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第26話 王都の魔王軍と王位の継承

 王都からの応援部隊は、組織だって動いている訳では無いらしく、バラバラに来るので、無力化した後で捕らえた。

 エルフは協力的で、魔王軍に入ってから着けられた魔道具を、ホイホイ外して出してくれたが、魔族はブスッとしたまま動かない。

 王都に駐屯していた魔族は、比較的忠誠の高い連中なのかもしれない。


 『エルフは、ここで飯を配るから、腹ごしらえをするといい。』

 「ありがとうございます。でも、我々は、あまり人間の食べ物は好きではないので、遠慮むぐっ!」


 エルフの言い草にイラッとした、カレンが無理やり口に、ピタパンを突っ込んだ。


 「何だこれ!?凄く美味いぞ!」

 ムシャムシャ


 カレンがどや顔をした。

 大皿に乗ったピタパンをエルフ達が次々に取って食べていく。

 残り1個になったら、口論が始まった。


 「これは私が食べる!」

 「いいや!私だ!」

 「早くそれ食べちゃいなよ、次が出せないでしょ?」


 カレンの一言で、口論は終り、次のピタパンを食べ始めた。


 エルフ達が口論になる程の取り合いになるのには、理由があった。

 王都では、今は殆ど食料が残っておらず、兵達が飢えているそうだ。

 王都の主食は、パンではなく米の為、調理の仕方が判らず、大量にあっても食べられないのだそうだ。

 そして、1週間ほど前から、配給も滞っており、王都に行けば食料があると言われて来たものの、有るには有るが、知らない食べ物なので、結局食べられず、飢えているという事だ。


 『円形山脈の外のエルフは、殆ど居なくなったぞ。』

 「何!?、そういえば、昨日突然、連絡も繋がりも途絶えたのは、貴方達がやったのか?」

 『そうだよ、本隊にオークの金玉ばら撒いてあげたんだよ。』

 「ブワッハッハッハッハッハ」

 「アッハッハッハッハッハッハ」


 エルフ達は大爆笑である。

 魔族達は、怒りに震えている様子だが、魔道具を全部外すと大人しくなった。


 外した魔道具の中身を調べてみると、洗脳ではなく、忠誠心を植え付ける為の物の様だった。

 やけにがっちりと、装備に付いていると思ってはいたが、外れると忠誠が低すぎて、役に立たないのだろう。


 山脈の外の暗部から連絡が来た。

 魔王軍が暴れる魔物たちに、魔道具を付けると、大人しくなっていくので、収束しつつあるとの報告だ。

 魔道具は針状の物で、体に刺していってるそうだが、痛がる者もいる様だ。


 翼人達は、円形山脈の外側にいて、状態異常の爆弾を多数持って、待機している。

 次は何を使うのかと、ワクワクしながら待っているそうだ。


 「早く次の指令、来ないかなぁ?」

 「あんなに笑ったのは、久しぶりよね。」

 「我々3人だけで、10万近い魔王軍を蹂躙しているのが、信じられないよな。」

 「3人だけとは言っても、最初の攻撃?は、アルティス様の計略だけどな。」

 「でも、兵として動いているのが、私達3人だけなのって、凄い事よね。」


 指示を実行する度に、魔王軍の数がどんどん減っていく様をみて、楽しくなっているようだった。


 この円形山脈は、高すぎて、風が山を越えられず、強烈なダウンバーストを引き起こす為、夜間は空を飛ぶのではなく、山脈に張り付いた状態で、迫撃砲の様に爆弾を打ち出すのが効果的だ。

 火薬を使っている訳では無いので、マズルフラッシュなど発生しないので、夜間攻撃には持ってこいの兵器である。


 『ルギー、アルティスだ。報告は受け取ったよ。次の攻撃は、バーサクとタマタマを広範囲にばら撒いてくれ。』

 『了解!』

 「よし、バルカン砲でバーサクを俺とテビアが撃つから、クリンはタマタマ弾を広範囲にばら撒くように撃ってくれ。」


 連射用にマガジンを使って、バーサクとタマタマの粉末を広範囲にばら撒いてもらうと、再び阿鼻叫喚の地獄絵図が広がり、粉末は風に乗って、再度本隊を襲ったらしく、大混乱に陥っているそうだ。

 一度逃げた人族達も、少しずつ戻されていたのだが、再び束縛が外れた為、装備を脱ぎ捨てて逃げ始めた様だ。


 この装備を脱ぎ捨てる行為については、暗部から人族に接触を図り、装備に洗脳の魔道具が付いている事を伝えたのだ。

 これにより、人族の殆どは、洗脳から逃れ、暗部から教えられたルートを通り、円形山脈の中へと続々と集結し始めていた。

 山脈から内側へ通じる南側の洞窟の中には、フード付きマントを配る暗部がいて、エルフに配布して行く。


 アルティス達は、ミーソジールを前哨基地として利用し、王都の中に進軍する為の方法を模索していた。


 『もう、堂々と入って行けばいいんじゃないの?』

 「しかし、それでは、集中砲火を浴びてしまう危険性があってだな・・・」

 『当たっても刺さらないんだから、関係無いじゃん?』

 「ううむ、そうなんだが、何か引っ掛かるというかだな。」

 『じゃぁ、馬車1台に料理乗せて走り抜けよう。』


 夜暗くなってから、エルフがちらほらと、壁の外に出てきて、投降するという事が起きているのだ。

 理由は、空腹に耐えかねてらしい。

 もちろん、投降してきた連中から、魔道具は全て取り除いている。

 そして、中にいる戦友に念話で、投降を呼びかけてもらうのだ。


 エルフ達は、そのまま街を歩かせると危ないので、フード付きのマントを着けてもらい、公爵邸の敷地内に作った、収容所へと連れて行かれる。

 魔族も同様にエルフとは別の収容所に連れて行ってある。


 食料は、公爵家の倉庫の中に、米が大量にあったので、それを全てアルティスの[ディメンションホール]に入れた。

 食事は、メイドとカレンとリズ、ヒマリアが順番に用意し続け、投降してきたエルフ達に振舞っていた。


 翌朝、エルフの投降人数は、500人になっていた。

 この頃から、続々と人族が集まり出した。

 今は冬季なので、田んぼには水は無く、麦が植えられている為、荒らされるのは困るが、荒らさない様にすれば、畑に人が居ても問題無い。


 暗部からの朝の定時報告によると、魔王軍は大幅に数を減らし、たむろしていた場所は、今や死屍累々の状態で、生きてる魔獣はちらほらいるものの、既に、軍としての体裁を保つには至らない程に、減っているという。

