黒魔法の検知器は、接近を検知すると、セイクリッドミストを噴霧するか、セイクリッドライトを光らせますので、どの場所で反応したかが、判る様にします。』

 「そこまで警戒していても、入って来る可能性があるのですか?」

 『結界は、悪意及び闇系魔法を持つ者を遮断しますが、それ以外は通り抜けられます。例えば、鳥に憑依して入って来る場合や、ネズミやイタチ、ハエ等に憑依していた場合、通り抜けられる可能性があります。』

 『神聖王国の司教みたいに、リモートコントロールで侵入してくる可能性もありますので、警戒は解けないのですよ。あぁ、丁度来たようです。ソフティー、捕まえて。』

 『はーい』

 ペタッ

 『ほい』


 粘着液のついた糸をグルグルと振り回し、飛んでいたハエを糸にくっ付けた。

 糸に付いたハエを踏みつけ、魔力導線を辿って、術者の居場所を特定。

 パニックとパラライズを送った。


 『ルギー、西門の外壁の外だ。頼んだぞ。』

 『了解!』


 ルギー達が、外壁の外にいる自称聖職者達にバーサク弾とタマタマ粉末爆弾を打ち込み、拘束した。

 この組み合わせの効果は、目の前に相手がいるのに、手を出せず、頭がパンクするので、確実にスタン状態になる。

 しかも、対象者には、最初にバーサクが入っているので、気が狂いそうになる程の苦しみを味わうのである。

 そして、拷問の必要も無く、ベラベラと喋る。

 解放なんてしないが、話せば解放すると言えば、規律も命令も吹っ飛んでいる状態では、何の意味も持たない。

 聞く事聞いたら、スリープかけて、夢の中で処理してもらうだけだ。


 最初は、アーリアも渋っていたが、あまりの効果に、3人目では、許可を出さざるを得ない状況だったのだ。

 なにせ、拷問をすると言うと、ペティが満面の笑みで、羽を持ってやってくるのだから。


 翼人族のルギーが、その場で尋問をした。


 「よし、全て話せば、解放してやるぞ。」

 「本当か!?話す!。私は神聖王国の司祭だ。今回は盗聴の為にハエに意識を移して侵入した。命令したのは教皇様だ。我々神聖王国の目的は、この国を滅ぼして、肥沃な大地を手に入れる事だ。魔王軍が役に立たず、王都に潜入している筈の悪魔からの連絡が途絶えた為に、私が派遣されてきたのだ。以上だ。早く解放してくれ!」

 「[スリープ]」

 くかー・・・


 これで10人目だ。

 国境付近には、神聖王国の聖騎士団が集結しているとの情報もあるので、一々排除に兵を派遣するのも面倒なので、ばら撒いてあげようと思ったのだが、アーリアに止められてしまった。


 「聖騎士団には使ってはダメだ!気が付いた時に、彼等は自害してしまう!」


 どちらにせよ、遠いから持って行くまでに数日かかるのだが。

 状況がよく解らないので、ウニファームから嗜好品を持った商人を向かわせて、情報収集をしてもらった。

 結構売れたらしい。

 商人の話によると、士気は低く、帰りたがっている様だ。

 どうやったら士気を下げて、解散させられるのか判らないので、神聖王国の事を知っているワラビに、聞いてみようと思った。


 『ワラビー』

 『何か御用でしょうか?』

 『ちょっと来てもらっていい?』

 『はい、すぐ向かいます。』


 神聖王国の事は、やはりワラビに聞くのが一番だと思ったのだが・・・。


 「どの様な、ご用件でしょうか?」

 『神聖王国の聖騎士が、国境に駐屯しているのは、知ってるよね?』

 「はい、存じております。」

 『帰らせたいんだけど、いい方法が無いかと思ってね。』

 「・・・判りません。」

 『何かさ、王都の何かを想起させるものとか、料理とか無い?』

 「甘芋があれば、思い出すかもしれませんが、この国では、手に入らないので、難しいかも知れません。」

 『甘藷かぁ、それは欲しいな。スイートポテトが作れるのに。』

 「新しい料理ですか?」

 『料理というよりも、デザートだね。』

 「何故、この国では作られないのでしょうか?」

 『さぁ?、生育条件が合わないとかじゃないの?』

 「そうですか。たまに味が恋しくなる事があります。」

 『仕入れてみるか。確かハンザ神国で作っていたよな。定期的に輸入できないのが痛いな。』


 鳥人族にマジックバッグを持たせて、向かってもらう事にした。

 聖騎士団は、普段から、神を信仰する国の騎士として、清貧(せいひん)甘んじる生活をしているという。

 戦争をする相手として考えれば、そこを崩すのが一番簡単なのだが、同じ騎士という立場から見ると、その質素な生活の中でも高潔な意志を貫く、その姿勢を崩す様な攻め方は、卑怯に感じてしまうのだろう。

