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第13話 地獄での真太の魂の活躍、そして龍神達も

 

 地獄に翔の記憶で到着した真太である。地獄と言っても以前舞羅が崩していたので、一面が灰色のだだっ広い世界である。

「だよな。こんな感じになっているはずだけど、舞羅は何処に居るのかな」

 前のように大声で舞羅を呼んでみた。

「まいらー」

『ここよー』

 テレパシーで返事があった。『舞羅、学習したのかな』と思う真太である。

 気配の方へ行ってみると、何かの禍々しいものの横に舞羅が横たわっていた。

『魔王かな、それにしても、舞羅、具合が悪そうじゃないか。どうしたのかな』

『地獄の毒で眠らされていたの。本当は目が覚めているけど、寝たふりしているの。でないと危険そうなの。なんだか分からないけど、あたしの能力が欲しいらしいのよ。今に、誰かが来るらしいの。そいつの力で、あたしの愛と希望を振りまく能力を取り上げて、振りまく能力を頂くんだって、そして魔王が憎しみと絶望の気分を現世に振りまくんだって』

『げっ、その前に逃げないと』

『その刀、本物の御神刀じゃ無いでしょ。どうするの』

『今考え中。舞羅は自分で動けるの』

『たぶん、無理。まだ声も出せないの』

『げっ、いや、良いんだ。気にしないで』

 とは言ったものの、真太は困ってしまった。前のように舞羅が叫んで魔物達を怯ませて逃げるつもりだったのだ。それが出来ないとなると、やはり本物の御神刀が必要だったと言う事だ。しかし、本物を持って行こうとすると、このピンチに間に合ったかどうか・・・、恐らく手遅れになっていると思う。悩んでいると、横にシンの気配がした。横を窺うと、やはりシンがやって来ていた。大丈夫だろうか、具合は良くなったのだろうか。しかし手には御神刀があった。テレパシーで、『アボから貰って来たんだね』

 大丈夫かなど、おこがましくて言えない真太であるが、察したのか、

『お前ひとりで危険にさらさせてなるものか。ところで、御神刀を、交換しようかの。これはお前の盾になるからの。我があいつを引き寄せておくから、舞羅を抱えて逃げろ。霊魂だから舞羅は片手で持てような。魔物が来たら御神刀を使え』

『それじゃあ、シンは本物のじゃないので魔王と戦えるの』

『はっ、我の心配とは、随分と自信が有りそうじゃな。主も随分面の皮が厚くなったものよ。無事に戻れるか、自分の心配だけしておけ』

 そう言うとシンは素早く刀を取り換え、魔王の前に躍り出た。

 真太は、自分の役を全うする事に集中した。舞羅目掛けて走り、右腕の方が強いので、右で舞羅を抱えた。翔の時は両手が使えたので、左に御神刀を持つという状態に自然と動いていた。左手で刀を振る事は、魔物達の調子を削いでいた。サウスポーは剣術使いにはまれだったのだ。それで何とか邪魔建てする魔物を討てて、舞羅を抱えて出口まで逃げ延びることが出来ていたのだった。魔界を抜けると、出口にはアバとアボパパが待っていた。アボパパは何とも言えない顔つきで舞羅を受け取り、

「よくやったな」

 と褒めてくれた。アバは龍神の体となり真太をじっと見てから、火口から入って行った。

 真太は振り返った。実態のままでは無いだろうか。霊魂じゃ無くて行けるのか不思議だ。おそらくシンの加勢に行ったと思うけれど。いつか、パパが言っていた地獄と霊獣は相容れないとか言う話はどうなっているのだろうか。驚いて真太はパパを見た。

