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第25話 古の魔人と魔王軍

 午後、オークの集落にやってきた。

 兵士達にも声をかけると、あまり戦闘に参加できなかった、兵士ら15名が志願してきた。

 主に、リズ大隊のメンバーだ。


 『それでは、オーク集落の掃討に取り掛かる。まずは、集落全体の捜索だ。探す物は、地下室、魔道具、金品。金品は特に、遺品となる物が含まれている為、着服しない様に。中には、悪魔が使った魔道具も、含まれている可能性があるので、必ず提出すること。』

 「よし、それでは探索開始。洞窟には近づくなよ。」


 それぞれの兵士達が、集落全体に散らばって行った。

 あばら家の中には、食べかけの腕や足が転がっている事もあり、あちらこちらで、驚く声が聞こえた。

 小屋の一つに、大量の服が積み上げられていて、その中から、女が一人出て来た。


 『[鑑定]』


 名前:ウーリャ・スティングレイ           状態:衰弱

 職業:魔法戦士

 HP:89

 MP:489

 STR:195

 VIT:227

 AGI:178

 INT:223

 MAG:177

 攻撃スキル:剣術 投擲 柔術 拳闘術

 感知スキル:魔力感知 空間感知 振動感知 嗅覚強化 聴覚強化 毒感知 殺気感知

       視線感知

 耐性スキル:状態異常耐性 打撃耐性 毒耐性

 魔法:自動回復 身体強化 敏捷強化 魔力弾 生活魔法 念話


 『うおっ!、こいつ強いな。ウルファの関係者っぽいが。おい、ウルファ!お前に妹か姉がいないか?』

 『うお!急になんだよ?妹ならいるが、里にいるはずだ。』

 『ウーリャ・スティングレイってのを見つけたんだが?』

 『ああ!?、妹だぞ!どこにいるんだ!?』

 『カレースパン近くの、オークの集落の中だよ。』


 『い、生きてるのか!?』

 『生きてるぞ、今から治療するところだ。お前より強いな、妹は。』

 『あぁ、アイツはオレより才能に溢れているんだよ。』

 『そうか。ありがとう。』

 『[治療術]』

 「う、うーん・・・」


 治療したが、大した怪我は無く、捨てられた服の中に隠れていたが、逃げ出すタイミングが判らず、数日間何も食わずにいて、腹が減っていただけの様だ。

 目を覚まし、アルティスを見て口をぱっくり開けたので、リズのパンチを食らっていた。


 「ぎゃんっ!」

 『腹が減ってるのか?』

 「イテテ、お腹が空いて死にそう。」

 「貴様は、助けてくれた恩人を食おうというのか?」

 「うぇぇ、ごめんなさい!何か食べる物を恵んでください!」


 [ディメンションホール]から、ピタパンを2つ出してやった。


 「ありがとう!はぐっ・・・うまーい!?、はぐはぐ・・・」

 『俺はアルティス、お前を殴ったのがリズ、こっちのはカレンだ。お前の名前は?』

 「私はウーリャ・スティングレイ、ワーウルフの戦士さ。」

 『ウルファを知ってるか?』

 「アニキを知ってるのか!?どこにいるの!?」

 『探してどうするんだ?』

 「ぶっ倒す。あいつ、何年も、里に帰って来ないで、どこほっつき歩いてるんだか。」

 『あいつは今、孤児院を守って働いているんだよ。連れて帰られると困るんだがな。』

 「ウルファが孤児院を守ってるぅ!?、いつからそんな殊勝な事をする様になったんだ?」

 『1か月前からだな。』

 「あいつがそんな事を・・・。ならいいや。」

 『で、ずっとそこにいるつもりか?』

 「オークはいないのか、じゃぁ出る。」


 外に出て来たウーリャの装備は、ボロボロだった。


 『剣はどうした?』

 「折れた。装備もボロボロになっちったし、買い換えないと駄目だけど、お金も無いしどうしようかな。」

 『この小屋にはお前だけか?もう一つ反応があるんだが。』

 「あ!フィーネ!、この中にいる!」

 『出してくれ。』

 「「はい」」


 服の山の中から、もう一人のワーウルフが出て来た。


 『[鑑定]』


 名前:フィーネ・スタングレネード           状態:衰弱

 職業:魔法戦士

 HP:56

 MP:528

 STR:223

 VIT:230

 AGI:181

 INT:239

 MAG:259

 攻撃スキル:剣術 投擲 柔術 拳闘術

 感知スキル:魔力感知 空間感知 振動感知 嗅覚強化 聴覚強化 毒感知 殺気感知

       視線感知

 耐性スキル:状態異常耐性 打撃耐性 毒耐性

 魔法:自己回復 身体強化 敏捷強化 魔力弾 生活魔法 念話


 『ウーリャの上位互換だな。ちょっとどけ。[治療術]』

 『アルティスー、集落の調査終わったよー』

 「うわぁぁぁ!?、アラクネ!?」

 『落ち着け、仲間だ。』

 「へ?、仲間?、アラクネが仲間!?、嘘でしょ!?」

 『ソフティーちょっと待ってて。』

 『あ、ワラビ、洞窟の闇魔法何とかして。』

 『判りました。』

 「ワラビ?・・・聖女のワラビー・ライスケーキ!?」

 『あー!?クソ犬がいる!?』

 「はぁ!?、あんたは確か魔王軍四天王のワーキャットじゃないの!?何でこんな所にいるのよ!?」

 『ワンワン煩い。フィーネの声が聞こえないだろ?』

 「だってぇ!、魔王軍が来たんだよ!?」

 『ミュールも仲間だ。』

 「え?、あんた達、もしかして魔王軍なの!?」

 『違うよ!?私はアルティスの仲間のミュール様だよ!』

 『だから、ウルセェっつってんだろ!!』

 『ごめんなさい。』

 「す、すみません。」


 ワンワンニャーニャー煩かったので、威圧したら、フィーネまで萎縮してしまった。


 「た、助けて頂きまして、ありがとうございます。」

 グーギュルルルルルル

 「すみません、数日間何も食べてないものですから。」

 グーギュルルルルルル


 [ディメンションホール]からピタパンを2つ出した。


 『どうぞ。』

 「ありがとうございます。ディメンションホールを使えるなんて、羨ましいです。はぐっんーーーーー!?美味しい!!」


 二人ともあられもない姿なので、マントを貸してあげた。


 「このマント、何の革でできているんですか?、匂いはワイバーンだけど、こんなに薄くないし、この軽さは・・・何だろう?」

 「その留め具の腕を動かすと、温度調節できるんですよ。」

 「これを・・・ふわぁー凄いです!。こんな高級な物をお借りしてしまい、すみません。」

 『仲間は全員渡してるんだけどな、ミュールは拳闘士だから、邪魔になるらしくてな。』


 ミュールにもマントを着けさせたのだが、空中を飛び回ると、マントが体に纏わりつき、身動きが取れなくなってしまうらしく、要らないと言われてしまった。

 一応、布団代わりにもなるので、ポーチに入れておいて貰ってはいるが、使える場面になっても、思い出さないだろうと思っている。


 洞窟前のワラビの横に来た。


 『ワラビ、済んだか?』

 『はい、入り口の方は何とかできましたが、奥の方が消えません。』

 『ミュール、凝視してると目が潰れるぞ?』


 洞窟の中の黒い霧を見て、リズがカレンに可能性を話した。


 「ねぇ、神聖魔法に勝つ闇魔法ってやっぱり・・・」

 「あぁ、魔人かも知れない・・・」

 『[マルチメガライト]』

 パアッ


 奥の方から叫び声が聞こえる。

 アルティスが、強烈な光を放つ玉を等間隔に複数纏めて発動したのだ。

 ワラビも、神聖魔法を何度か撃ち込んではみたものの、成果に繋がらなかったのは、MAGに差があり過ぎて、レジストされてしまったのと、光属性とは違うからだと思う。

 