 寝ていた翼人達も、目の前の光景をみて、喝采をあげたらしい。

 ただ、一部の生き残りが、大量の経験値を得たのか、進化して上位種になっているとの報告もあり、念の為、監視を続けると言っていた。

 翼人達も、暗部達も、マントを持っているので、強風が吹きすさぶ山の斜面にいても、快適に過ごせている様だ。


 前哨基地にたどり着いた人族達には、朝食を配り、ミーソジールの住民が羨ましそうに見ていたので、住民への配給も同時に行った。

 街の中心にある公爵邸の敷地の一部に、銭湯を作って、隣に食堂を建てた。

 建物は、土魔法で豆腐建築だが、色を塗ってしまえば、判らないのだ。


 食堂には、あっという間に行列ができた。

 野菜を持ってくれば、半額で食べられる様にすると、みんな持ってくるので、野菜スープとオーク肉の料理、ご飯やお粥等を効率よく作れるようになった。

 同時に、食堂には、神像が置かれ、悪魔の排除も行われた。


 一方、王都に進軍する方法については、神像を馬車の上に乗せ、ソフティーとキュプラの糸で作った、透明な箱に入れて、進む事となった。

 アーリアが懸念していたのは、悪魔の存在で、本拠地である王城には、必ず悪魔がいるだろうと推測された為、何の対処も無く行くのは、危険だと思ったそうだ。


 『コルスー』

 『嫌です。』

 『何が?』

 『王城の中に潜入しろって言うんですよね?』

 『何で嫌なの?』

 『危険だからです。』

 『何が危険なの?』

 『悪魔がウヨウヨ居るからです。』

 『魔力鉱石で作った神像を持って、ワラビを連れて行っても嫌?』

 『う、それなら、行けるかもしれませんね・・・』

 『ヘルメットの上に設置するから、ちょっとこっちに来て。』

 『はい』


 コルスが来た。


 『はい、この布を腋に挟んで。』

 「何ですか?これ。」

 『これを城の中に落とせば、安全地帯を作れるからさ。』

 「・・・嫌ですよ。」

 『じゃぁ、コルス用に作ったゴーグルを渡すのやめる。』

 「!?」


 「え?、ちょ、ホントにあるんですか!?」

 『これだ・・・コルス、呪われてるな・・・コリュスに。』

 「は!?、何で?」

 『腋の下が臭いのはそのせいか。執事さーん』

 『はい、承知いたしました。すぐに対処致します。』

 『どうりで消えない訳だよ。全く、コリュスの野郎め、今度会ったら擽り一時間の刑だな。』

 「それで、ヘルメットを被ってたんですか。」

 『そうだよ、この部屋にいる筈のカレンやリズが居ないだろ?そのせいだよ。』

 「コリュスの奴め・・・仕返しをしてやる!!」

 『呪い消えたけど、呪いって解除すると、かけた奴に返って来るんじゃなかったっけ?』

 「術者が解除した場合は、大丈夫ですよ。」

 『そうなのか。じゃぁ、口がうんこ臭くなる呪いでもかけてやれば?』

 「そうします。」

 『それで、行ってくれるの?』

 「ゴーグルを貰えるのなら行きます。」

 『そんなに欲しかったのか。』

 「そりゃ欲しいですよ!、鑑定が使える様になるんですよ!?」

 『まぁ、簡易版だけどな。』

 「簡易版でも、使える事には変わりないですから!」


 『そうか、相手が何者か判ればいいって事だな?』

 「はい、そうです。」

 『じゃぁ、ゴーグルの説明な。まず、暗視ゴーグルな。これは、温度が人肌以上の熱を感知する。あと、昼間見ると暗くなるけど、夜なら色は判らないけど、概ね見える様になる。』

 「必要ですか?これ」

 『例えば、魔力感知に反応があって、人か動物か判らない場合は、見れば形で判るよ。』

 「ほう、そうですか。」

 『コルスはアミュレットで魔力感知が使えるから、付けてない。代りに背後を見れるようにした。』

 「それは、首を動かさずに見えるって事ですか?」

 『そうだよ。』

 「ふむふむ。」


 『後は、望遠機能だな。200倍に拡大できるから、王城の尖塔の上から、城壁の上のコインがよく見えるくらいだな。』

 「必要ですか?」

 『そうだな、何の書類を読んでるのか見れば、内容が読めるくらいだな。』

 「・・・凄すぎませんか?」

 『凄いだろ?次は、照準機能だな。魔道砲を構えると、命中する場所に十字マークが出る。』

 「命中率が上がるって事ですか。それ、魔道砲持ってる人全員に持たせた方がいいのでは?」

 『ミュールは勘で100発100中だし、翼人のは狙う必要無いし、スナイパーはスコープ付いてるし、必要なのはコルスくらいじゃない?』

 「・・・そうですか。」


 『よし、ヘルメットに神像付けたから、ワラビを持って行ってきて。』

 「はい。行ってきます。」

 『気を付けて行ってらっしゃい。』


 ワラビが物扱いだが、運動能力に欠けるので、王城の中に入るまでは、コルスが小脇に抱えて走るのだ。


 「何かコルスの臭い消えてませんか?」

 『何か、あいつの腋の下に、コリュスの呪いがかかってたんだよ。』

 「あぁ、それ、何かコリュスが空腹の時に、目の前でムシャムシャ食べてたとかで、かけてましたね。」

 『止めてやれよ!?』


 コルスが王城に向かってから数時間後、報告があった。


 『何なんですかこれ?、寄って来る悪魔が、見える所から塵になって行くんですが、切断面を見せつけられて、気持ち悪いですよ?』

 『そういうものなんだろうな。諦めろ。』

 『ワラビ、どんな感じ?』

 『凄く気持ちがいいです。杖を掲げると、周りの悪魔が一瞬で塵に変わるんですよ!?』


 ワラビの持つ杖には、以前はゴーレムの魔石が付いていたのだが、現在は神聖教の主神である、アマーティスの神像を魔力鉱石で作り、その周りをアラクネ絹の原料を使って、透明な玉に仕上げた物を固定してあり、魔力を通す事で神像が光る様になっていた。

 その為に、ワラビが杖を上に掲げる度に、近くに居た悪魔達が砕け散り、悪魔はワラビに近づく事ができないでいる。


 エカテリーヌ夫人を乗せた馬車は、ワラビとコルスが王城内で無双しているのを知って、王城に向けて出発する事が決まった。

 数人の騎士を残して、王都へ出発したものの、ミーソジールの街中では、混乱が起きていた。


 「お前達だけで、エルフを囲い込むなんて、ずるいぞ!」

 「そうだそうだ!」

 「俺達にも貸せ!」

 『あの、住民がエルフを寄越せと煩いのですが、いかが致しましょうか。』

 『剣を抜け、脅しても引き下がらない様なら、殺しても構わん。』

 『了解しました。善処します。』

 「エルフは貴様らのおもちゃじゃない!、引かぬなら叩き切るぞ!」


 騎士たちは、剣を抜き、威圧した。


 『暗部のゴーグル部隊は、ミーソジールの扇動者に、悪魔が混ざってないか確認しろ。』

 『了解』


 騒動は、暗部が扇動者が悪魔であることを突き止め、携帯していた神像を掲げる事で、悪魔が砕け散り、終結した。

 入り口を守る騎士たちは、神像を表に出す事で、悪魔を退け、門を死守する。


 公爵邸の中は、結界を張ったので、安全なのだが、外はまだ張ってない為、集結した人族達には、外に出るなと言いつけてある。


 王都に向かった本隊は、魔族の襲撃を何度か受けたが、意に介さずそのまま進み続けた。

 王都の門は、開放されていた為、すんなり通り抜け、散発的に矢が飛んでくるものの、焼き豚のいい匂いを漂わせながら進んで行くので、王都内に駐屯していた魔王軍が、どんどん集まってきていた。