 パパはため息をつきながら、

「行こう真太。舞羅を体に戻さないと、毒で負担が大きいから急ぐぞ」

 と言うので、アバやシンが気がかりだが、本来の目的を達成しなければならない。

 舞羅の実体が眠って居る所へ行ってみると、横には元気のない翼も寄り添って横になっている。しかし真太を見て、少し元気が出たようだ。

「真太、舞羅の魂取り戻せたんだね。良かった」

「うん、不味い事になる前に取り戻せた。二人ともひどい目に合ったよね。もう大丈夫だから」


 霊魂の舞羅は直ぐに実態に同化して、ほっとする真太だけれど、見た感じ実態の方も怪我をしている。

「どうしたの、舞羅の体。大怪我と違う?」

「その話は、今はしたくない。イダが御老体の龍神に薬を作ってもらっているんだが、やけに遅い。さっき、アバもせかしに行っていたんだが、その時シンがやって来て、舞羅の魂が不味い事になっていて、お前がひとりで地獄に行ってしまったから、御神刀を持って追いかけると言うので、パパは凄く心配になった。シンはどうして居るかな。お前の御神刀で戦っているんだろう。あいつ、覚悟しているな。それに、アバまで地獄に行くと言い出したし。無理じゃないかとパパは思ったんだが、どうやら放射能にやられた体の所為で、行けそうな気がするとアバが言うんだ。実際行っちまったな。しかし、あいつも無事に戻って来れるかどうか。主だった戦力の二人が帰って来なかったら。先が思いやられる」

「そんな不吉なこと言わないでよ、アボパパ。きっと戻って来ると信じなきゃ」

 真太がそう言い返すと、アボパパは、真太を何故か眩しいものを見るような感じで眺めている。真太はどうしたのかと思っていると、やっとイダが薬を持って来た。

「あっ、イダ。薬出来たんだね」

「あぁ、やっとできた」

 翼も待ちくたびれていたらしい。

「それがあの御老体、少しボケて来たらしく。完成したかどうか分からないといつまでもこねているし、かと言って何か追加するわけでもなさそうだから、こっちは早く飲ませたいから、仕方なく完成したのかどうか分からない薬を貰って来た。そろそろ舞羅ちゃんの魂が戻って来ると思ってね。実態が何故か怪我しているから、それが分かっても不安だろうし。これで治れば良いけどね、飲み薬だけど、飲めるかな」

 真太は前世の記憶から、

「病気の人に水を飲ませる時のあれが居るよね。アボ」

 と言うと、アボは分かって何処からか手に入れたらしくすぐ手に持っていて、薬をそれに入れて舞羅に含ませた。

「パパ、そういうの得意だよね。薬、効きそう?」

「うん、完成しているね。ほら、見る見るうちに良くなってきているだろう」

 真太は思いついた。

「パパ。その逆バージョンは出来ないの。この本物の御神刀、シンに送ってやれないの」

 パパは考えている様だ。

「失敗は出来ないぞ。地獄の奴に邪魔されて、途中で奪われたら、もうお終いだ」

「うん、それもそうだね」

「しかし、俺の活躍の場はこれしかないな」

「パパ。今、危険な可能性の事、言ったよね。相当頑張るつもりでしょ。やっぱり、無理しないでよ」

「お前、最近ホント、大人をなんだと思っているのか、と言っておこう。貸せ、そいつを」

 真太の一言で、アボをやる気にさせたようだ。何だか物凄い形相で、アボパパは御神刀を飛ばした。そして失神した。

「やっぱり無理しちゃったな」

 真太はアボが息しているかなと様子を見た。息はしている。

 側で見ていたイダは、

「アボさんは真太君の『無理しないでね』の意味を、誤解して居たんじゃないかな。その所為でやる気になったようだけど」

「そうなの」

「真太君は、アボさんが具合が悪くなるのを心配して言ったんだよね。アボさんは失敗したときの事を心配していると思ったね。結果的にはやる気を出したからね。結果オーライだな」