 「お見事です。」

 「さすがアルティス様です。」

 「神聖魔法の立つ瀬が・・・」


 ワラビは、神聖魔法が光魔法に負けた気でいるが、そうではない。

 確かに闇魔法は、暗黒魔法の上位版だが、深淵なる闇だからこそ、神の威光が打ち勝つのであって、普通の闇に神の威光は、あまり効果が無いというものだ。


 『ワラビは、神聖魔法に頼り過ぎなんだよ。もっとMAGを上げるのと、ちゃんと属性を考えて使えよ。』

 「努力します。」

 『で、さっき言ってた魔人ブヒーって何だ?』

 「ブヒーかどうかは、判りませんが、昔勇者様が、どうしても勝てず、封印したという魔人が、闇魔法を得意としていたんですよ。」

 『なんだ、そんな事か。さ、中に入るぞ、全員これを着けろ。』


 全員に偏光グラスを渡した。

 加工するのが面倒くさかったので、横一本の黒い線の様になっている。


 「何かこれ、怪しい人みたいに見えるんですが?」

 『メガネ型にするの面倒くさいんだよ。フレームも作んなきゃいけなくなるし。』

 「最近、何か手を抜いてません?」

 『忙しいんだから、仕方ないだろ?、誰も手伝ってくれないし。』

 「カレンが、錬金術教えてもらうって言ってたのは?」

 『30秒で寝たな。』

 「面目ありません。」

 「30秒って、瞬殺じゃない?」

 「つ、疲れてたのよ!」

 「そんなに難しいの?」

 「難しいどころの話じゃ無かったわ。」

 『何がそんなに難しかったのか知らないが、薬草を潰して絞って、水と混ぜるだけだぞ?リズがやってみるか?せめて、HPポーションとMPポーションだけでも、やってもらえると楽になるんだけどな。』

 「つ、疲れてない時にお願いします。」

 『そろそろ着くな。』


 最奥に到着すると、床に何かが蹲っていた。


 『[ホーリーキューブ]』


 光の箱に閉じ込めると、中で藻掻き始めた。


 『この魔人ブヒーって何をやったんだ?』

 「確か、悪魔とつるんで都市を壊滅させたんですよ。」

 『じゃぁ、害悪でしかないな。消滅させよう。』

 「魔人は、確か魔法では死なないとか何とか。」

 『めちゃくちゃ苦しんでるが?』

 「そうみたいですね。」

 『[コントラクション]』


 箱が収縮し始めると、中が真っ黒に染まった。

 魔力感知で、ビー玉の様な物が見えた為、攻撃してみた。


 『[ライトニードル]』


 魔人が箱の中で、死んだふりをした。

アルティスの魔法は、刺さった様に見えるが、穴が開いて掴まれているだけだ。


 『[ダークマジック・コンサプション]』


 光の箱の消費魔力を闇属性の魔力に設定した。

 だが、まだ少し弱いので、ワラビに手伝ってもらおう。


 『ワラビ、闇を光に変えるイメージをしながら、ダークマジック・トランスフォームと唱えてくれ。』

 「はい、畏まりました。[ダークマジック・トランスフォーム]!」


 一瞬、箱の中が光ったが、それ以上の変化は、外見上では見られないのだが、魔力の流れには、はっきりとした違いが視えていた。

 箱の中を対流していた魔力の流れが、大きく変わったのだ。

 

 『ソフティー箱と台座作って。神像入れて置いて行こう。』

 『判ったー』


 この手の面倒くさい奴は、真面目に消滅させようとしても、のらりくらりと躱され続け、時間を浪費するだけで終わるので、真面(まとも)に相手にせず、ひたすらに嫌がる事を続けるのが、一番効果的なのだ。

 だから、ソフティーの糸製の箱と、それを固定する台座、嫌がらせの神像を箱の中に入れて、放置する事にした。

 ホーリーキューブの維持の為に使う魔力を、闇属性の魔力に指定したので、箱の中で発生した闇属性の魔力は、ホーリーキューブの維持の為に吸収されるのだが、少し余る様なので、ワラビに手伝ってもらった。

 トランスフォームで闇魔法を光魔法に変えるのだ。

 この手の魔法は、闇魔法が消え去るまで残り続ける為、ワラビは今後、常に魔法を使い続けている状態になり、MPも常に減り続ける。

 神像が魔人に触れると、魔人が火傷をする為、魔人は神像を避ける様にしなければならず、箱は魔人の本来の大きさの5分の1程度の大きさしかない為、神像に触れない様にするだけで、常に闇魔法を使用している状態になり、その闇魔法は、ホーリーキューブの維持とトランスフォームに魔力を吸われ続ける事となる。

 魔人が何で構成されている存在なのかは知らないが、高い知能と高いMAGを持っている事は確かで、一筋縄では倒せないと思わせられる対応をされた事で、こちら側も一筋縄ではいかない姿勢を見せる事にしたのと、MAGを増やす為に利用したのだ。

 まぁ、一言で言えば、相手にするのが面倒くさいというだけだが、ただ消費し続けるだけではなく、利用し続ける。

 転んでもただでは起きない、利用できる物は利用し尽くすそんな信条を基に生きているのだ。

 アルティスにかかれば、魔人もただの経験値生産装置でしかないのだ。

 ただ、もう既にMAGが人外レベルの数値に達している事から、ホーリーキューブの方も他の人に頼みたいと思っているのだ。


 『他に使えるのは・・・ペティ?』


 ホーリーキューブは、光魔法の中でも、割と上位にある魔法で、発動にはMAGが500以上必要だ。

 ペティは、毎日魔法の鍛錬は欠かさず、先日500を超えたと聞いたばかり。

 お勉強は苦手らしく、あまりやりたがらないが、魔法については毎日頑張っているので、そこは応えてあげたい処ではある。

 性格も、派手は好まず、空気を読み、地位に拘らずに手を差し伸べられる、いい子だ。

 食い意地は張っているが、MPが回復する時は基礎代謝が上がる為、魔法を使い続けていれば、太る事はまぁ防げると思いたい。


 『ペティ、MAGを上げる為の丁度いいのがあるんだけど、使いたい?』

 『えっ!?何々?どんな事?』

 『魔人を懲らしめる、ホーリーキューブを維持するだけだよ。』

 『ホーリーキューブって、継続消費5MPだっけ?まぁ、総MP量が1万を超えた私なら、余裕があるという事よね?やるわ!』


 ペティのやる気が少し過剰な気もするが、キュプラに連れて来てもらう事にしよう。

 ペティは、この時、夢の一つが叶う事となった。

 勇者が封印した魔人を懲らしめるという夢が、ネギを背負って向こうからやって来たのだ。

 このチャンスに乗らない手は無い!