 その案を話した時は、卑劣だなんだと酷い言われ様だった。

 アルティスからすると、宣戦布告も無く、宗教を利用して侵略してくる、神聖王国の方がよっぽど卑怯だと思うのだが、騎士の矜持がそれを許さないらしい。

 反論の中で、人間らしくないと言われたのだが、そもそも人間辞めてるからなぁ。


 『あるじー』

 『聖騎士団の対応の相談か?』

 『そうだよ。今の状態を維持するのは、得策では無いからね。とっとと帰ってもらわないと、ゆっくりできないよ。』

 『そっちに行こう。』


 アーリアを呼んだはずが、リズとカレンもやって来た。


 「何か策が思いついたのか?」

 『丸投げじゃなくて、自分達も考えて欲しいんだけど?君等、この国の軍務なんだからね?』

 「・・・すまない。そうだな。」

 『判ってもらえればいいけど。聖騎士団を挫く(くじく)為に、目の前で模擬戦をやろうと思う。ついでに、聖騎士団に紛れ込んでいるであろう、悪魔の排除を行うよ。』

 「ほう、私も行くのか?」

 『女王の守りはどうすんのさ、行かせないよ?』

 「では、誰が行くのだ?」

 『兵士でいいじゃん?、普通の騎士では勝てないんだからさ。』

 「それもそうか。態々(わざわざ)手の内を見せる事も無いか。」

 『それと、警備隊の教練も頼むよ。弱小じゃ困るからね。人数も大幅に増やして、24時間4交代制で常時活動できるように、体制を整えておいてください。』

 「何か、アルティス様の敬語が新鮮に思えます。」

 『じゃぁ、リズ、警備隊の増員、頼んだよ。』

 「・・・藪蛇(やぶへび)だった。」


 余計な一言は、付け入るチャンスだからね。

 中庭に、エルフ・ドワーフ以下他種族一同に集まってもらった。


 『これからの、君達の処遇について話すよ。今のままでは、エルフは動けず、君達の訓練及び育成も、ままならない。だから、今後の計画として、現在、この国の北側にある、魔王軍占領地域の元エルフ王国を取り戻す。その為には、君達には、精鋭になってもらわなければならない。』

 『という訳で、王都東側の湿地帯の整備、北側の荒れ地の開拓をやってもらう。』

 ザワザワ

 「はい!ちょっと質問したいのですが!」

 『どうぞ。』

 「湿地帯の整備と、荒れ地の開拓が、訓練になるのですか?」

 「俺達に重労働をやらせようって事か?」

 『お前達がここにいる事で、人間の食料を大量に消費し続けているのは、理解できるな?働かざる者食うべからず。何もしたくないと言う者は出ていけ。自分の国に帰ってからやれ。どこぞの馬鹿魔王が、恭順すれば働かなくてもいいなどと、ほざいた様だが、そんな事、俺には関係無い。それと、ワーカホリックなドワーフ、お前らは6日働いたら、1日休め。休まない奴には、罰を与える。以上。』


 数人から反論が出ていた様だが、殆どは「?」状態だな。

 どう訓練に結びつくのか、理解に苦しむのだろうが、やってみれば判るだろう。

 こいつらの訓練担当は、カレンとミュールだ。


 「では、訓練は、私の指揮により行う。異論がある者は、挑戦してくるがいい。私に勝てたら、訓練を免除してやろう。」

 「では、俺様が挑戦してやる。人間如きに、俺達獣人が負ける訳ねぇからな。吠え面かくなよ?」


 出て来たのは、働きたくない代表、狼人族(ろうにんぞく)だ。

 ワーウルフの二人が、今にもブチギレそうな顔をしているが、お前らも働く方だからな?