「ふうん、イダさんは御神刀がちゃんとシンの所に行ったって分かるの」

「あぁ、地獄の様子が変わったのが分かる。勝機がこっちに回って来た。直にアバやシンは帰って来る。アボは、当分気を失っていそうだけど」

「だろ、俺、連れて帰れるかな。さすがに重そうだ」

「はは、随分逞しくなっている様なのに、パパは抱えられないのか。そうだな、舞羅ちゃんと翼君は、これから私が家に送っておこうかな。ご家族が心配しているだろうし」

「ふうん」

「わぁ、やっと帰れる。舞羅と早く家に帰りたかったんだ」

 翼が喜んで帰る気になっているので、真太は舞羅がちゃんと目が覚めるか気になったが、家で真奈伯母さんに看病してもらう方が良いかなと思った。


 一方、シンは魔王を奇襲で襲って、真太の刀でもとどめは刺せるので素早くとどめを刺して、殺していた。しかし、あっけないのに気が付き、これも魔王のふりをした子分の1人だろうと思った。真太が舞羅を連れて逃げているが、魔物の小物たちがわらわらと追いかけているのを見て、急いで後ろから切り倒して行った。だが、とどめを刺さない限り、回復して元に戻り出す。数が多くてとどめを刺す余裕は無い。真太を追う小物たちが増えるし、倒しても復活するしで、埒が明かないのが知れた。忙しく切り倒すうちに、真太が逃げおおせたのでほっとして、それからはキリがない切り倒しに精を出す。キリが無いのは分かっている。覚悟はしていた。

 その時、奥からばおぉん攻撃をしてくる奴がやって来た。遠くからでも威力が分かるし、舞羅が逃げてしまい、御立腹の様子。と言うのも、まだ遠くでそれほどダメージも無い時期から攻撃している。その怒りは如何ばかりかと言う感じである。それにまだ攻撃は始めていないが、もう一匹、魔力はこっちの方が強そうなのも同じ所からやって来た。どうやら魔王と見える。こっちも御立腹で怒りは能力を増幅させるのだろうか、先日の様にはいかないだろう。

 シンはやれやれ、と思っていると、入口から舞羅のように魔界を崩しながらやって来る霊獣が居る。驚いて振り返ると、アバだった。

「おいおい、アバ。そんなじゃあ、我が生き埋めになりそうじゃないか」

「死んでおるくせに、妙な言いようだな」

「そうだった。真太の口癖が移ってしもうたな。下から最近の魔王が来ておるが、やってしまおうかのう。主が加勢に来たし」

「その真太の刀でか」

「そうよのう、無理か・・・」

 と話していると、本物の御神刀が瓦礫っぽい所を突き抜けて飛んで来た。

「おっと危ない」

 アバは慌てて避けた。かすり傷でもひどい目に合う事が分かっているアバは、少し慌てる。シンは笑いながら。御神刀を捕まえた。

「その点、死んでおるとこういう時、不便はないのう。これで心置きなく戦える」

「そうだな、俺もお前を見て、結果を気にせず地獄で暴れてみようかと思ってな。その有様でも、あまり不自由は無く暮らせそうじゃあないか」

「それがの。つい最近、舞羅のとこへ行くと、英輔爺さんがぶつぶつ文句を言い出しおって、うるさい事よ」

「はっ、文句は爺さんだけだろう。翔が真太に変わったからあいつの文句が無くなっているはずだろ。生身のこっちはあいつの泣き声で、睡眠不足だ。此れが済んでこの睡眠不足が解消できるかなと言う所さ」

「では、どっちに転んでもアバは構わない訳だな」

「だから来たのさ。俺の生き死には気にせずとも良いぞ」

「では、もうひと暴れしようかの」

 と言う訳でシンは戦おうと思ったのだが、無駄に早々と攻撃していた魔物と、新米魔王はアバの吐いた炎の奇襲で、黒焦げになった。それでシンは本物の御神刀でとどめを刺さした。

 シンはさほど活躍の場も無く、魔王達は始末出来た。

 小物も同じくで、帰り道シンは、

「今日はあっけなかったのう」

 と言いながらのご帰還となった。


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