 キュプラの背に乗って、ペティがやってきた。


 「これが魔人なの?ただの黒い塊にしか見えないけど?」

 『絶賛嫌がらせ中だからな。外に出したら暴れるし、面倒くさいからな。』

 「面倒くさいって何が?」

 『魔人の性格だよ。命がけで死んだフリとかしちゃうし、攻撃を食らったフリして、実は避けていたりするから、面倒くさいんだよ。真面に相手したら、時間と労力を無駄にするだけだぞ。』

 

 ペティは今、言葉を飲み込んだ。

 それを言ったら、チャンスが逃げてしまう。


 「私は何をしたらいいの?」

 『あれをホーリーキューブで包んで、ダークマジック・コンサプションと、ダークマジック・トランスフォームを唱えるだけだ。』

 「判ったわ、やってみる。[ホーリーキューブ][ダークマジック・コンサプション][ダークマジック・トランスフォーマー]」

 『あ・・・大丈夫そうだな。』

 「ええ!?なんか間違えちゃった!?」

 『一段上位の魔法に変わったから、継続消費量が10になった程度だな。そしたら、もう一度、ホーリーキューブを唱えて終わりだよ。』


 闇魔法を吸収して維持するホーリーキューブと光魔法を吸収して維持するホーリーキューブで包み込んだ事で、ホーリーキューブ自体の強度が倍になり、益々魔人を苦しめる様になった様だ。

 もちろん、一番外側には、アルティスの張ったホーリーキューブが存在しているから、ペティの魔法が突破されても、出てこれないのだ。

 ペティは、再びキュプラの背に乗り、戻って行った。


 魔人を放置してから、周りの壁を見ると、不自然な部分に気が付いた為、何かあると思った。


 『あそこの壁を誰か壊して。』

 「はっ!私がやります。」


 カレンが剣を抜き、2閃した。

 岩の壁がずり落ち、中から40人を見つけた。


 [鑑定]してみたが、戦闘要員はおらず、カレースパンの人達を悪魔の依り代に使おうとしていたのかも知れない。


 『ワラビ、浄化しておいて。』                                                                                                            

 『判りました。』


 アラクネ絹の台座の神像は、魔人が邪魔で見えないので、40人を別に取り出した神像の前に出すと、状態異常が解除され、悪魔の気配が消え去った。


 洞窟から40人を引き連れて出て来た。

 すぐに兵士達に馬車に乗せる様に指示を出し、カレースパンに戻った。


 船上に戻ってすぐに、ワーウルフの二人が、アルティスに跪き、口上を述べた。


 「アルティス様、先程は助けて頂き、ありがとうございました。先程の魔人討伐も見事でした。つきましては、我々2名を貴方様の家臣の末席にでも加えて頂けないでしょうか!」


 アーリアの顔を覗き込むアルティス。


 「アルティスに任せるよ。」

 『じゃぁ、良きに計らえ。』


 この対応に、ミュールが反応した。


 『アルティス!何で私が仲間なのに、犬っころが家臣なのさ!私も家臣がいい!』

 『えー・・・、仲間じゃ嫌なのか。部下と仲間じゃ。仲間の方が対等だからいいと思うんだけどなぁ。』

 「アルティス、ワーキャットやワーウルフの掟には、恩を受けたら、忠義を貫けというものがあって、対等の立場では駄目なんだよ。」

 『それは、俺がミュールの実力を認めた、って事でも駄目なの?』

 『駄目なの!!』


 『じゃぁ、部下でいいけど、友人じゃなくなるのは駄目だよ?』

 『部下で友人?』

 『そう、友人って事が、俺には大事なの。様とか殿とか付けられると、距離を感じちゃうからさ、寂しくなるんだよ。』

 『あうあう、寂しくならないようにする。』

 『じゃぁ、ミュールはカレンの下で、ワーウルフはリズの下ね。』

 「『畏まりました。』」


 夕飯は、味に感動したワーウルフ達が、大騒ぎだった。

 食後、オーク集落から助けた妊婦達の腹の子を殺した。

 

 洞窟の奥から助け出した人たちは、魔薬で麻痺させていた様で、万能薬で中毒から解放されて、家に戻って行った。

 

 ワーウルフの二人を呼んで、装備を渡す。


 『二人の装備は、ボロボロだったから、新しい装備を支給する。まずは、下着、肌着、そして防具だ。』

 「ちょ、これ、もしかして、アラクネ絹ですか?」

 「凄い滑らかな肌触りで、気持ちいい!」

 『ソフティーお手製だぞ。勿体ないから使えない何て言ったら、追放する。』

 「着けます!」

 「この防具、軽い!?。これ、何の鱗ですか?」

 『ドラゴンだよ?』

 「「ブー!?」」

 「ド、ドラゴン!?倒したんですか!?」

 『いや、巣に行って拾っただけ。』

 「この下地は、マントの生地と同じだけど、何の革なんですか?」

 『ワイバーンだよ。』

 「「え?」」

 「ワイバーンの革って、もっと分厚くて重いんですよ?」

 『これだろ?、この革の裏側のザラザラ面は捨てて、この断面から剥ぐと、薄くて軽い革の出来上がりだ。』

 「防御力を失ってませんか?」

 『そこのナイフで切ってみろよ。』

 「ふんぬー!、切れません。刺さりません。凄いです!こんな使い方があったなんて!?」


 『お前ら二人は、拳闘もできるんだろ?、だったら、ガントレットもだな。ギミックがあるから、ちゃんと覚えてろよ?』

 「「判りました!」」

 『それから、武器なんだけど、明日戦闘力を見てから渡す。』

 「あぁ、それなんですが、片刃の剣ってありませんか?」

 『片刃で反りがあるやつか?』

 「はい、そうです。」

 『刀か、あの反りは、錬金術では再現できないんだよな。』

 「駄目ですか。」

 『そもそも、お前らは折ったんだろ?』

 「うっ、そ、それは・・・」

 「オークのこん棒を受け流せなかったの。」

 『当たり前だ。そんな使い方する奴に、刀なんて使える訳が無い。ロングソードがお似合いだよ。』


 日本刀が、この世界にも伝わってるなんて、考えもしなかったが、ドワーフなら作れるのか?

