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第7話 人間の子も意外と賢くて・・・

 

 千佳と由佳はミミちゃんとじっと見つめ合っていた。

 アボパパ、今日は御神刀を持ってお出かけ、真太は学校、そしてママはこんな時までデパートに行ってしまった。千佳はママが、ミミちゃんをどう扱って良いか分からないのだと思っている。そして千佳に任せる事にしたのだ。幼稚園を休んで良いと言われた。頼られるのはいい気分だが、少し荷が重いのである。大体こういうの、大人の仕事じゃない?

 真太は翔の生まれ変わりだったから、始めからチャラチャラしゃべっていたので、千佳も気安く話していたが、ミミちゃんは話が出来ないので、段々相手をするのが難しいと分かって来た。

「ミミちゃん、何して遊ぼうか」

 言っても答えは無いが、千佳は聞いてみる。

 由佳が、能天気に、

「千佳ちゃん、ミミちゃんはお話ししないでしょ。由佳はおままごとしたいな」

 千佳は、それは不味い案だと分かっていた。

「しっ、それは食べ物の話が出て来るからだめ」

「じゃあ、学校ごっこは。ママ達が真太としたでしょ」

「言っておくけど、あたし達、まだ学校に行ってないでしょ。ミミちゃんに嘘は教えられないの。決めた、幼稚園ごっごにしよう」

 そう言って、千佳は

「ミミちゃん。あたしのマネしてみてね。マネはね、おなじことってことよ」

「それ、どっちも分からないと思う」

 由佳の指摘は無視し、千佳は歌って踊る。

 〈花が咲いたー花が咲いたーお爺さんがー灰まいたらー桜の花が咲きましたー〉

 〈桜ですー桜ですーランランラン・・・〉

「千佳、その歌初めて聞いた。年長さんで習うの」

「今、あたしが考えたの」

「千佳凄い、でも、ミミちゃんは見ているだけね」

「生まれたばかりだもの。年少さんだって最初はこんなものだったわね。先生1人で歌って踊っていた」

「そうだったの、あたしは始めは保育園に入ったし、こんなだったの、知らなかった」

「由佳も何か歌と踊りをやって、あたしは一回休憩する」

「由佳も良い歌思いついた。踊りは千佳のマネよ」

 〈真太のアホはー今日もれいてんーれいてんー〉

「きゃははー、由佳おもしろい」 

 千佳が笑うと、ミミも笑った。すごい、すごいと褒めると、ミミは同じことをするのだと理解したらしく、それから嘘歌を三人で歌って踊る。興に乗ると、部屋の中ではソファが邪魔になり、庭に出て歌って踊る。そこへ舞羅と翼がやって来た。

「楽しそうね、皆で」

 千佳は、二人は学校のはずと、訝った。

「あんたら、本物?今は皆学校のはずでしょ」

 結界は家のブロック塀の周りに張ってあり、こっちから門を開けない限り、魔物にしろ人間にしろ、入って来られない仕様にしてあった。

「まあ、千佳ちゃんは利口だこと」

「皆そう言うの」

「でしょうね、今日は、学校は午前中で終わったのです。私は霊界から降りて来た紅のせせらぎ姫ですよ。舞羅の体を借りて、あなた方を守りに急ぎ来たのです」 

 舞羅は言った。翼も、

「私は北の大露羅の尊だよ。私たちはシンの親だけど、知っていたかな」

「知っているけど、どうして龍神様が人に憑りつける訳。それにシンはどうしたの」

「本当に千佳は利口だな。天才じゃないか」

「それも言われているの」

「それはね、イダが殺したのは魔王じゃなくて、魔王のふりをしていた小物でね。本物はまたアバを亡き者にしようとしている。アバはまだ本調子じゃないから、今のうちに倒す気だ。シンは魔王との戦いに助太刀に行っているよ」

「だから私たちは、あなた方を守りに来たのです。高位の魔物は香奈さんの結界の中にも入って来る力があり、危険です」

 千佳はぞっとしたが、

「だったら、そこらへんで見張っていればいいわよね」

 と言ってみた。

「もちろんだよ、むしろ結界の外で見張る方が守りやすい」

 千佳は信じて良いのか悪いのか、分からなくなって来た。

「あぶぅ」

 何か分からない事をミミちゃんも言っている。すると、

「イヅ、何か言いたいのですか」

 紅のせせらぎ姫らしい舞羅が、ミミに違う名を呼び掛けた。

「イヅって?」

 由佳が呟く。

「あら知らないようですね、この子の名ですよ。皆、イヅの事をミミと言っているからでしょうね。その訳を教えましょう。イヅが生まれて来て、初めてイヅを見たイヅのお母さまが、何故だか他の子よりも耳が大きくて可愛く思い、ミミちゃんと呼んだのですよ。いつもミミちゃんと呼ぶので、お父さまのイダもそう呼ぶし、他の龍神もミミと言うようになったのですよ。でもね、龍神の理では親は子を本当の名で呼ばないと、親子の縁が無くなるのです。御両親はそれを知らなかったようですね。昔の理は段々忘れられていくので、こんな悲劇もおこってしまいますね」

「へえっ、じゃあシンはどうなんだよ」

 真太がいつの間にか帰って来ていて、彼等の後ろ側から、なるほどと思うような疑問を言った。

「まあ、あなたまで私達を疑うの。生まれたての時期だけの事ですよ」

 舞羅は笑った。

「どうしてあんたらがここに居るんだ。シンはどうした」

「シンはアバ達の助太刀に行ったよ。イダが殺した魔王は本物ではない。こちらの実力を試したのさ。今、本当の戦いが始まった。それにイダの殺した魔物もとどめを刺していないから、また復活しているな」

「何だって、じゃあ俺も御神刀を持って手伝いに行って来る。俺がとどめを刺す係になる」

 真太は叫んで、門を入り、御神刀を取りに行った。そして、御神刀を咥えて、龍になろうとした。

 すると、いつの間にか結界の中に入って来た翼は、真太が咥えた御神刀をかっさらい、

「頂きだっ」

 と叫び、舞羅と二人で笑いながら立ち去った。あっという間の事である。

 由佳が、

「やっぱり魔物に取りつかれていたんだ」

 と驚いて言う。

 千佳が、

「真太。御神刀、取られちゃったね」

 と言うと、

「うん、でもあれは俺ので、本物はパパが持って行っているな。御神刀無しじゃ、もうアバを助けに行けないな」

 皆でため息をついた。

 真太がふとミミを見ると、ミミはしくしく声も無く泣いていた。真太は気が付いた。

「あいつ等、ミミに酷い事言いやがったな。ミミのママとの思い出を踏みにじりやがった。ミミちゃん、あんな魔物の話なんか本気にするんじゃあないぞ。シンがいつか言っていたけど、あいつらは俺らにダメージを食らわそうとするんだ。さっきの話は嘘っぱちだ。きっと。気にするんじゃあない」

 すると、泣き止んで頷いたミミ。

「わぁ、ミミちゃん、もうすっかり言葉が分かっているみたい」

「真太、わりと複雑な事言ったのにね」

 千佳由佳はミミの成長に少し感動した。



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