 カレンが、木剣を肩に担いで待つ正面に、狼人族の男が木剣を持って立った。


 「始め!」


 カレンは構えずにそのままで待つが、狼人族は突きの構えで突っ込んだ。


 「うおりゃぁ!」

 カッガリガリガリ ドスッガッゴッ


 勝負は一瞬、狼人族の突きを、いなしたカレンが、鳩尾・顎・背中に一撃ずつ入れて倒した。

 狼人族の男は、気絶した様だ。


 「カレン勝利!」


 普段、料理ばっかりやってるイメージだが、実は、アーリアの次に強い。

 訓練は、アーリアとの模擬戦の他、ミュールやアリエン、新規加入のワーウルフ達ともやりあっている。

 ソフティーからの評価も高いので、たまにソフティーともやっているそうだ。

 ストイックとまではいかないが、真面目でコツコツと練習を続けているのだ。

 魔法の練習は苦手の様だったので、寸胴鍋の中のスープを磨り潰す様なイメージで、中の水分を石臼の様に操作しろと言って、やらせている。

 これ、焦げなくなるので、意外に便利な方法だったりする。


 負けた狼人族の男は、狼人族を束ねる隊長だったのだが、部下だった者たちは、全員カレンの前で、跪いている。

 狼人族は、一番強い者に従うのが(おきて)なのだそうだ。


 アリエンは、ミーソジールの収容所に送った、魔族の方に行っている。

 魔族達は、全員捕虜扱いだが、ワシントン条約なんぞ無いので、強制労働中だよ。

 銭湯の掃除、運営、食堂の調理、配膳、街の整備、清掃、修理、警備、etc、プラス鍛錬。

 馬鹿メイド(パーレス)も魔族達と食堂で働いており、毎日限定10食だけ、料理を作らせている。

 結構人気らしくて、罰ゲームの罰に使われているそうだ。


 食堂には、ヒマリアもリシテアもいるので、ウルチメイトも働いている。

 ヒマリアとリシテアは、大人気で、特におば様達に人気があって、常連もいるそうだ。

 ウルチメイトに、神像に祈れと言ったら拒否されたので、祈りたい対象を聞くと、アルティス人形に祈りを捧げていた。

 信者を増やすとか言ってたから、魔王の顔を付けた、抱き枕をベッドに置いてやると言ったら、土下座して謝ってきた。


 ちなみに、魔王の名前は、マケダマレ・ダマラスだ。

 弱っちぃ癖に、傲慢(ごうまん)な名前だな。

 あの円形山脈の外側にいた時、本隊の本陣にいて、本隊への嫌がらせにまんまとかかり、周りに居た側近や使用人を襲おうとしたが、周りの者にボコボコにされて、療養中らしい。

 タマタマ中毒の時、向かってきた側近が、あと2mという所で急に方向を変え、逃げて行くという場面を見せられ、魔族と魔物が入り乱れる中に突撃すると、魔王の周りだけ空間が空くという現象が起きた。

 もう、身も心もボロボロになったのだろう。


 他種族の連中は、()()()と名付けた。

 種族毎に隊長を仮で決め、訓練中のサボりや怠慢を注意する役目だ。

 それでも従わない奴は、ウーリャかフィーネが、対応する。

 近衛騎士団になるべく、訓練をしていた兵士や騎士は、それぞれで分けて、騎士だった者達10名は、女王の警備を担当する、第一騎士団兼近衛騎士団。

 兵士だった者の内、20名は、王都内及び王都周辺の治安を守る、第二騎士団とした。

 兵士の中でも、剣の腕が突出しているスミルは、王都警備隊の隊長に抜擢して、警備隊の指揮を執らせている。

 警備隊には残りの兵士10名を加え、警備隊の訓練には、バリアを指名したよ。

 基本的には、第一騎士団の騎士団長でもいいんだけど、アーリアがいるからね、副団長にしかなれないんだよね。


 コルスは、暗部部隊隊長に任命、ペンタとオロシは、副隊長。

 単なる暗部部隊とすると、つまらない気がした。


 『やっぱり、何か名前を付けた方がいいんじゃないか?モコスタビアの方では、名前があるんだろ?』

 「要りませんよ。恥ずかしいじゃないですか?」

 『宵闇の月とか暗黒天使とか、コートの下は全裸とか。』

 「最後の奴は、なんなのですか?見つかったら、ほぼ確実に斬られる人ですよね?」

 『そうそう、裸だけに着られるってな。』

 「揶揄ってませんか?」

 『バレたか。』

 「アルティスさん!?」

 

 ワラビは、大聖堂の整備と市民の対応、王都内教会のトップになってもらった。

 護衛には、キュプラがついている。

 シーアとスーアは、お堀の警備と思ったんだが、神像を一定間隔に沈めておけば、聖水になるので、王都の地下水脈の調査に行ってもらってる。

 ルースは、こっちに来たら、テストして合格なら、第3騎士団の騎士団長就任の予定だ。


 王都の地下水脈は、川から繋がっている訳では無く、山脈から流れて来る水が、浸透してできているらしく、幾つかの地底湖が存在していて、オーバーフローした水が、あちらこちらから、湧いてきているらしい。

 完全に山に囲まれた盆地である筈のこの平野に、何故水が貯まらないのかというと、勇者が排水用の地下水路を掘って、南にある川に繋げたのだとか。

 基本的には、スライムによる浄化設備があって、そこで不純物をろ過しているので、下水の水は綺麗なのだが、多すぎる水は必要が無いのと、スライムがろ過した水は、不純物が無くなってしまうので、農業用水には向かないのだ。