 一応鍛造が基本みたいだから、作れない事は無いのだろうが、あの反りを作れたとは思えないな。

 そもそも、剣術を見てみないと何とも言えないが、剣術では対応できないと思う。

 使い方の概念が、全く別物だからな。


 「アルティス、お風呂いかないか?」

 『いこう。二人もいくぞ。』


 銭湯に来てみた。

 まだ、なじみが無いせいか、ガラガラだったが、数人の住民が来ていた。

 アルティス達は、ペティ、アーリア、バリア、リズ、カレン、ルベウス、ヒマリア、リシテア、アリエン、ミュール、コルス、シーア、スーア、ウーリャ、フィーネ、ワラビの15人+2匹の大人数だ。

 アラクネ二人は、馬車の方でシャワーを使ってるよ。

 街に出てくると、大騒ぎになるから、疲れている時は、対応が面倒なんだよ。


 住民達は、入り方が判らず戸惑っていたが、アーリア達の入り方をみて、真似している様だ。


 「アルティスを洗うと、いつも泡が茶色くなるな。」

 『あるじが湯浴みしてくれないからだよ。』

 「むぅ、そんなに動いてないから、いいかと思ってな。」


 アーリアの発言に、コルスが忠告するが、ブーメランだ。


 「ちゃんと体洗わないと、臭くなりますよ?」

 「コルスよりは、臭くないから大丈夫だ。」

 「私は、最近ちゃんと洗ってますよ!?」

 『コルスは、[デオドラント]に打ち勝つ程の臭さだったからな。』

 「そうそう、最初は臭くて近寄れなかったよー。」

 「酷い!」


 別種族同士で話している事に、疑問を持ったウーリャが聞いてきた。


 「何でみんな喋れるの?」

 「このアミュレットを持ってるからだよ?」


 リズが説明した。


 「これもアルティス様が作ったの?」


 フィーネの質問にもリズが答える。


 「そうだよ。」

 「素晴らしい才能をお持ちですね。」

 『ワラビの才能も凄いと思うぞ?』

 「買い被り過ぎですよ。」


 カレンがリンスの話題に変える。


 「リンス使います?」

 「りんす?」

 「これ使うと、髪がサラサラになるのよ?」

 「使います!」


 アルティスが温泉の話を出した。


 『次は円形山脈かぁ、あそこの風呂もいいよな。戦争終わったら、あそこに温泉街でも作りたいな。』

 「いいですね、作りましょうよ!あそこは名湯ですから!」

 『前回は、入らずに通り過ぎちゃったからな、今回は入りたいよな。』

 「ちょっと熱いですけどね。」


 ワイワイ話が弾んでいたが、湯舟に入ると大人しくなるのだ。


 「はぁー、やっぱりお風呂はいいですねー。」

 『ルベウスの上が気持ちいい。』

 『アルティス、沈んじゃうよ!?』

 「腕で支えてあげるよ。」

 『ヒマリア達は、早めに上がれよ?、子供はのぼせるのが早いからな。』

 「リシテアの顔真っ赤だよ!?」

 「やばいやばい!」

 『頭と腋の下を冷やしてやってー』

 「氷出した方がいいんじゃないですか?」

 『氷を直接当てると、逆効果なんだよ。だから、水の方がいいのさ。』

 「何で逆効果になるんです?」

 『氷当てると、熱くならないか?』

 「あー、なるかもです。」

 『当てた所に血が集まってきちゃうから、氷よりも冷たい水をかけた方が冷えるんだよ。』

 「水をかけると冷えるんです?」

 『暑いとき、汗かくだろ?あれは、汗が乾く時に体の熱を奪っていくんだよ。』

 「そろそろ上がりますよ?」

 『乗せて行ってくれ。』

 「動かないと太りますよ?」

 『そうだなぁ』

 「そういえば、昨日、ワイバーンが3体あったじゃないですか。あれはどうやって倒したんです?」

 『水魔法使っただけだよ。』

 「・・・水魔法で、ワイバーンを撃ち落としたのは、多分、アルティスさんが、世界初だと思いますよ。」

 『そうか。』

 「しかも、あれ、殆ど無傷でしたしね。」

 『いい感じに口を開けてくれたからな。』

 「口の上側って、骨が厚いんじゃなかったですか?」

 『のどちんこの周りって薄いんだよ。首の骨も近いから、急所がたくさんあるんだよ。』

 「それにしたって、難しくないですか?」

 『ワイバーンってブレス吐く時って、口を上に開けるだろ?その時に、のどちんこ狙って撃てば、直線上に後頭部が入るんだよ。』

 「ほー、良く知ってますね、そんなこと。」

 『解体した時に、見てないのか?今度から、解体する時に、確認しながらやるんだな。チャンスだろ?急所を知れるんだからさ。情報は宝だぞ。』

 「肝に銘じます。」

 『お前の専売特許だろ?しっかりしろよ?』

 「そうですね。」


 フィーネの家名で思い出した、スタングレネードを作ってみようと思う。

 音と光でやるのではなく、スタンを使うだけだ。

 あ、やっぱりジョロキアも入れておこう。


 翌朝、急報が暗部から届いた。

 内容は、王都陥落だそうだ。


 『今まで持ってたのが、奇跡だな。』

 「ええ、既に落とされてると思っていましたから、驚きましたね。」


 王都にいた暗部達は、一旦王都から出たらしいが、また戻って情報収集を続けているらしい。


 『ま、想定の範囲内だから、やる事は変わらないな。』

 「そうだね、今更焦っても仕方ないしね。」

 