 王城の中に入ると、彼らは立ち止まり、門が開いてても入ってこようとしない。

 一方、ワラビとコルスは、王城内の中心部にあるエントランスの中央に立ち、アルティスからの連絡を待っていた。


 『ワラビ、浄化して。』

 『畏まりました。[セイクリッドキャッスル]!』

 ガッシャーンバリバリバリザザー


 ワラビの神聖魔法発動により、王城の窓や出入口から、強烈な光が発せられ、王城の壁にヒビが入ると、王城にかけられていた何かの魔法が砕け散り、それまでくすんだ色に見えていた王城が、白さを取り戻した。

 ワラビは、杖の補助を受けながらも、MP20000を消費する、大魔法を発動したが、ワラビの総MPの3分の1を消費する程の魔法は、体に大きな負担を強いる物だ。

 急激な疲労感により、ワラビはその場に蹲ってしまったが、アルティスからもらったアミュレットを装着すると、幾らか気分が良くなり、立ち直る事ができた。


 『悪魔が全部砕け散りました。ワラビさんの魔法を使ったんですね。』

 『そのまま、謁見の間に行ってくれ。』

 『了解です。』


 コルスとワラビが、謁見の間に入ると、そこには、苦しむ悪魔がいた。


 『玉座に悪魔がいますが、苦しんでいます。』

 『みんなが到着するまで眺めてなよ。あ、神像持ってるしお昼ご飯でも食べてたら?床に置けば結界張れるよ?』

 『そうします。』

 

 コルスが、ポーチからシートを取り出し、ワラビがピタパンとスープを取り出して食べ始めると、すごい勢いで突っ込んできて、ガラスに張り付く様に、結界の外で止まった。


 『貴様等!?我が苦しんでるというのに、呑気に飯など食い始めるな!』

 『お腹が空いてしまったもので。』

 「私のポーチには、スープもありますよ?あ、このピタパンの具は、スケープゴートのお肉みたいです。美味しいです。」


 ワラビは完全にスルー、コルスは一応相手をしてはいるものの、ワラビの向かい側に座り、スープに入った水餃子を口に入れ、ハフハフしている。


 『我に寄越せ!』

 『中に入れたらいいですよ?』

 『ぐぎぎぎぎぎ』

 モグモグ

 『それをこっちに投げろ!』

 『駄目ですよ。食べ物ですから。粗末に扱うと怒られるんですよ。』

 ズズズズ

 『はぁー、美味しい。』

 『汚いので、涎を流さないで頂けますか?』

 『うるさい!我は腹が減っているのだ!』


 結界が張れるとは言っても、実際に結界の壁がある訳では無く、神聖魔法のドームが展開されているだけの為、悪魔の流した涎がポタポタと範囲内に落ちてくる。


 『悪魔なのに、食べ物を欲しがるんですか?、悪魔の食事は、恐怖とか苦しみではないのですか?』

 『それも食べるが、お前の食う物を奪いたいのだ!』

 『奪うだけですか?、食べないのなら渡せませんね。』

 『うるさい!つべこべ言わずこっちに寄越せ!』

 『うるさいのは、貴方ですよ。落ち着いて食べれないじゃないですか。静かにしてください。』


 床にカラフルなレジャーシートを敷き、ワラビと向かい合わせに正座して、ピタパンの具の話で盛り上がる二人を、球体のガラスに顔を押し付ける様な姿で睨みつける悪魔。

 傍から見てると、滑稽である。


 謁見の間に入ってきた一行は、片隅で攻防を繰り広げる、コルスと悪魔を横目に、玉座に向かう。

 エカテリーヌ夫人が玉座の前で跪くと、上から光が降りてきて、光がおさまると同時に、錫杖(しゃくじょう)が床からせり上がって、出て来た。

 夫人がそれを掴み、床にトンと軽く錫杖を突くと、シャンと音が鳴り、コルス達の前にいた悪魔が、爆散した。


 「我、エキスマキナが子孫、エカテリーヌ・ホリゾンダルが命ずる。国内全ての悪魔を排除し、精神異常を解除せよ!。」


 ブワッと衝撃波が生じ、壁を通り抜けて全土へ広がっていく。


 「我、錫杖に認められた。ここに宣言する!。我は、エカテリーヌ・ホリゾンダル、女王なり!」


 王城の壁や天井から、金色の花弁が舞い降り、床に落ちては消えてゆく。


 アルティスは、女王陛下に目配せをして、暗部達に指令を送る。


 『結界準備!』


 かつて、勇者がこの国の首都をこの地に決めた時、王城のてっぺんには、光り輝く像が置かれ、円形山脈のから伸びる光の筋が、王城の像に集まり、結界を形成していたという。

 アルティスは、その結界には弱点がある事に気が付いた為、弱点を克服するべく、盆地内の全ての街に結界を張り、街の中央に、エネルギー源である、魔力鉱石を置くことで、結界の維持及び、盆地内を覆う結界の補強として使う事にした。

 盆地の結界は、王城の頂点にある神像を六芒星で包み、神像が結界の内側に入り、且つ、神像自体も結界にて守られる形にした。

 そして


 「我が力の一片を見せよう。王国、円形山脈に鉄壁の守りを!」

 『張れ!』


 アルティスの号令と共に、各町に結界が張られ、その結界の中心から空に伸びる光が、円形山脈から伸びる、光を補強し、共に王城に向かっていく。

 王城のてっぺんには、迸る光と黄金の輝きを持つ球が現れ、空に向かって光の筋を伸ばし、空に集まる光と六芒星にぶつかると、結界の膜が広がり、円形山脈の内側全体を覆った。

 結界が完成すると、キラリと一瞬だけ光り、消えて見えなくなった。


 アルティスが見抜いた弱点とは、円形山脈の内側には、王都以外に20の街が存在し、八角形を形成している。

 初代勇者は、正八角形で結界を施そうと考えた様だが、街の位置が微妙にズレていて、正八角形にはならないのだ。

 それに気づいたのは、盆地内全ての街に暗部がいる時に、魔力感知で盆地内の暗部の位置を確認した際に、微妙に歪な形の八角形を見たのだ。

 パッと見では気付かない程の微妙さではあったが、結界を張る上では、重要な要素だ。

 3から12まで、正多角形で形成できる結界は、この10種類しか無く、巨大すぎる結界は脆く、支柱の位置を特定するのも、困難を極める。

 三角と四角と円がもっとも単純な結界の形であり、直径が2m以内であれば、円形で事足りるが、大きくなれば成程、支柱となる角が必要になり、その過去最大数が12角形となる訳だ。


