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第1話 表舞台に現れてしまった龍神を助けたい!

 

 その後、ひと月ほどは過ぎたであろうか。

 その後とは、龍神アバやアボパパの命がけの活躍後、翔の生まれ変わりである真太が、一人、決心してから後の事。決心とはもちろん、翔にすっかり覚醒した真太、魔物が出てきたら、この御神刀で成敗せねばと意気込んだあの事である。

 覚悟したものの、あれからさっぱり魔物が出て来ることは無かったと、真太は思っていた。

 実際はシンが真太の知らないうちに、御神刀を借りに来て、さっさと始末していた。ほぼ、真太の睡眠中の出来事である。 

 そんなこんなの、ひと月ほど後のある日である。最近はまったりしすぎた真太、段々、翔の記憶は薄れ始めていた。後に残るは図体ばかりでかいアホの真太だが、本人の自覚はまだ無い。

 ここは元翔の生家、桂木英輔邸である。

 田辺舞羅、同居の祖父母とのんびりテレビを見ていた。祖父、桂木英輔が日課として見ているお昼の時代劇である。

 しかし、突然画面が変わった。臨時ニュースらしい。

『番組の途中ですが、先ほど入って来た情報をお伝えします。始めにお断りしておきますが南麦大陸の海岸付近で目撃者が増えている非常に気がかりな情報が以前からありましたが、日の国のメディアと致しましては、もう少し内容がはっきりするまで情報発信は控えておりました。この対応は有識者の方々から情報操作ではないのか、問題であると指摘されておりました。国防省からの命令などではない事をお断りしておきます。内容が余りにも不可解であり、事実確認が取れるまでは情報発信を控えていました。今からその情報をお伝えします。ごらん頂ければ、情報を控えていた訳はお判りいただけるのではないでしょうか。では現地のレポーターに変わります。小田さん。小田さん』

『はい、小田です。では、現地リミで、目撃者の旅行者が撮影した、生物らしき物をご覧頂きましょう。これはここひと月ほど、この南麦大陸の海岸で目撃情報があった件と同一生物と考えられます』

 そう言ってスマホで撮影された映像が流れ出した。撮影者が動揺している所為か、かなり画面が揺れているが、その生物がボートの下に映っていた。南麦の海はかなり透明度の高い海水と言える。小田さんの説明によると、撮影している時は凪でほとんど波が無く海底までよく見えたそうだ。海底までは100メートルほどあって、推測では数十メートルの長さの生物?の様で、形状からクジラではない事は、明らかである。しかし、クジラではない、そんな巨大な生物が、そもそも存在するのだろうか。そのような事を解説している。

 舞羅は、それを見て、

「あっ、お爺ちゃん。これ、アバと違う?でも、普通の人には見えない筈なのに」

「うん、シンも龍は次元の違う場所の生き物だから、わし等のようにその血が混じっている人間にしか見えないと言っていたが、皆も見えているようだな。だから何か違うものじゃないか」

「うん、それもそうだけど。あちこちで目撃者がいるって事は、動いているんじゃない。つまり生きているんじゃない。で、この大きさでしょ」

「ううむ、どうだかな」

 と会話しているうちに、画面は会議室みたいな所に変わり、現地の有識者か、大統領か、舞羅たちには分からなかったが、何か説明して、後、現地のレポーターみたいな人が何やら騒ぎ出した。小田さんが解説する。

『どうやら、この生物はこの辺りを移動しているそうで、正体は、何だか以前の映画の怪獣のように、つまりゴゾラですが、放射能の影響で何かの生物が巨大化したのではないかと、推察している様です。実際この辺りの海岸に例の事件のミサイルが落下したらしく、不発だったとは言え、海底に落ちている訳で、それから放射能が漏れ出して、周辺の生物に影響が出たのではと、現地の大統領たちは結論付けています。つまりゴゾラが現実に現れたと言う事です。今の所、海底を移動しているだけで、被害は有りませんが、巨大すぎて、危険と言えば危険でしょう。南麦大陸の数か国の政府見解では、始末しなくては気が気ではないそうです。この生物がゴゾラのよう暴れ出すかどうかは、分かりませんが。危険な感じはしますね。まだ感じだけで実害は無いですけど、暴れ出してからと言うのも、みすみす手を拱いていた責任を問われそうではあります』

「なんだってぇ、アバが何をしてくれたのか知らないのぉ」

「そりゃ知らんだろうな、実際。しかし、本当にアバで、人間に見えているのかなぁ」

 そんな会話を二人でしていると、別に魔物が出た訳でもないのに、シンが現れた。最近この家に頻繁に表れている。用もないはずだが、良く来れるものだと前々から英輔は考えている。

「用事はあります」

 ちょっと気まずくなる英輔である。

「舞羅さんのご推察どおり、あれはアバです。療養中に何故か存在する次元をこちらに変えたようです。どうやら、真太とテレパシーで繋がっているうちに、こちらへ移動してしまったらしいのですが。本人、いえ本龍は気付いていません。困ったものです。南麦大陸の人達が剣呑な事を考えているようですが、こちらとしては人間に対してどうこうすることは出来ません。出来れば舞羅さん、あなたが南麦の大統領たちに思い留まってくれるように、説得していただくことは、可能でしょうか」

 そこで、英輔爺さんは呆れて言った。

「そりゃ可能じゃないだろう。舞羅の素性を言った所で、信じてくれないだろうし。日の国のただの小娘だよ。何の力も無いだろ。そっちの大統領に会うことも、何の伝手も無いから出来ないし。お前さんにとっては大層な元恋人でも、現実は普通の人間だからね」

「お爺ちゃん、随分な言いようね。シンが言い返さないからって、最近態度大きくない?龍神様だよ」

「いえいえ、舞羅さん。私は只の元怨霊龍ですから。英輔さんの言う通りでした。しかし、このままでは、彼等はアバを攻撃しそうですし、そうなったら、病んでいるアバが人間達の懸念どおり暴れ出しそうです。そうなっては私たちがアバを止めなければならないのですが、回復途上のアバは段々強力になって来て、もう霊界に住む私達には止められないのです。それに龍どうして争う事は不可能で、生存している龍たちをあてにすることは出来ません。そもそもあてにしたところで、アバに敵う龍は存在しませんし。アバが暴れ出したら人間界は大変な被害が出ますし、その後、アバが正気になれば、自分の行いに酷いショックを受けて憤死し、挙句に怨霊龍にでもなればそれこそお手上げです。それで、無理かもしれませんが舞羅さんにお願いに来ました。ダメもとで頼んでみろと父や母も言いますので、頼みに参りました次第です」

「そういう次第ですか。舞羅、ダメ元だそうだからな。どうする」

 英輔爺さんは、内心、シンは何かと理由を付けてここに来るだけだと見た。しかし舞羅はそんな風には考えてはおらず、

「わかった。あたし大統領に手紙書いてみる。英語あまり得意じゃないけど。英語で良いのよね」

 と言うと、

「実は違う言葉ですが、通訳が居ると思いますよ」

 と、世事を分かってきているシンに言われ、

「そうなの、とにかく何とか説得してみる」

 と決心した。ダメ元ならそう気にしなくて良いと思った舞羅である。


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