 平常通りでした。

 外に出ると、魔力感知に3つの反応がある。


 『何かいるな。上か?』


 見える範囲にはいないから、上空で偵察しているのかもしれないと思い、戦闘機に乗り込んで撃ち落としに行ってみた。


 『やっぱりいたよ。翼人族だっけ?』

 『殺すのか?』

 『殺さないよ?落とすから、キュプラとソフティーは受け止めよろしく。』

 『『りょーかーい』』


 アルティスに気付いた翼人族達は、急旋回して戻ろうとしたが、スタングレネードの試し撃ちをしたら、まとめて落ちて行った。

 下では、キュプラとソフティーが網を張って待ち受けている。


 『ちょっと勢いが付き過ぎてるな。[エアクッション]』


 [エアクッション]で、勢いを殺せたが、突き抜けて行ったので、まだ早いかもしれない。

 残り100m程の所で、再度[エアクッション]で勢いを殺して、網で受け止めてもらった。


 『まずは、ブローチを外して、洗脳解除の魔道具付けて、持ってる魔道具外して、チェック・・・何だこれ?』

 「何かあったのか?」

 『[鑑定]・・・ダッドアイのまつ毛。燃やそう。[ファイア]』


 翼人の体を再チェックしたら、直径1ミリくらいの毛があったので、鑑定してみたら、ダッドアイの睫毛(まつげ)と出た。

 アルティスが無事なダッドアイを見たのは、ほんの一瞬だけなので、睫毛があったかどうかなんて覚えていないから、ミュールに聞いてみたが、ミュールも曖昧な返答だった。


 『あの禿にまつ毛なんてあったっけ?』

 『無かったと思う。』


 睫毛をファイアで燃やしたが、煙が漂うばかりで霧散しないので、魔法で塵や埃と一緒に集めた。


 『つるっぱげだったよなぁ、まぁ、煙がうざいから、[アドソープション]吸着させて異空間にぽいっと。』

 『[治療術]』

 「うわぁ!・・・あれ?、ここは・・・」

 『人間の軍の真っ只中だ。』

 「捕まったのか、よかった。」

 『良かったとは?』

 「人族はみんな洗脳されて、戦わされているんだよ。何故か逆らえないんだ。」


 『あぁ、ブローチの効果だな。ダッドアイの魔法で縛られてるんだよ。』

 「そうか、だから負けてるのか。」

 「ここはどこなんだ?」

 『馬車の中だ。』

 「揺れてないって事は、止まってるのか?馬の足音は、聞こえているが。」

 『動いてるぞ?ほら。』


 「!?・・・恐ろしく、静かな馬車なんだな。」

 『そんな事より、魔王軍の戦力が知りたい。』

 「あぁ、それは言えないよ。偵察する前に隷属にされたからな。」

 『今、上書きしてやろう。[契約魔法:隷属]』

 「!?上書きされた!、どうやったんだ!?ダッドアイのMAG値は1200あるんだぞ!?」


 『俺は、もっと上だ。まずは名前を聞こうか。俺はアルティス、お前は?』

 「俺は、ルギー・ビトール。小隊長をしている。他の二人は?」

 『お前の後ろだ。まだ気がついて無い。』

 「そうか、よかった。俺達は、これからどうなるんだ?」

 『俺達の偵察部隊になれ。そうすれば、武器も防具も貸してやる。魔王軍にひと泡吹かせられるぞ?』

 「本当か!?、やってやろうじゃないか!あいつらのせいで、俺達の村が大変な事になったんだからな!」


 『よし、まずは、精神魔法を防ぐ魔道具を着けろ、そして、情報を寄越せ。』

 「何でも聞いてくれ。」

 『王都は陥落したのか?』

 「あぁ、人間はどこかに幽閉されているらしい。場所までは判らないが。」

 『オークの大群はいるのか?』

 「いるよ、倒した人間を食いながら進んで行くんだ。酷い事をする豚だよ。」


 『どのくらいの規模なんだ?』

 「オークだけで2万近くいる。他には、オーガ、サイクロプス、ホブゴブリン、トロール、トレントが主な戦力だ。」

 『総勢でどれくらいだ?』

 「6万だと聞いているが、山脈の外側には、ひしめいてるから、もっといるよ。」

 『配置は判るか?』

 「空から見れば、丸分かりだよ。色が違うからな。エルフは緑、ドワーフは銀、翼人族は白、判りにくいのは、レッドキャップとノームだな。」


 『悪魔はいるか?』

 「いるよ、後方にわんさかとね。」


 翼人達の話によれば、彼らの村は大木の樹上にあり、平和に暮らしていたという。

 しかし、そこへ魔族がやってきて、人間達の悪事がどうのこうのと喚き散らしたそうだ。

 普段、翼人達には人間との交流は殆ど無く、他人事の様に聞いていたそうだが、突然人間の国が攻めてきて、村を滅ぼされたそうだ。

 最初は、人間を恨んでいたが、翼人達は上空から監視できる事もあり、隠密行動という訳では無いが、樹上で休んでいる時に、魔族が会話している内容を聞いてしまった。


 「翼人どもめ、我ら魔族の話を他人事の様に聞きやがったから、人間を騙して襲わせたのさ。」

 「ほう、そんなに簡単に騙せたのか?」

 「簡単な話だ。人間に、翼人が樹上に金や宝石を貯め込んでいると吹き込めば、欲が深い人間は、簡単に軍を動かす。ちょろいもんだぜ。」


 話を聞いた翼人は、村へ戻り聞いた話をみんなに話した。


 「人間達のせいで、平和な暮らしが失われたと思っていたが、魔族の策略だったのか!?ぐぬぬぬ・・・許せん!、我らは樹上の民の筈が、こんな岩山に住まなければならん事になったのは、魔族のせいだったなんて、絶対に許さん!!」

 「我らを騙した事を後悔させてやる!!」


 と息まいていた直後から、記憶が無いという。

 ぼんやりとだが、良い様に使われていた記憶が残っているという。


 意識はあるが、自分が自分ではない様な感覚の元、動いていたらしい。


 洗脳というよりは、リモートコントロールされていた様な感じにみえる。


 『翼人は、他に何人いるんだ?』

 「全部で4000人程だ。他の部族も似た様な境遇で、魔大陸に移住してきたそうだ。」

 『君らの信仰する神は、誰だ?』

 「ロケットマン様だ。」

 『どっかの国の独・・・いやミュージシャンか?』

 「なんだそれは?」

 『いや、何でもない。どんな姿してるんだ?』


 翼人が書いてくれた絵は、ロケットに手足が生えて、羽が付いていた。


 『これは、勇者が描いたのか?』

 「そうだ。勇者様が伝えたのだ。何で知ってるんだ?」


 あいつ、ホント碌な事しねぇなぁ。


 とりあえず、神像を作っておいたよ。

 ぽっちゃりな、人じゃないよ?

