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第10話 バネナ王国とアラクネとの初遭遇

 翌朝、女子達の機嫌がすこぶる良かったのをみて、メビウスが気が付いた。


 「髪がすごく艶々してますね!」


 この後のセリフは、ちょっと恥ずかしくて俺には解説できないな・・・。

 他の男共は、小声で「爆ぜろ」とか言ってた。


 寝る前に、念話で執事さんに、石鹸とリンスの話をしておいたので、後は向こうでやってくれるだろう。

 いや、石鹸の方できるか?


 食堂で朝食を摂っている時に、貴族の使用人が来て、髪の事を聞いてきた。


 「あのう・・・、ちょっとよろしいでしょうか?」

 「なんでしょうか?」

 「その、女性の方の髪がすごく艶々しているので、何を使っているのか教えて頂けないでしょうか?」

 「ホリゾンダル家謹製のリンスです。」

 「ホリゾンダル伯爵家ですか?」

 「はい、その通りです!」

 「それはどちらで買えますか?」

 「まだ流通はしておりませんので、もう少しお待ち頂くしか無いですね。」

 「そ、そうですか・・・、ありがとうございます。」


 ペティの話では、モコスタビアの周辺では、養蜂が盛んで、植物オイルも生産されているので、この商品は都合がいいのだそうだ。よかったね。

 養蜂にちなんで、ちょっと聞いてみた。


 『乳幼児の死亡率が高かったりしない?』

 「なんで知ってるの?、ちょっとびっくりしたわ」

 『やっぱり・・・』

 「何がやっぱりなのよ?」

 『はちみつは庶民も買えるの?』

 「そうね、モコスタビアでは一般的な商品だからね!」

 『はちみつは乳幼児にはあげちゃいけない物って知ってる?』

 「!?」

 「知らないわよ?、なんでダメなの?」

 『はちみつには、いろんな花の蜜が混ざってて、中にはばい菌がいたり、毒草もあるわけだ。』

 「そうなの?」

 『子供は抵抗力が低いから、そういうのに負けるんだよ。』

 「えー!?、そうなんだ!」

 『5歳くらいまでは、はちみつをあげない方がいいんだよ、もちろん加工品もダメだよ』

 『大変驚きました、すぐに旦那様に対策を取っていただけるよう、進言しておきます!』


 しれっと執事さんが会話に入ってきた。

 もう皆スルーしてるな。

 何となく予想もできたしな。


 そして、食堂ではなく、ロビーで会話していたからか、後ろでルースに貴族の使用人が何の話か聞いて、それを夫人に話した様だ。

 宿を出る直前に、夫人が泣き崩れるのを見た。

 残念だろうな。


 まぁ、普通にはちみつは、栄養満点で滋養にいい食べ物って認識だから、子供にも食べさせる気持ちは判らなくもない。

 日本でも、はちみつの危険性について知られ始めたのは、結構最近だったりするしな。

 安全だと思って食べてた物でも、実は危険だったものなんて幾らでもある。

 知らなければ判らないのは当然で、知ったのなら気を付ければ防げるのだ。


 こっちの世界では、知らない事ばかりだから、気になったら調べていきたいね。


 『コルス、針補充しなくていいの?』

 『昨日の夕方に注文して、後で取りに行く事になってますよ』

 『そか、よかった。』


 『冒険者ギルドにもいかないとな。』

 「なんで?」

 『なんでって、釣り大会の優勝者に銀貨渡さないつもりか?』

 「あ、忘れてた!」

 『おいおい、次やる時、誘ってあげないぞ?』

 「渡します!渡しますすよ!だから、のけ者にしないで!?」

 『みんなも知らない振りしない!』

 「「「「「「ごめんなさい」」」」」」


 「結局数の勝負は誰になるの?」

 『コルスだな。』

 「ペンタは?」

 『あれは釣りじゃなくて捕獲だろ。』

 「ですよねー。」

 『でも、飛んでくるのを次々と叩き落して、後ろに行かせなかった手腕は、凄いと思うよ。』

 『だから、俺から銀貨10枚を進呈しよう。』

 「ほ、ホントですか!?、わーい!」

 「ちょ、ちょっと待って下さい!、私の方は釣ったのに、賞金少ないんですが!?」

 『じゃぁ、俺からは銀貨3枚あげる』

 「え?、あ、いや、まぁ、はい、ありがとうございます。」

 『嬉しそうじゃないからやっぱダメ。』

 「待って、待って、嬉しいです!嬉しいですよ!」


 賑やかで楽しいな。

 このあと、雑貨屋で器を大人買い、寸胴も大人買いして、冒険者ギルドでメビウスとコルスに賞金を、ペンタに残念賞を渡した。


 次の街までは、2日かかるそうだ。

 何故かというと、円形山脈を越えなければいけないからだ。

 円形山脈は、王都のある平野を壁の様に囲んでいて、昔はこの円形山脈が国境だったそうだ。

 円形山脈の内側と外では全く違う植生らしく、飛べる魔物は同じでも飛べない魔物は殆ど狩り尽くされてて居ないらしい。

 居るのは、野生化した元家畜と野盗などの人間だそうだ。


 『さすがに人間は食えないしなぁ、元家畜ってどんなのがいるの?』

 「牛、豚、鶏、山羊、羊、トカゲ、ゴーレムかな?」

 『トカゲ!?、ゴーレム!?、え?それ食うの?』

 「ゴーレムは食べないよ?、昔の戦争の時の遺産ってやつかな?」

 『ゴーレム家畜じゃないじゃん・・・』


 トカゲって家畜になるのか、肉の為に肉の餌やるのか?効率悪そうだな。


 『脱走ゴーレム?』

 「脱走ゴーレムじゃなくて、敵国が放った奴が、未だにいるんだよ。」

 『戦争って何年前の話?』

 「100年くらい前かな。」

 『くっそ迷惑な話だな。』

 「そうだね、本当は10年くらいで動かなくなる筈だったらしいんだけど、未だに動いてるんだって。」

 『どれくらいいるの?』

 「正確には判らないけど、まだ1万は居るって話だよ。」

 『最初にどんだけ放ったんだよ・・・。』

 「20万。」


 これから攻めようって国に、自立式ゴーレムを20万も放つなんて、馬鹿だろ。


 『バカじゃねぇの?そいつら。』

 「バカだから滅んだんだよ、自国内でゴーレムが暴れて、王都が壊滅したらしいよ。」

 『それ、仕掛けたのはこの国のスパイか?』

 「さぁ?」

 『俺が軍人だったら、スパイにやらせるな。』


 戦争なら自国の被害を減らす努力を普通はするよな。


 「そうなの?」

 『だって、生産拠点を攻撃した方が、後が楽だろ?』

 「そうだね・・・」

 『それで自滅するかどうかは、敵国内の話だからな。』

 「それもそっか。」


 そんな事あり得ないとか、思ってたんだろうか?そもそも、攻め落とした時にゴーレムなんてウロウロしてたら、統治どころの話じゃないだろ。

 どうするつもりだったんだろう?