 王都東側にある、広大な湿地帯は、湧き水が集中している場所の様で、深い所は水深もそれなりに深い。

 今回の整備は、魔王軍のせいで荒れまくったおかげで、腐臭が酷くなってきたのを綺麗にする作業だ。

 もちろん人間にもやらせているが、元魔王軍のこいつらにも、責任の一端はある。

 人間の方は、王都警備隊の訓練として使っている。

 浅い所を歩くだけでも、足腰の強化にはもってこいの場所で、危険なカエルや、(わに)、トカゲ、イモリ等の両生類と爬虫類の宝庫でもある。

 肉の確保と戦闘経験と、鍛錬が同時に行えるとか、最高だよ。

 獲ってきた獲物は、当然食料として王都に流すよ。


 神聖王国との境目には、大河の源流と山脈があって、殆ど通れないのだが、1カ所だけ通れる場所があって、そこの前に聖騎士団が布陣している。

 そこの上流には、小さな湖があり、その湖をせき止めている場が浅瀬となっていて、人が歩けるそうだ。

 山脈も丁度切れ目に当たる場所で、低い尾根の上に検問所が設置してある。


 アルティスがソフティーの背に乗って、見学に行った際には、神聖王国が渡河し始めて居たのだが、アラクネが現れた為、対岸に駐屯地を作って、待機している。

 距離としては、大体2000キロくらいの距離で、アラクネの本気走りで約2時間の距離だ。

 軍隊以外は、入国に際して特に何がある訳でも無い為素通りできるが、ここを通る者など、普段はいないのだ。

 何故なら、神聖王国側が通行を許可していないからだ。

 ただし、貿易は多少なりともある為、商人は通行できるようになっている。


 王都から、国境までは、馬車だと2か月くらいかかるので、最高戦力は連れて行けないのだ。

 第二騎士団の歩くスピードであれば、1カ月短縮は可能だが、折角一日中歩く任務なのだから、ついでにスタミナをつける鍛錬もしてもらおうと思う。


 国境の聖騎士団に対応するのは、第二騎士団で、騎士団長は、アントニー・マーブルチェアという名だ。

 大理石の椅子が家名のこいつは、兵士の中で一番強かったのと、超真面目の堅物だから選んだ奴だ。

 あまり堅物過ぎても困るのだが、ちょろい奴よりはマシだ。

 性格はルースに似てて、鍛錬マニアで、寝ながらでも鍛錬できると豪語して、寝ながら空気椅子をした奇特人物だ。

 面接中、判らない様に、空気椅子をしていたし、身体検査では、指示もしてないのにポーズをとりはじめた。

 審査中には、アーリアと肉体言語で、会話をし始めたのだが、どうやらプロポーズしたらしくて、殺されそうになっていたのを助けてやった。


 『第二騎士団20名は、本日より神聖王国の国境に向かい、神聖騎士団に強さを見せつけてこい。移動方法は、マラソンだ。ちんたら行かれても困るから、20日以内を目標にして行け。』

 「は、20日以内ですか!?」

 『ついでに、道中の魔獣や、通行の妨げになりそうな物を、全て排除しろ。』

 「20日以内に着かなかったら、罰があるんですか?」

 『特には無いが、怠けてるのを見つけたら、復路は一人辺り、小麦の袋4つ背負って戻ってもらおうかな。』

 「よし、神聖王国国境まで、20日で到着目指して行くぞ!」

 「「「・・・。」」」

 「行くぞ!!」

 「「お、おー・・・」」

 『目標達成したら、一人につき金貨10枚やる。』

 「「やるぞー!!おー!!」」


 現金な奴らだ。

 王都に偵察にやってくる、司祭やら神父やらは、近隣の街の教会に潜伏していた神官で、転移陣から色々と物資が送られてくる時に、教皇の言葉と一緒に道具が送られてくるそうだ。

