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第12話 真太の魂が頑張るしかなくなる

 

 このピンチより少し前の事。真太はなんとなく、懸念材料は無くなったように思えて、いつものようにソファで昼寝をしようとしていた。

 そこへ柳とロバートがやって来た。何だか慌てている様子で真太に声を掛け、何か騒いでいる。

「おい、俺等、昼から舞羅んちに集まる約束だったのに、行ったら居ないんだ。舞羅が、翼もだ」

 真太は寝入り端を起こされて欠伸をしたりして、しっかり目を覚まさなけれは、と頭を振った。しかし相変わらずの調子で彼らの言葉が頭に入って来ない。

「おい、聞いているのか」

 どうやら真太の反応がイマイチなのに気付いたロバートが、さらに大声て話しかけた。

「聞いてない、寝てた」

「あのなぁ。舞羅たちが居ないんだ。一階にいた皆は気付かなかっただと。ひょっとしたら不味い事になっていないかな」

「ひえぇ、さっき香奈ママは家に居るって言っていたのにーい」

「さっきまでは居たそうだ、舞羅と翼は喧嘩みたいな声を出していて、それからすぐ静かになって、ご飯出来たと言いに行ったら、2階から消えた感じだそうだ。出かける様子はなかったし、第一リビングから玄関は丸見えだ。真太、目、覚ませ。舞羅ちゃん達さらわれたぞ。俺の予想ではな」

 瞬きしていた真太は、やっと頭がスッキリし、ロバートに意見を言った。

「言っておくけど、舞羅を地獄の奴らは、さわれないからな。連れて行かれるとしたら、人間か、龍神の誰かだな」

「じゃあ、そう言う事だ。誰かにさらわれた。舞羅のママが、警察に電話していたな」

「真奈伯母さん、素早い動きだな、どうしたのかな」

 真太は首を傾げて言うと、舞羅んちに電話してみようと思い、スマホに手を伸ばしていると、何時の間に戻っていたのか、2階からアボパパが下りて来た。何やらぶつぶつ言いながらである。

「困った事になったな、アバがしでかしちまった。まだ本調子じゃないのに、ゆっくりさせてやれなかったからな」

「パパはちょっと出かけて来るよ、真太。皆結界から出るんじゃないぞ。あ、お前らも丁度来ているならよかった。ここが一番安全だからな。とにかく大人しくしていろよ。この間みたいに勝手なことはするな。真太、ミミちゃんの相手もしてやれよ。千佳由佳はいつもお利口だから、パパは安心しているよ。じゃあ行って来る」

「結局、理由は言わない気だな、パパ。アバがどうしたって」

「大人になるとな、秘密にしたいことがあるんだ」

 そう言って、パパは出かけた。

「どういう事?あ、真奈伯母さんに電話するんだった」

 真太は、とりあえず電話してみた。

「真太君?パパが言わなかったのね。じゃあ伯母さんも言わないでおく。警察の人には舞羅達の居所は分かったって、謝って帰ってもらったの。シンが具合が悪いでしょ。舞羅と翼はアバさんのお家に行ったそうなの。今、アボさんがそう言って出かけたの。じゃあね」

「へえ、そうだったんですか」

 真太は電話を切り、柳やロバートにそれを言おうとすると、彼等は聴力が良いのか分かったと言う顔である。しかし、柳は、

「それならそうと、皆に言って出るはずだよな」

 と言う、それはそうだ。皆でどういう事か判らず、首を傾げるのは止められない。すると、今迄しゃべった事のないミミちゃんが、急にもごもごと話し出した。

「おくしゅりなくてねえ。パパ困ってるう」

 千佳由佳は、

「わぁ、ミミちゃんお話してる」

 と驚いている。真太達も、

「え、今なんて言ったの」

 と聞いてみると、由佳が、

「お薬が無くて、ミミちゃんのパパが困っているって」

「何の薬って」

 ロバートが訊いてみた。

 真太はまた薬の話かと思う。じゃあ向こうにもけが人が出たんだと思い、イダさんじゃなさそうだな、と思いまさかアバ?何と戦って怪我しちまったのかなとぞっとする。

「誰が怪我したの」

 二人のお兄ちゃんに効かれ、何だか尋問風に思ったのか、ミミちゃんは今にも泣きそうである。

「ごめん、ごめん、まだ良く言えなかったね」

 と真太は謝って、アボが帰ってくるまでは分からないなと諦めた。ミミちゃんから目をそらすと、またおしゃべりし出した。

「ねんねしているお姉ちゃん、舞羅ちゃんだって。翼君は目覚めてる」

 くるっと振り返って、真太は食いつき気味に、

「ほんとっ、それっ」

 と言って、大きい声出して、驚かせ、しまったと思ってまた。他所を向いておいた。

『眠って居るとか、目が覚めたとか、きっと魔物に取りつかれたな。でも。舞羅も眠って居るのか。じゃあ、前の時みたいに、魂はさらわれているんじゃないか。でないと、取り付かれない筈。でもシンが怪我していて、誰が舞羅を助けに行けるのか』

 と、思い至った真太である。思わず立ち上がる。

「舞羅の魂がさらわれたな。シンは具合が悪いし、元翔の俺が行くしかないじゃないかっ」

「おいおい、アボさんに言われた事、忘れてないよな」

「大丈夫だよ、地獄には魂だけ行くから、アホの真太は昼寝でお留守番だ。でもどうやって地獄に行くかだけど」

 真太は御神刀は有るかなと、パパの部屋に行くと、本物は持って行っていた。やっぱりね。しかし真太のは置いている。

「仕方ないからこれで我慢するか」

 すっかり興奮して、翔の気分の真太である。リビングに戻り、柳とロバートを見比べる。

 恐らく、柳の方が何度か魔物に取りつかれているから、取り付き易いはずだ。それは分かっているが、取り付き方を知らなかった真太である。気が付いて呆然とする。柳とロバートは御神刀を持ってぼんやりしている真太を見て、心配になった。

「おいおい、真太。その刀で何をするつもりなんだ」

「何だか目が座っている。大丈夫なのか」

 心配気に目をのぞき込む柳である。

「・・・、ひょい」

 何となく柳と見つめ合い、本能的に柳に憑りつくことが出来た。

 ぶったおれる真太と、様子が何だか違っている柳を見てギョッとするロバートである。

「ロバート、この刀でさあ、俺の、じゃあなかった柳のここいらを刺してくれない、この刀を柳に持たせてロバートは上から握るんだよ。柳は眠るだけで大丈夫だから、俺、舞羅を助けに行かないと。何処にって?地獄だよ。前も言った事あるし、舞羅が・・・まだ崩すとこ残っていたら、崩しているから居場所は分かるはず。刺してみて、柳は大丈夫だから。急いでるんだ、早くしてね」

 前世の記憶では、急がないと間に合わないという気がしていた。何に間に合わないかは、分からないのだが。

 せかされたロバートは柳に憑りついている真太に気おされて、言われた通りに柳に刀を持たせ、上から柳を刺した。普通の神経の人ならやらない事だが、どうやら真太にも人に言う事をきかせる能力が出たと思える。

 昏睡状態とも言える真太と柳を見ながら、ロバートは途方に暮れた。それでも、ミミちゃんや千佳由佳ちゃんがお庭で遊んでいて見ていない事が、すべて終わってから気付いてほっとした。それも、真太が外に行かせたからなのだが、ロバートもそんな感じなのは分かっていた。恐るべし龍神の力というところである。



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