 

 『今更だけどさ、この国の名前ってなんていうんだ?』

 「あ、教えて無かったね!、バネナ王国だよ」

 『バナナ王国!?』

 「違うよ、バ・ネ・ナ王国だよ。」

 『びっくりした・・・王家の家名は?』

 「バネナエキス家だよ」

 『バナナエキス!?』

 「違うって、バ・ネ・ナ・エ・キ・スだよ」

 『どんなエキスだよそれ・・・』

 「開国の祖が確かエキスマキナっていう名前だったかな?」

 『エクスマキナだろ、それ。』

 「え?知ってるの?」

 『救いの手って意味でエクスマキナというのは知ってるが、エキスマキナは知らん。訛ったのか、単純に間違えたのかは知らんが、とんでもない事になったな。』

 「・・・何か、とんでもない事を聞いてしまった気がする。」

 『その開国の祖とやらの名前がマキナなのか?』

 「そうそう、マキナらしいね。家名が前に来るなんて、遠い国から来たんだろうね。」

 『家名が前って事は、マキナエキスなのか?どうせ勇者だったとかそんな話だろ?』

 「なんで判るの!?」

 『定番だよ。』


 何か、この国ちょっとヤバい気がしてきた。

 勇者って、きっと異世界人だったんだろうと思うけど、かっこいい名前にしようとして、間違えちゃったんだろうな・・・残念勇者だな。

 そんなやつが始祖だから、ナットゥとかタックアーンなんて街の名前が残ってるのかもな。

 てか、王都周辺の街の名前が心配になってきた・・・。


 『次の街の名前は何?』

 「シーオシャーケだよ」

 『和食シリーズかよ、そっちで来たか・・・ミーソシールじゃなかったな。』

 「え?何で知ってるの?その次の街が、ミーソジールだよ」

 『!?・・・相当食いたかったんだな。』

 『ティーケージーって街は無いよな?』

 「あるよ?」

 『あんのかよ・・・』

 「ティーケージーって何の事なの?」

 『たまごかけごはんの事だよ。』

 「それ美味しいの?」

 『美味しいけど、危険だな。』

 「危険なの?何が危険なの?」

 『卵ってのは、鶏の肛門から出てくるんだよ。だから、殻にはバイ菌が一杯着いてるんだよ。だから、殻を消毒してからじゃないと、最悪死ぬ。』


 鶏の肛門の途中に卵管が繋がっていて、肛門から卵が出てくるのだ。

 だから、殻にはサルモネラ菌が着いていて、外国人は、生卵を食べるのを怖がる。

 日本は、卵の殻を消毒して出荷するから、生で食べられるんだよ。

 卵のパックに書いてある賞味期限は、生食できる期限だ。

 生食禁止の卵が売ってる場合は、殻を消毒してないって意味だから、生で食べない様にしようね。

 卵自体は、半年くらいもつらしいよ。

 

 「・・・卵食べるのやめようかな・・・。」

 『卵食べないってなると、色々食べられなくなるぞ?、パン、マヨネーズ、唐揚げ。米があるなら、もっと増えるし。』

 「やっぱり、卵食べる!」

 「王都に行けば、ご飯もあるから、ティーケージー食べられますよね?」

 『醤油が無いからなぁ、厳しいかもしれない。小魚が捕れてれば、魚醤作れたんだけどなぁ。』

 「ぎょしょう?」

 『魚を原料にした、調味料だよ。』

 「美味しいの?」

 『食べ方によるかな。』


 「それでね、公爵家の名前がね。」

 『その話まだ続けるの?』

 「王都に住むなら、必要な知識だよ?」

 『どうせ、何とかエキスって名前なんだろ?』

 「そうだけど、知っておいた方がいいって、ね?」

 『判ったよ。』

 「王弟の家の家名が、ケールエキスでー」

 『青汁かよ!』

 「前王の弟の家が、ゴーヤエキスでー」

 『苦いよ!』

 「王女の婿さんの名前が、ドリアンエキスなのよ」

 『臭いよ!』


 何だよ、公爵家って不味そうなエキスばっかりだな!


 「青汁ってなぁに?」

 『草臭い不味い健康ドリンクだよ。』

 「ゴーヤはなぁに?」

 『苦い瓜だよ。』

 「ドリアンはなぁに?」

 『おなら臭い果実だよ。』


 『全く、まともな名前が無いな。』

 「そ、そうだね・・・あ、あははぁ・・・」


 ペティの質問の答えに、アーリアが渇いた笑いをしている。


 『王太子は居ないの?』

 「王太子の名前はイチゴだよ。」

 『随分かわいらしい名前だな、イチゴバナナエキスとか、美味そうだな。』

 「バネナだよ、イチゴ・バネナエキス」

 『王様の名前は?』

 「なんだっけ?、確かハバネロだったかな?」

 『辛そうだ、ハバネロ・バナナエキスとか。暴君って訳では無いんだな?』

 「違うよ?名前も性格も間違ってるよ?」

 『王妃の名前は?さすがにまともだよな?』

 「エシャロットだったかな?」

 『まともじゃなかったー!、エシャロットバナナエキスとか不味そう!。普通薬味だよ!、味噌ディップして食べたらつまみに最高なんだよ!?』


 なんで、食い物の名前ばっかりなんだよ。

 しかも殆ど不味そうとか、拷問かよ。


 もう、やだこの国。

 絶対笑わせに来てるよね。 



 「ねぇ、何でアル君は、そんなに色んな事知ってるの?」

 『元異世界人だからな。たぶん、そのエキスマキナと同じ世界から来たんだよ。』

 「「「「「「「「ええー!?」」」」」」」」

 「ちょ、ちょっと待って、異世界人なの?ホントなの?」

 『元な、元。向こうで死んだのかどうか知らんけど、起きたらこの姿だったんだよ。記憶はそのままでね。』


 もう隠すの面倒だから、バラしたよ。

 これ以上黙ってても、説明が苦しくなるだけだからね。

 洗い浚いカミングアウトする!


