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55:

王の寝室前につくと、なにやら話し声が聞こえてきた。

王妃と語らっているのかと思いきや、声は若い女のものだった。


俺は足を止め、聞き耳を立てる。


「うまくいきましたわね。陛下」

「なにもかもを仕切っていたレイフを退けた。あの忌々しい若造め。好き勝手にもほどがあるというものだ。

「本当に、この国の真なる王は陛下でしょうに……」

「四国をまとめた初代だというのに、これではまるでなにもするな、なにもしなくていいいという風ではないか」

「本当に陛下こそ世界のトップでありましょうに」


低い男の下心まみれたくぐもった笑い声に、女の媚びる台詞が重なる。

こんな男が王であり、こんな男にレイフは殺された。


逆であればいいのにと腸が煮える。


扉の向こうで会話は続く。静かな夜更けに、はばからない語らいはよく響く。


若い女を可愛がる王が、王妃をつまらない真面目腐った陰気な女、と称した。

おそらくあの植物を好む王太子は母に似たのだろう。


王太子を殺し、王を排斥し、俺に王位を継承させて後、王を消すと考えていたが、計画を改める必要がありそうだ。


その時、若い女の聞き捨てならない台詞が飛んできた。


「父も厳格で話になりません」


父?

父と言ったか!


若い女の正体にぴんとくる。


「四国を掌握したというのに、この城の暮らしはなにも変わりません。おかしくありませんか陛下。統一国の長たる王家なのに、かつてと同じ暮らしだなんて! 統一した王の暮しにふさわしくありませんわ」


贅沢ができないことの不満を女はぶちまけ始めた。


「国庫に入った金品は市場に流され、必要分しか私どもに回ってこない。おかしいじゃありませんか。統一した王の暮らしぶりが依然と変わらないなど。この世で、一番高貴な立場であるはずなのに!」


女の言葉に耳を傾け、相づちを打っていた王が答える。


「そうだ。その通りだ。あとは公爵、あれをどうするかだな」

「ご安心ください。レイフを失い、オーウェンは行方不明中です。どんなにこの城内に鼠を仕込んでいましょうとも、まとめる力を失った今、求心力は衰えていきます。そうすれば……」

「二十四家のゴード・リドリー殿が手を差し伸べてくれるというのだな」

「ええ、そうですわ。ですが、陛下、軽々しくその名を口にしてはなりません。表の者は知っていてはいけない名ですわ」


女の正体はガーラ。

さらに裏ではゴード・リドリーがガーラと繋がっているとすれば、この国を乗っ取りに来ていると言える。


リドリー家もまた、スピア国の現状に手を差し伸べる意思を示す二十四家の一つであった。


無駄なことだ。彼らが裏から手を伸ばそうとも、俺が今夜ひっくり返す。明け方までには決着をつけてやる。


俺が打ち払えば、闇から王家に伸びた手は引っ込む。

生贄として残るのは、王とここにいるガーラだけ。

ゴードの凶悪さを知らない二人はあわよくば漁夫の利を得るための手ごまにされたのだろう。

彼はその本性に気づいていない。

欲に目に眩んだ者は状況を見誤る。その典型か。


残念だな、ゴード。

蜥蜴の尻尾は燃えて消える。

ガーラも王も今夜、ここで終わるのだ。


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