 柱の強度を上げれば、理論上は国全体を覆う程の結界を張る事が可能になるが、実際はほぼ不可能だ。

 この盆地の中に正八角形の結界を張ろうとして、失敗しているのだから、その難しさが判るというもの。

 多角形の結界を張る場合、一枚の結界のサイズは全て統一され、柱の位置がズレると、結界に隙間ができて失敗するのだ。


 今回、アルティスが採用したのは、六芒星の結界で、六芒星の中に六芒星を作る事で、内側の結界強度は、通常の六芒星の結界の二倍の強度となって発動させてあるのだ。

 そもそも、当初から六芒星の結界を張る構想があったのか、各交差地点には、鐘楼用の尖塔が建っており、基点の設置には苦労していない。

 4つほど結界の外にある街があるが、山脈に神像を埋め込む事で、後日結界の中に組み込む予定ではある。

 それまでは、街ごとの結界で我慢してもらえばいいのだ。

 今までの王達が、結界の維持をして来なかった理由は、魔族の計略による所が大きいとは思うが、尖塔の上に残っていたのが、ワイバーンかゴーレムの魔石であり、現代の人間では、用意する事が難しかったのと、長く続く休戦状態に、気が緩み、結界の重要性を感じなくなったのが原因だと思う。


 結界の中には、清浄な空気が満ちて、弱い悪魔は塵となり、人間のフリをしていた悪魔は、術が解け本性を晒し、次々と塵となって消えてゆく。

 度々現れていたアンデッドもいなくなり、徐々に悪魔の居ない地へと変って行く。


 「アルティス様、お見事です。」


 話しかけてきたのは、ワラビだ。


 「アルティス様の信仰心のおかげで、立派な結界と、神の威光を知らしめる国が、できましたね。」

 『ん?神なんて信じてないよ?』

 「は!?」


 驚愕した顔のワラビは、アルティスに聞く。


 「で、でも、神像をお作りになられて、こうして、結界を作り上げているではありませんか!?」

 『この結界は、魔力鉱石によるもので、神像にしたのは、神聖領域を利用できるから作ったんだよ。神は存在してるんだろうけど、信仰する必要は無いよね。信じなければ助けてくれない訳では無い様だし、神像が起こしている結果は、そういう法則が成しえている事象の結果だと思ってるよ。俺が信じているのは、仲間とあるじ、それだけで十分だよ。使えるものは何でも使う。それが神であろうと、道具であろうと、使えるなら使うだけだよ。』


 ガックリと床に両手をついて項垂れてしまった。

 アルティスの作る神像は、どれも精巧で神の表情も生き生きとしており、ずっと神への強い信仰の表れだと、信じていたのだ。


 ワラビは独り言ちる。


 「アルティス様は、神の使徒だと思われますが、本人は、全く神を信じていない・・・。一体どういうことなのか、理解ができません。」


 晴て、女王となったエカテリーヌがアルティスに問いかけた。


 「アルティス様、この国の宰相となられる意思は、ございますか?」

 『謹んで、お断りさせて頂きます。』

 「そうですか。では、宰相にふさわしいと思われる人物に、心当たりはございますか?」

 『できそうなのは、執事さんかギルマス、コーシュ、トーマス・ジョーキン、あと伯爵かな。』

 「夫が入って来るのですか?」

 『貴方がそれを信じないで、どうすんの?』

 「・・・。」

 『宰相になれる器ってのは、頭がいいだけじゃ務まらないんだよ。王を支える事ができる指南役であり、辣腕(らつわん)振るう政治力と観察眼が必要だね。伯爵に足りないのは、辣腕の部分だけで、計算早いし、観察眼もあるし、貴方を支える夫でもある。いい人材だと、思うけどね。』

 「傍から見ると、そう見えるのね。でも、あの人は、優しすぎるのよ。」

 『確かに、権力を傘に着るタイプでは無いけど、決断力はあるし、先見の明もある。優しいのは、貴方に気を使っているだけだと思うなぁ。』


 「そうですか。他の方々はどうですか?」

 『ギルマスは、ここの地下牢に囚われているんじゃないかな?。王都陥落までの時間を稼いだ功労者かも知れない人だよ。』

 『コーシュは、ケットシーだけど、商人としての才能はあるし、計算も早い。慎重な性格もあって、魔族領から、エルフ達とオークの森まで逃げて来れたんだと思う。きつい決断だとは思うけど、あの戦闘力が全くない集団を率いてこれたのは、才能があるって事だよ。穏やかな性格だし、冷静に物事を考えるという点も評価に値するね。』

 『トーマス・ジョーキンは、そんなに見てないけど、カレースパンでは、住民達から支持を得ていた様だし、何より、洗脳されていたにも関わらず、支持を失っていない所が凄いよね。何となく思ったのは、あの人には、カリスマ性があるって事。人を惹きつけ、繋ぎとめる魅力は、特殊能力と言ってもいい程の力だ。あの力は、敵にまわすと怖いので、近くに置いておいた方がいいね。まずは、官吏としての腕をみて、ゆくゆくは大臣なり、宰相なりにして、近くに置いた方が安心できるね。』


 アーリアが、アルティスの夢を再確認すべく聞いてきた。


 「アルティスは、旅をしたいんだったよね?」

 『うん、この世界をもっと知りたい。』

 「旅に出る前に、この国の顧問として、指導をお願いしたいのですが。」

 『してもいいけど、条件があるよ。』

 「それは何でしょうか?」

 『多民族国家にする事。』

 「他の種族を受け入れて、欲しいという事ですか?」

 『受け入れるんじゃないよ、認めるんだよ。今までの自分達が、馬鹿だったことを認めて、他の種族の人族に、認めてもらうんだよ。土下座でも何でもして、許しを請うんだよ。』

 「それは、大陸中央を統括する国の王である、プライドを捨てろと?」

 『統括できていなかったじゃないか。』


 アルティスが、辛辣に言葉を選ばずに話しているのには、理由がある。

 今までの人間は、傲慢で我儘でプライドが高いだけのクズだった。

 だから、魔族につけこまれ、悪魔の甘言に乗り選択を誤り続けた結果、他種族に見限られ、今の状況を作り出しているのだ。

 アルティスが国政に関わるのであれば、この状況をどうにかする事を、第一目標にすると言っているのだ。


 『散々、他の民族に迷惑をかけまくっておいて、素知らぬ顔で統括しようとしても、他民族からしたら、馬鹿にされてる様にしか見えないよ?』

 『悪魔に乗っ取られていたなんて、そんなのいい訳にもならないね。何の対策も執っていなかった、自分達を恥じて、反省をしなければ、誰も認めてなんかくれないよ。俺も認めないよ。愚行を繰り返す様なら、とっととこんな国は、滅ぼすね。』

