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第4話 最近の事情と、アボパパのレディ・ナイラの前での独り舞台

 

 真太はアボパパが無事そうなので、嬉しくなったが、見た所アボパパの方は嬉しくない様である。

「お前、どうしてママの言う事を聞かなかったのか」

「どうしてって、アバが怒り出したら僕が止めるしかないだろ。僕が泣き出したから、この間は正気に戻ったって、シンが言っていたよ」

「ああ、あの時の事か。あれはアバのダメージが大きすぎて一瞬だが狂っていたんだろうな。だがもう回復してすっかり正気に戻っている。お前が心配する必要は無くなっている。言っていなかったからな。考えたんだが、お前には事情をちゃんと教えておくべきなのが分かった。レディ・ナイラからもアバが忠告されてしまったそうだし」

 アボパパは真太の不始末を叱りもせず、話は本題に入った。それで、真太は話の前から、何か大変な事が起こったのだと察した。

「地獄の奴らは大方、極み殿やシンが片付けて、小物しか残っていなかったんだが、最近この世に生きていて、死ねば魔王になる素質の奴が死んだ。地獄に落ちていくと、やはり地獄の魔王になりやがった。奴は利口だ。この世に生きている間に、この世の事情というか、世情と言うかを、色々知り尽くしている。アバを倒せばすべて片が付くことを知っている。だから忠告しに行った。アバはこの世の事は分かるが、あの世には、特に地獄には目が行き届かない性質なんだよ。清浄過ぎて神経がそっちに向かないんだろうな。その代わりこの世の事は隅から隅まで把握している。だから地獄の事情の変化は、パパ達が教えなければならないんだ」

「ふうん、それで魔王が狙っているって言いに行った訳」

「そうだ。そしてお前も狙われている。そんな事を知ったら、お前が委縮しそうで、言わないでおきたかったが、知っていないと、お前が危ない事をやり始めるのが分かったからな。教えておくよ」

「ふえー、狙われているのか。ひょっとして、あの大統領夫人に取り付いている奴の事?」

「いや、あれは手下の1人でしかない。人間に取り付いている奴は小物だ。魔王は出て来ずに、地獄で命令だけしている。とにかく気を付けろ。何かに取りつかれている様なのには、絶対近づくんじゃないぞ。見かけによらない能力があるかも知れないから、弱いと感じても、そうとは限らないぞ」

「うんわかった。ところで、柳たちはうまく逃げたかな」

「ああ、今頃はちゃんと飛行機に乗っているだろうよ。大体、彼らは狙われる理由が無いからな。殺せばアバのダメージになる奴しか狙われない。お前を筆頭にして、龍の子供が狙われる。俺等に対する戦争だな。昔からの争いだよ。シンのご両親もそれでやられた。あの頃アマズンでも、頻繁に子供が狙われていたから、アバは助太刀に行くことが出来なかった。それを今でも気にしているようだな。アバは極み殿とは昔からの親友で、彼の弟夫婦だからな。あの時、極み殿さえ助けに行っていないのだから仕方ないのだが。あれは間が悪かったな。大露羅殿が、まさかやられるとは誰も想像していなかった。勝負の行方は実際の所、紙一重だから、油断してはならない。今日の所は向うも様子見の様だった。アバの力を見ている様だが、本当の所はあんなものじゃあないんだ。まだそれを感づかれていないからな。今日、アバはやられることは無かったが。魔王はきっと、今日勝負しなかった事を後悔する日が来るだろうな」

「どうして今日勝負するかも知れなかったの」

「10月の闇夜は、大神様の目が届かない夜なんだよ。普段なら、いざとなったら大神様がお助け下さるんだけどね。龍神が負けるのはいつもこの時期さ」

 不思議な事情を知った真太である。


 アボパパについて行くと、どうやらUSBB大統領夫妻の所へ行くつもりのようだ。

「俺等みたいなのが会えるのかな」

 と疑問を感じた真太に、

「今は、俺等が本来居るべき次元に居るんだぞ。気が付いていないのか。誰も俺等を見ないだろう。人間には見えていないんだ」

「そうなの、アバもそうだったの、さっき」

「いや、わざと同じ次元に居て、お前を助けている所を人間に見せてつけていた。子供を助ける親って言うのは、印象が良くなるからな。戦闘機は燃やしただけで、兵隊には手を出さなかったろう。死人は出ていない。だが、お前が燃やした地獄の奴らは、みんな人間だと思われているからな。お前は訳が分からずやったことで、赤ん坊だからまだ善悪も分からないと大目に見られた。だが、このままでは俺らの印象を悪くしたままになる。だから、俺等のイメージを変えたんだ」

「ええっ。じゃあ俺何だか来た意味無いみたいだな」

「お前、話の筋が分かっていないな。アバのお株を上げることが出来たって事が分からないのか」

「あ、そうなんだ」

「今からレディ・ナイラにお詫びしに行くんだから、お前は黙って頭だけ下げていろ。すっとぼけた会話は無しだからな」

「ちぇっ」


 二人してレディ・ナイラの居所を探し、レディ・ナイラ達が空港で出発の飛行機を待っている所を、見つけることが出来た。

 アボパパは真太を、黙っていろよと睨み、レディ・ナイラに挨拶をし出した。驚いたことに、真太が見たことが無いような、イケメンアボが現れた。

 アボはにこやかに、

「お久しぶりでございます。ナイラ様。アマズンのアボでございます。お目通りの御許しをいただきまして、光栄でございます。今日はお詫びに参りました。この度はナイラ様には、我らが一族の不始末により、お心の平安を乱されましたことを、大変申し訳なく感じ入っております。アバもこの不始末を反省しておりますので、あれの事はどうぞご容赦頂きたいです。それに付け加えまして、愚息がナイラ様のお目を汚す振る舞いを致しましたこと、私の監督不行き届きによることでして、お許し頂きたくご挨拶に参りました。さ、真太、お詫びしろ」

 ぼうっと呆れて、アボパパを眺めていた真太だが、こっちに振られたのに気が付き、はっとして頭を下げた。

「おほほほほ、いつもにも増して今日は特に素敵なアボ様ねえ。わたくしも、ちょっと結婚するのを早まってしまった気がするわね。あなたがすっかりお元気になられて、わたくしの一族も安心して居ましてよ。お元気になられたら、あっという間にあの方と結婚されて、どちらのお嬢様方も悔しがっておいでだったようです。日の国の龍神の末裔の方々は、何代も後にその力を取り戻せましたのね。不思議な事よと、皆で噂しておりますよ。ね、真太ちゃん。どうやら翔さんの生まれ変わりって言うのも、噂ではなく本当の様ね。アバ様の執心も無理ないわねえ。あの方の後を継ぐ龍神様候補ね。さあて、どう成長するかしら」

 と、レディ・ナイラは子首を傾げた。

 真太はレディ・ナイラにまで、アバの跡継ぎとか言われて驚いた。

『俺はアボと香奈姉ちゃんの子供なんだから。そんな、大それた役は出来ないのにっ』

 ショックでふらついたと思っていると、どうやら麻酔銃の効き目が出てきたようで、急に眠気が襲って来た。

「あ、寝る気だな。それではナイラ様、この辺で私共は失礼させていただきます」

 アボパパの声が遠くで聞こえた。


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