 「えっ、って事は、料理も全部異世界の料理って事?」

 『そうだよ?、元々一人暮らしで自炊してたからな、色々作って食ってたんだよ。』

 「異世界ではいくつだったの?」

 『52歳。』

 「マジ?」

 『マジ。』


 「勇者様も同じ世界って事は、何で判るの?」

 『んー、多分同じって感じかな。時代は、ちょっと判らないけど、そんなに大差無い感じ。』

 「多分というのはどうして?」

 『だって、異世界が一つって訳じゃ無いだろ?』

 「他にもあるの?」

 『それは判らないけど、スケープゴートと同じ様な感じで、1個あれば他にもあるって考えられるだろ?』

 「はぁ・・・?」


 『異世界には、並行世界って考え方があってね、似た様な、違う世界が沢山あるって考えがあったんだよ。パラレルワールドって呼ばれてたけど。』

 「そのパラレルワールドっていうのはあったの?」

 『空想だよ、でも、ある可能性もある。って感じ。』

 「よく判らないけど、難しい事を考えるんだね。」

 『この世界にだってあるかも知れないしな。』

 「例えばどこに?」

 『夜空に光る星の近くにあるかもしれない。』


 宇宙人とか居ても、おかしくない話だからな。

 そもそもこの世界が、別次元にあるかどうかも判らないし、同じ次元の別の星って可能性もある。

 地球ではないのは、判っているけど、次元については判らないとしか言いようが無い。


 ペティが話題を変えてきた。


 「ねね、何て言う国から来たの?」

 『日本国だよ。』

 「わぁ、同じ国だ。」

 『そうだね。』

 「伝記読んだんだっけ?偶に、伝記読んで、自分も同じ世界に居たとかいう人いるけど、それとは違うって言える。」

 『言えるけど、証明するのは難しいよね。』

 「アキハバラの事とか、伝記には載ってない事を知ってれば、できるんじゃない?」

 『勇者はオタクとか?』

 「オタク?」

 『まぁ、説明しづらいから、また今度。』


 「王都の博物館にね、勇者の残した神像があってね、小さいんだけど、カラフルでかわいいのよ。」

 『フィギュア持ってきたのか・・・、見てみなきゃ判らないけど、見ても判らない可能性はある。』

 「不思議な素材でできてて、1000年経っても色褪せないんだって。」


 『何でできてるんだっけかなぁ?ABSとかかな?部品はアクリルもあるかも、でも千年も持つか?保存魔法とか使ってるのかもな。』

 「凄い、勇者様が言ってた言葉がそのまま出てきた・・・。」

 『そうか、俺もあんまり詳しく無いんだけどな。』

 「その素材って作れる?」

 『無理。』

 「そっかー、何か壊れたとかで、修理できる人を探してたんだよね。」

 『同じ素材なんて無理だよ。この世界には石油なんて見つかってないだろ?』

 「石油って燃える水の事?」

 『あるのか、でも、それがあっても、精製できないと意味が無いし、他の薬品も純度の高い薬品が無いと無理だろうな。』

 『そもそもだ、高度な技術と高い計算能力と豊富な経験と知識を、何万人もが使って、70年かけて開発した物を、簡単に作れてたまるかっての。』

 「それは無理そうだね・・・。」


 PCも無いこの世界で作れる訳がない。

 たとえ、古代文明がコンピューターを使っていたとしても、多分ABSも作れないだろう。

 だって、この世界には魔獣がいて、もっと優秀な素材を魔獣が落とすんだからな。

 プラスチックなんて作る必要性が無い。


 『もう、いいかな?』

 「うん、もう大丈夫。」

 『今は、目の前の事に専念しよう。王都に行かなきゃいけないんだからね。』

 「そうだね、命がけの旅をしてる途中だからね」


 『そうそう。この辺の魔獣とか、山脈の魔獣とか教えてもらわないと!』

 「この辺の魔獣は、ピッグブルだね、凶暴な四つ足のオークと、普通のオークがいるよ。」

 『オーク!、強いの?』

 「オークは知恵が回る分強いよ。ピッグブルは、オークが飼ってる番犬らしい。」

 『と、いう事は、連携してくるって事?』

 「そうだね、やっかいな地形だと苦戦するかもしれないね。」

 『オークって食べるの?』

 「美味しいよ?」

 『ポークジンジャーに、ポークソテー、とんかつにトントロかぁ。』

 「!!」

 「やるぞ!みんな!!」

 「「「「「「「おー!!」」」」」」」

 『やる気出してるところ悪いけど、米って無いの?』

 「オコメって王都に売ってるよ?」

 『マジか!味噌と醤油は?』

 「ミソとショーユは勇者が食べたがってたけど、結局作れなかったはず。」


 作ろうとはしてたのか、大豆の問題かな?


 『なんで?』

 「コージっていうのが見つからなくて。」

 『もう持ってるな・・・。』

 「え?どれ?」

 『モルトファンガスだよ』

 「あれがそうなの?、でもそれを使っても作れなかったって書いてあったよ?」

 『多分作り方を間違えてるんだろうなぁ』


 味噌を作る時は、大豆と麦麹を混ぜて丸めて、隙間なく漬け込まなければいけない。

 上に布を被せて、乾燥を防ぐ必要もある。

 麹カビが上に浮いてくるから、知らない人なら腐ってると思うかも。

 醤油は元々味噌から出た汁で、作り方は一緒って知ってる人は少ないよね。


 田舎の家でも、手前味噌は作っても手前醤油は作ったって話は聞かないし。

 水分の量が違うだけなんだけどね。

 搾ったばかりの生醤油は薄い色だけど、時間がたつと黒くなるが、黒い麹を使って、初めから黒い醤油を作ってるところもあるみたいだ。


 「そうなの?」

 『作るのに1年くらいかかるからな。』

 「それは無理かも」

 『博物館に1000年前のが残ってたりしてな。』

 「残るの?」

 『多分無理』


 味噌のつくり方なんて、田舎住まいじゃないと普通は知らないからな。

 ましてや、アキバのアニメオタクじゃ多分無理だ。

 醤油も味噌も、材料一緒なんて事も、知らなかったかもしれないな。


 「オーク発見、前方左側オーク2体!」

 「戦闘準備!、周辺警戒怠るな!、ピッグブルが隠れてるかもしれんぞ!」

 「「「「了解!」」」」

 『オーク2体か、レーダーには3体いるな。アレがピッグブルって事か。』

 『ピッグブル左側面から接近!』

 「任せて!、行くよ!」


 ピッグブルが左側から突進してきた。

 幌馬車の側面に当たりそうな場面だが、リズが剣で足を傷つけ、転ばせた。


 「っ!」

 ズザザザー

 「ピギーピギー」


 ギリギリで止まったので、馬車は無傷だ。


 「ふっ!」

 バシッ

 「うわぁ」

 

 メビウスが首に攻撃を仕掛けたが、鼻先で弾き返されてダメージを与えられなかった。


 『猫パンチ』


 アルティスは、ピッグブルが起き上がった所を、前足を猫パンチで足払いして、ひっくり返した。


 「今度こそ!」

 ザクッ


 メビウスが再び首に剣で攻撃を仕掛け、深手を負わせた。


 「えいっ」

 ザクッ


 リズが、反対側から首に深手を負わせ、ピッグブルはそのまま死んだ。


 前方のオークはアーリアが行ってるから大丈夫だ。

 オークの状況を見ると、1体は既に倒れていて、2体目を攻撃している所で、右足には針が刺さっているので、動きが悪くなっている。

 オークが持っている武器は、大きなこん棒で、当たれば大怪我をしかねないので、ルースとペンタがけん制しながらタゲを取っている。


 「こん棒に気を付けろ!」

 「おっと、そう簡単に当たってたまるかよ!」

 

 背後にはバリアがいて、首を落とすべく水平に薙いだ。


 「フッ!」

 ズバッ

 ボトッ


綺麗に首が切れて、頭が地面に落ちた。


 『よし、ピッグブルとオーク1体は血抜きできてるな。もう1体はどお?』

 「今から首を落とすよ」


 血が大量に出るので、穴を掘りそこに血を流し込んで、解体を始めた。


 ピッグブルは、肉質は硬めで筋肉質、オークは柔らか目で脂肪が多い。

 傷口の断面からは、皮の下に分厚い白い層が見えるから、皮を剝いたらラードが大量に採れそうだ。

 オークはオスしか居ないらしく、定番通りに人間の女を狙うそうだ。

 捨てる部位はあまり無く、股間のアレは強壮剤として高値で売れるらしい。


 内臓も、よく食べられているらしいが、今回は、肝臓、腎臓、腸のみ残して、後は埋めた。

 肉は部位毎に切り分け、捨てるのは手の平と足首から下のみ。頭は討伐証明と全体的にゼラチン質の為、女性に人気らしい。

 