 本物の神官と偽物の神官がいるが、見分けるのは簡単だ。

 踏み絵を使うとはっきり分かるのだが、本物は踏まない様につま先立ちで歩き、偽物は堂々と踏んでいく。

 最後は、神像を素手で持たせると、悪魔は塵と化し、人間なら持てるが、神官が持つと淡く光り、神官以外が持つと神像が黒ずむ。


 起きた現象の検証をしたら、黒ずむ原因は、悪魔信奉者だった。

 普通の人も、アルティスも、無神論者も何も起こらないが、悪魔信奉者が持つと黒くなる為、入国の審査にも使っている。

 悪魔の中には、人間を殺して手の皮を剥いで、被せて来る奴も居る為、袖を捲って調べる。

 最後の最後に、伝染病予防として、丸薬を〈水〉で飲ませるのだ。

 水はもちろん聖水だ。


 飲む場所は、サイレント空間になっていて、声はおろか、音すら聞こえないので、無詠唱ができなければ、魔法が使えない。

 悪魔でも、魔法名を言わなければ発動できないらしい。


 女王陛下が錫杖を使って、全貴族に召集状を送った。

 召集に応じない貴族は、即取り潰しにするとも記載してある。

 当然反発もあるが、あったとしても特に問題は無い。


 あ、アルティスは、女王陛下から宰相に指名されてしまったよ。

 他にできる者が居ないので、仕方ないか・・・。


 やっている事が、独裁者の様に見えるが、そもそも、悪魔が貴族と入れ替わって、行政に関わっていたのだ。

 国として運営をしていくには、誰が王で、誰が部下なのか、はっきりさせなければ、命令など聞く訳がないのだ。

 しかも、今は戦時中で、日夜魔王軍が国内をうろついている。


 円形山脈の外側に集結した、魔王軍は撃退はしたが、まだ終戦には至っていないこの状況で、王の命令を無視する貴族など、百害あって一利無しと言えよう。

 病気療養中もしかり、本人に来いと言ってはいないが、代理人も立てられない様な者ならば、どうやって仕事をしているのか判らないからね。

 会計院の出納(すいとう)も書類を確認したが、貴族の半分が、税金を全く支払っていない。

 過去の記録と比べても、ぱったりと支払わなくなった領が殆どで、当然、暗部にも調べさせているが、クズが4分の1も居た。

 つまり、支払ってない領の半分がクズ領主による圧政状態。


 内政の仕組みとしては、領主になれるのが、子爵以上で、最低5家の貴族がその領にいる。

 下位貴族は、領主が悪政をしいたりすると、苦言を言ったり、倒したりできる様になっているのだが、全部の貴族がクズだと直らないらしい。

 ちなみに、ホリゾンダル領は、現在は代役の男爵が政務を行っている。

 クスノベルティも、男爵に任せる予定になっている。

 代役の男爵は、今日あたり着く予定で、引き継ぎ次第、伯爵が王都に来る予定だ。

 ホリゾンダル領の貴族は、伯爵以外は全員男爵で、子爵は侯爵家に引き抜かれてしまった様だ。


 謁見の間には、またもや馬鹿貴族がやってきて、自分が王だとか言ったので、その場で首を刎ねた。

 着いてきた金魚の糞は、垂れ流しながら怯えるばかりで何もできず、そのまま牢屋に直行した。


 夕方、湿地帯に行っていた連中が帰ってきたが、全員ドロドロのヘトヘトである。

 軽く泥だけ落として、風呂に行かせた。

 湿地帯では、巨大ミミズが大量に湧いており、腐敗した肉をバクバクと食べまくっていたので、掃除については、ミミズに任せて、長年放置されていたカエルと鰐とイモリの駆除を行っていたそうだ。

 湿地帯では、ドワーフが全く役に立たず、ドワーフ達は背が低い為に、水面から首だけが出ている状況で、戦う事ができなかったと。

 浅い所でも、腰まで水に浸かっている為に、動きに制限が付き過ぎて、かなり苦戦した様だ。

 だが、物怖じしないバトルジャンキーなので、ハルバードを使って、戦果を稼いでいたので、特に問題は無さそうだ。


 エルフについては、基本が弓矢で、一部が戦士なのだが、効率よく倒してはいたものの、一頭倒すのに100本近い矢を使用する為に、戦闘後には矢の回収が必要になり、討伐数は少な目だ。

 リザードマンは、湿地帯に強く、戦闘には問題無さそうだが、武器の扱いが下手くそ過ぎて、戦果に繋がらず、討伐数少な目、他も似たり寄ったりだったらしい。

 風呂から上がった連中がゆったりしていたのを、中庭に集め、話をする。


 『今日の戦果は、随分少ないんだが、言い訳はあるか?』

 「ドワーフには戦いにくい場所だな。」

 「エルフとしては、十分な戦果だと思っています。」

 「コボルトは頑張った!」

 『あー・・・、何で種族ごとに分かれて戦ってんだ?』

 「「「「「・・・」」」」」

 『誰か、種族ごとに分かれて戦えって言ったのか?』

 「いえ、言われても言ってもいません。」

 『それぞれに長所と短所がある、そりゃそうだな。背が低いとか不器用とか遠距離がメインだとか、それぞれ違うからな。だが、苦手同士で集まって、何かメリットでもあるのか?』

 「それは、種族ごとで討伐数を競っていましたので、そうなりました。」

 『競っててこんなに少ないのか。どうしようもないな。あと、リザードマンは、剣と盾を持っているが、それは本来使う武器か?』

 「違うな。俺達はいつもは、槍を使う。」

 『じゃぁ、何故剣と盾を持って行ったんだ?』

 「人間の使う槍は弱くて長すぎるんだ。」

 『短槍が無かったのか?』

 「いえ、ありましたよ?鉄製の槍です。」

 『晩飯前に全員素振り100回やれ。使いにくいのなら、違う武器にしろ。コボルトは、剣がいいのか?盾なんて使う必要あったのか?豹人もその剣でいいのか?馬人はそもそも剣なんて使った事無いんだろ?兎人も鳥人も、何でお前らは、得意な武器を持って行かないんだ?』

