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第11話 アバの本領発揮

 

 アバは昼寝を始めようとしていたのだが、不機嫌そうに起き上がると、

「イダ、見張りはもう良いから、アボの近所に住む舞羅と翼を連れて来い。そうだ、奴らが取り付いているが、舞羅の魂を地獄のどこかに押し込んでいるな。連れて来て吐かせよう。気が付いていないふりをしていろよ。どう言って連れて来るかだと、お前がそれくらい考えろよ。おまえも馬鹿なのか」

 イダは命令通り二人の所に行きながら、真面目に理由を考えるが思いつかずに、生真面目に自分は馬鹿だと嘆いていた。


 イダは理由を思いつかないまま舞羅たちの住居に、到着してしまった。

 しかし、2階の一室から、不穏な雰囲気が伝わって来た。

「兄弟喧嘩か、いや、そう言う振りの喧嘩だな」

 そこで、やっと理由を思いついたイダは、二人を止めるべく、窓からその部屋に飛び込んだ。

「おやおや君達、兄弟喧嘩はいけないねぇ。こんな時期なんだから仲良くしていないと」

 舞羅にとびかかろうとしている翼を押し留めたイダに、翼は、

「誰だよあんた。何故止めるんだ。何をしようと僕らの勝手だろ」

 実際は、翼に憑りついた鬼小僧に命拾いさせてやっていたイダだが、すまして事情を話した。

「あぁ。君たちは私を知らないんだね。そう言えば初対面だったかな。自己紹介しよう。私はアバの一の手下だ。どうして君達の家に来たのかと言うと、君たちが知っているかどうか。実は現在、地獄の魔物達と霊獣つまり私達、龍の争いが始まっている。それで、今シンが深手を負っていてね。この家はシンの張った結界で守られているだろう。しかし、シンが守るのは限界だ。そこで、アバは君達をアバの目の届く、アマズン川付近で住んでもらう事にした。シンにも頼まれたし。君たちを守るには、アバの近くに居てもらわないと。彼もまだ本調子では無いからね」

 それを聞いた鬼大夫は、

「そんな事急に言われても、学校があるし、ママ達は良いっていうかしら」

「良いも悪いも無い、ここに居るのは危険なんだから、行くようにママ達は言うに決まっているよ。学校に行く事も、生きていなければ意味がないじゃあないか。もう、急を要しているんだよ。ここは危険だ。下に行って、私の言った事を話したら、直ぐ荷物をまとめてくれ。早くしないと、魔物がやって来たら、私一人で君たちを守り切れるか自信は無いね」

 少し弱弱しい振りをして、油断させながら、さっさと連れて行く理由を思いついて、ほくそ笑むイダだった。

 舞羅と翼はここで本性を現すべきか悩む所だったが、イダに有無を言わされずせかされ、イダの案内で龍たちの住む異界に身を置き、アバの待つアマズン川畔に連れて行かれたのだった。という設定だが、それでも魔界の二人としては、アバが本調子ではないと聞き、愚かにも自分達にもアボを無き者にするチャンスがあるのではと考えていた。

 イダ達がアマズン川に着くと、待ち構えていたアバ、にっこりと微笑み、すっかりご機嫌の様である。イダは無事任務を果たしほっとした。アバはイダの腕前に満足している。

「やぁ、よく来たね。イダ、さっさと連れて来てご苦労さん。じゃあ君たちは、これからこのアバおじさんと遊んでみようか。きっと面白いぞ」

 舞羅に憑りついている鬼大夫、以外と元気そうなアバに訝って、

「遊ぶって、何の遊び?」

 子供らしく聞いてみる。こうなっては正体が分かっているのかどうか確かめたい。

「刑事さんごっこさ。ほら、刑事さんの仕事で、尋問って言うのがあったろう。舞羅ちゃんは誘拐された女の子役、翼君は誘拐犯。そしてもちろん、このアバが主役の刑事さ」

 察した魔物達は慌てて逃げようとしたが、ここはアバの住処、強力な結界の中だった。外界に逃げる事は不可能である。おまけに、鬼大夫は捕らえられた設定で縄の様な物でぐるぐる巻きに、鬼小僧の方は尋問室に手錠で拘束された感じになった。

「ひいっ」

 鬼小僧は悲鳴にならない声を上げる。

「おい、貴様、舞羅に何をしたんだ、死にたくなければさっさと吐け」

 アバが凄むと、小物の鬼小僧は、自ら翼から飛び出、逃げる隙間は無いかと辺りをうろつく。もちろんそんな隙間など無い。

「ウロチョロするんじゃあない」

 首根っこをアバに掴まれた鬼小僧は、

「お助け下さい、命ばかりはお助け下さい」

「だから、舞羅をどうしたのかと聞いているだろう」

 この様子を拘束されながら見ていた鬼大夫、ため息をついた。自分たちの役目が務まらなければ、どっち道、地獄の上位の魔物に殺されるのは分かっていた。どちらに転んでも死は間違いなかった。こうなったら、舞羅をとらえている場所を、鬼小僧がしゃべる前に始末するべきと言える。自分がこの場から逃げ出せるかは、やってみないと分からないと思えた。