 ピッグブルの方は、肉は安いが、こちらも捨てる所が殆ど無いらしい。

 股間のアレはすてるとか。

 オークの玉をメビウスに、欲しいか聞いてみたが、リズが顔を真っ赤に染めながら、首をブンブン横に振ったので、売る事にした。

 まぁ、ファイアがエクスプロージョンになるらしいから、じじい向けなんだろう。

 いや、ヘイストが、身体強化かな?。

 などと考えていると、コルスが話しかけてきた。


 「アルティスさん、エロい事考えてます?」

 『欲しいのか?』

 「要りませんよ?、私使わないので。」

 『じゃぁ、俺の事揶揄いに来たのか?』

 「はい。」

 『よし、コルスの食べる分に入れておいてやろう。』

 「ちょっと、やめて下さいよ。興奮して、アルティスさんを襲っちゃうかもしれませんよ?」

 『あるじを躱して?、できると思う?』

 「・・・あは、あはははは、無理です。」

 『いま、不穏な事考えたろ?、最近のあるじは、お前の師匠より勘がいいからな?』

 「そ、そういう事は、先に言ってくださいよ!?」

 「コルス、ちょっとこっちに来い。」

 ガシッ

 『がんばれー』

 「ちょ、待って、ごめ、ごめんなさい!、もう思いませんから!、痛い痛い痛い」

 「ぎゃああああぁぁぁ」


 「コルス、どうしたの?、何かやったの?」

 『あるじに対する酷い事を考えたんだよ。』

 「あぁ、そうなんだ。アレ痛いのよねぇ。」

 『ペティもやられたの?』

 「ちょっとイラッとした時にね、思っちゃったのよ。」

 『あぁ、それは大変だったね。』


 「ちょっと!、酷いじゃないですか!、凄い痛かったんですよ!?」

 『それは、コルスがいけないんじゃないか。俺のせいにするなよ。』

 「だって、アルティスさんが、オークのアレの使い道なんて考えてるから、気になるじゃないですか!?」

 『使い道じゃなくて、効果の程を読者に判り易く解説しただけだろ?』

 「読者って何なんですか!?」


 『そんな事より、早く解体しろよ。』

 「もう終りました!」

 『アレの皮は剥かなくていいのか?』

 「あのセットは、そのままの方が、高く売れるんですよ!」

 『じゃぁ、早くディメンションホールに入れないとじゃないか。』

 「手袋取ってきます。」

 『流石に、素手では触りたく無いか。』

 「無理です。」

 


 『さて、ある程度解体も終わったし、昼休憩できる場所に行こうか』

 「「「はーい」」」


 少し先に進むと、河原があり、目の前に滝がある場所を見つけ、昼飯の準備に取り掛かった。

 豚骨かぁ、ラーメン食べたいなぁ。

 でも、麺も無いんだよなぁ。

 作るとしても、ラーメンは今のところ塩ラーメンしか作れないが、まぁ仕方ない。

 木耳は確認できてないけど、似た様な物はきっとあるので、探してみたい。


 さて、今回の昼ごはんは、ゆで豚とポークソテー。

 塩味のポークジンジャーを作ろうかと思ったけど、生姜の量が絶対的に少ない。

 9人で肉を1食で18キロ消費するので、生姜1個では足りないのだ。しかも天然物しか無くて高い。

 なので、別のメニューを考えるか。

 ポークソテーは厚さ5センチ、まだ生暖かいので火は通るだろう。

 オーク肉はサシが入っているので、分厚くても多分いける筈。

 今回は、蓋つきの寸胴も買ったので、同時進行で、一部のオーク肉を燻製にしてみようと思ってたが、まだ漬け込みをしていないので、今回はスケープゴートを使ってみようかな。


 一応スケープゴートの干し肉は作ってるよ。

 小さい肉で、試しに作ったやつは、バリアが酒のつまみにして、全部無くなってしまった。

 8人に囲まれて小さくなってたのが面白かった。

 味は、酒が進む美味さだったとか。


 そういえば、カレー作れるんだよな、ご飯無いけどナンなら作れるから、作ってみるか。


 『カレン手あいてる?、あるじと誰か、パン生地作っておいて。』

 「空いてます!」


 パン生地作る様の板を買ったんだよ、幌馬車の荷台に置いて、作れるようになってる。

 粉を作るのは、錬金術でできるからね、台があれば作れるって訳。


 『じゃぁ、スパイスをバターで炒めて、バターに香りを移しながら、小麦粉を少しずつ加えていって』

 「はい!」


 カレンにカレーの作り方を伝授しようと思う。

 一回教えたら作れるようになってくれるからね。

 スポンジの様にどんどん吸収してくれる。

 スパイスはホールじゃなくて、粉末になってるよ。

 カレー粉を作った時に、全部粉にしたんだよ。


 『スパイスはそんな感じでいいや、火から下ろして、置いておいて。』

 『ピッグブルの肉を一口大に切って、オークの脂身で炒めて、寸胴に入れて、セボラをみじん切りにしてバターで茶色になるまで炒めて、焦がさない様にね』

 「はい」

 『セヌラも一口大に切って寸胴に入れる。』

 『炒めてるのとは別のセボラを串切りにして寸胴に入れる。』

 『水を入れて寸胴を暖める。』

 『セボラが茶色になったら寸胴に入れる。』

 『煮立ってきたら灰汁を掬って捨てる。』

 『炒めたスパイスを入れて、塩で味を調える。』

 『焦げない様にたまにかき混ぜて』

 『その間にパン生地を裏返して暖めたフライパンで焼く』

 『寸胴にバレイショを切って入れる』

 『バレイショに火が通ったら完成』


 「凄くいい匂いです!」

 『これはカレーという料理だよ、米があれば日本のソウルフードだ。』

 「トロッとしてますけど、どうやって食べるんですか?」

 『このパンにつけて食べるんだ。カレーは隠し味を入れると、もっと美味しくなるから、自分で色々試して、アレンジしてみてくれ』

 「隠し味ですか?例えばどんな物を入れるんです?」

 『そうだなぁ・・・苦味だったり、塩味だったり、意外な物を入れてみる感じかなぁ?』

 『ちょっと味見してみると、何か微妙に足りない感じ無いか?』

 「確かに、少し何かが物足りない気はしますね。」

 『このままでも美味しいんだけど、もっと味に深みが欲しいとか、甘みが欲しいとかね、そういう時に、ちょっとだけ何かを入れると美味しくなるんだよ。』

 「そうなんですね、沢山入れるのはダメなんですか?」

 『このカレーの味にアッポの味がしたらどう思う?』

 「無いですね。」

 『多すぎるとそうなる。』


 カレーと言えば隠し味、どこのカレーにも大体入ってる。カレンにも独自の隠し味を探してもらいたい。

 煮込みながら話していると、みんながこっちを見ているのに気が付いた。匂いで我慢できなくなっている様だ。


 『まだ、できてないよ』


 なんか餌を待つ犬たちみたいだ。

 ピッグブルの肉を試食してみると、硬さは無く、ホロホロと解れていく。そんなに長時間煮てはいない筈だけど・・・。

 ふと思い、ピッグブルの肉を焼いてみると、硬くて嚙み切れない。

 煮てみるとゴムの様だ。

 でも、セボラと煮ると柔らかくて美味しくなった。

 味見したカレンが


 「凄く柔らかくて味が濃い肉になりましたね。」


 これはいい肉だ。骨から出る出汁も、牛骨ととんこつの旨味を凝縮したような味わい。

 冷えると、筋や軟骨を煮た様にプルプルのゼリー状になるから、簡易スープの素としても使えそうだ。


 そろそろカレーもいい感じになったので、食べよう!


 「「「「「「「「神に感謝を!頂きまーす!」」」」」」」


 なんか、お祈りしなくなったな。まぁいいけど。

 カレーを食べ始めた直後、レーダーに点が出てきた。


 『背後に敵がきてるー』

 「あ゛?、食べ始めた所を邪魔するとは!」


 アーリアが、怖い。

 赤い炎が幻視できそうなくらい、凄い殺気が出てる。


 『3匹に増えた。』

 「チッ!、殲滅するか!、カレーは渡さん!!」


 バリアが怒っている。

 みんなの顔が凄く怖い。

 般若の顔に青筋が出た様な・・・。


 ドゴーン!