 戦闘機に書かれている様な、ギザギザの歯を付けたら、怒られたよ。

 大きさは2cm程で、ネックレスにしてあげたら、喜んでいた。

 ルギー・ビトールがアルティスの前に跪いた。


 「我ら翼人族一同は、貴方アルティス様の為、この命尽きるまで、戦い抜く事をここに誓います!。」


 他の二人も同様に跪いた。

 一人は、ルギーの妹のテビア・ビトールで、もう一人は、クリン・タカート、テビアの恋人らしい。

 二人は結婚を誓い合った仲らしいんだけど、あげた指輪が無くなっていて、がっかりしているらしいので、二人には、お揃いの指輪を作って、クリンに渡しておいた。


 『早く渡してあげろよ?精神魔法耐性が付与されているからな、さっさと渡さないと、また狂わされてどっかに行っちゃうぞ?』

 「はい!、す、すす、すぐに、わ、わたた、渡してきます!」


 真っ赤な顔で動揺しまくってたけど、まぁいいか。


 あげた指輪は、心の底から外したいと思うか、鍵となる指輪を近づけない限り、外せない様にした。

 ついでに、指を切られても困るので、シールドとVIT値1000も付与した。


 興奮したテビアが、馬車から転落して、後続の馬車3台に轢かれたけど、無傷でピンピンしてたよ。

 さすがVIT値1000、骨が硬くなる。

 因みに、翼人の骨は、鳥の様にスカスカではなく、普通の人間より骨密度が低い程度で、体重も結構重い。

 飛ぶときは、風魔法の補助を使うらしいから、体を軽くする必要は無い様だ。


 羽が汚れていたので、シャワーを浴びせて、リンスを渡したら、薄めたものを羽に塗って、兄と婚約者を跪かせていた。

 羽が艶々になって、光って見えていたよ。


 彼等には、防具と魔道砲を渡して、腰には大容量の[ディメンションホール]付きポーチを着けさせた。

 中には、大量の化学兵器ではなくて、各種爆弾を詰め込んである。

 容量は、小学校の体育館くらい。

 渡した魔道砲は、バルカン砲タイプで、直径2cmの魔力弾を大量にばら撒く。

 砲弾は、カートリッジ式になっていて、弾種を変える場合は、カートリッジに繋がるチェーンカバーを交換するだけで変えられる。

 防具には、盾と鎧のセットにしてあって、盾には魔力を中和する効果を着けて、ステルス性能を向上させて、真ん中に切込みを入れて、魔道砲を撃つ時に防盾みいに使える様にした。


 『ちょっと飛んでみて。』


 上空に飛び上がった彼らは、魔力感知には殆ど映らず、ジッと見つめれば、何となく見える程度だ。

 目視では、簡単に見つけられるが、空を眺めてる奴でもいない限り、見つからないだろう。

 この世界の人はみんな遠視で、アーリアは視力20くらいある。普通の人でも視力10はザラで、オロシが近眼だった事に、誰も気づけない訳だ。

 オロシには、ヘッドアップディスプレイ付きのゴーグルを渡したよ。

 コルスも欲しがったけど、10分くらいで、要らないと言って来た。

 コルスが必要になるとすれば、夜間くらいなものだ。

 オロシの場合、式神を使って行動させる事があるから、安全な場所で式神から、送られてくる映像を見る事ができて、同じものを使っている仲間にも共有できるのだ。

 何か、オロシの周りだけ、近未来チックになってる気がする。


 道中オークに会う事も無く、円形山脈の麓にやってきた。

 お風呂を見つけた時、全員が入り終わってから、入り口を魔法で閉じておいた。

 あんなの敵に渡す訳には、いかないからね。


 入り口の魔法を解いて、中をチェックして、女性を先に入らせて、男は4回に分けて、全員入った。

 みんな、MAG値が上がるから、長湯したがるんだけど、お湯が熱すぎて何度も入りたがるから、凄い時間かかったよ。

 集団でのぼせた奴らには、かき氷をどっさり乗せてやったら、もう一回やってくれとか抜かすので、()(アーリア)を連れて来てやった。

 よく冷えただろ?背筋が。


 割と早く着いたから、焼き豚とソーセージを作ってみた。

 土魔法で小屋を作って、燻製小屋を作った。

 生ソーセージも作って、夕飯のおかずにしたよ。

 燻製小屋には、ソーセージの他に、ベーコンもぶら下げてあって、皮や出っ張りをすべて取り除いた、オークの胴や手足が釣り下げられているのをみて、猟奇殺人の現場にいる様な気分になった。

 せめて、半身にしようよ。


 偵察に出ていた暗部達が、近くにオーガの部隊がいると、知らせてきた。

 野生のオーガは、オークを餌にして生活しているらしいので、内乱を誘発できるかもしれない。


 [ディメンションホール]に入ってる、オークの死体の3分の1は、将棋倒しになって潰れた死体だったので、それらは巨大な寸胴で煮て、スープを作って、魔王軍のオーガ部隊の近くに置いてきた。


 鍋に気付いたオーガ達は、ガツガツと食べまくったが、当然足りず、中に入っていたのがオークの死体だと気付いて、空腹を満たすために、オーク部隊に襲い掛かってくれた様だ。

 鍋に興味を持って近づいてくるオーガ部隊と、目の前にいるオーク部隊。

 鍋を食べて、オークを狩って、作ったオーク鍋を食べる別の部隊、その繰り返しでオーガはオークを襲い続けた結果、オーク部隊の半分が食われた様だ。


 10万に届く大部隊の糧食が、そうそう調達できる訳など無く、空腹だった他の種族もオーガが食べ残した鍋を食べて、オークを狩り始め、オークの数はどんどん減り続ける結果となった。

 魔王軍は、洗脳などによって、部隊を統率していた様だが、本能の前には役に立たない様だ。


 魔王軍には、タイラントボアという巨大なイノシシの部隊も居たので、1頭を誘き寄せて、兵士達に狩らせて、丸焼きをトロール部隊の近くに置いた。


 トロールは、ペルグランデスースという、ハイエースくらいのイノシシを日常的に食べているらしいので、タイラントボアの丸焼きを10人程で食べ尽くしたあと、イノシシ部隊を襲い始めた様だ。


 何気に使える計略だ。

 今や、魔王軍は大混乱中だ。

 リザードマンの部隊に、焼いた干物をばら撒くと、リザードマン達は魚を獲りに行こうと部隊を離れて行き、エルフやドワーフは、知らん顔。

 狼や犬系のモンスターは、はらわた食うのに夢中で、周りを見ておらず、満腹になった連中は、寝始めた。

 その寝てる集団の上に、ジョロキア爆弾を投下してみると、寝起きで機嫌の悪い時に、何かの刺激の強い粉をかけられた事により、大暴れし始めた。


 後は、魔王がいる本隊周辺に、ジョロキア爆弾とタマタマ爆弾を落としてもらった。

 効果は覿面だった。

 ジョロキア爆弾でむせかえる中、タマタマ爆弾の粉を吸い込み、超興奮状態になった連中は、誰それ構わず襲い掛かり、精神操作が中断される事態に陥った。

 精神操作が中断されたことにより、自由になったエルフやドワーフ、それ以外の人族達が、持ち場を離れ、散り散りになって居なくなってしまった。

 魔物は大混乱、人族は居なくなり、本隊は阿鼻叫喚の大騒ぎで、数がどんどん減っていく。


 報告を聞いたアーリア達は、喜び半分飽きれ半分といった様子。


 「タマタマ爆弾ってもしかして・・・」

 『皆迄言うな。大量にあって困ってるんだよ。あんな物使い道無いから、粉にしてばら撒いてやったんだよ。』

 「暗部達には影響無いよね?」

 『一応フィルター付きのヘルメットを渡してあるから、平気だと思うよ。』


 フィルターとは、未確認のファンガスを調べていたら、フィルターファンガスという物を見つけたので、実験してみたら、泥水を通せば綺麗になり、煙を通せば新鮮な空気になるという、超高性能フィルターだったので、ヘルメットの吸気口に付けておいたのだ。