 「アルティス様が言うと、本当にやりそうで怖いですね。」

 『あり得ない話だけど、修正の利かない所まで来ているのなら、一旦リセットするのも一つの手だよね。』


 謁見の間に、王都に住む貴族たちが、続々とやってきた。

 開口一番、言ったのは、女王を認めないという言葉だった。


 「我々、貴族一同は、女王の即位に反対します。」

 「それは何故に?」

 「我々は、何十年にも亘り、この王都を守り抜いてきたのです。地方から突然やってきて、いきなり王と名乗られても、簡単に認める訳にはいきませんな。」

 『守り抜いてきた?どこが?いつ?何をした?魔族に占領されたのに?今までどこにいたんだ?戦ったのか?抵抗したのか?民を守ったのか?。何もしてない癖に、さもやってましたなどと、嘯く(うそぶく)様な、姑息な真似はやめてくれよ。殺したくなるだろ?』

 「我々は、悪魔に支配されていて、それどころでは無かったのだ!」

 『貴様らは、何もしていなかったから、悪魔に乗っ取られたのではないのか?』

 「誰だ貴様は!私を誰だと思っている!私はシャンタ・ケールエキスであるぞ!頭が高いぞ、跪け!。」

 『なんだ、死んだはずの逆賊の元王弟じゃないか。死んだ筈のな。俺には、悪魔が人間に化けている様にしか見えんな。』

 「何だと!?、誰が言ったのだ!出てこい!殺してやる!」


 シャンタの頭上に[ディメンションホール]を開き、小さな神像をたくさん落としてやった。


 「ギャーアアアアアアアァァァ」


 悪魔の外皮が剥がれ、真っ黒い体が出て来た。

 この場で、悪魔の体を保つことができずに、塵となって消えて行った。


 『さて、悪魔は消えたが、貴様らには、洗脳も異常も見つからないな。国家反逆罪で全員捕縛するしかないな。捕らえろ。』


 逃げようとする貴族たちの前に、ソフティーが降りてきた。

 突然のアラクネ登場により、貴族たちはショックで全員気絶した。


 『身包み剥いで、地下牢に入れておけ。』

 「「はっ!」」


 貴族たちが連れてきた騎士達は、アラクネを前に動けず、こちらの騎士が貴族の体に巻き付いた糸を掴み、引き摺って地下牢に連れて行った。


 『こいつら全員も、一回鎧を取って、中身を見ないとダメだな。謁見の間に、武器を持って入って来る一般騎士など、普通の国ではあり得ない話だぞ?』

 「そうだな、声も出せないのは、怪しいしな。」


 はい、悪魔でした。

 全身鎧の内側に、闇属性の結界を張っていたらしく、何とか形を保っていた様だが、神聖領域で結界が、ゴリゴリ削られていき、声も出せない程疲弊していた様だ。


 『バリア、兵を率いて各貴族の屋敷に行って、全身鎧の奴を引っぺがして、人間かどうか確認して来てくれ。』

 『命令は誰ので?』

 『女王陛下だ。』

 『了解です。』


 『カレン、リズ、王都中の全身鎧を徹底的に調べ上げろ。ソフティーとキュプラは、それぞれに同行して、広場の噴水の上に、神像を設置して回ってくれ。』

 「「「「了解」」」」

 『他の騎士は、神像を表に出して街を練り歩け。路地裏にも入ってくまなく悪魔を捜索しろ。暗部は、城の中の隠し通路や、隠し部屋の中に、隠れて無いか確認しろ。』

 『了解』


 『コルス、オロシと一緒に、王都中に死角ができない様に、退魔結界を張る方法を考えてくれ。あんなのがウロチョロされては、堪らん。』

 「退魔結界よりも、神像を設置した方が良くないですか?」

 『家の中はどうするんだ?』

 「退魔結界も家の中までは届きませんよ?」

 『夜に霧を撒けばいいだろ?』

 「それなら、噴水の水を全て聖水に変えるとかした方がよく無いですか?」

 『いい案だ、採用!。じゃぁ、やってきて。』

 「藪蛇!」


 『そういえば、大聖堂があるんだっけ?、ワラビ行ってきて。』

 「畏まりました。」

 「一人では、危なくないか?」

 『ウーリャとフィーネをつければいいんじゃない?』

 「それでいいか。」


 ウーリャとフィーネは、剣を持たせる試験として、途中でオークを狩らせようとしたのだが、居なかったので、ゴーレムを狩ってもらった結果、及第点だったので、前に作ったワイバーンの爪入りの剣を渡してある。

 二人とも、魔法の訓練をしっかりやらせているので、命中率も良くなってきたようだ。


 『シーア、スーア、城の外堀の中を探ってきてくれ。悪魔関連の物を見つけた場合は、神像を使ってくれ。』

 『『了解』』


 貴族共を牢に入れてきた騎士が、ギルドマスターを連れてきた。

 特に拷問を受けた様子は無いが、やつれている。


 『腹が減ってるのか?』

 「あぁ、捕まってから何も食べていないんだ。」

 『では、これを』


 [ディメンションホール]から出したお粥を、泣きながら食べ始めた。


 「美味い・・・美味い・・・もう駄目だと思ってたんだ。」

 『サブマスターはどうしたんだ?』

 「あいつも地下牢にいる筈だ。」

 『探して来てくれ。あと、地下牢に冒険者たちもいるかもしれないから、確認して、飢えている者には、お粥を渡して来てくれ。』

 「「はっ!」」


 駆け足で向かった。

 ギルドマスターを出す時に、色々見たんだと思う。


 「地下牢には、俺と一緒に戦った冒険者たちが、たくさんいる筈だ。全員助けてくれないか?」

 『今向かった騎士たちが、やってくれるさ。だが、確認もせずに、誰それ構わず出す事はできない。物には順序ってものがあるんだよ。食事は出すが、外に出すのは、確認が終わってからだ。』


 王城の地下牢には、それなりに犯罪者が囚われている筈で、この混乱に乗じて、誰それ構わず外に出す事は、王都に混乱を引き起こす引き金になりかねない為、一旦鑑定などで確認をしてから外に出す事にする。

 そこに暗部から、魔王軍の状況の報告が届いた。


 『アルティス様、魔王軍が撤退していきました。』

 『ルギー、近くに魔王軍の残党が居ないか確認したら、城に戻って休憩してくれ。』

 『了解!』


 ギルマスが魔王軍の事を聞いてきた。


 「魔王軍はどうなったんだ?」

 『今連絡が来たよ。撤退したってよ。』

 「本当か!?あんなに居たのに!?」

 『俺達が、戦わずして減らしたのさ。』

 「どうやって!?」

 『内部崩壊を起こさせてやったのさ。』

 「はぁ?内部崩壊?」

 『簡単な事さ。空腹のオーガの目の前には、オークが大量にいたからな、ちょっと食欲を刺激してやるだけで、オーガが暴走し始めたんだよ。そして、トロールの目の前には、タイラントボアが大量にいる。美味しく焼いたイノシシを放り込むだけで、トロールの食欲は刺激されて、大暴走。コントロールにやっきになって、警戒が疎かになった本隊に、オークの金玉とバーサク粉をばら撒けば、魔獣は混乱、本隊も阿鼻叫喚で楽しい事になってたぞ?』