 1分程で爆発音と共に、点が消え、みんなが帰ってきた。

 すっきりした顔で元の席に座って食べ始めた。


 「辛い!、でも美味しい!」

 「この肉、ホロホロで美味しい!」

 「このソテーも中々だけど、カレーに入れるともっと美味しい!」


 ペティ、コルス、バリアが感想を言う。

 アーリアは・・・口いっぱいに頬張って涙流してる!?


 ラーメン屋にあるような、でかい寸胴鍋に作ったのに、もう半分に減ってる。

 凄い速さで無くなって行く様だ。


 『もうこんなに減ったのか、明日の分、残りそうに無いな。明日になったら、もっと美味しくなるのに。』

 「「「「「「「!?」」」」」」」


 全員の動きが止まった。

 こら!、器に入れたカレーを、戻そうとするんじゃない!

 ちゃんと食べなさい!


 『カレン、食べ終わったら、こっちの燻製用の肉と干し肉用の肉作るのやってー』

 「はーい、今行きます!」

 

 残りの連中は、お片付けだ。

 残った食べ物は、全部ディメンションホールに入れてもらう。

 ディメンションホールは、開けっ放しで置いてあるんだよ。

 数mくらいだったら、離れても大丈夫なのだ。


 『燻製用の肉は、塩揉みして、ハーブを擦り込んで、樽に入れて行く。』

 「まだ焼かないんですか?」

 『まずは、肉の水分を減らすんだ。水分が抜けると、塩が入って行くから、香り付けのハーブも塗り込むんだよ。』

 「干し肉と変わらないんですね。」

 『違うのは、干して燻すか、干すだけかの違いだけだね。』

 「あー、干し肉食べてみたかったなぁ・・・」

 『バリアも、止まらなかったんだな。』

 「全くもう、作るの大変なのに!」

 『バリアにも手伝わせればいいんじゃ?』

 「あ、そっか、バリアー!、こっち手伝え!」

 「う、判ったよ。」


 ペンタと話してたのを呼びつけたから、ちょっと悲しそうだ。


 『食った分は、働かないとな。』

 「うう、呑むんじゃ無かった・・・。」


 干し肉は、肉を乾燥させるだけだから、以前[ドライ]を使ってみたんだけど、あれって、塩が入らないんだよね。

 水分が抜けるだけで、味が付かないのと、フリーズドライの肉みたいになるから、全然美味しくならない。

 でも、フリーズドライができるのなら、カップラーメンを作るのもできそうだと思った。


 肉を仕込んでる時、みんなの方を見ると、何だか、まだ食べ足りないって顔をしている。


 『まだ食べ足りないのかな?』

 「微妙に足りないですね。」

 『じゃぁ、デザートでも作るか。』

 「デザートですか?果物はありますが、足りるかどうか。」

 『ホットケーキを作ろう。』

 「「ホットケーキ?」」

 『小麦粉と砂糖、バターと重曹・・・を混ぜた物と、メレンゲを混ぜた物を作るか。水とミルクで溶いたら、焼く。』

 「分量は?」

 『小麦粉100gに大匙2の砂糖とバター、重曹は小匙1かな。あと、塩一つまみ。メレンゲの方は、先にミルクで溶いてから混ぜる。』

 『卵も入れた方が良さそうだな。』


 ホットケーキミックスなんて無いからね、自分で作らないといけないんだけど、あれって割と簡単なんだよ。

 家で作る時は、小麦粉をザルに入れて振ってたけど、魔法で粉にする時点で、ダマになんかならないから、してないよ。

 ちなみに、100gは、1人分の分量だ。

 日本人の感覚でいうと、デカ過ぎる。


 最近は、マヨネーズを作る頻度が増えてきたから、卵白が余りまくってるんだよね。


 『俺は要らないから、8人分ね。』

 「はい、重曹って味はあるんですか?」

 『苦いよ?』

 「苦いのに入れるんです?」

 『これ入れると膨らむんだよ。』

 「へー」

 ジュー

 「わ、本当に膨らんできた!?」

 「泡が出てる?大丈夫なの?これ。」

 『そろそろひっくり返して』


 普通はデカいと、ひっくり返すのが、大変なんだけど、この人らは300kgくらい、軽々と持ち上げられるからね、一発で成功してたよ。


 『ペティー、おやつできたよー』

 「わーい」


 さすがのペティも、大きさにビビってた。

 食べきれない分は、みんなで争奪戦だけど、剣に手をかけたから、あみだくじで抽選にしたよ。


 『さぁ、好きな所に横棒一本入れて、クジの開始だ!』

 「お!、え?、ああああ!、ハズレたー!」

 「あ!いい感じいい感じ!やったー!」


 みんなでやると、楽しいよね。

 じゃんけんでもいいんだけど、時間かかるのと、この世界では、反射神経で何とかなるから、喧嘩になるんだよ。

 ペティが残した分は、丁度4分の3あったから、3人当選だ。

 当たったのは、カレン、コルス、リズ。


 『はいはい、外れたからって睨まないの!。出発準備して。』

 「あのホットケーキって、何かかけないんですか?」

 『はちみつがあれば、いいんだけどね。無いでしょ?』

 「・・・」

 『リンスの分でしょ?、使いたいなら使えばいいんじゃない?、どうせリンス作るのは王都に着いてからなんだし。』

 「量が少ないんです。」

 『じゃぁ、今回は我慢しなさい!・・・デーツ無かったっけ?』

 「ありますが・・・」

 『デーツを乗せて、[スクィーズ]』

 「んー!、甘くておいしい!」


 デーツとは、ナツメヤシの実なんだけど、この世界にもあるんだよね。

 ヤシの木に生るのかは分からないけど、〈デーツ〉として売ってた。

 採るの大変らしいけど、干すと砂糖並みに甘いから、生でもかなり甘いのだ。

 それを[スクィーズ]で圧搾した。

 コルスとリズは、ペロッと食べちゃったから、できなかったね。



 『さっき倒した3匹は?』

 「・・・細切れ」

 『・・・あぁ、爆散したのね、まぁ仕方ない。』


 きっと、アーリアがファイアーボールを全力で撃ったのだろう。

 アーリアの火魔法は、何故か爆発するんだよね。

 一度、ファイアを見せてもらったんだけど、点いた!と思ったら「パンッ」って破裂して、前髪燃やしてたよ。


 だから焚火とかの着火には使えない。

 火が点いた薪が飛散しちゃうからね。

 それがファイアーボールになれば、ねぇ。

 全力でなら細切れどころか、そぼろができてそうだ。


 そんなこんなで、出発した。

 途中、でっかい芋虫を見つけたんだけど、普通は食べないらしい。こいつらは、飼育して糸を取るんだって。

 シルクの原料らしい。


 糸1本で箱馬車を、釣り下げる事ができる程の強靭さを持ってるらしい。

 他には、蜘蛛の魔獣もいて、その魔獣の糸も強靭なんだとか。

 今回は捕まえずに放置した。

 情報だけでも報告すると金貨が貰えるんだって。


 暫らく進むと、山脈の麓に到着した。

 岩場で丁度馬車が入れるくらいの隙間があったので、そこで野営する事になった。


 気になるのが、周囲にやたらと糸状の物がぶら下がってる事かな。

 山はほぼ垂直の壁になっていて、高さは1万2千メートル。

 山を鑑定したら、そう出たよ。

 説明文には、頂上は、立つことができない程に切り立っていて、神の歯なんて言われているらしい。