 このフィルターが付いていれば、毒ガスの中を歩いても、全然平気なのさ。

 コルスの腋臭の匂いを嗅いでも、判らなくなるくらいの性能だ。


 「私はもう臭くありませんよ!?」

 『じゃぁ、嗅いでみろよ。またミュールが寄って来なくなっただろ?』

 「当然です、嗅いでやりますよ!ほら!ぜんぜ・・・」


 また、白目剝いてぶっ倒れたよ。

 どうなってんだ、コイツの腋は。


 倒れている間に、腋の下に綿を挟んでおいて、それで爆弾を作ってやった。


 落としてみたら、落下地点の周囲から、魔物が消えたよ。

 凄い威力だ。

 東側の洞窟の前にも落とせば、入って来れなくなるんじゃね?という事で、内側の入り口から中に放り込んでおいた。


 洞窟の中から、蝙蝠が一斉に飛び出した様だが、問題無いだろう。

 ジョロキア爆弾より高威力なので、ちょっと悔しい。


 翌朝、暗部に魔王軍の様子を聞いてみたが、未だ収拾がついていない様だが、何故か魔王だけ一人ぽつんと、体育座りで膝を抱えて座っていた。

 今のうちに、さっさと王都に行って、制圧してしまおう。


 『という訳で、さっさと進軍してしまおう!』

 「何が、という訳でなんだ?」

 『だからぁ、魔王軍本隊が右往左往しているこの間に、とっとと王都を奪還しましょうって話だよ。』

 「途中の敵は?」

 『いるの?』

 「居たらどうするんだ?」

 『倒せばいいじゃん?それ以外に何かやる事でもあるの?』

 「無いけど、そんなに早く着かないだろ?」

 『行けるでしょ?並足じゃなければ。』

 「馬車が揺れるだろ?奥様のご気分が、悪くなられるのは、承服できん。」

 『じゃぁ、試してみれば?』

 「随分な自信じゃないか。」

 『自信あるよ?』


 乗り心地を試してみたが、ほぼ揺れず、全く問題が無かった。

 タイヤにした事で、細かい凸凹は感じられなくなり、大きめの凹凸は、先行部隊が均してしまうので、馬車が揺れる事が無いと言えるのだ。

 全くない!と言えないのは、道は平坦ではないからとしか言えないね。


 円形山脈の洞窟を抜けると、そこには、何も居なかった。


 『何もいないね。』

 「円形山脈の内側には、人族の兵が居た筈なんですが・・・逃げちゃったみたいですね。」

 『頭の悪い目玉の考えたやり方なんだろうけど、本当に馬鹿だったんだなぁ。改めて実感するよ。』

 「何で判るんだ?」

 『判るでしょ?、一人二人操るのとは違うんだよ。普通は、同時に考えて実行できる事なんて、3つも無いでしょ?何万もの兵を動かすには、一定の行動パターンを記憶させて命令すれば、簡単だと思うけど、本能には勝てないし、一旦線が切れれば、それを復旧させるなんて事は、並大抵の事じゃ無いんだよ。』

 『ましてや、意思に反する事をやらせるなんて、無謀もいいとこだよ。』

 『もう反抗心を抱いて、離れた人たちを元に戻すのは無理だろうね。できるとすれば、反抗できない何かを用意しなければ無理。』

 「人質か。」

 『そうだね、でも、右往左往している間に、手薄になった収容所を叩けば、取り戻せるよね。ブローチは、隠ぺいされているっぽいけど、疑われている現在も、隠ぺいが有効だとも思えないし、隠ぺいなんて、注目されれば意味は無いからね。』

 「だが、魔物はまだいるんじゃないのか?」

 『興奮状態の魔物を操作なんてできないよ。命令なんて聞く訳が無い。』

 「という事は?」

 『当分立ち直れないね。』


 馬車は、一路王都へ向かう。


 途中、ラバーフロッグが現れたが、瞬殺だった。

 シーオシャーケには、昼頃到着したが、街中は至って普通だった。


 「王都が陥落したのに、随分と平和な光景だな。」

 『まだ情報が届いてないんじゃない?』

 「2日経ってるのに?」

 『王都から人が帰って来なければ、遅いと思う人は居ても、全体に広がる程ではないよね。』

 「王城が機能しないだけで、この有様か。」

 『王城が機能していても、平和ボケしたこの国の人々じゃ、よく解んないで終っちゃうよ。』

 「どうすれば、伝わるんだ?」

 『毎年1回でいいから、決まった日に訓練をするんだよ。それで、信号弾なり通信なりで、連絡網を構築しておく。』

 『コルス、守備は?』

 『上々です。が、本当に準備だけでいいんですか?』

 『俺らがやった事を、さも自分達がやったとか宣伝されたら、女王の権威を示せないじゃん?』

 『まぁ、そうですね。』

 『夫人が女王として支持を得るには、それ相応の権威を誇示しなければ、受け入れられないんだよ。その為の結界だよ。』

 『そうですか。判りました。』


 「何をしてるんだ?」

 『女王が、女王たる所以を見せつける為の準備さ。』

 「そうか。だが、王国は広いんだぞ?、円形山脈の外はどうするんだ?」

 『山に神像でも掘って、全方位に権威を示せばいいんじゃない?』

 「それは、勇者がやろうとして、失敗したやつだな。」

 『何で失敗したの?』

 「確か、ワイバーンが攻撃してきて、石工が全滅したとかだったと思うが。」

 『キュプラとソフティーがいれば、安心じゃない?』

 「・・・そうだな。」

 『他にもアラクネはいるだろうし、仲間になってもらえば、もっと安心だよね?』

 「悪だくみ対策は?」

 『彼女らなら大丈夫だよ。もっと知能が低いのかと思ってたけど、全然頭いいし、良識も持ってるし、確固たる信念があるから、自分で判断できるよ。』

 「だが、殺される可能性が無いとは言えないのでは?」

 『ソフティー、うちら以外で傷を付けられる、可能性がある人間って居る?』

 『アルティスの魔道砲が怖い。』

 『他には?』

 『んー、無い。』

 「背後から狙われる危険性があるのでは?」

 『俺にも無理なのに?』

 「アルティスでも近づけないのか!?」

 『驚かそうと思って背中に乗ろうとしても、糸でくっ付くから、無理。』


 『遠くから魔道砲で狙われたら無理かも知れない。』

 『あれは、アラクネには当たらない仕様なんだよ。だから無理。』

 「アラクネには当たらないってどうして?」

 『アラクネの糸は、アラクネ相手では無力なんだよ。それで、アラクネの糸を使って作った魔道具もアラクネ相手には無力なんだよ。多分アラクネの糸には、そういう魔法か、何かの力が働いていて、アラクネ同士の戦いを無くしているんだと思うよ。』

