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53:

「違う? なにが違うというんだ。殿下、あなたが作った毒でレイフは殺されている。

殿下が開いた宴席で、自ら盃に毒を塗ったというのに、しらをきるつもりなのか」


盃、毒。

自ら開いた宴席。

舞台も凶器も自ら用意している。


状況も証拠もそろっていて、今さら言い逃れはできないはずだ。


腹立たしさに、俺の周囲を取り巻く空気がとげとげしなり、荒々しく渦を巻き始める。


怯え切った殿下は震えながら語る。


「宴席は開いた。

毒も作っていた。

しかし、その毒は、誰かを毒殺するためのものではない」

「では、何の目的で毒を作っていたのだ」

「それは、母のためだ。王妃である母は病気で、身体の節々が痛むのだ。その痛み止めとして、私は薬を作り、母に差し上げていただけだ」


怯えながら、殿下は早口でまくし立てる。


「オーウェンの魔導がいかほどのものか。俺はよく知っている。ミデオ国を制圧した際の火の玉が地上に無数に落ちていく様は見ている。

魔導士の恐ろしさは分かっている。その上で言う。

誓って、私は何もしていない」

「では、誰がどうやってレイフに毒を盛ったというのだ」


怒気鋭く言い放つと、殿下は怯えた顔をさらに歪ませ、今にも泣きそうな顔になった。


植物に囲まれる弱々しい男。

贅沢を好み、レイフを暗殺したようにはまったく見えない。


「父が、王が来たのだ。挨拶に。そこで遠方から取り寄せた特別な塩をレイフに出したのだ。

塩を盃の縁に塗り、酒を飲む風習があるだろう。

それにならい、レイフは盃の縁に自ら塩を塗ったのだ。

盃の縁に毒が塗られていたとしたら、それしか考えられない」


沈黙が降りる。

言い訳を述べ切った殿下は肩で息を切らしながら、俺を凝視する。


嘆息した俺は冷ややかに言い放った。


「なぜ、盃の縁の毒で暗殺されたと知っている?」


殿下はしまったと表情を曇らせ、青ざめる。


「王に罪を着せようとして、塩の言い訳を作っておいて、本当はお前が盛ったからじゃないのか」


青ざめたまま、殿下は頭を左右に振った。


「違う、違う。本当だ、本当なんだ。塩の件は間違いない。私はなにもしていない」

「では、なぜ塩に毒が混ざっていたと言えるのだ。それを知るのは、犯人しかいないだろう!」


毒がなにかは判明していた。

その毒と同じものを作っている者も分かっていた。

縁に毒が塗られていたのも分かっていたが、犯人がどうやって毒をその宴席に持ち込んだのかまでは、まだ分かっていなかった。おおかた王太子殿下が懐に隠し持っていたのだろうと予想はしていたが。


「聞いてくれ、オーウェン。

王が宴席に持ってきた塩に毒は混ぜられていた、それは間違いない。

なぜなら、その塩を私も舐めたからだ。しかし、私が舐めた時には、すでにほとんどの塩をレイフは使い切った後だった。

私が気づいた時には、手遅れだったんだ」



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