 「そんな事で・・・」

 『10万も居たって、その兵站と統率をどうにかできなければ、ただの烏合の衆だ。』


 「あいつの策を執っていれば、今頃は勝ってたのか。」

 『誰の策だ?』

 「フロストだよ。」

 『サブマスターか。頭いいな。』

 『アルティス様、食料とポーションの在庫が無くなりました。』

 『そうか、じゃぁ、俺が行く。待ってろ。』

 「ここの警備は任せておけ。」


 ここは、アーリアが一人いれば十分だろう。


 『じゃぁ、行ってくる。』


 地下牢に向かうと、牢の中には、多数の人間が詰め込まれていて、饐えた(すえた)匂いが充満していた。


 『[クリーン]』

 ザー

 『[ホーリーフィールド]』

 「ギャアアアアアアアァァァ」

 「グギョエアアアアアアアアァァァ」


 地下牢全体にホーリーフィールドを拡げると、悪魔の叫び声が響き渡り、薄暗い雰囲気が、少し明るくなった。

 だが、念の為、ホーリーウォーターで洗い流した。


 『[ホーリーウォーター]』

 ドザーッ

 『さて、いくか。あぁ、ワラビ、地下牢の浄化も頼むよ。ちらほらと遺体があるから、アンデッド化するかもしれない。』


 牢屋の中を見て行くと、ぐったりしている人がちらほらいる。

 自分専用のゴーグルを着けて、見てみると、人間は殆どが衰弱していて、元気・・・と言っても弱っては居るが、そういう奴は、聖域と聖水に耐え抜いた、悪魔ばかりだ。

 通路の中央に神像を置いて行き、悪魔を排除していく。

 同時に、治療術で治していく。


 『大丈夫か?ここに食べ物を置いて行くから、食べろ。』

 「おお、あんたアルティスさんか。ありがてぇ。魔王軍はどうなったんだ?」


 元警備隊の隊員だった様で、アルティスの事を知っていた。


 『撤退していったよ。残り1万もいなくなったからな。』

 「!?・・・あんたがやったのか?」

 『誰も戦って無いぞ?計略だけで済んだからな。』

 「はぁ!?計略だけで全滅させたってのか!?」

 「魔王軍全滅したの!?信じられない!」

 『いいから、食え。ここは4人か。置いてくからな。ゆっくり、よく噛んで食えよ?無駄にしても追加は無いからな?』

 「判ってるよ、数日振りの食い物だ。うんめぇなこれ!」

 「アルティスさんいるんですか!?こっちに早く来て!怪我人がいるの!!」


 行ってみると、伯爵別邸のメイドがいた。


 『冒険者たちを手伝ってたのか?』

 「はい。みなさんが命がけで戦っているのに、逃げる訳にはいきませんでした。」

 『そうか。殊勝な心がけだ。怪我人はどいつだ?』

 「こちらの方です。足を負傷しておられます。」

 『[治療術]』


 男の足は、骨が砕け、潰れていたが、みるみるうちに治って行く。

 その様子を周りで見ていた者は、驚きを隠せない様子だ。

 腕が単純骨折した女が寄って来たが、ちゃんと添え木で固定されているし、痛そうではあるが、ポーションで大丈夫そうだ。


 「わ、私も腕が折れているんですが・・・」

 『お前は、ポーションで大丈夫だ。』


 ポーションを飲むと、骨折が治った様で、添え木を外して、手を握ったり、開いたりして驚いている。


 「凄い・・・この薬何なんですか!?」

 『お前達人間が、捨てた技術で作った薬だよ。とんでもない技術を捨ててしまったと思わないか?』

 「とんでもない事ですね。」

 『錬金術ができる奴には教えるから、余裕ができたら会いに来い。きっと驚いて愕然とするぞ。』

 『食い物を置いて行くから、ちゃんと食べろよ。こっちの男の分も残しておいてやれよ?』

 「あ、はい。凄く美味しい・・・残せないかも・・・」

 「アルティス様、ありがとうございます。」

 『腹いっぱい食うなよ?魔王軍が小麦を食い尽くしたから、王都の食料も少ないんだ。』

 「はい、畏まりました。」


 全ての房を回り、全員に食料を配ったが、騎士が見つからない。


 『おい、どこにいるんだ?』

 『下の階もあるんですよ。そこにいます。こっちには、もっとたくさんの人が居ますよ。』


 まだあるのかよ。

 下の階に行くと、また饐えた匂いで、鼻が曲がりそうだ。

 上の階と同じように魔法を使って、一旦上の階に上がり、メイドを牢の外に出した。


 『手伝え。このゴーグルを着けて、悪魔がいたら、この神像を押し付けろ。それで倒せる。』

 「判りました。」


 下の階の牢屋には、さらに酷い状態の人間が収監されており、簒奪される前の王族の遺体もあった。


 『絹製の服・・・、[鑑定]簒奪される前の王だな。収監されて放置されたのか。酷いな。こんな所からは出してやるよ。ん?他にもいるのか?あっちの遺体もそうなのか。判った。[ホーリーボックス]』