 『今すぐ武器庫に行って、得意な武器に変えてこい!』


 ドワーフとエルフ以外が、武器の交換に向かった。

 ドワーフは全員がハルバードで、エルフ達は弓と剣だが・・・。


 『エルフの剣持ちは、ロングソードが合って無いんじゃないのか?』

 「我々は、いつもは、サーベルを使っているのだが、ここには置いてないのです。」

 『レイピアではなく、サーベル?』

 「レイピアでは無いです。レイピアは、すぐ折れるので、サーベルに変わったのです。」

 『ウーリャ、サーベルを持て。カレン、レイピアを持て。どちらも普通の鋼鉄だ。模擬戦で、相手の剣を折れ。制限時間は10分。開始!』


 勝負は、3分でカレンの勝ち。

 この結果に、エルフ達は驚愕の表情だ。


 『何故、レイピアが勝ったのか、判る奴は・・・居なさそうだな。レイピアもサーベルも同じ強度だ。だが、レイピアが勝った。何故勝ったかというと、それは技術が勝っているからだ。』

 『お前らエルフは、自分達の力量の無さを、武器のせいにして逃げただけだ。そして、ウーリャ、お前もエルフと同様だ。技術が無い。曲剣は、直剣に比べて、違う技術が必要なんだよ。下手くそが扱えば、簡単に折れる。それと、サーベルで突きは使えない。』

 『それでもサーベルがいいのか?武器庫に入っている武器は、ロングソード以外は、俺が手を加えている。』


 おかげで、寝不足だよ。


 「レイピアに変えてきます。」


 エルフ達は素直に変えに行った様だが、ウーリャが何やら言いたい事がある様だ。


 「アルティス様、私達は、刀の道場で学んでおりました。そこの師範と約束をしたのです。刀を使い、奴を倒して見せると。」

 『奴とは?』

 「サイクロプスです。」

 『へぇー、で?』

 「え?」

 『お前は、刀を扱う為の技術を、何も学んでこなかったんだな。お前の膝は硬すぎて、刀を扱えないんだよ。剣を腕の力だけで振ってるお前には、無理だ。諦めろ。どうしても使いたいのなら、基礎をしっかり練習しろ。教わっただろ?基礎練習。』

 『それと、刀を作るのは錬金術では無理だ。王都の工房主にも聞いてみろ。お前には打たないって言われるぞ?』

 「言われました・・・。」

 『じゃぁ無理だな。』

 「フィーネも無理ですか?」

 『そうだな、中途半端だな。もっと真剣に練習しろ。』

 「はーい」

 『ミュール、中庭に来てくれ。』

 『はーい』


 豹人はやはり、拳闘士揃いだった。

 一応剣も使えるのだが、素早い動きで、ナイフやショートソードで一突きにする戦法の為、ロングソードでは活躍できないのだ。


 『ミュール、豹人共に拳闘士の練習を教えてやれ。』

 「りょーかい!」


 ミュールが来たので、豹人達が驚いている。

 なにせ、元魔王軍四天王だからな。

 ここで、暗部から緊急連絡が届いた。


 『緊急連絡!』

 『どうした?』

 『魔王軍四天王のダフネスが単独で、王都へ向かっています!』

 『途中の街は?』

 『素通りしています。王都のみが標的の様です。』

 『判った、コルスー、ダフネスの監視よろしくー』

 『了解』

 「それだけですか?」


 カレンが聞いてきた。


 『それだけだよ?負けそう?』

 「さぁ?」

 「殺すんですか?」


 今度はウーリャが聞いてきた。


 『それ以外に何かある?』

 「仲間に引き入れるとか。」

 『敵なのに?』

 「ミュールさんがいるから。」

 『ミュールは、衰弱して死にそうだったのを助けたんだよ。態々戦いに来た奴を仲間にしようなんて、面倒くさいからやらないよ。向こうが頭を下げてきたら考えてやる程度だな。』