 何か臭そう・・・。


 山肌を見ていると、アラクネの様な魔獣が見えた。


 『蜘蛛みたいなのがいるよ?』


 みんなが外に飛び出して、剣を構えた。

 名前はアラクノフォビアというらしい。


 『蜘蛛みたいなのに、蜘蛛恐怖症って名前なの?』

 「え?そういう意味なの?」


 名前は人間が付けるからな、見た人の恐怖感を表しているのかもしれないな。

 蜘蛛の体に人の体がくっついてるので、知性があるかもと思い、念話で話しかけてみた。


 『こんにちわー』

 『なにっ?誰が話してるの!?』

 『話せるんだね?、ねぇ、攻撃する意図はある?』

 『しないわよ。人間なんて食べてもいい事無いし。』

 『いつも何を食べてるの?』

 『この辺にいる魔獣よ。』


 特に人間を標的にする事は無いらしいので、戦闘態勢を解除してもらった。


 「アラクノフォビアといえば、対峙して、全滅させられたなんて話も聞くが、あれは嘘だったのか。」

 『人間から攻撃したんじゃないの?』

 「そうかもしれない。」


 もう一度話を聞いてみよう。


 『ねぇねぇ、人間と闘った事ある?』

 『あるわよ、何もしてないのに突然攻撃される事は、何度もあるわ。』

 『俺はアルティスって名前だよ、君の名前はある?』

 『種族名はアラクネよ。名前はソフティーよ。』

 『近くに仲間とかいる?』

 『この近くには居ないわね、遠くにはいるけど、私の家族はみんな死んだわ。』

 『人間に殺されたの?』

 『違うわ、山に住むワイバーンにやられたのよ。奴らのブレスは炎だから、糸が燃やされるのよ。』

 『そうなんだ、ごめんね、変な事聞いちゃって。』

 『何で謝るの?殺されたのは弱いからだから、あなたが謝る必要は無いわ。』

 『そっか、今夜ここを使わせてもらうけどいいかな?』

 『いいわよ、それより何か食料持ってない?、最近この辺の魔獣が減っちゃって、お腹が空いてるのよ。』

 『どれくらい食べるの?』

 『角ウサギ5匹もあれば十分よ。』

 『内臓無いけど大丈夫?』

 『大丈夫よ、食べられるだけありがたいもの。』


 アラクネのソフティーさんがお腹空いている様なので、スケープゴートを少し分けてあげようと思う。


 『あるじ、アラクネさんがお腹空いてるみたいだから、肉あげてもいい?』

 「そ、そうか、いいよ。大丈夫。」

 『あげる時近くに来るけど、攻撃しないでね?』

 「判った。みんなも攻撃しない様に!」

 『ソフティーさん、お肉出すから取りに来てー。』

 『判ったわ。』

 「アルティスは何て言ってるか判るのか?」

 『判るよー。』


 スケープゴートの半身を置いて待つ。すぐ近くではカレンが夕飯の支度をしている。


 『何かいい匂いがする・・・。』

 『夕飯の支度をしてるからねー、ちょっと食べてみる?』

 『いいの?』

 『いいけど、また食べたくなって、人間襲っちゃダメだよ?』

 『襲わないわよ!食べたくなったら貴方たちを待つわ。』

 『じゃぁ、はい。』


 夕飯の為に作った、豚骨スープのポトフ、焼肉風に焼いたオーク、ふかふかのパンをだした。

 アラクネはフォークとナイフを使って、夢中で食べてる。

 途中で、肉と野菜をパンに挟んで食べると美味しいよって教えたら、それ以降は挟んで食べていた。

 食べ終わったが、フォークを口に名残惜しそうに咥えている。


 『まだ食べたい?』

 『もっと欲しい!、こんなに美味しいのは初めて食べたわ!』


 煮豚のシャリアピンソース掛けをあげた。


 『これも美味しい!』


 1kgあげたが、あっという間に食べ終えた。

 さすがにこれ以上は入らないらしく、その場にペタッと座ってしまった。


 「アルティス、どうなってるんだ!?」

 『お腹いっぱいになって座り込んじゃった。』

 『あ、ありがとう!、お礼に服を作ってあげる!』

 「な、なんて言ってる?」

 『お礼に服を作ってくれるって。』

 『ソフティーさん、この人間が鎧の中に着れるような服を作れる?』

 『全員分作ってあげるわ!』

 『全員分作ってくれるって。』


 ソフティーさんが全員分の服を作ってくれるという。


 立ち上がって、尻から糸を出し、2本の足と腕を使って器用に布を作り始めた。

 布は平織りではなく、綾織で作っている。

 あっという間に反物ができあがり、生地を切り始めた。

 切った生地は地面ではなく、後ろにあるお腹の上に置き、汚れない様にしている。

 切った布を前後に縫い合わせて完成するみたいだ。1着目ができ上った。

 胸部の膨らみ具合からして、アーリア専用の様だ。


 アラクネの作った服は、粘液の付いてない縦糸を使っていて、滑らかで肌触りが良く、それでいてミスリルでも切れない程の強靭さを持つという。

 槍の突きにも強くて、穴も開きにくいらしい。

 全員、ロングTシャツの様な形らしい。

 あっという間に8人分が完成し、アルティスの分を編み込み始めた。

 アルティスの分については、頭からは被れないので、胴体に乗せて腹の所にマジックテープみたいなのが付いたタイプみたいだ。

 アーリアに着けてもらったが、動きを阻害する事なく、伸縮性があり、着心地がいい。

 みんなも、それぞれ着替えに行って、あまりの着心地の良さに感動している。


 『ソフティーさんありがとう!凄く気に入ったよ!』

 『いえいえ、あんなに美味しい料理を食べさせてくれたんだから、こちらもありがとう。できたら、また食べさせてもらえると嬉しいわ。』

 『判った、ちょっと遠いけど、近くに来たら遊びにくるね!』

 『待ってるわ、では、またね。』


 手を振りながら、山の方に行ってしまった。

 スケープゴートの肉は手つかずだったので、仕舞った。

 次はいつ来れるか判らないけど、こんないい物貰えるなら、いくらでも来るよね!

 

 野営の為に入った洞窟は、結構奥行きがある様で、奥の方から硫黄の様な匂いが漂ってくる。


 『ちょっと、奥を見に行ってきていい?』

 「何か気になる事でもある?」

 『ちょっと臭わない?』

 「うーん、リズのおならか、カレンのおならかどっちだろう?」

 「ちょっと!アーリア!、何言ってるのよ!。私のおならは、こんな臭いしないわよ!」

 「アーリアのおならの方が臭いのよ?」


 おならの臭いで言い合ってるから、放っておこう。


 『[ライトボール]』


 真っ直ぐ飛ばしたが、かなり遠くまで飛んで行った。

 何かに当たって、止まった様だが、消さずに残しておくと、煙の様なものが見えた。


 『湯気?、ちょっと行ってくる!』

 「私も行こうか?」

 『何もいないから大丈夫だよ。』


 奥に進むと、段々と湿気を帯びてきた。

 そして、一番奥には、温泉があった。


 『[鑑定]・・・魔力硫黄泉?』

 『魔力を含んだ硫黄泉、皮膚疾患、糖尿病、心臓病、疲労回復、魔力回復に効果があり、一度入れば朝まで暖かさが続く。また、魔力総量にも影響があり、2割増えるとも言われている。』