 そこで行動に出た。

「あたしらをなめんじゃないよ」

 鬼小僧の首をはね、結界を飛び出そうと試みる。舞羅の体を攻撃は出来ないと思っての、行動である。しかし、この考えは甘かった。相手は舞羅一筋のシンではない。

 アバは飛び上がった鬼大夫を、舞羅の体ごと地面に叩き付けた。舞羅の骨があちこち折れたのが分かる。

「おいおい、なめてもらうのはこっちも願い下げだな、何処にやったんだ。舞羅の魂を。お前らに舞羅を扱えたとは驚きだが」

「ふん、鈍い鬼小僧にやらせたんだ。生憎今殺しちまったから、永久に謎だろうね。あたしは知らないよ。お見通しだろう。あたしが知らないのは」

「そうかい、じゃあお前は用無しだな」

 そこへ、御神刀を急いで持って来いとアバに呼ばれていたアボパパが、一生懸命急いでハアハア言いながら到着した。グッドタイミングと言える。

 アバは躊躇せず鬼大夫の急所を御神刀で刺して殺した。

「アバ、こいつらを殺しまくっているのは良いが、舞羅ちゃんの居所は分かったのか」

「ああ、鬼小僧の頭の中を探ったからな。単純なのは分かりやすい。舞羅は、あの毒を薄めた物を飲まされて気を失った所を、連れ去られたな。あの量ならどうせもうすぐ目が覚める。魔王の居場所に捉えられているが、目が覚めたらあいつがそこに置いておけるものか。弾き飛ばして、こっちに飛ばされて戻って来るぞ。何処に飛ばされるか、見当を付けて待って居よう。おそらく日の国の火口じゃないかな」

「それなら良いけど、舞羅ちゃん大部怪我したじゃないか。シンが怒るんじゃあないか」

「ふん、自分が守り切れないくせに、そんな資格があるものか。だが一応龍神秘伝の薬を飲ませておこうか。これくらいなら、気付かれる前に治るんじゃあないかな。イダ、あれ持って来い。おや、まさか奥さんに全部使ったとか言うまいな」

「ええっと、ちょっと待ってくれ」

「おいっ、無いのか。そりゃあ困る。イダ、俺が何をしようとしているか位察して、忠告したって良いだろう。気が利かない奴」

 さっきまでご機嫌で、上がっていたアバのイダへの評価は、これで地に落ちる事となった。

 と言う事で、アバはおろおろと、舞羅を看病し出した。

「アボ、俺は忙しいからお前が舞羅の魂拾ってこい、もしかしたら自分で体に入って来るかも知れないが、薬で治るまでに間に合うかなぁ。イダは逃げたんじゃあないだろうな」

「そんな奴じゃあ無いでしょ。きっとご老体をせかして、薬を作ってもらっていますよ」

「それにしてもあの爺さん龍、ボケて間違えないだろうな。俺が行って来ればよかった。アボ、俺もちょっと行って来るから、舞羅の世話は頼む」

「アバ、逃げるんですか」

「うるさい、舞羅の魂の詮索はイダにさせるから。頼んだぞ」

 アボは、舞羅の脂汗を拭きながら、

「可哀そうにねぇ、舞羅ちゃん。後でアバ達を叱っておくからね。薬が早く来ると良いね」

 舞羅の看病をしていたアボだが、舞羅の家で警察沙汰の騒ぎになっているのを感じて、ため息をついた。

「ちゃんとアバのとこに行くって言っていないな。魔物は律儀じゃないからな。イダは詰めが甘いし」

 そんな時、横で只眠って居ただけの翼君が目を覚ました。

「あれ、ここ何処。アボおじさん」

「アバのお家だけどね。君たちは魔物に取りつかれていたんだ。アバの手下に魔物に取りつかれたと知らない振りをして連れてこられたんだよ。憑りついた魔物は殺したから、翼君は目を覚ましたけど、舞羅ちゃんは魂がさらわれているんだよ。だから目を覚まさないし、怪我をしている。アバや手下がクスリを調達に行っているよ。直に戻って来るだろう。おじさんは翼君達の家に行って状況を説明して来るから、翼君に舞羅ちゃんを見ていて欲しいんだけど出来るかな。もしかしたら舞羅ちゃんの能力で自分で地獄から戻って来ることが出来るかもしれないけど。どうなるかな」

「うん、分かった。舞羅は僕が看病するから、ママ達に話に行って良いよ。きっと心配してるだろうし」

 アボは、良い子の翼君に看病を任せ真奈の家に急いだ。真太にも、うろつくなと念を押さねば。アボは思った。今日はアバの所に何回往復したかな。数えるのはやめた。数えると疲れが増しそうである。



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