 「頭を下げるって、どのくらい?」


 最後のは、フィーネだな。


 『土下座だよ、五体投地でもいいけど。』


 どんな奴なのか知らんけど、敵なら容赦しないよ。


 『コルスー』

 『はい、まだ来ませんよ?明後日辺りです。』

 『明後日かぁ、タイミング悪いなぁ、門壊されても困るから、門前で迎え撃つよ。』

 『隣の町に着く頃に、連絡します。』

 『よろしくー』


 ふと、頼んでいた事を思い出したので聞いてみた。


 『あぁ、そういえば、孤児とかどんな感じだった?』

 『結構いますね。殆どがスラム街に住んでいます。窃盗でその日のご飯を買う金を稼いでいる様です。』

 『孤児院は?』

 『ありますが、満員ですね。』

 『何軒あるんだ?』

 『12軒ありまして、総勢400人くらいです。』

 『そんなにたくさんいるのか。スラムの子も含めて?』

 『スラムの子を含めると1200人くらいになります。』

 『多すぎるな。人身売買の形跡は?』

 『あります。盗賊ギルドが関与している可能性が高いです。』

 『潰せる?』

 『ちょっと厳しいかと。構成員2万名程いますので。』

 『そうか、じゃぁ、真っ当路線でいくか。』

 『それがいいと思います。』

 『魔薬の流通は?』

 『現在は止まっていますので、中毒患者の死亡率がそろそろ上がりそうです。』

 『集められる?』

 『バリアさんとか、余裕のある人たちに助けてもらえば、できますね。』

 『適当な空き家に集めて、治すぞ。』

 『必要ありますか?』

 『直した後でどうするかは、本人次第だ。』

 『薬が勿体ないですよ?』

 『一滴で十分だから、余裕あるよ。』

 『了解です。』

 『第一使え』

 『いいんですか?』

 『全員じゃないぞ?』

 『あぁ、はい。了解です。』


 魔薬中毒の患者と、戦災孤児がいる事は、判っていた。

 なんせ、ギレバアンとカレースパンで大々的に輸送してるんだもんな。

 魔薬は、一回使うと中毒になって、激しく欲しくなる。

 効果は使えば使う程どんどん短くなっていき、最終的に廃人になって死ぬ。

 普通の薬では治す事は叶わず、万能薬なら一滴で効くのだが、中毒中にやった事全てを覚えたままなので、精神的に苦しむ事になるだろう。

 中には、自殺する者もいるかもしれないが、止める気は無い。

 回復したら、生き残った奴らは仕事をやらせる予定だ。


 『アルティスさん、適当な場所ですが、伯爵邸は使えませんか?』

 『駄目だな。持ち主が生きている以上、使えない。とは言っても、他に無いのか?』

 『あるにはあるのですが、ボロッボロです。』


 馬鹿貴族が使っていた邸宅は、真面(まとも)な物が全くない様だ。


 『逃がしたメイドが居れば・・・。』

 『居ますよ?、全員王都から出ていませんでしたので。』

 『復帰する気あるのか?』

 『そう言ってました。』

 『じゃぁ呼んでくれ。』


 伯爵邸を使うには、女王陛下の許可が必要だな。


 『女王陛下、別邸を孤児院にしたいのですが。』

 『どうぞ、お使いください。』

 『ありがとうございます。』

 『許可貰ったぞ、使ってくれ。』

 『了解です。』


 サクッと終らせられる事は、さっさとやる。

 特に子供と病人は、重要だ。

 大人が病気で働けないのは、ただの損失でしかない。

 子供が、犯罪に手を染めなければ、生きていけないのも損失だ。

 犯罪予備軍になるし、子供には将来がある。

 子供は、育成すればなんにでもなれるので、逃す手は無い。

 早速、魔薬患者の治療を開始した。

 集める方法は、伯爵邸に行けば、魔薬があるという噂を流すだけだ。


 『アルティスさん続々と来ていますので、早く来てください。』

 『判った。』

 『カレン、連れて行ってくれ。』

 『みんなは訓練が終わったら晩飯食っていいぞ。』

 「了解です!」


 城から、伯爵別邸までは、歩いて5分なので、さっさと行く。

 伯爵邸には、次々と人が集まってきている。


 「どうやって集めているんですか?」

 『中毒患者は簡単だろう、魔薬がここにあると言えばいいんだから。』

 「そっか。」

 『カレン、この液を一滴ずつアイツらの口の中に入れて行け。』

 「はい、それでは、口を開けて上に向けて下さい。目はつぶってないと入れませんよー」


 鳥の巣のヒナの如く、口を開けて上を向く人々の口に、次々と入れて行く。

 正気に戻ると、殆どの人が頭を抱えて悶絶し始める。

 今までに、やってしまった事を後悔しているか、夢の世界から、元の世界に戻ってしまった事を後悔するか、分かれる所か。


 入り口にいるメイドにも渡して、入って来る連中に飲ませる。

 一体何人いるのやら。

 メイドが持っているスポイトを奪おうとする馬鹿もいるが、騎士が取り押さえて一滴だけ飲ませる。

 王都の別邸が広いと言っても、人数が多すぎて、建物内に入りきれず、庭にまで溢れてきた。

 メイドの一部は、厨房でお粥を作って配っている。

 中には、配っているのが、魔薬では無いと気付いて、帰ろうとする者もいるが、騎士達が取り押さえて逃がさない。

 何故、魔薬患者が判るのかといえば、騎士達はゴーグルを標準装備しているからだ。

 ゴーグルと言っても、スノボの時に使う様な物ではなくて、兜に仕込んで下に降ろすと、ゴーグルが使える様になっている。

 そっちの方が、かっこいいからね。


 直した連中には、仕事が無ければ斡旋する旨を説明して、帰れる者は帰す。

 帰る家が無い者は、一旦泊めてやる。

 調度品の類は無いものの、壁に付いている魔道ランプは、売れば金になるので、外して持ち帰ろうとする輩もいるが、そう簡単に外れる物ではない為、すぐに見つかって捕まるのだ。