 『あるじー、奥に来てー、温泉があるよー。』

 『温泉だって!?、みんな、行こう!』


 みんながぞろぞろとやって来たよ。


 「わぁー、こんな所に温泉があったなんて!」

 「凄いね!ちょうど二手に分かれてるから、男女別で入れるわね!」

 『コルスどうするの?』

 「私は馬車の番をしていますから、皆さんで入っていて下さい。」

 「コルスは、入らないの?」

 「後で入ります!」


 もう、気付いて無いのは、ルースとメビウスくらいなんだから、入ればいいのに。


 『んじゃ、よろしくー。』

 「アル君冷たいなぁ。」

 『何も来ないとは思うけど、万が一って可能性もあるからね、番をしてくれるのは、ありがたいよ。』

 「あちっ!、ちょっと熱いかも。」

 『水魔法使えよ。』

 「あ、そうか。」

 『ここは、魔力硫黄泉なんだってよ?、入ると魔力が2割増えて、疲労回復と魔力回復効果があるんだて。』

 「水魔法使いまくれるわね。」

 『源泉掛け流しなんて贅沢な気分だね。』

 「何だそれ?」

 『まぁまぁ、入ろうよ。』


 湯温は、45度で、少し熱いけど、気持ちいい。


 「アル君、よくこんな熱いお湯に入れるわね。」

 『気持ちいいよ?、ステータス見たら、ホントに上がってるよ?、てか、あ、ヤバい、上がるね。』

 「どうした?」

 『MAGがゴリゴリ上がるんだわ。2割ずつ。MAG値が6000超えそう。』

 「「「「ぶふぉっ!」」」」

 「6000って、勇者どころの話じゃないわよ!?」

 「歴代最高じゃないかしら?」

 「ちょ、あたしも入って、少しでもMAG上げないと!」

 『入り過ぎて、のぼせない様にね?。欲張っちゃ駄目だよ?』

 「判ってるわ。この温泉って飲んじゃ駄目なのかな?」

 『飲んじゃ駄目だよ。飲むと下痢になるよ?』

 『男湯見てこよう。』

 『!?[アイスボール]』

 ドボドボドボン

 『のぼせる前に出ろよ!』

 「す、すいません・・・。」

 『お前ら自力で出ないと、あるじ達呼ぶからな?』

 「「「!?やばいぞ!出ろ!」」」


 なんだ、元気あるじゃん。



 翌朝、外は冷え込んでいた。

 ここは高い山の麓で、風が山に遮られて上空から冷たい空気を吹き下ろしてくる様だ。

 でも、アラクネの衣が暖かいので、平気だな。

 みんなは上半身にしか着ておらず、足が寒かった様子で、毛布を足にかけていたよ。

 今日は山越えをする予定で、山の中腹に反対側に抜ける洞窟があり、そこから進む。


 『そういえば、昨日ソフティーさんが、山にワイバーンが居るって言ってたよ?』

 「ワイバーン!?、みんな!中腹の洞窟まで注意して進むんだ!」

 「周りの警戒を怠るな!」

 「「「「「「「おぅ!」」」」」」」


 ワイバーンってやっぱり怖いのか。

 空中の敵とは闘った事無いから、ちょっと楽しみにしていたんだけど、不謹慎かも。

 道は、山沿いに続いていて、道幅5mしかない。

 ここで襲われたら逃げ場がないなーなんて思ってたら、100mくらい登った所で、空気の振動を感知した。


 『羽音を感知した』

 「上空警戒!」


 このチーム、遠距離にめっぽう弱いからな、近接オンリーはやっぱりパーティーとしてはダメだな。

 誰かに石弓を持たせなきゃ。


 暫らくすると、真上からワイバーンが急降下してきた。大きさが判らないから、距離感が掴めない。


 「真上だ!、迎撃準備!」

 「・・・・・・・・・・・・・・・っていっ!!」


 魔法攻撃が飛んで行った。ワイバーンの顔面に当たったが、ダメージは少ない様だった。

 ワイバーンは壁面擦れ擦れに落ちてくるので、土魔法で壁面から壁を出してみた。


 『[ストーンウォール]』

 ゴキッ

 ガラガラガラ


 壁を粉砕した瞬間に変な音がして、ワイバーンの勢いが無くなった。

 壁の瓦礫も落ちてくるので、馬車の上の崖に、楔形の壁を作って、落ちてくる岩を逸らした。

 ワイバーンが落ちてくる途中で、横にズレた。


 『あれ?へんな動きしたぞ?』

 「あ、あそこにソフティーが!」

 

 右斜め下にソフティーがいるのを見つけた。


 ソフティーからは糸が伸びていて、ワイバーンの体を引っ張っていた。

 落ち着いて見てみると、ワイバーンの首が、頭のすぐ下で直角に折れていて、死んでるか気絶してるかは判らないが、今は動かない様子だった。


 ワイバーンの大きさは、体長5m程で、田舎の方にある小さいガススタの屋根くらいの大きさだ。

 革は頑丈で鎧の材料になるらしく、高値で売れるらしいが、肉は硬く臭いので、売れないそうだ。

 でかいのにもったいない。

 形は翼竜の様に見えるが、実は羽に細い軟骨が縦に通っていて、鳥の羽の様に分かれているらしい。

 なので、羽は盾の材料として売れるそうだ。

 鎧の材料になるのは、胴体と首らしい。尻尾は剣の鞘などに使われるとか。

 ソフティーがワイバーンをぶら下げて寄ってきた。


 『ワイバーン倒したんだね!凄いね!。使うと思ったから持ってきたわ!。肉は、私も要らないから、これ持って行って!』

 『ありがとう!助かったよ。』


 お礼に、特製スケープゴートの干し肉『足』を渡したら、凄く喜んでた。


 ワイバーンはディメンジョンホールに仕舞い、無事に洞窟に入る事ができた。

 洞窟の中は、鍾乳石がぶら下がっていて、鍾乳石の一部をもらっておいた。

 これ、石灰岩だから、炭酸カルシウムが作れるんだよね。

 炭酸カルシウムは、あらゆる用途に使えるので、いつか使う場面が来るかもしれない。

 炭酸ナトリウムにすれば、石鹸にも使える様になる。

 鍾乳石は純度の高い石灰岩なのだ。日本では取っちゃダメだよ?。

 他にも、この洞窟には蝙蝠が大量に住んでいて、糞の山ができていた。蝙蝠の糞には、硝酸カリウムの原料が含まれていて、火薬の材料を作る事が可能だけど、畑の肥料としても優秀だったはず。

 今のところ使いどころがないから、放置だけどね。

 蝙蝠は、明りに反応して、逃げて行くんだね。

 