 「敵にアラクネが居た場合は?」

 『魔道砲は使えないね。』

 『そうなんだ。安心した。』

 「他の材質で作ればいいのでは?」

 『んー、多分使い捨てになるね。鉄では耐えられないし、ミスリルも無理、オリハルコンは使い捨てで他は知らない。』

 「耐えられないというのは、どういう意味で?」

 『暴発する。』

 「暴発しない様に作る事は?」

 『できない事は無いけど、効率が悪いし、威力も低いよ。[ウインドカッター]程度になるから、アラクネの糸を突破できないね。』

 「ソフティーの糸は、確か火耐性を持ってるんだったよな?無敵じゃないか!?」

 『無敵だよ?、唯一対抗できるとしたら、あるじくらいだね。』

 「アルティスの爪があるんじゃ?」

 『粘着糸を使われたら、終るね。』

 「世界最強はソフティーか。」

 『えへへー』


 「今日のお昼は無しか?」

 『朝、ピタパン渡したでしょ?』

 「アレで済ませるのか。」

 『しゅんとした顔をしないでよ、王都に向かうんでしょ?あのピタパン作るの大変だったんだからね?』

 「一体、何個作ったんだ?」

 『8000個』

 「そんなに作ったのか!?」

 『何があるか、判らないからね。余分に作ったんだよ。』

 「何も無ければいいのだが。」

 『ほんとにね。』


 夕方、ミーソジールに到着すると、バリケードで通り抜けできない様になっていた。

 検問では、剣を向けて威嚇する兵士に囲まれた。


 「これは、何の真似だ?」

 「ここを通す訳にはいかない!全員ここで死んでもらう!」

 「貴様如きが、私に勝てるとでも?」

 「ふん、石弓も狙ってるんだぞ!」

 「何故そこまでする必要がある?」

 「我々の家族が、魔族に囚われて、人質にされているんだ!お前らを殺せば解放すると言っているんだ!」

 『洗脳はされていないね、言ってる事が本当の事だとしても、このままでは駄目だよねぇ』

 『コルスー』

 『今探しています。』

 『どこを?』

 『この街の中です。街からは出ていないそうなので。』

 『館の地下だね。ここのは領主?官吏?』

 『領主です。殺しますか?』


 『生け捕りで。色々聞きたいしねぇ。兵士全員の家族を捕えるなんて、いくらなんでも、手際が良すぎるんだよ。洗脳されてるか、乗っ取られているか。』

 『ゴーグルで見た結果、乗っ取りではない様です。洗脳されている様子も無いそうなので、本人の意思かも知れませんね。』

 『盗聴は?』

 『外からの接近は厳しそうです。』

 『櫓を破壊しちゃえば?』

 『死人が出ますが?』

 『仕方ないね。悪事の片棒を担いでいるんだから、生かしておいても死罪確定だよ。』

 『駄目なら外で、対応せざるを得ない様にしてやればいい。』

 『了解しました』

 『全員に告ぐ、戦闘準備!いつでも出られる準備をしておけ!但し、兵士は殺すな。』


 その時、領主の館から爆発音が聞こえた。

 コルス達が始めた様だ。


 周りを取り囲む兵士達は、気が気でない様子で、チラチラと館を見ている。


 『散開して制圧しろ!』


 馬車から兵士達が次々と降りて行く。

 城壁から矢が放たれるが、幌馬車の幌に跳ね返され、兵士に当たっても跳ね返され、弓兵たちは驚愕の表情を浮かべて、固まっていた。

 そこへたどり着いた兵士が、弓兵達を昏倒させる。バリケードの前は一瞬で制圧された。


 『コルス、こっちは片付いたぞ。』

 『こちらも地下に侵入しました。兵士達の家族が多数押し込まれてまして、具合の悪い人も居るようです。』

 『ポーション使ってもいいぞ。バンバン使え。』

 『了解です。』

 『バリア大隊は、この場を保持。リズ大隊、カレン大隊は領主の館を制圧するぞ。進め!』

 『保持だけでいいんですか?』

 『余裕があるなら、街の方を回れ、魔族が居たら殺しても構わん。』

 『了解』


 馬車をバリケード前に残し、守りはキュプラ、ソフティーはアルティスの背中、アルティスは、戦闘機に乗って上空に居た。

 王都の南門から、魔族とエルフらしき姿がぞろぞろと出てくるのが見えたが、ソフティーを降ろし、ブローチを取ってもらった。

 ソフティーを見た魔族達は逃げ出したが、糸で引っ張られブローチを回収されると、その場でほとんどが気絶した。

 対して、エルフ達は逃げずに立ち尽くし、ブローチを取ると、その場で土下座した。

 知り合いにアラクネがいるのだろうか?


 領主の館の攻防もすぐに終った。

 うちの連中の相手じゃないね。

 すぐに地下にいる人達を外に出して、治療と配給を始めた。

 幸いにも、街中に魔族はおらず、バリケード前の兵士達も、すぐに領主の館に連れて来たので、泣きながら喜んでいた。


 ここの領主は、元々はタラコ・ドリアンエキスだったが、魔族に乗っ取られてたのを見つかり、死罪になった筈だ。

 捕まったのは、その嫡男で、トビコ・ドリアンエキスというらしい。

 こいつは、王都が魔王軍に落とされた時、街の兵士が、逃げようとしていたのを止める為に、家族を捕らえたと主張したが、その割に待遇が悪すぎると思うのだ。

 そして、アーリア達を殺そうとした、意図も意味不明だ。


 「本当の事を言わないと、恐ろしい目に遭うぞ?」

 「ふん、騎士風情が何を言う。私を誰だと思ってるんだ?」

 「逆賊のトビコ・ドリアンエキスだな。」

 「なんだと!?きさま!殺してやる!」

 『ソフティーおいでー』

 『はいはーい』


 「ぎゃぁぁアラクネ!こっちに来るな!助けろ!おい!俺は公爵だぞ!やめろ!うああああああああ」

 『[ウォーター]』

 バシャッ

 「はっ・・・何だ夢か・・・ばかばうああああああああ、アラクネ・・・」

 カタカタカタカタカタ

 「まだ、本当の事を言う気にならんか?」

 「判った、話す!話すから遠ざけてくれ!」

 「話したら遠ざけてやろう。」


 「ま、魔王の手下が来て、お前達を殺せと言われたんだよ!」

 「兵士の家族を牢に入れたのは?」

 「俺を置いて逃げようとしたから、罰として捕らえたんだよ!」

 「そうか。」


 『ソフティーありがとう。』

 『はーい』

 『建物の中に食べ物があるから、食べていいよ。』

 『わーい』


 見ていた兵士が、公爵の処遇を聞いてきた。


 「おい、こいつはどうなるんだ?」

 「貴様!身分をわきまえろ!」


 ドリアンエキスの監視をしていた兵士が、アーリアに話しかけた兵士を制止するが、アーリアは許可した。


 「いや、いい。こいつは死罪だ。」

 「そうか、ありがとう。」


 聞いてきた兵士は、アーリアの回答を聞くと、穏やかな笑顔になり、礼を言って戻って行った。


 「ドリアンエキスを牢に入れろ!」

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