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三人の主が咎を受け、儀式は終わった。
夜は晩餐が開かれる。
二十四家の当主たちは、無事に統一国が決したことを喜んでいた。
俺とレイフだけが、釈然としないまま捨て置かれていた。
晩餐の場で話が通じているのは二十四家の当主たちばかりである。
勝者であると言われても、なにも勝った気がしなかった。
儀式の勝者はあくまでも儀式の勝者であって、二十四家の当主たちはまた別の場で、俺たちの知らない根回しをしていたとしか考えられなかった。
夜遅く、俺とレイフは、エネル公爵とマクガ伯爵に呼びつけられた。
「いったいどういうことですか」
感情を押し殺した声でレイフは訊ねた。
「万事うまくいった。これで、スピア国が統一国になると決定した。ご苦労だった、レイフ」
父である伯爵に労われても、レイフの表情は曇っている。
同じ円卓を囲んだ彼らの所業はひどいものだった。
やってきたことを思えば、彼らが受けた痛みは、世界に振りまいた痛みの一万分の一も味わってはいないだろう。
しかし、角度を変えて見れば、彼らは各家や国に富みをもたらしている。
その点を鑑みれば、各家が彼らに行った仕打ちは、ひどいようにも捉えられた。
俺たちは地上での争いを差配していた。
円卓に座る俺たちの存在を知らず、人生を摘み取られて行く者たちが、地上のプレイヤーだとすると、俺たちもまた別次元で行われていた話し合いの元では、ルールーや全容を見せられずに円卓に座らされたプレイヤーでしかなかったということだろうか。
そう見れば、調子付き傲慢になった円卓に座る者が儀式の名を借りて、用済みと制裁されたかのようにも見える。
俺は仮面の下で数度瞬きした。
未来で歴史を学んできたというのに、この場に置いては、分からないことばかりで眩暈がしそうだ。
砦で行われているなにもかもが、前世の俺が知らないことばかり。
結果が分かっていても、過程はまるで見えない俺は、一歩引いたところで黙していた。
「彼らは元々捨て駒だ」
こともなげに、公爵が言った。
さもありなん。予想通りだ。
今さら、彼ら三人を擁護するつもりはないが、俺は公爵に率直に問うた。
「彼らは各家、各国に十分な資産をもたらしたというのに、あのような仕打ちはあんまりのような気がしました」
今まで散々彼らを敵視していたレイフも俺の問いに口を挟まない。聞きたいことは同じことのようだ。
公爵は静かに語る。
「彼らは元より、それが役目だったのだ。
壊し、作る。作っては、壊す。
その落差が激しいところで、金は血液のように巡り、増大する。
だからと言って、人の恨みは買いたくない。
怨恨を背負っては、統治者たる二十四家が未来に潰える火種を残すことになりかねない」
「二十四家が恨みを背負わないために、あの三人はいたのですか」
「そうとも言える。我々は手を汚しきれない。代わりにその役を担い、厄を負う者が必要だった」
俺は前世で知りえなかった歴史の裏を垣間見た。