 王族の遺体は、全て[ホーリーボックス]に入れてから、[ディメンションホール]に収めて、後でワラビに頼むことにする。

 このホーリーボックスとホーリーキューブの違いだが、ホーリーボックスは箱の形を任意で変えられるのだが、ホーリーキューブは箱の大きさを変えられるだけだ。

 キューブの方は、すべての辺が同じ長さの立方体を出現させて、ボックスの方は、色々な形を再現できる箱を出現させる事ができるのだ。

 今回の様に、ミイラ化したご遺体を収納する場合に、キューブを使うと、ご遺体が破壊される可能性があるのだが、ボックスの方にすれば、破壊せずに入れられるのだ。

 見つけた遺体は、全て床に仰向けに寝た状態だった。


 サブマスターもこの階にいた。

 騎士達は、回復魔法を使いつつ、俺を待っていた。


 『ポーションを渡すが、向こうのガリガリの男は、殺人鬼だから助けなくていい。』


 すぐ横に居た冒険者の男が、殺人鬼を聖人だと思っている様だ。


 「え!?彼は聖人と呼ばれる人ですよ?」

 『何をやって聖人になったんだ?』

 「孤児院を運営していますし、貧しい人々に、食事を与えたりしていました。」


 『ほうほう、称号に人身売買と殺人鬼があるんだが、孤児院に入れた、子供達を売ってたんじゃないのか?』

 『食事を配ったその後はどうだったんだ?』

 「えっと、スラムでパンを配った数日後に、何者かによる大量虐殺がありまして」

 『パンに何かを混ぜて食わせて、魔力探知で探して殺す。そんな所だろうな。』

 「何の為に、そんな事をしたと?」


 『知らねぇよ。本人に聞け。どうせ、貧しい奴らが嫌いだったとか、くっだらねぇ理由だろうよ。あんなのよりも、こっちの連中を助けるぞ。』


 地下牢から戻ると、ワラビが戻ってきていた。


 『どうだった?大聖堂は。』

 「最悪でした。」

 『どう最悪だったんだ?』

 「神像が全く無くて、人々が虐殺された跡がありました。」

 『聖職者も居なかった?』

 「居ませんでした。」

 『そのままにして帰ってきたの?』

 「いえ、浄化して神像を置いてきました。」

 『そうか。ちょっと頼みたい事があるんだけど、いいかな?』

 「何でしょうか?」

 『地下牢で、王族の遺体を見つけたんだよ。弔って欲しいんだ。』


 女王陛下が驚きに満ちた顔をして、アルティスに聞いてきた。


 「王族とは、誰の事でしょうか?」

 『簒奪された王族だよ。女王陛下の両親と兄妹かな?』

 「見せて頂く事は・・・」

 『駄目とは言わないけど、見るも無残な光景だよ?』

 「構いません。」

 『ここに出していい?』

 「はい、お願いします。」


 全部で4つの遺体を出した。

 遺体は、全てミイラ化しており、貴金属類は無いが、王の指には指輪が一つだけ嵌っている。

 これは多分、本物の王族が継承されるべき物で、指から外せなかったのだろう。

 女王が指輪に触れると、スルッと外れた。


 『暫らく離れておくよ。』


 みんな女王様から離れ、見守っていた。

 すると、遺体が光り、人影が立ち上がった。

 かつての王族達が、女王陛下の頭を撫でる仕草をした後、アルティスの方に向き直り、深くお辞儀をした。

 そして、光の粒となり、吸い込まれる様に天に昇って行った。


 「アルティス様、遺体を霊廟まで運んで頂けますか?」

 『判った。棺はどうする?』

 「棺は・・・王の執務室にできていると思います。」

 『じゃぁ行こうか。あ、ギルマス、豚王の遺体はどうしたんだ?』

 「豚王・・・庭で燃やしたよ。運ぶのが大変だったけど、あっという間に燃え尽きた。」

 『前庭の丸い焦げ跡はその時のか。あそこに豚王がへばりついてるんだよな。ワラビ、後ででいいから、あそこを浄化しておいてくれ。』

 「畏まりました。」


 王族の執務室に行くと、そこには、棺が4つ並んでいた。


 それぞれの棺に、遺体を入れる為、アーリアと女王が遺体を持ち上げると、その人の棺の蓋が勝手に開いた。

 遺体が納まると、棺は宙に浮き、軽く手を触れるだけで動かせるようになる様だ。

 それぞれの王族の遺体を棺に納め、アルティスは女王様の腕の中に納まり、アーリアが先頭を歩き、 王の棺が部屋を出ると、妃の棺を初め、王太子の棺、王女の棺が後を追って行く。

 最後尾をワラビが、杖を両手で持ち前に掲げて、歩いてついて行く。


 アーリアが念話で、騎士達に前庭に整列する様、指示を出した。


 『王城内の騎士団員に告ぐ!これより前王アレク・エキスマキナ及び前王妃アーレンシア・エキスマキナ、並びに王太子リチャード・エキスマキナ、王女カレンシア・エキスマキナの棺を霊廟に納棺する。騎士団員は、直ちに前庭に整列し、臣下の礼にてお出迎えしろ!』


 霊廟までは、一旦城の外に出てから、前庭を右方向に進み突き当りにあるそうだ。

 外に出ると、騎士が通路の両側に並び、剣を抜き身で顔の前に立て、左手は後ろに回し、腰に甲をつけて、直立不動で立っていた。

 アーリアも先頭を歩きながら、顔の前に剣を掲げ、霊廟の前で振り返り、号令を発した。


 「捧げ!剣!」

 ザッ!

 「直れ!」

 ザッ!


 一糸乱れぬ動きで、騎士達が剣をアーチになる様に掲げ、そして納剣した。


 「敬礼!」

 ザッ!


 綺麗に決まった敬礼を見ていると、霊廟の扉が勝手に開き、女王に抱かかえられたまま、霊廟の中に連れて行かれた。

 霊廟の中の壁には、何かが収められていたと思われるスペースがあり、その下には瓦礫になった石が転がっている。

 スペースの下には、それぞれの神の名が記されているので、神像が立っていたのだろう。

 ワラビが神の絵を取り出し、見せてきて言った。


 「アルティス様、それぞれの神像を作って頂けませんか?」

 『材質は何がいい?』

 「腐らない物なら何でもいいです。」

 『じゃぁ、真珠でいいか。』

 「真珠!?」

 『大量にあるんだよ。少しでも減らさないと。』

 『[アルケミーモールディング]』


 それぞれの神像が、霊廟に眠る王族の棺を中心に、それぞれの役割を果たすべく、慈しみの表情や棺を見守る様に作り、騎士達に収めてもらった。

 神像の心臓には、1センチ程の魔力鉱石を入れておいた。


 「我が親類の為に、ありがとうございます。」


 女王様がアルティスとワラビに礼を言い、棺の方に向き直って、英霊たちに弔辞を述べた。


 「貴方方が守り抜いてきた、この国は、私が必ず導いて行きます。どうか安らかにお眠り下さい。」


 女王様の簡潔な言葉に続き、アルティスが弔辞を述べた。


 『後で、ソフティーに神像を守る為の、壁を作る材料をもらって、守らせてもらうよ。アラクネに頼むから、驚くかもしれないけど、新しい時代の幕開けだと思って、受け入れて欲しい。人間だけでは無く、人族全てが進化しなければいけない。それを成し遂げるには、過去に囚われてはいけない。未来を待つだけでもいけない。今、この時を受け入れて変わらなければならない。1000年もの間、停滞をしてきた貴方達には理解ができないかも知れないが、人間が人間として生きていくには、必須の事だよ。貴方達王族には、それを導いていく義務がある。今回の件で、停滞が良くない事だと理解できたなら、新しい女王へ祝福を贈ってください。今生の女王様が生きている間は、貴方達のお墓を守る事を誓います。だから、その代わりと言っては何ですが、憂う事無く、安らかな眠りをお約束します。』


 霊廟に安置された棺が明滅し、4つの棺から光の玉が浮かび上がり、一つに纏まり、新女王様の胸に吸い込まれていった。

 女王様は、初めて見る光景に、驚きを隠せない様子だが、胸に手を置き、聖句を呟いて霊廟を出て行った。


 『ソフティー、キュプラ、今大丈夫?』

 『『はいはーい』』

 『どこにいるの?』

 『アルティスの後ろだよ?』


 振り向くとソフティーとキュプラがいた。

 全然気が付かなかったよ。


 『ちょっと、透明な板を作りたいんだ。手伝ってくれる?』

 『やるよー!』

 『がんばるよー!』


 それぞれの神像のスペースに、透明なアラクネガラスを嵌め込み、壁と一体化させて、外れない様にしてから、外に出た。


 『糸一杯出したから、お腹すいたー』

 『空いたー』

 『ちょっと待ってね、まだ終ってないから、終ったらあげるよ。』


 霊廟の外には、ワラビが杖を正面に掲げ、アルティス達が出て来るのを待っていた。

 ワラビが霊廟の入り口前で、聖句を述べ、霊廟の扉を閉めて、扉の穴に神聖魔法を込めた魔力鉱石を嵌めると、扉が光り、霊廟の周りに生えている蔦が扉に伸びて、封印を完了した。


