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目覚めると目の前には装飾性の高い天井が広がっていた。
「……」
俺は天国についたのだろうか。
ぼんやりとした意識のなかで、眼球を動かす。
視界に入った豪奢な内装に仰天した。
こんな素晴らしい部屋を用意してもらえるほど、良いことをした記憶はないぞ。
これが天国の普通なのか。
肉体の感覚があり、身体を起こす。
腕もあり、足もある。
顔に触れると、肌は艶やかで、若々しい肉体であった。
天国に行くと若返るのだろうか。俺は首をかしげる。
再び、部屋全体を見回す。
ベッドの上に座っており、ここは寝室のようであった。
キングサイズのベッドに、鏡しかない。なぜか部屋に扉が二つある。
鏡を見ると姿が映った。
その姿を目にすると同時に、ものすごい頭痛に襲われた。
叫び声をあげずにはいられない痛みに、頭を抱えて、ベッドの上でのたうち回る。
頭の中に記憶が一気に注ぎ込まれてくる。
突如、扉が開かれた。
叫び声に気づいた誰かが入ってきたのだろう。
駆け寄ってきた人物が俺の肩を抱き、ベッドに寝かそうとする。痛みに苦しむ俺は朦朧とし始める。
俺を助ける誰かが呼びかける。
「オーウェン様、いかがされましたか!」
オーウェン!
前世で何度も触れた名前だ。自分の名前の次によく覚えている。
ところが、あまりの頭痛に、俺の意識はそこで途切れた。
二日間、俺は寝込む。
流れ込んできた記憶により俺は誰に生まれ変わったかはっきり分かってしまった。
ここはスピア国。
前前世で奴隷として生きてきた時代にあった国の一つだ。
さらに、俺はオーウェン。
オーウェン・マクガ、十八歳。
将来魔導士オーウェンとなる人物の青年期に俺は生まれ変わったのだ。
すっきりと目覚めた時、俺は魔導士オーウェンの過去をすべて知ることになった。
オーウェンは、伯爵家領内に暮らす遠縁の子どもだった。
先々代の妾の子を母にもち、領内で生まれ育つ。
ある年齢で、魔力があると分かり、伯爵家の当主が、領内での息子の遊び相手として選んだ。
息子と一緒に魔法を習わせていたところ、オーウェンの魔力がとても多いと判明し、伯爵家はオーウェンを養子に迎えた。
あくまで、家の勃興と、実子の補佐役として期待されていたとしても、余りあるほど、オーウェンは優遇されていた。
伯爵の息子と仲が良かったのも幸いしていたのだろう。
両親の記憶はない。伯爵の養子になる前に死別しているようだ。
これが十八までのオーウェンの人生かと俺は感慨深く理解した。
なにせ、前世では彼の幼少期はあまり調べても分からなかったのだ。
喉につかえていた小骨がとれたような、スッキリとした気持ちになった。
それは良い。
とにかくだ。
俺は再び生まれ変わったようだ。
しかも、オーウェン。
問題は、このオーウェンはいずれ暗殺されるということだ!
暗殺なんて最悪だ。
前世で俺は思い知ったはずだ。
どんなに才能があっても、能力があっても、死んでしまっては意味がない。
歴史に名を残しても、人間としての幸せはそこにはない。
長生きこそが最高だと。