 30分程で反対側に出た。

 標高が高いので、内側のほぼ全体が見えていて、巨大なクレーターの様にも見えた。

 実際、真ん丸らしいので、火口かクレーターのどちらかなんだろうと思う。

 この大きさの火口か、噴火したら凄そうだと思ったけど、地図で見ると点なんだよね。

 大して、影響無いかも。


 中央に王都が見えたが、米粒くらいの小ささなので、相当遠いと感じたね。

 内側は、山も無く、平坦で、山からの水が豊富で、広大な水田が拡がっているそうだ。


 正反対の辺りは、地平線の下に隠れているので見えないが、山だけは見えるので、みんなは反対側の山が何故低く見えるのか、不思議に感じている様子だった。


 ペティから理由を知ってるか聞かれたので、知ってると答えた。


 「なんで反対側の山が低そうに見えるの?」

 『地面が丸いから』


 多分この答えじゃ判らないんだろうな。


 麓に降りると、早くも第一ゴーレム発見。

 ノッシノッシ歩いているので、キックしたら砕け散った。

 地面には球体のコアが落ちていたので、拾っておいた。

 このコアは魔石なので、傷が無ければもの凄い金額になるそうだ。


 『ゴーレムいるよー、コアを壊さない様に倒して来い!』

 「難易度高くないですか?」

 『それを何とかするのが、鍛錬だ。ペンタならできる筈』

 「え?僕ですか?、できますかねぇ?」

 『関節の裏を狙えば、簡単にできるぞ?』

 「ちょっとやってみます。」


 ペンタがゴーレムの後ろから、膝の裏に苦無を打ち込んだ。


 ドスドスッ

 ガラガラ・・・ズズン


 ペンタが、いとも簡単に、ゴーレムを倒したのを見て、口を開けてポカンとしている。


 「ここから、どうしたらいいんですか?」

 『首の関節の中心に刺す』

 「首の関節の中心・・・この辺かな?」

 ザクッバサッ

 「できました!」


 首の関節部分の、魔力の通り道を破壊すると、爆発では無く、粉々に砕け散った。


 『はい、やり方判った人は、次のゴーレム倒してね。』

 「アルティス、凄いな。何で弱点が判ったんだ?」

 『魔力感知で、魔力の通り道が判るからだよ。関節部分に玉みたいな所があるから、それを破壊すれば、そこから先は崩れ去るんだよ。』

 「ほうほう、それは、どこを切っても同じなのか?」

 『んー、同じだけど、硬さが違うんだよね。関節の裏は柔らかくて薄いんだよ。だからペンタのナイフでも届くし、量産品の剣でも耐えられるんだけど、他の場所は岩の様に硬いから、切らない方がいいと思うよ。』

 「そうか、胴体を切ろうかと思ったが、剣が駄目になるのなら、やめておこう。」

 『王都で、暇になりそうだったら、ゴーレム狩りやれば、ぼろ儲けだね。』

 「私でも倒せると思う?」

 『[ウインドカッター]を制御して、関節に当てればいけるよ?』

 「やってやるわ!」


 ペティは、ちょいちょい戦闘に参加はしていたんだけど、魔法の細かい制御がイマイチで、下手すると仲間を巻き込みそうだったので、魔法制御を徹底的に練習してもらってた。

 魔力操作を覚えても、魔法制御は別物なので、コントロールする為の魔力の制御は上手くても、命中率については、まだまだだ。

 最近は、風の圧縮まで、できる様になって来ていたので、この辺で成果を試すのもいいだろうと思う。


 『次のは、ペティにやってもらおう。[ウインドカッター]を使うときに、風を圧縮して撃てば、威力が上がると思うよ。』

 「やってみる!」


 間を置かず、ゴーレムがやって来た。


 『来たよ、右前方40m』

 「行くわ![ウインドカッター]!」

 ズパッ

 ズ、ズズ、ズズズ、ガラガラガラ、ドスン

 『いいねぇ、硬い胴体を袈裟切りにして、ゆっくりズレていく様が、カッコ良かったよ。』

 「す、凄く威力が上がったわ。以前は当たっても、少し欠ける程度だったのに。」

 『風を圧縮すれば、[ウインドショット]でも、穴が開くと思うよ。次は、小さいのを沢山撃てるように、練習するといいよ。』

 「沢山を正確に当てるの?」

 『そうそう。正確に当てる様にしないと、仲間が怪我をするからね。当たり所が悪ければ、殺しちゃうくらいの威力があるんだから、正確性は大事だよ。』

 「判ったわ、練習する!」

 

 道中、ゴーレムを6体発見して全てを撃破、無傷のコアを全部で7個ゲットした。

 元家畜も何度か見かけたけど、魔獣では無いし、特に退治が推奨されている訳でも無く、放置しても人的被害も、特にないらしいので、放置した。

 それ以外は特に何もなく、シーオシャーケに到着した。


 この街は、グラナリー領でゴーヤエキスが領主らしい。

 苦瓜汁の穀物庫ってか?

 宿を取ったけど、今度の宿には風呂は無いらしい。

 この盆地は地下水が豊富らしいんだけど、汲み上げるのが大変だからじゃないか?って言ってた。

 サービス精神が足りてないな。

 ここの食堂は、今までの様に作る事はせず、部屋に料理を持ってきてもらう事も無く、作り置きの食事を摂るだけにした。


 「この領で新しい事をすると、自分達が発案したとか言って、手柄を横取りしようとするのよね、だからここでは披露しない方がいいわ。」


 ペティが教えてくれた。なので、ちょっと恥をかかせた方がいいんじゃないかと思うんだけどね。


 『ワザと嘘の情報を流して、恥をかかせるのはダメ?』

 「そんな事して、恨まれたら命を狙われるわよ?」

 『面倒くせぇ貴族だなぁ。』

 「貴族はみんな面倒くさいものよ。」


 『話は変わるけど、学校ってさ、長期の休みの時って宿題とか出ないの?』

 「・・・・・」

 『終わって無いの?』

 「・・・・・」

 『そっかー、やってないのかぁ・・・』

 「な、何も言ってないじゃないの!」

 『沈黙が語ってたじゃん。』

 「ま、まぁ、あと1週間あるから終わるわ。」

 『何が残ってるの?』


 教科書を見せてもらったが、やっぱりレベルは小学校程度だった。

 歴史は知らんから判らないけど、魔法学は理解できたね。

 算数は、まぁ暗算で解けるレベルだし、判る範囲は教えようと思った。


 興味があったのが錬金術、所謂理科って感じだけど、ちょっと、間違ってる所が多くて驚いた。


 「どの辺が違うの?」

 『えっとね、鉱石から金属を抽出するって書いてあるけど、抽出じゃ効率が悪いから、分離するんだよ。ちょっとやってみせるね。[アルケミーエクストラクション]』

 『で、抽出したのがこれで、残ったのがこれ。この残りカスには、まだ沢山の金属が含まれてるんだよ。でも抽出だと、狙った金属しか取り出せないから、こっちは無駄になるんだよね。だから、[アルケミーセパレーション]、これで、()()を分離させると、こうなる。』

 「こんなに出てくるの!?、え?この金色のはもしかして・・・金?」

 『[アルケミーアナリシス]・・・これは、黄鉄だね。金は無いね。ミスリルはあるけど。』

 「ミスリルの方が凄いんだよ!?」

 

 錬金術の教師をぶっ飛ばしてやりたいね。

 宿題では、岩塩から不純物を取り除くらしい。

 そんな事したら、塩が不味くなるじゃないか!

 難しいとか言ってたから、授業で教えてもらった事を聞いてみたんだけど、岩塩から塩だけを抽出しろと言われたらしい。

 塩化カルシウムも、塩化マグネシウムも、塩化カリウムも、もちろん塩化ナトリウムも塩なんだけど?

 塩化ナトリウムだけを取り出してみたけど、これを成功させるには、化学の知識を教えないと無理なんじゃないか?。


 「何これ!、凄くしょっぱい!」

 『塩だからね』


 こっそり提出物として貰おうとしてたから、さっさと不純物と混合させたよ。

 口を尖らせていじけてたので、塩の結晶を作る方法を教えて誤魔化した。

 宿題については、〈不純物〉では曖昧過ぎて成功しないから、〈ソルト〉を抽出させた。


 算数については、掛け算と割り算が苦手らしいので、九九を教えておいた。

 これさえ覚えちゃえば、割り算も問題無いだろう。

 だって、簡単な割り算しか無かったからね。


 ペティが適当に算数の問題を出すから、即答で答えを言ったんだけど、問題を出した本人が答えが判らないという、コメディを披露されたし。


 別邸に行ったら、みっちりお勉強だね!

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