 『よし、葬儀は済んだ。騎士団は半分は王都内を見回り、残りは王城の警備だ。』

 「「「はっ!」」」


 再び謁見の間に戻ってみると、知らない貴族が、玉座の下で死んでいた。


 『何だこれ?』

 「女王の居ない間に、玉座に座ったのだろう。」

 『あぁ、そうですか。焼却炉でも設置しておこうか?』

 「いや、要らないよ。こういうのは、城の前に晒しておくんだよ。」

 『汚いから、そういうのはやめようよ。疫病の元だよ?堀の水は、噴水の水になるんでしょ?、万が一、死体が堀に落ちて、疫病を含んだ水が街中の噴水から吹き出したら、パンデミックまっしぐらだよ?』


 「ぱんでみっくとは?」

 『疫病が流行する事。』

 「疫病とは、撲滅するのは大変な事なのか?」

 『悪魔より大変だよ。見えないからね。前世では、世界人口の3割が死んだこともある。』

 「それは凄いな。しかし、今までは流行り病は、あまり聞かないな。」

 『ものによると思うよ。例えば、感染から発症まで2週間以上かかる場合、気が付かない内に感染して、病原菌を知らない内にばら撒きながら生活して、発症する頃には、全員感染しているとかね。』


 「そんな事があるのか。病気に対する備えも必要という事だな?」

 『当然だよ。起こり得る可能性は、起こる前に潰しておくのが、肝要なんだよ。原因が判っているなら猶更(なおさら)だよ。』

 「そうだな。ではこの貴族の遺体はどうしようか。」

 『こいつの家の庭に磔にして、外壁に()()()()()()()()()()()()()鹿()とでも書いておけば、いいんじゃない?』


 「そもそも、コイツは誰なんだ?」

 『ヒャーイット・スマナソン、子爵家嫡男だそうだ。』

 「馬鹿だね、神罰で死ぬなんて。」

 『こいつをスマナソン家に届けて、王城の門横に立て看板を建てて、勝手に玉座に座って天罰を受け死亡した者の名前が、ヒャーイット・スマナソンだと書いておけ。』

 「「はっ!」」


 『この国の貴族は、再教育が必要みたいだな。キュプラ、収容所の門前に行って、脅してきて。』

 『食べたらでいい?』

 『いいよ。』

 「人族はどうしようか。」

 『王城に住まわせるか、魔族領に侵攻して、旧エルフ王国を奪還するかだね。』


 「馬鹿貴族はどうする?」

 『一匹細切れにしてやればいいじゃん。どうせ仕事させても役に立たないんだろうしね。』

 『リズ、カレン、首尾は?』

 『上々とは行きませんね。あちらこちらで、投降してきたエルフを連れて、今は、戻る途中です。ですが、貴族がエルフを寄越せと煩くて、中々前に進めないんですよ。』


 『切り捨てていいよ。細切れにしてやれ。』

 『いいんですか?』

 『いいよ。馬鹿貴族の成れの果てとしての見せしめだ。』

 『了解です。』


 全く困ったものだと、アルティスは考える。

 どうしたら、エルフを守れるか、方策を検討しなくてはいけない。


 『貴族の子飼いの騎士を細切れにしたら、散って行きました。すぐに戻ります。』


 カレンが、群がる貴族に対し剣を抜くと、子飼いの騎士団長が出て来たそうだが、細切れにしてやったらしい。

 その光景を見た、魔族達が次々と投降しているらしく、1000人規模になりそうとか言ってるよ。

 全く、問題ばかり増やしてくれる。


 『バリア、状況は?』

 『悪魔が結構居るようですね。全然作業が進みません。』

 『一旦戻ってこい。方策を考える。』


 子飼いの騎士に、悪魔が紛れている様で、面倒くさいったらありゃしない。

 MP残量もまだあるし、王都全体に向けて、やってみるか。

 謁見の間で見た、全身鎧の悪魔は、闇魔法で結界を張って耐えていたから、闇魔法を解除してやれば、消え去る奴が居るだろうと思った。


 『ちょっと尖塔の上に行ってくる。』

 「何をするんだ?」

 『まだ、さっきみたいな全身鎧の悪魔が潜んでいる様だから、王都全域に向けて、闇魔法だけを消去してくるよ。』

 「判った。ワラビ、一緒に行って、アルティスが倒れたら連れて来てくれ。」

 「承りました。」

 『私もいくー』


 ソフティーもついて来てくれる様だ。

 尖塔の上に行くには、螺旋階段を300段くらい登らないといけない為、ワラビが大変そうだ。


 『ソフティー、ワラビを乗せてあげて。』

 『ワラビ乗ってー』

 「申し訳ございません。ご迷惑をおかけします。」


 尖塔に登り、ディスペルを放った。


 『[ディスペル・ダークマジック]』


 全量MPの半分を使い、闇魔法のみを対象に放つと、下の方から叫び声と崩れる金属の音が鳴り響いてきた。

 アルティスは、少しクラクラするが、ワラビに支えて貰って、ソフティーの背に乗って、謁見の間に戻って行った。


 「首尾は?」

 『上々だよ・・・。疲れたけど。』

 『アルティス様!?何かされましたか?』

 『うん、闇魔法を解除した。』

 『城内に入った後でよかったですが、魔族達が一斉に倒れました。』

 『ブローチが破壊された様ですね。』

 『中庭に連れてきて。そこでご飯にしよう。俺は、疲れたから寝る。』


 アーリアのポーチに潜り込んだ。


 「アルティスが我々の手間を肩代わりしてくれたんだ。アルティスが寝ている間に、我々でできる事をやってしまおう。」

 「捕虜たちを一旦、中庭に連れて行きましょう。エルフが外から見える所に居ると、騒ぎが収まりませんよ。」

 「じゃぁ、捕虜はバリアに任せるわ。私は夕飯を作って来るわ。リズとヒマリアちゃん、後誰か手伝える人いるかしら?」


 いい匂いがして、目を覚ました。


 『フアーァアァアァァ。おはよう。』

 「おはよう、アルティス。夕飯を食べるか?」

 『うん。』


 エルフや魔族、ドワーフにリザードマン、翼人もいる。

 何でだ?


 『何でこんな人数なの?』

 「キュプラを行かせただろ?アレで街がパニックになって、収容所もパニックになったから、みんな逃げてきたそうだ。」

 「そうですよ。念の為、収容所も見てきましたが、もぬけの殻でした。でも、王城にもいるじゃないですか、どういう事だと詰められまして、アルティス様とアーリアの仲間だと伝えたら、全員跪いていましたよ?」

 『何でだ?』

 「ご自分で聞いて下さい。」

 「おお、勇者殿が目を覚まされた様だ!」

 『おいおい、俺は勇者じゃないぞ?』

 「またまた、ご謙遜を。我らの伝説にあるのですよ。アラクネをお供にする勇者が現れると。」

 『うるせぇ!俺は勇者じゃねぇって、言ってんだろ!殺すぞ!!』


 寝起きなのも相まって、威圧した。

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