 犯罪チックな連中は、地下牢へ入れて、そうでない者は部屋で雑魚寝だ。

 夜は、リザやワラビ、アリエン、バリア、シーアやスーアも動員して、対応するが、まだまだ終らない。

 騎士団からの応援も寄越して、交代していくが、今夜は長い夜になりそうだ。


 朝になっても終らなかった。

 午前中には、貴族もやってきて、護衛が剣を抜くと同時に、護衛の首に刃が当てられ、武器を捨てさせる。

 貴族は、締め上げてから口に入れてやる。

 メイドや代理の者が来ても、追い返すだけだ。

 本人以外は受け付けない。


 盗賊ギルドの連中がやってきた。


 「おぅおぅ、おめぇら!俺達の稼ぎの邪魔ぁしやがって!ぶっこごへっ!」

 『牢にぶち込んでおけ。盗賊ギルドの本部にガサ入れしろ。抵抗する奴は殺して構わん。』

 『路上で魔薬売ってる馬鹿も捕縛だ。盗賊ギルドの抵抗する奴は全員殺せ。城に侵入した奴も殺していい。徹底しろ。』


 暴論に聞こえるが、こちらは人手不足、相手は万単位では、いちいち捕縛なんてしていられないのだ。

 そして、今まで何をしても捕縛も何もされずに、放置されてきた為、調子に乗っているのである。

 まともに対応する方が無理だと言えよう。

 犯罪者に忖度(そんたく)するなど、気が狂ってるとしか言いようがないね。


 『盗賊ギルドのギルド長が城に来たようですが、どうしますか?』

 『捕縛しろ。牢にぶち込んでおけ』

 『戦争するって脅して来てますが?』

 『ソフティーかキュプラに会わせてやれ。』


 アラクネは、ずっと恐怖の象徴だったので、どんなに威張りくさった連中でも、目の前に現れれば、蛇に睨まれたカエル状態だ。

 アラクネの威を使って制圧するのは、アラクネに対して酷い事と思われるかも知れないが、彼女らは怖がられる事に何の思いも無いし、感情も動かない。

 最近は、子供達とも触れ合っているので、子供に怯えられるとちょっとストレスになる様だが、大人に対しては今まで通りの様だ。


 『捕縛しました。』

 『ガサ入れして、魔薬を押収しました。たっぷり稼いでいた様です。』

 『全部押収しろ。何もかも。椅子一つ残すな。隠し扉も地下室も全て開けて、隠してある物も全部押収しろ。』

 

 盗賊ギルドの構成員が大挙してやってきても、警告後に全員切り伏せる。

 少人数なら捕縛するが、大勢の場合は斬り捨てる事にしたのだが、理由としては、少人数で来る奴は、それなりの実力者の場合が多く、たまに勘違い野郎が混じる程度なのだが、大勢で来る場合は、少人数で来る勇気が無い、市民に毛が生えた程度の連中なので、警告(指示役を殺害)しても逃げない場合は、斬り捨てるのだ。

 群集心理で気が大きくなっているだけかも知れないが、市民が脅されて来ていた場合は、指示役を殺せば、とっとと逃げてくれるのだ。

 そして、大人数で行けば、捕まるだけで死なないと思われれば、何度でも大勢で来る様になり、その度にこちらも人数を揃えるので、業務に支障を来すのだ。


 知らない人が見れば、ただの虐殺にしか見えないが、肝心なのは、守るのは犯罪者ではなく、一般市民だという事。

 事情も知らずに文句だけ言う奴が、善良かどうかなんて誰も知らないんだからな。

 気に入らないのなら、盗賊ギルドを辞めろっての。

 PTSDになる人が居るかどうか?そんな(やわ)な奴は、この世界では生きていけないよ。

 街の外に出れば、野盗もいるし、命を狙う小動物や鳥、虫だっているし、戦う術が無ければ、街の外では生きていけない世界なんだよ。

 市井(いちい)の道徳でも、盗賊や野盗は殺してもいいって習うんだよ。


 ここは、ゼリスにも頑張ってもらうか。

 クリーンかけても、血は消えるが、肉は残るので、ゼリスの餌にする。

 スライムに食わせるのは、犯罪者には容赦はしないという意思表示だ。

 

 弓矢で狙ってくる奴も居る為、暗部が一人一人潰していき、盗賊ギルドが大人しくなる頃に、患者もやっと来なくなった。

 万能薬は、40リットル消費したが、残りはまだまだたっぷりあるので、問題無い。


 仕事の斡旋については、城で兵士を募集していると話すと、やりたいと言う奴が結構居るので、そういうのをどんどん城に連れて行き、騎士団長が面接して、兵舎に送り込む。

 訓練は、騎士団と同じメニューだから、分ける必要が無く、逃げる奴は容赦なく追いかけて連れ戻す。

 追いかけるのも訓練の内で、何度か繰り返せば、隠れる場所やルートなども判ってくるため、勉強としてやらせるのだ。


 騎士も兵士も警備隊も、最初の試験は同じなので、新兵の訓練は全員同じメニューだよ。

 配属は、本人の希望と適正を見て決めるだけ。

 短気だったり、法を覚えられない奴を警備隊になんて、できないからね。


 『じゃぁ、バリアが教官ね。頼んだよ。第一騎士団からも2名、バリアの補佐に付け。』

 『はぁ』

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